収益改善に役立つ統制指標の切り口

収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2011/09/12 No.118

【目次】

1.管理メッシュ

まえがき

こんにちは 前田です!

  

お盆休みを利用し、8月17日(水)〜8月20日(土)の3泊4日で草津温泉に行ってきました。今回は念願かなって、18の共同浴場全部と足湯3箇所も入湯しています。引き続き、草津温泉の共同浴場の写真紹介です。前回紹介済みの西側から順に、草津温泉の共同浴場3箇所、長寿の湯、地蔵の湯、白嶺の湯(しらみね)を掲載します (=^^=)

  

長寿の湯

               長寿の湯

  

長寿の湯は、湯畑の下から湯畑を背に左斜め(東方向)約400m先の高台にあります。源泉は湯畑です。8月18日、朝9時前に到着。写真のとおり、新しい建屋です。先客2人のかたが待っていました。9時まで清掃時間とのことです。しかし、時間になってもドアが開きません。人の気配もないので、開けようとしましたが鍵が掛かっています。地元のかたが、女湯のドアをおそるおそる開けたところ、鍵がかかっておらず、中には誰もいない模様です。そこで、鍵を開け忘れたのだろうとのことで、お隣の旅館の女将さんに声を掛けたところ、すぐ鍵を開けてくれました (∩_∩)
                     長寿の湯

長寿の湯入浴は9時35分です。皆さんが入浴する前に、浴槽の写真を撮らせていただきました。清掃後と思われますが、あまりにも熱くて入れません。水で薄めてから入浴しました。風呂に入りながら、次の共同浴場までの道を教えていただいてもいます。ありがとうございました m(_ _)m

  

次の写真、地蔵の湯の場所は、湯畑の下から湯畑を背に右斜め(東方向)約200m先の高台にあります。源泉は地蔵そのもののです。男女とも、3.37平方メートルの浴槽の広さとなっています。営業時間は08:00〜22:00です

  

地蔵の湯

               地蔵の湯
                     地蔵の湯

長寿の湯入浴したのは8月17日14:00頃です。誰もいなかったのですが、すぐ後から2人入ってきました。ほかの共同浴場と違い、浴槽の前と脱衣場との間には、間仕切りがありません。浴槽の写真の後ろが、脱衣場になっています。ちょうどいい湯加減でした。多分、42〜43℃位でしょう。一緒に入浴していたかたのお話しでは、昔に比べ濁りがなくなったとのことです。パイプを痛めるので、湯ノ花を取り除いているとお聞きしました (^0^)


  

                    まえ足湯(地蔵の湯の足湯)
まえ足湯地蔵の湯の前には、まえ足湯と呼ぶ足湯も併設されています。地蔵の湯に入浴後、浸かりました。地蔵の湯は、足湯の写真の左側です。直に慣れましたが、熱すぎる温度でした。冬期は利用休止していると説明書きにあります (^v^)

  

白嶺の湯(しらみね)の場所は、草津バスターミナルから国道292号線沿い六合村(くにむら)方向に歩き、約200m先の旅館を左に入ったとなりにあります。目印は、292号線沿いにある派手なオレンジ色の2階建て民家です。写真の後ろにオレンジ色の民家、左が旅館、さらにその左は292号線です。8月17日の13時過ぎに入浴させていただきました。源泉は湯畑です。湯加減は申し分ありません。8月20日にも入浴しましたが、両日とも、どなたともお会いしませんでした (^∧^)

  

白嶺の湯

              白嶺の湯
                     白嶺の湯

白嶺の湯上の写真にあるドアを開けると、ガラス窓つきのドアがあり、その中が脱衣場です。脱衣場と湯船の間にもガラスをはめ込んだドアがあります。ほかの共同浴場でも同様の造りが見られます。その中でも、ここが一番典型的であり浴室から玄関のドアがよく見えます。盗難など、防犯上の配慮によるものでしょう。しくみは違いますが、巽の湯(たつみ)でも玄関ドアを開けるとチャイムが鳴るようになっています (^0^;)

1.管理メッシュ

今回のテーマは管理メッシュです。初めてご紹介する概念を含んでいます。お読み
いただければ分かりますが、決して目新しい内容ではありません。各企業における

収益の予実績管理がうまく回っていない、解決方策立案に有効です (^o^)

  

予実績管理は、原価と売上の管理メッシュを組み合わせた収益の管理メッシュの大
きさです。これによって、その精度がほとんど決定されます。小魚を捕らえるには、

目の粗い網では無理です。小魚を逃がさない、目の細かい網を使う必要があります。
管理メッシュは、収益という魚を捕らえる網の目のことです。網の目の細かさを決

めるのは、原価と売上の組み合わせになります (^∧^)

  

*用語「管理メッシュ」
 管理メッシュとは、予実績の差異分析可能な売上実績または製造原価の算出区分

 を指しています。たとえば、一次店別の売上集計では、二次店別の損益までは当
 然捉えられません。当ケースの売上の管理メッシュは一次店別となります。また、

 部門別の製造原価算出では、品目別の採算把握はできません。この場合、原価の
 管理メッシュは部門別原価です。双方合わせた収益の管理メッシュは、一次店別

 ・部門別原価となります。二次店別や品目別までの採算把握が必要なら、それに
 応じた管理メッシュ採用が不可欠です。管理メッシュの選定は、予実績管理にお

 ける差異分析時の物差しの精度を決めることになります。管理メッシュが小さけ
 れば分析精度は上げられますが、労力も必要です。管理メッシュ選定は、目的を

 考え経営方針として決定されるべきものです

  

分かりにくいかもしれませんので、事例を挙げて内容を解説します

  

  

◆事例に見る予実績管理の実態

  

収益の予実績管理が、うまく回っていない例を意外に多く見かけます。次に事例を
4つ挙げました

  

A.たな卸法による決算(No.4で紹介のお菓子メーカー)
 年度決算時の製造原価把握は、製造設備ごとのたな卸をもとにおこない、期中で

 原価計算をしていません。前期末のたな卸で原材料、仕掛品、製品在庫を把握。
 これを今期の期首在庫とします。年度内では、原材料の購入、製品の売上を別途

 集計。年度末にたな卸をおこない在庫把握、当期の製造原価をほぼ生産ライン別
 に算出していたのです。この例は、原価計算と呼べる水準に相当していません

  

B.受注生産品の事業合計原価算出(No.62で紹介した企業)
 某加工メーカー社長のお話しです (∩_∩)

  

 すべて受注生産ですが、個別原価計算はしていません。営業見積もり、あるいは
 販売価格に対し、真の実際原価がどのくらいか把握できていないわけです。しか

 し、個別原価計算をしていませんが、営業見積精度は高いと思っています

  

 月次損益では営業利益が黒字です。つまり、個々の営業見積もりの精度を上げ、
 個別原価計算はしていないものの、全体として黒字を維持しています。結果から

 見た推定ですが、営業見積もりが限りなく実際原価に近いとの理解です

  

 月間受注アイテム数が多いため、個別原価計算を実施すれば、作業記録のため設
 備稼働を落とすことにもなりかねません。そのほか、事務作業も発生するわけで

 す。工場では、加工機器の治工具内製化や、一人の作業者が複数の設備を使えこ
 なせるようにしています(多数台持ちの意味ではありません)

  

 社長のお話は、ここまでです。実際の事業原価算出は、当月を翌月実働15日あた
 りで算出しています。皆さんは、これで月次損益の予実績管理が可能だと思いま

 すか (?_?)

  

C.営業利益減収の要因不明(もっとも多い事例)
 4月の売上高が30億円で営業利益が3億円でした。当月7月がそれぞれ30億円、1億

 円です。売上高が同じなのに、なぜ利益が3分の1になったのか分かりません。損
 益算出は財務会計です。原価は総合原価計算による品種別原価算出、売上は顧客

 別・販売担当別に区分しています。月次損益の算出完了と報告は、当月分を翌月
 実働7日頃です

  

D.予実の差異分析による対策実施(優良事例、少ない)
 利益計画による5月の売上高と営業利益は、それぞれ20億円、3億円です。当月5月

 の実績は、それぞれ25億円、5億円となっています。計画を上回る業績計上となっ
 たわけです。月次損益の差異分析により要因解析がされ、新製品の売り上げが計

 画を上回り、量産効果のため採算改善に貢献と判明。早速、販売部門にこの伸び
 を維持・促進できる方策立案を促しました。実現には、販売部門内の担当異動、

 広告宣伝費の増など具体策実施に着手しました。生産部門には、より収益向上に
 貢献できるよう、製造原価低減を新製品に集中する指示をしています

  

事例でご紹介した個々の内容については、あまり触れません。あくまでも、なぜ予
実績管理がうまく回らないのか、何を変えたら良くなるのか、その根本的な手段に

ついてお話しします。手段とお断りしたのは、実際は経営層の考えかたが導入の壁
になっていることが多いからです (∩_∩)

  

  

◆原価の管理メッシュ

  

管理メッシュの用語解説は、すでに前段で紹介済みです。分かりにくいと思います
ので、概要を述べつづいて例を紹介します

  

原価計算の形態は総合原価計算と個別原価計算を言いますが、財務会計、管理会計
とも共通の考えかたであり生産形態で決定されます。大量生産型の場合は、単純総

合原価計算、等級別総合原価計算です。主に見込み生産となります。もう一つは、
個別原価計算です。受注生産の場合に採用されます。現実の企業を見る限り、見込

みと受注生産の区分はややあいまいなのが普通です

  

原価の管理メッシュは、総合原価計算と個別原価計算によって異なります。今回は
総合原価計算がモデルとしました

  

*用語「総合原価計算」
 見込生産により、大量の製品を連続的に生産する場合の原価計算方式。大量生産

 品の場合、個別製品ごとの原価算出は通常不可能です。そこで、製品群別に経費
 を把握し原価計算する方式を指しています

  

*用語「個別原価計算」
 1つの製品ごとに原価を集計する原価計算手法。主に一品生産の船舶や特注の機

 械など、個別に製造する受注生産に採用されます

  

  

◆原価の管理メッシュ例

  

総合原価計算による例を紹介します。事業の運営方法により内容は変わりますが、
ここではモデルを対象としました。まず、メーカー全体の製造原価を仮に全社計と

置きます。メーカーの事業はソフト飲料事業、アルコール飲料事業の2つです。ソフ
ト飲料事業は、ペットボトル入りと缶入り飲料があります。さらに、ペットボトル

にはジョギングなど、運動中の人を対象にしたスポーツ向けと家庭向けの種類が代
表格です。さらに、スポーツ向けには、機能性の優れた水、脂肪燃焼促進の飲料な

どあります。実際の製品は、500ml入りの脂肪燃焼促進飲料を始め容量は多種類で
す。全社の中には事業原価があり、その中に部門原価を含み、部門原価には用途別

原価を包含しています。このように、製造原価の範囲の大きさを階層別に表わした
のが次の階層例です

  

1. 全社計(=事業製造原価の合計)
1-1.事業原価(ソフト・アルコール飲料)

1-2.部門別原価(ペットボトル入り飲料、缶入り飲料)
1-3.用途別原価(スポーツ向け飲料、家庭向け飲料)

1-4.品種別原価(機能性飲料、水、紅茶、緑茶)
1-5.品目別原価(500ml入り脂肪燃焼飲料、2リットル入り天然発泡水)

  

用途別原価は、セグメント別、カテゴリー別と言い換えても差しつかえありません

  

  

◆売上の管理メッシュ例

  

原価の管理メッシュは、生産側の区分です。それに対し、売上の管理メッシュは、
販売側の見方になります。この区分も、実際には業種や販売方法によって変わって

きます。ここでの紹介は、モデルに基づくものです

  

モデルのメーカーでは、顧客からの受注により納品先が幾つかに分かれます。まず、
顧客の地域別倉庫に在庫納品する場合です。売上の管理上、地域別に売上区分した

顧客口座となります。顧客は自身で販売することが多いのですが、さらに企業規模
の小さい顧客向けに再販売することも稀ではありません。メーカーと直取引の顧客

を一次店とし、再販売先の顧客を二次店と区分しています。二次店への売上単価は、
販売政策として割高な設定です。メーカーでは、この管理のため取引口座を区分し

ています

  

今回は、海外部門の販売は除外しました。メーカーの国内販売部門は、営業所が7箇
所です。営業所は、製品グループ別に担当が分かれています。各販売担当者の所属

は、販売部・各営業所・製品グループ別となるわけです。したがって、売上の顧客
別区分は顧客別・顧客口座別・2次店別・販売担当者別に計上されます。売上の区分

を整理した内容は、次のとおりです

  

1. 売上の区分(売上高と販売費の合計を顧客・販売担当別に区分する基準)
1-1.顧客別(メーカーとの直取引可能な一次店)

1-2.顧客口座別(メーカーの管理地域別に区分した一次店)
1-3.二次店別(一次店の顧客口座別・二次店)

1-4.販売担当別(営業所別・製品グループ別・販売担当別)

  

ここでは売上の区分に、顧客と自社の販売担当を含めました。性格が異なりますの
で、本来は分離すべきかもしれません。いずれにしろ、製品の受注ごとに上記区分

を付与することにより売上高の区分集計が可能となります。売上とともに、発生経
費の販売変動費、販売固定費の配賦も可能です

  

  

◆事例Aのたな卸法による決算の所見

  

事例Aのたな卸法による決算の場合は、期中で原価計算していません。当然、算出
のタイミングにしか差異分析ができませんので、年度中は対策も施しようがありま

せん。残念ながら、収益の管理メッシュとしては、もっとも悪い事例です。どんな
形であろうとも、月次で原価算出と損益を明らかにすることからスタートすること

になります

  

この事例における管理メッシュは、次のとおりです。見掛け上は、次の事例Bと同
じ内容となっています。管理メッシュに、時間の概念を入れていないためです。管

理水準からすれば、問題にならない例になります。事例の企業は、お手伝いの結果、
財務会計によるレベルですが、月次で原価計算と損益計算書作成が約半年間で可能

となりました  \(^^)/

  

◇改定前の管理メッシュ

  

・原価の管理メッシュ  事業原価(期間は年度単位)
・売上の管理メッシュ  顧客別・販売担当別

・収益の管理メッシュ  顧客別・販売担当別・事業原価(期間は年度単位)

  

◇改定後の管理メッシュ

  

・原価の管理メッシュ  品種別原価(月次)
・売上の管理メッシュ  顧客別・販売担当別

・収益の管理メッシュ  顧客別・販売担当別・品種別原価(月次)

  

  

◆B.受注生産品の事業合計原価算出と差異分析例

  

上記見出しのとおり、前段でご紹介の某加工メーカーを採りあげます。次に、変動
損益計算書の体裁で損益状況のパターンを4例掲載しました。この例における某加工

メーカーの管理メッシュは、次のとおりです

  

・原価の管理メッシュ  事業原価(月次)
・売上の管理メッシュ  顧客別・販売担当別

・収益の管理メッシュ  顧客別・販売担当別・事業原価(月次)

  

以下、モデルを対象に試算した変動損益計算書の数値確認をまずお願いします。次
は、損益分岐指数の用語解説です。変動損益計算書見出し部分の損益分岐点、擬似

出血、真性出血は、所見の中で解説しています

  

☆事業の損益パターン別試算

  

        黒字 損益  擬似  真性
          分岐点 出血  出血

売上高     100  100  100  100
 製造変動費   35   35   35  105

 販売変動費   5   5   5   5
変動費計     40   40   40  110

限界利益     60   60   60  -10
 製造固定費   30   40   50   30

製造原価計    65   75   85  135
 販管固定費   20   20   20   20

固定費計     50   60   70   50
営業利益     10   0  -10  -60

損益分岐指数  0.83  1.00  1.17   −

  

*用語「損益分岐指数」
 損益分岐指数は、固定費を限界利益で割って算出する損益の状況判断に役立つ指

 数で、次のように判定します

  

 F÷MQ  <1 利益計上(目標0.7以下)
       =1 損益分岐点(=BEP)

       >1 必要売上倍率

  

 F:fixed cost、固定費、MQ:Marginal Income、限界利益(限界利益=売上
 高−変動費)、M:Marginal profit、単位限界利益、Q:quantity、売上数量、

 BEP:break-even point 損益分岐点

  

 損益分岐指数1未満が、営業利益計上の状態です。従来の損益分岐点比率では70
 %以上が優良です。損益分岐指数では0.7と表され同様に解釈します。損益分岐指

 数1が損益分岐点、当該売上高が損益分岐点売上高です。従来の損益分岐点分析
 では、損益分岐点売上高を算出したことになります

  

 営業利益が赤字のときは、損益分岐指数が1を超えます。このときの指数は、黒
 字化まで売上高が、あと何倍必要なのかを表す意味です。たとえば、同指数が1.5

 のときは、現状売上高がおおむね1.5倍超になれば黒字化します。したがって、損
 益分岐指数が1を超える場合の指数を必要売上倍率と呼びます

  

  

◆事例Bの事業の損益パターン別所見

  

左から右に見ていきます。最初は、黒字の例です。数値は簡単にしていますが、売
上高100に対し営業利益が10、損益分岐指数0.83となっています。営業利益率は10%

を確保し、決して良好な収益状況の損益分岐指数が0.7以下になっていませんが、ま
あまあといったところでしょうか。なぜ、利益が出ているのというご質問には答え

ようがありません。事業部門全体で製造原価と損益を捉えているからです
 (^0^)

  

損益分岐点は、売上高と費用が同額のポイントを指しています。いわゆる、損益が
トントンとなる分岐点です。損益分岐点は、固定費と限界利益がイコールとなるポ

イントとも言い換えることができます。この考えかたによる指標が、変動損益計算
書の一番下にある損益分岐指数です

  

2つ目の損益分岐点の例に移ります。黒字のときに比べ製造固定費が上がり、その分
営業利益が減少しました。結果的に、損益トントンの状態です。なぜ、製造固定費

上がったのかは、多分分かるでしょう。設備投資したのか、従業員を増やしたのか
など分かるからです。しかし、製品別に原価が分からないと、販売側で販売数量増

を働きかけるとか、値上げ要請するなどの定量的な方策具体化は困難と言わざるを
得ません (^∧^)

  

3つ目は擬似出血の損益計算です。擬似出血は、対象品の採算が限界利益黒、営業
利益赤の状態を指しています。対象品より採算性が上回る代替品がない場合は、販

売継続とすべきです。個別の製品を対象にすると、現状の売上単価をそのままにし
て、概算で約1.17倍以上の販売数量増になれば、損益が黒字化します。ただ、事業

別の原価算出となっているため、具体的な方策は勘のいい方の判断に頼らざるを得
ません (>.<)

  

最後の4つ目、真性出血の損益計算です。真性出血は、対象品の採算が限界利益お
よび営業利益とも赤の状態を指しています。変動費を回収できない本当の赤字であ

り、政策的な配慮がなければ対象品の販売中止をすべきです。事業全体として、変
動費の回収ができていないことになります。通常は、いきなりこのようになること

はなく、徐々に試算の左から右に移行してきたはずです。途中で対策を講じても真
性出血になったのであれば、事業継続を中止せざるを得ない可能性があります

  

この例による収益の管理メッシュでは、会計情報による収益の予実績管理はかなり
困難です。企業あるいは事業トップの経験と勘に頼らざるを得ない経営と言わざる

を得ません。管理メッシュを小さくすることが不可欠です (^0^;)

  

  

◆事例Cの営業利益減収の要因不明の所見(もっとも多い事例)

  

事例Cの管理メッシュは次のとおりです

  

・原価の管理メッシュ  品種別原価(月次)
・売上の管理メッシュ  顧客別・販売担当別

・収益の管理メッシュ  顧客別・販売担当別・品種別原価(月次)

  

収益の予実績管理をおこなうさい、品種別原価で済む場合は差異分析、要因解析、
対策の実施が可能となります。品種別原価の区分で差異分析が思うようにできない

場合は、原価の管理メッシュを小さくせざるを得ません。まさに、この事例が該当
します

  

品種数の増減、品目数の増減、マイナーチェンジ品の販売など、マーケット環境の
変化により、品種というくくりが変わっていることもあります。結果的に、管理メッ

シュを小さくするだけでなく、品種のくくりも変えることが必要かもしれません。
この例に該当する企業は、数の上ではかなり多い気がします

  

  

◆事例Dの予実の差異分析による対策実施への所見(優良事例、少ない)

  

管理メッシュが小さい優良事例に対する所見です。次の変動損益計算書の体裁で、
損益状況のパターンを4例掲載しました。この例は、前段に掲載したものと同じもの

です。戻ってみるのも大変なので、再掲しています。事例における管理メッシュは、
次のとおりです

  

・原価の管理メッシュ  品目別原価(月次)
・売上の管理メッシュ  顧客別・販売担当別

・収益の管理メッシュ  顧客別・販売担当別・品目別原価(月次)

  

損益の試算は、黒字、損益分岐点、擬似出血、真性出血の4とおりです。ただし、少
し見方を変えていただく必要があります。前段Bでは事業別でしたから、黒字を例

にすると、これ以上細かく見ようとしてもできません。それに対して、この例は収
益の管理メッシュが顧客別・販売担当別・品目別原価となっています

  

つまり、前段B項では事業別に見ていますので、事業全体として黒字や擬似出血に
ついてコメントしたわけです。ここでは、損益の状況を品目別に見ています。全体

として100品目あるのであれば、各品目別の損益状況が分かるわけです。そこで、試
算している損益状況が品目別であるとして、採算改善の視点からコメントします

  

☆品目別損益の試算(数値は前段と同じ)

  

        黒字 損益  擬似  真性
          分岐点 出血  出血

売上高     100  100  100  100
 製造変動費   35   35   35  105

 販売変動費   5   5   5   5
変動費計     40   40   40  110

限界利益     60   60   60  -10
 製造固定費   30   40   50   30

製造原価計    65   75   85  135
 販管固定費   20   20   20   20

固定費計     50   60   70   50
営業利益     10   0  -10  -60

損益分岐指数  0.83  1.00  1.17   −

  

まず、左の黒字品目です。この数値だけでの判断は困難なところもありますが、あ
えてコメントします。損益試算の一番下にある損益分岐指数が0.83です。前段でも

述べましたが、優良な水準は0.7以下ですから、ここを目指した方策を考えます。数
量増、原価低減など、具体的な行動をともなうシナリオを立案し行動計画を作りま

  

次は損益分岐点の品目です。最初は、現状売上単価による数量増の販促を検討する
ことになります。また、マーケットにおける競合関係を調べることも忘れてはなり

ません。そのうえで、原価低減、売上単価値引とセットの販売数量増の働きかけな
ど必要です

  

3つ目は擬似出血品です。なぜこうなっているのか、要因解析する必要があります。
一般的には前段でも触れたとおり、現状の売上単価をそのままにして、概算で約

1.17倍以上の販売数量増になれば、損益が黒字化します。マーケットにおける競合
関係を考慮しつつ、販売担当と黒字化の方策検討が欠かせません。ここまでデータ

があれば、黒字化のため損益シミュレーションをおこない対策立案につなげること
が可能です。資料は、採算分析のシミュレーション用シートが使えます。以前、Web

サイト上のNo.32で掲載した採算感度分析もその資料の一つです

  

最後の真性出血品です。売れば売るほど赤字が増えていきますので、政策的な配慮
なしには販売・生産を継続すべきではありません。なぜ、そうなっているのか販売

担当、生産担当などで協議し、方策の検討が必要です

  

品目別損益試算の背景までご紹介していないため、やや上滑りの所見になってしま
いました。実際は、なぜこうなっているのか知ることが有効な方策立案のポイント

です。いずれにしても、収益の管理メッシュは顧客別・販売担当別・品目別原価に
することが、マーケット環境の変化にも追随できるであろうインフラと言えます。

繰り返しになりますが、管理メッシュを細かくすれば、その分労力が増えること確
実です。目的と効果を天秤に掛けて設定することが欠かせません

  

  

◆管理メッシュのみでは、収益管理の精度は決められない

  

収益の予実績管理の水準を決めているのは、本文で述べた原価、売上、収益の管理
メッシュです。収益の管理メッシュを最小化したとしても、実際はそれで十分とは

言い切れません。生産形態によって変わります

  

たとえば、化学メーカーではよく見られることですが、生産サイクルが10日間単位
のケースです。月次で区切りますと、生産品種や生産量に季節変動が見られる場合、

実際原価の分析に支障をきたすことがあります。このケースでは、生産サイクル期
間の原価算出が有効です (=^^=)

  

もう一つの例です。原料投入から製品化までの生産リードタイムが、2カ月を超える
製品も多く見られます。実際原価を月次で算出し、売上との差異分析も月次同士で

比較するケースです。売上実績は月次で算出しますが、実際原価は製品と半製品の
混在したものとの比較しかできません。また、当月売上の製品原価は、当月生産品

ではなく過去のものになっています。月次の生産品種変動や、季節変動があれば差
異分析が困難となることも出てくるでしょう。このケースでは、生産リードタイム

に相当する期間の原価を合計した月次平均原価に置き直して、売上との差異分析に
活用するのも方策の一つです

  

このように、実際の予実績管理の精度は管理メッシュ以外にもあります。実態に応
じた工夫が欠かせません (●^o^●)

編集後記

やはり季節は正直です。9月に入った途端、朝夕涼しさを感じられるようになってき
ました。ただ、日によっては、朝の湿度が高くて寝苦しさを覚える日もあります。先

日、お客さまから食事に誘われ美味しいうなぎをごちそうになりました。数年ぶり
にお邪魔したお店です。帰ったのは、そんなに遅い時間ではなかったのですが、帰

宅後風呂から上がりましたら、もう24時近くになっていました

  

最近、朝4時過ぎに起床しています。このメルマガを校正している9月11日(日)
は、4時15分に起きました。今朝の川口市の日の出は、東京都区内と同じ5時20分で

す。起きたとき、外は薄暗い状態です。朝が一番早かった6月12日、川口市の日の出
は4時24分でした。これからも日の出は遅くなっていきます。やはり、朝起きたとき

明るいのがいいですね (∩_∩)

  

話の続きですが、床についたものの1時間以上寝られず翌日は完全に寝不足でした。
その日の朝も、結局4時半には起きてしまったこともあります。午前中は調子よかっ

たのですが、午後になると眠くてどうしようもありませんでした。たまたま、この
日は事務所に居ましたので、早めに帰宅しています。生活リズムを変えることは大

変です。最近、体がついていかない気がします (>.<)

  

今回は思いのほか原稿が長くなってしまいました。管理メッシュという、従来から
暖めていた内容を、初めて文章に落としたせいもあります。ここまで、読んでこら

れたかたに厚く感謝申し上げます m(_ _)m

  

 今回頁数は次のとおりです
  500行/校了時点の合計÷53行/頁≒9.4頁

  

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!