収益改善に役立つ統制指標の切り口

収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2011/05/16 No.103

【目次】

1.全体最適の課題

まえがき

こんにちは 前田です!
                     別府 駅前高等温泉

駅前高等温泉今回も別府のじもせんを紹介します。最初は、駅前高等温泉です。別府駅東口(海側)から、駅前通りを歩いて2分とかかりません。ほどなく右側に、写真の特徴ある建物が見えてきます。撮影した3月20日は、小雨模様でした。画面がやや暗くなっていますが、ご容赦お願いします。大正13年に建てられたイギリスの民家を想わせる型式で、宿泊もできる温泉です。1階が温泉、2階が宿泊施設になっています

 

温泉は高等湯と並湯の2種類あり、両方とも半地下式です。高等湯は中性単純泉、営業時間が24時間で300円、並湯は弱アルカリ単純泉、営業時間が6:00〜22:45で200円となっています。今回は入湯していませんが、並湯の料金は以前100円でした (=^^=)

 

紙屋温泉

           紙屋温泉
                       紙屋温泉 案内板

紙屋温泉 案内板次の紙屋温泉は、別府駅東口から右斜め方向、約900mの位置にあります。前回No.102でご紹介した、永石(なげし)温泉の左側手前の位置です

 

当温泉は案内板のとおり、高い効能で知られています。そのため、病気療養で近くの旅館に長期滞在し、湯治に通うかたが多かったとお聞きしています。上の写真、温泉入口の向かいは駐車場です。別府を初めて訪問した頃は、すでに営業していなかったようですが旅館は残っていました。時の流れをつくづく感じます。今回、入湯したかったのですが、温泉巡回ルートの関係上、時間が合わず断念しました。入湯料は100円です (^−^)

 

別府八湯のうち、別府温泉では貸間(かしま)を見かけません。貸間は、湯治客向けに部屋だけを貸す自炊できる旅館のことです。旅館による違いはありますが、頼めば食事も出してくれます。別府八湯の中では、鉄輪(かんなわ)温泉、亀川(かめがわ)温泉には、まだ貸間がだいぶあるようです。小生も一度、食事付きですが、鉄輪の貸間旅館に泊まったことがあります (∩_∩)
                      松原温泉

松原温泉最後の松原温泉ですが、今回の温泉巡回ルートでは入湯できたはずですが、当日は営業時間の臨時短縮で入浴できませんでした。3月20日のことです。当所は、紙屋温泉から海側に300mほど先にあります。小生の好きなじもせんの一つです。入湯料は100円となっています (^0^)

                      松原温泉 案内板
松原温泉 案内板今回ご紹介の駅前高等温泉、紙屋温泉、前回ご紹介の永石温泉も別府八湯の別府温泉です。松原温泉は、永石温泉と同じ永石通りに面していますが浜脇温泉に区分されています。昔、この場所は河川敷だったそうです。じもせんの多くは、地域の公民館と同じ建屋に入っています。この松原温泉も同様です  (^^)

 

東日本大震災の被災者の皆さま、厳しい生活を強いられていますが、一日も早い復
興を心から望んでおります。今日5月14日、JR蕨駅前で震災の翌日からボランティア

で現地に行っていた方々の報告を織りまぜた募金活動を見かけました。頭が下がる
思いです m(_ _)m

1.全体最適の課題

全体最適と言えば、意味は何となく分かるが、具体的にどんなことを指すのだろう
か。概念としては、部分最適より全体最適がいいに決まっている。などなど、全体

最適に関する捉え方には、いろいろな反響があります。総じて言えば、総論賛成、
各論不明となることが多いような気がします (>_<)

 

そこで、今回だけでは完結しませんが、順を追って全体最適の全体像を採りあげる
ことにします。今回のテーマは、全体最適そのものと、結果的に得られる効果です

 

 

◆本文の流れ

 

次の展開でお話しします

 

・全体最適推奨の背景
・全体最適の意味

・効果測定手段
・全体最適の課題

・全体最適の課題がある企業例
・主な課題の内容紹介

 

 

◆全体最適推奨の背景

 

これまでも、部分最適ではなく全体最適の重要性と必要性を、たびたび強調してき
ました。全体最適による効果として、具体的にどんな項目があるのでしょうか。

元々、全体最適は個別改善主体に活動してきた企業が、コスト低減や効率化が限界
に近づき、さらに一段階向上する方策として私どもが提案してきた概念です。この

概念は、2005年当時の一般的なSCMの定義にある全体最適に対する考えかたと限
りなく近いと言っていいでしょう。唯一の違いは、一般のSCMがサプライチェー

ン全体を対象としているのに、私どもは一企業あるいは企業グループに限定したこ
とです。いわゆる、社内SCMに相当します

 

 

◆全体最適の意味

 

従来の定義にこだわらず、全体最適を分かりやすく言うと、次のように現わせます

 

『全体最適とは、営業利益を常に最大化する方向に業務遂行をおこなうしくみであ
 る』

 

対象の営業利益は、一企業あるいは企業グループを指しています。一時的な全体最
適ではなく、継続的に維持できることが前提です。そのため、必要な権限を持って

コントロール可能な、企業内組織の設置あるいは役割分担が欠かせません。全体最
適で対象とする企業の主な組織は、販売・生産・物流・開発の全ライン部門です。

これらライン部門は、営業利益を日常的に生み出す役割を持っています

 

営業利益の最大化を目的に、PDCAのマネジメントサイクルを回すことを「しく
み」と表現しています。このほか、しくみにはコントロールをおこなう判断基準が

最低限必要です。測定できないものはコントロールできません。従来から私どもが
推奨している測定手段として、管理指標と統制指標があります。もう一つくわえる

なら、これら管理・統制指標算出や、各種の測定手段を提供できる管理会計の導入
が不可欠です

 

説明に用いた用語の解説を、次に掲げました (^^)

 

*用語「PDCA」
 よく使われる言葉ですが、使い方確認の意味で説明を加えました。マネジメント

 サイクルとは、PDCAを回す「管理する」と同じ意味で使っています。それぞ
 れの内容は次のとおりです

 

 P(Plan) :計画、あるいは対策立案と目標設定
 D(Do)  :実践

 C(Check):予実績評価
 A(Act) :差異要因解析

 

*用語「管理指標」
 管理指標とは、対象業務・作業全体の運用が適切かどうか判断する物差しや業務

 効率の測定基準をいいます。または、部門あるいは部門内の運用が適切かどうか
 判断する物差しです。言い換えると、部門運用効率の測定基準になります

 

*用語「統制指標」
 部門最適ではなく全体最適実現のため、業際間の課題について権限を持って管理

 する優位性判断の物差しをいいます。統制指標の目的は、全社収益最大化の方向
 に統制することです

 

*用語「管理会計」
 企業内部の経営管理者に、経営に役立つ各種の会計情報を必要に応じて作成し報

 告する会計です。管理会計には、設備投資の計画など意思決定に役立つものと、
 期間利益計画・予算統制・標準原価計算など業績の評価に役立つものがあります。

 次に、一見紛らわしい管理会計の区分のしかた紹介です

 

 会計制度の種類:財務会計、管理会計
 原価計算方式 :全部原価計算(財務会計)、直接原価計算等(管理会計)

 原価計算の形態:財務・管理会計とも共通であり、生産形態で決定
         単純総合原価計算、等級別総合原価計算、個別原価計算

 原価計算制度 :財務・管理会計とも共通であり、条件に応じて採用
         標準原価計算制度、実際原価計算制度

 

 

◆全体最適の効果測定手段

 

全体最適による効果は、すべて営業利益で測ることが原則です。ケースにより、限
界利益や純利益を用いることもあります。それぞれの事例を紹介しましょう。すべ

て、メーカーが対象です。ケースによって、必ずしも測定手段は一つに固定できな
いこともあります。一応の原則と考えていただいたほうがいいかもしれません

 (^∧^)

 

・限界利益による測定(生産の時間当たり限界利益による測定含む)
 製品別の販売利益、顧客別・製品別の販売利益、生産・販売中止の判断、生産設

 備への負荷割付順位、内外製の判断、内製と購入の判断、アイテム数削減、生産
 コスト改善テーマの優先順位設定、短期的な生産プロダクトミックス、短期的な

 販売プロダクトミックス

 

・営業利益による測定
 国内の複数工場間の生産配分、工場の稼働直数増による生産、生産設備投資

 をともなう販売

 

・純利益による測定
 国内外工場の生産配分、海外工場への生産移転、海外への製造委託

 

*用語「短期的な生産プロダクトミックス」
 現生産能力の範囲内で、限界利益額あるいは限界利益率を最大化する現状同様に

 出荷できる生産アイテム・数量の組み合わせをいう

 

*用語「短期的な販売プロダクトミックス」
 現状扱い品種の範囲内で限界利益額あるいは限界利益率を最大化する現状生産可

 能なアイテム・数量の組み合わせをいう

 

測定手段に共通する事項として、生産と販売の期間を同一にして比較する必要があ
ります。たとえば、生産期間が2カ月間だとしたら、販売期間も2カ月間として、売

上高や生産量を算出することになります

 

限界利益の測定により全体最適を判断できる場合は、手軽なこともありもっとも推
奨できる方法です。詳細は、No.54「営業から見る収益管理」の参照お願いします

 

営業利益の測定が必要な対象は、固定費に区分される経費の増加をともなう案を評
価する場合です。労務費は、通常のケースで固定費に区分しています。このケース

では、生産量増加に対応するため稼働直数を増やすと固定費も階段状に増加し、限
界利益では最適解を判断できません。

 

純利益の測定が必要な対象は、海外工場を設置した場合の移転価格、税制の違いに
よる利益への影響を見ようとすると、限界利益、営業利益では困難です m(_ _)m

 

 

◆全体最適の課題

 

次の課題は、全体最適を進めるうえで、改善対象となる項目を過去のコンサルティ
ング事例から抽出したものです。並べた課題は、割りと小さなものから大きなもの

までさまざまあります。まず、課題を一覧して下さい。3つのレベルに区分していま
す。課題の内容については、今回省略しました m(_ _)m

 

☆レベル1 管理会計に頼らなくとも取り組み可能

 

・品切れ防止
・アイテム数削減(=基準アイテム数の設定)

・オーダー実現率向上
・在庫基準の設定

 

*用語「オーダー実現率」
 顧客の確定受注を修正・調整することなく依頼内容どおりに実現した割合。また

 は、当社が受注と判断したお客様からのオーダーを、社内各SCM関連部門の連
 続した業務活動を通じて、修正・調整することなくオーダー内容どおりに実現し

 た割合を指しています。ここで言う、社内各SCM部門とは、受注、生産計画、
 生産、出荷等、日常ライン業務部門のことです

 

☆レベル2 管理会計を前提とした取り組み推奨

 

・クレーム発生防止
・内外製の適正化

・生産配分の是正
・編成効率の向上

・予実績管理の強化(=収益管理の強化)

 

*用語「生産配分」
 複数工場で同一製品を生産できる場合、工場別の生産品種、生産量を変えること

 によって企業あるいは企業グループの収益は変化します。この収益を最大化する
 工場別の適正生産品目割り当てを生産配分と言います。同様に、自社工場だけで

 なく連結対象としている企業も同様に見ることが可能です。過去算出した企業で
 は、自社と子会社間の生産配分を変えることにより、年間5億円強の営業利益が増

 加している例もあります

 

*用語「編成効率」
 一定期間の受注に対する生産能力の活用割合のことです

 

☆レベル3 事業管理層中心の取り組み必要

 

これらの課題は、管理会計が導入済みであればベターですが、必ずしも必要としま
せん。ただし、得られるデータの精度を上げようとすれば、管理会計の導入が不可

欠です

 

・事業ビジネスモデルの見える化(=事業構造の見える化)
・事業収益源の見える化(=収益構造の見える化)

・需要構造の見える化
・保有技術のマッピング(=技術の見える化)

・経営理念・経営方針の明示・具体化

 

課題は大きく3つに分けました。各レベルの中の課題がある場合は、当該レベル全部
と上位レベルについても検討が必要です。収益管理強化の課題が内在する企業例を、

次に紹介します

 

 

◆全体最適の課題がある企業例

 

N社は食品メーカーです。食品メーカーの特徴として、次のことがあります

 

・新製品の数が多い
 年間数百種類の新製品を出すこともあります。しかし、発売1〜2カ月後に販売中

 止というのも珍しくありません。新製品発売1年後に、販売継続の製品は一桁台と
 いうのが実態です。営業利益確保には、売上拡大が有効と長年判断されてきた経

 緯があるからです。販売方針では、売上を作るのがもっとも重要視されています

 

・広告宣伝費がかさむ
 売上確保のため、代理店売上高に応じて支払う販売奨励金、テレビや雑誌などメ

 ディアへの広告宣伝費など販売費がかさみがちです。売上高に占める販管費率は
 40%に達しています

 

結果として、次の悩みを抱えています

 

・新製品の売上確保はされますが、本当に儲かっているのか不明
 工場の製造原価は、直接原価計算されています。しかし、限界利益までは算出で

 きるしくみになっていません(変動損益計算書、採算分析作成せず)。最大の理
 由は、販売奨励金と広告宣伝費の個別製品への配賦基準を設定できていないから

 です

 

・新製品の目標利益は設定していない
 従来から個別製品の利益を算出していないことから、目標利益も設定されていま

 せん

 

私どもは、実態を次のように捉えています

 

・生産改善の重点対象が見えない
 製造原価は、直接原価計算されています。しかし、限界利益が算出されていませ

 ん。結果として、営業利益に対する工場改善課題の優先度判断と貢献度把握が困
 難です

 

・製品別の限界利益と営業利益が把握されていない

 

全体最適の課題は、収益管理の強化です。この課題は、レベル2に該当します。した
がって、レベル2のほかの課題と、レベル3の取り組みが必要か吟味することが欠か

せません (●^o^●)

 

 

◆主な課題の内容紹介

 

収益管理で押さえるべき、主要課題の進めかたをN社を例に紹介します

 

N社では、販売奨励金と広告宣伝費の固定費を製品別に配賦できていません。これ
が、製品別損益をつかめない最大要因でした。お話を伺った限りでは、新製品を出

すために新たな設備投資を必要とすることがほとんどありません。そこで、次の手
順にしたがって進めます

 

・製品別・限界利益一覧作成
 帳表作成の目的は、製品別の限界利益と、時間当たり・売上の単位限界利益を知

 ることです。作成に必要な項目は次のようになります。
 製品別・生産時間と生産数量、製品別・売上高と売上数量、製品別・変動費と1個

 当たり変動単価

 

 結果として、次の項目を帳表左から並べます。期間は1カ月、期単位などです

 

 No.、製品名、売上高、売上数量、変動費、変動単価、限界利益、生産数量、
 売上の単位限界利益、生産時間、単位生産時間、時間当たり・売上の単位限界利

 益(必要に応じて、項目の構成比と累計構成比をプラスすれば、より見やすくな
 ります)

 一見ややこしそうに見えるかもしれませんが、帳表にすると単純明快です。デー
 タをソートし、2表作成します。1表目は限界利益の大きい順、2表目は時間当た

 り・売上の単位限界利益の大きい順の作成です

 

・予実績の差異分析
 製品別の限界利益と、時間当たり・売上の単位限界利益の大きい製品を、十分に

 比較してみれば分かります。時間当たり・売上の単位限界利益が大きい製品ほど、
 営業利益に貢献しているはずです。もっとも、この例では営業利益が算出されて

 いませんので、判断できませんが… (∩_∩)

 

・PDCAのマネジメントサイクルを回して関係者で討議

 

実際の帳表を見ないと分かりにくいかもしれません。しかし、差異分析による課題
抽出と差異解消策の立案が、従来より格段にレベルアップすること間違いありませ

ん \(^^)/

 

今回は、食品メーカーN社を例に全体最適への進めかたを紹介しました。次回以降
になりますが、全体最適の進めかたを一般的な手順でお話しする予定です

編集後記

No.102のメルマガを見て気がつきました。発行日が5月6日になっているのです。5月
9日の間違いで、早速メルマガWebサイトのほうは修正しました。まぐまぐにて配信

後であったため、そちらのほうは手遅れです。お詫び申し上げます m(_ _)m

 

まえがきに、別府の温泉を今回で5回続けて紹介しました。まだ、風景や温泉以外の
写真は残っています。あまり続けるのも退屈するでしょうから、次回から日奈久温

泉の写真を紹介するつもりです。日奈久温泉の写真も、これまで何度も紹介済みで
すが、まだだいぶ残っていますのでご期待下さい  (^^)♂♂

 

 今回頁数は次のとおりです
  364行/校了時点の合計÷53行/頁≒6.8頁

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!