収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2011/05/30 No.105
【目次】
1.全体最適の基盤整備
まえがき
こんにちは 前田です!
日奈久温泉 からくり時計 4月19日
最初は、日奈久温泉のほぼ中央に位置する、いこいの広場にあるからくり時計です。上にあるからくり部分が小さくて分かりにくいのですが、日奈久の大綱引きをモチーフにしています。時計の左側は国道3号線、さらにその左は八代海です
道路右側に進むと八代市の中心部から熊本市につながっています。山頭火の宿泊した旧木賃宿・織屋は、からくり時計右奥に見える赤茶色ビルの2つ先、路地を海側に入ったところにあります。このからくり時計から約50m先です (^o^)
山頭火が宿泊した旧木賃宿 織屋
写真の御宿おりや(旧木賃宿・織屋)は、路地裏で薄暗かったため、写真の粒子がやや粗くなってしまいました。山頭火が宿泊した昭和5年当時のまま残っていると、後段の案内板にもあるとおりです。玄関付近には、山頭火の句碑が沢山あります (^▽^)
入口で写真を撮っていましたら、お隣のかたが中も見ますか、と鍵を開けて中を見せていただきました。お気づかい、ありがとうございます。実際に宿泊したのは2階ですが、写真は1階だけ撮りました。下の写真にある階段を登ると、2階は大広間になっています
旧木賃宿 織屋の中
写真にあるように、1階は山頭火をしのばせる俳句や、当時の品々が展示されています。下の写真奥は炊事場です。当時に近い状態なのでしょうか。食器もだいぶ残っています
しばらく見ていましたら、昔なつかしい炊事道具が沢山ありました。木賃宿は文献等で知っていましたが、実際見るのは今回が初めてです。別府の貸間と似たようなものかもしれません (^v^)
旧木賃宿 織屋の中
旧木賃宿 織屋 案内板
念のため、山頭火の紹介を少々しましょう。種田山頭火(たねださんとうか)は、戦前の著名な俳人の一人です。放浪の俳人として知られています。生まれは、山口県防府市で、お墓も生地の護国寺にあります。1925年、熊本市の曹洞宗報恩寺で出家しました
今回紹介の織屋には、昭和5年9月10日から3泊したことが、右の案内板にも紹介されています。特筆すべきことは、この織屋は山頭火が宿泊した全国の旅館の中で現存する唯一の建物ということです
木賃宿(きちんやど)は、炊事に使う薪などの代金を払えば泊ることができる最下層の旅籠で、1泊40銭と案内板にあります。昭和5年、山手線の初乗り料金が5銭だったそうです。現在は130円ですから2600倍です。感覚的にあっているかどうか分かりませんが、40銭×2600倍=1040円となります (^−^)
1.全体最適の基盤整備
各企業の経営管理状態によって、全体最適のしくみ構築は手順が変わります。全体
最適のしくみ構築の進めかたは、後日あらためて紹介予定です。今回は、全体最適
で直接対象となる複数部門にまたがる課題ではなく、しくみ構築の前提として必要
な各ライン部門内で取り組むべき課題との関連を採りあげます。部門長の責任でお
こなうべき部門内の課題を、フィールドの課題と呼んでいます。これらの部門内課
題が効率よく運用されることによって、全体最適のしくみ構築は容易になります
\(◎o◎)/!
本文の流れを、まず紹介します
◆本文の流れ
・全体最適前の部門基盤整備事項
・基盤整備は全体最適開始の前提
・生産管理事項の計測可能化
・販売管理事項の計測可能化
・基盤整備されない真因
◆全体最適前の部門基盤整備事項
最初に結論部分を紹介します。全体最適のしくみ構築の前提として、生産・販売部
門内で基盤整備が必要な課題は次のとおりです。販売部門の予実績管理は一概に部
門内だけの問題ではありませんが、とりあえず当該部門にくわえました。部門内だ
けの問題ではないというのは、予実績管理そものが全体最適の根幹を成すものだか
らです。見ていただいて分かるとおり、どれをとっても当たり前のことが多いと思
います。実際の企業においては、不十分な実施にとどまっている業務が多すぎる裏
返しかもしれません
☆生産部門における基盤整備事項
販売計画を保証する生産計画立案、経費を変動費と固定費に区分した製造原価の
算出、予算と実績による原価管理の実施、販売条件を満足する納品
☆販売部門における基盤整備事項
販売計画の立案、売上の予実績管理の実施
◆基盤整備は全体最適開始の前提
収益改善は、いずれの企業においても重要度が高い課題です。内容も多岐にわたっ
ています。また、各企業の経営管理における優先度もさまざまでしょう。私どもは
収益改善に資する観点から、企業のあるべき姿の一つとして全体最適のしくみ構築
を、従来から推奨して来ました。全体最適の内容ですが、同じ結果になるのであれ
ば、進めかたは異なっても問題ありません。小生は関知していませんが、ゴールに
たどり着く道はほかにもあると思います (^▽^)
さて、全体最適のしくみですが、いずれのメーカーでも実現できるものなのでしょ
うか。答えは然り(しかり、イエス)です。ただし、現状の経営管理状態により、
基盤整備から始めざるを得ないことがあります。現状の経営管理状態とは、経営管
理の基礎部分ができているかどうかです。次の例に反し、筆順もできていないのに
条幅から書を始めるのは無謀としか言いようがありません (=^^=)
少々脱線しますが、書の取り組み例です。有名な書家の躍動感あふれる書を見て感
動し、書道家になりたいと思った人がいます。中学時代の習字の出来はよくありま
せんでした。本格的に、書を習ったこともありません。一念発起し、書道教室に通
うことにしました。最初は、墨のすり方、筆の持ちかたから始まり、筆順、永字八
法の習得、楷書を中心とした練習、書の歴史などなど、基礎を身に付けることが中
心です。一度の練習で、半紙に数百枚以上書くこともたびたびあります。慣れてく
ると、条幅、草書、万葉仮名の段階です。練習は毎日欠かせません。通常であれば、
4段到達まで最低5年はかかるはずです。4段当たりで、ようやくある領域に達したと
言えます。売れる書道家への道は、まだまだ先のことです (^∧^)
上記事例の人と違いますが、小生は空海の書に感動を覚えたことがあります。東京
国立博物館で開催された「弘法大師・空海」展でのことです。条幅の字が生きてい
るのを感じたのを今でも思い出します。滅多に見られるものではありません。書家
には、天性の美的センスがないと無理な気がします。言いたいことは、基礎を抜き
にした全体最適のしくみ構築はあり得ないということです。一足飛びではなく、急
がば回れ式を推奨します (^v^)
◆生産管理事項の計測可能化
生産部門における、全体最適のしくみ構築の前提となる基礎項目を見ることにしま
す。全体最適とは、営業利益が常に最大化する方向に業務遂行をおこなうしくみの
ことです。したがって、経営管理の主な事象を、コストあるいは利益で計測し判断
することが最小限欠かせません。メーカーの工場における、計測対象の主な項目は
次のとおりです
☆全体最適に必要な製造原価による計測項目例
・材料歩留まり
・工場・生産ライン・生産設備の稼働率
・生産スピード当たりの出来高
・作業者一人当たりの設備持ち台数
・段取りの単位時間当たり原価
通常メーカーでは、これらの量や時間による率は把握されているのが一般的です。
ここでは、量ではなく、あくまでもコストによる測定を条件としています。分かり
にくいかもしれません。上記の材料歩留まりを製造原価で計測するとは、たとえば
次のようになります
ex.材料歩留まりの原価把握
現状は、材料歩留まり90%、製造原価100円です。材料歩留まりが1%向上し、91%
になったときの製造原価を算出します。試算したところ、製造原価は98円になるこ
とが判明しました。したがって、材料歩留まり1%が製造原価2円に相当します。製
造原価2円の内訳は、変動費1.5円、固定費0.5円です。経費を変動費と固定に区分
(=経費の固変区分)して捉えることが欠かせません。材料歩留まりが向上すれば、
それだけ材料投入を減らせるわけですから、原価が低減します。したがって、逆に
材料ロス率で捉えることも可能です
上の例は、製造原価による計測が可能な製品を採りあげました。同様メーカーで、
原価による計測ができていないときは算出の基盤整備が必要です。ただし、材料歩
留まりを把握していないメーカーも実際多く見かけます。このようなメーカーでは、
歩留まり把握という「当たり前」の水準に引き上げることを優先せざるを得ません。
前項書道の例で言えば、草書を始める当たり前の水準である楷書を書けるようにす
ることです (^o^)
ただ、歩留まりを管理項目としない製品もあります。製品は造られるのですが、製
造途中では歩留まりを計測しようがないものもあるからです。技術的に計測不能、
あるいは計測の必要性がない場合は、当然のことながら問題としません。上記記号
(☆)で例示した稼働率等の製造原価による計測の各項目は、業種や企業によって
変化があります。次の事項は、工場を対象に全体最適のしくみ構築前に整備が必要
な項目例です。見ていただくと分かりますが、当たり前のことがほとんどかもしれ
ません (^−^)
☆全体最適前の工場の基盤整備事項例
・生産計画立案
・製品別の製造原価算出
・経費を固変区分した製造原価算出
(直接原価計算を推奨)
・品種別の製造原価算出
・同上の品種内の実原価差が大きくない
・稼働率、歩留まりの算出
(企業により不要なケースあり)
・製造原価と歩留まりの安定化
・製造原価の差異分析と差異要因解消
中点、一番上の「生産計画立案」ですが、販売計画達成に必要な内容が満たされて
いれば十分です。品切れを起こさずに、納品リードタイムあるいは納期を遵守する
ことが最低条件となります
中点上から2つ目「製品別の製造原価算出」の内容を説明します。当然のことかもし
れませんが、製品別の製造原価算出ができているということです。販売価格を決め
るための見積もりはおこなっていることは多いのですが、製品別の実際原価計算が
されていないことがあります。どんぶり勘定の世界ですが、全体として儲かってい
ればとりあえず問題視することは不要としましょう。同様の事例は、中小メーカー
で現実に多く見られる姿です。このようなメーカーでは、全体最適以前の当たり前
の水準に引き上げる取り組みを優先することになります (^0^)
中点上から5つ目「同上の品種内の実原価差が大きくない」について補足します。製
造原価は、製品をあるくくりでまとめて算出するのが普通です。通常は、そのくく
りが品種となっているのが多いと思います。量や時間など、現場データの収集と算
出する業務量、必要性等から、なるべく簡素化するのが普通だからです。当然、同
じくくりの品種別原価はすべて同一となります。しかし、これまでの経験則から、
同一品種・同一原価としている製品区分の中で実原価差異が15%以上の例がありま
した。実原価差が大きくなると、生産プロダクトミックスの算出に大きな影響が出
てきます。生産プロダクトミックスについては今回は触れませんが、実原価が高い
製品の販売増は、営業利益を悪化させる原因となるからです。全体最適のしくみ運
用に支障が出てきます (>_<)
下から2つ目「製造原価と歩留まりの安定化」について付け加えます。極端な例です
が、造るたびに歩留まりが変わり、製造原価も安定しないケースなどです。このよ
うな事態の発生は、製造技術が確立されていない場合に見られます。安定化といっ
ても程度問題ですが…。実際は、歩留まりの実態を統計的に見て判断するしかあり
ません。問題ない典型は、生産実施ごとの歩留まりの実績が正規分布になっている
場合です。問題ある典型は、歩留まりのバラツキが造るたびに異なる散布図、ある
いはもっと深刻な二山分布になるのが相当します
最後の中点「製造原価の差異分析と差異要因解消」ですが、やや省略した書き方を
しています。指摘している内容は、生産計画と製造の実際原価をもとに、PDCA
のマネジメントサイクルを回すことです。原価管理が実質的に運用されているかど
うかに相当します。原価管理については、No.95で紹介しました。詳細はバックナン
バーを参照して欲しいのですが、その概要項目は次のとおりです
原価管理の事例、原価管理とは、原価管理の目的は何か、原価管理のまわしかた、
問題はあるのか、どのようにすべきか
◆販売管理事項の計測可能化
販売部門における、全体最適のしくみ構築の前提となる基礎項目を見ることにしま
す。繰り返しになりますが、全体最適とは、営業利益が常に最大化する方向に業務
遂行をおこなうしくみのことです。したがって、経営管理の主な事象をコストある
いは利益で計測し判断することが最小限欠かせません。その意味では、通常のメー
カー販売部門で、全体最適のしくみ構築前に必要となる項目は、非常に単純です
・販売計画
・売上の採算分析
・売上の差異分析と差異要因解消
最初の中点、販売計画は顧客別・製品別・販売数量・金額別の計画を想定していま
す。販売計画の必要な理由は簡単です。販売部隊の行動計画を明確にすることと、
売上の差異分析を可能にするためです。ところが、一部上場の企業でも販売計画が
どんぶりになっている例が現にあります。共通項は、購入顧客側も必要数量が分かっ
ていない場合です
2つ目の中点「売上の採算分析」では、問題のある企業が比較的多い気がします。差
異分析ができないためです。できない理由は、販売計画が顧客別や製品別になって
いないためとか、差異が分かっても理由を把握できないからです。採算分析、採算
感度分析については、No.31・32で紹介しています
最後の中点「売上の差異分析と差異要因解消」は、予実績管理の実施を指していま
す。販売計画と採算分析ができて、初めて可能な項目です。上2つの項目に難が見ら
れますので、当該項目は効率運用されていない企業のほうが多いと推定します。も
ちろん、対象は上場企業を念頭においてのことです
◆基盤整備されない真因
最初に、基盤整備されない真因と思われる結論を述べ、以下、その内容を述べるこ
とにします。次の2項目が結論です (^∧^)
・管理会計が採用されていない
・経営層の意識改革の遅れ
全体最適のしくみ実現は、各ライン部門内の基本業務が問題なく運用されているこ
とが出発点です。しかし、ここまで述べたとおり、実際の企業ではそうなっていな
い事例が多すぎると判断しています。なかでも、予実績管理のマネジメントサイク
ルがうまく回っていないことが、その典型でしょう。逆に、収益に関して十分な予
実績管理ができているなら、すでに全体最適のしくみができているのかもしれませ
ん (∩_∩)
なぜ、予実績管理が回りにくいのでしょうか。また、全体最適のしくみ構築にすぐ
着手できる企業が少ないのはなぜでしょうか。全体最適のしくみでは、経営管理の
主な事象をコストあるいは利益による計測が不可欠です。そのため、従来の財務会
計あるいは制度会計では、コストや利益による経営管理事項の計測は、ほとんど期
待できません。必然的に管理会計の導入が不可欠となります。理由の一つは、管理
会計の採用企業が少ないことと言えるでしょう (+。+)アチャー
それでは、なぜ管理会計の採用が少ないのでしょうか。逆説的な言い方かもしれま
せんが、必要性が小さかったからです。日本の装置型業種のメーカーでは、管理会
計を採用している企業の割合がわずかにとどまっていると推定します。この種の統
計がないため、文献等からの推測です。別な観点から見ると、売上高のおよそ過去
30〜40年にわたる右肩上がりが、大きく影響しています。そのため、面倒な管理会
計採用に頼らなくとも良かったからです。経営の世代交代からすると、何代にもわ
たって財務会計で済んできたことになります。今まで必要としていなかったのだか
ら、これからも何とかなるはずと考えても不思議ではありません。もうそろそろ気
付いてもいい時期ではないかと、小生は考えます。発想を切り替えるため、競争が
厳しい環境下で成長著しい企業をベンチマークするとか、経営技術、経営管理技術
の知見を深めることも必要です。したがって、理由の二つ目は、経営層の意識改革
の遅れと見ています (^0_0^)ナルホド
編集後記
気象庁は5月27日11:00に関東甲信地方、東海地方で梅雨入りを発表しました。平年
より12日早く、昨年6月13日より17日早い梅雨入りです。昨年の梅雨入り宣言は、当
初6月14日でした。あとで6月13日に訂正しているようです。関東甲信地方の梅雨入
りは、観測史上2番目の早さとしています。昨年の梅雨明けは、7月17日でした。梅
雨入りの速さと梅雨明けはあまり関係なさそうです。今朝5月28日(土)のラジオ番
組によれば、気象予報士の森田正光氏(もりたまさみつ)いわく、梅雨明けは7月18
日から21日と予想していました
昨年は台風が少なかったのですが、今年はすでに2号の発生です。規模は猛烈で、今
日5月28日現在、フィリピンの東にあります。関東の太平洋沿岸に接近する恐れもあ
るようです。天候は湿っぽい日が続きますが、心は青空のようにすっきり過ごした
いと思っています (^−^)
今回頁数は次のとおりです
323行/校了時点の合計÷53行/頁≒6.09頁
最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!