収益改善に役立つ統制指標の切り口

収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2009/07/20 No.21

【目次】

1.アイテム削減の判断基準
2.ISOと国際会計基準の背景

まえがき

こんにちは 前田です!

 

7月14日(火)、ようやく関東地方が梅雨明けしました。昨年は、7月19日でした。
去年より5日早いですね。まさに夏本番です

 

今日(7/19(日),15:00)も暑い!。33℃あるようです。スポーツクラブで、2000m
泳いできました。そのあと、いつものとおり、ビールを飲んで…。これがやめられ

ません(∩_∩)。だから、10年も続いているんでしょう

 

明日は海の日で祝日ですから、メルマガも休もうと思っていたのですが、ついつい
書いてしまいました。通常は休筆日です。ここまでの行を加えて、まぐまぐ!に

アップします

 

考えてみると、やっぱり小生は、冬より夏のほうが好きですね(=^^=)
なぜかって? それは、寒い雪国で生まれたせいでしょう。寒さは苦手です。

とくに、雪の降るところには住みたいと思いません
田舎の皆さん、すみません m(_ _)m

 

 

先日、7月16日(木)、東京駅から歩いてすぐのアーバンネット大手町ビルで講演を
させていただきました。テーマは「収益力と企業体質」です。時間が約50分と短

かったこと、このためのテキスト(A4パワーポイント、30頁)を新たに作成した
こともあり、準備に結構手間取りました

 

同日は、坂巻久氏(キヤノン電子株式会社 代表取締役社長)、瀧川克弘氏
(未来工業株式会社 代表取締役社長)のご講演も同時におこなわれました。

今、話題の両氏です

 

誠に貴重なお話しを拝聴することができ、感謝しております <(_ _)>

1.アイテム削減の判断基準

アイテム削減を全体最適の視点から検証します

 

企業にとって、アイテム削減は典型的な業際間課題の一つです。業際間課題は、複
数部門が協同でおこなう課題であり、部門横断の最適解が必要な事項を指していま

す。判断基準は、全社の収益改善に寄与するかどうかです

 

 

◆◆業務用ハンバーグの例

 

アイテム削減が課題という企業は、多いのではないでしょうか。食品業界では、家
庭向けのアイテム数は比較的少ないようですが、業務用は増える一方と聞きます。

一度増えたアイテムを減らすのは、なかなか大変です(^o^)

 

業務用ハンバーグを製造する某食品メーカーでは、アイテム数が3000位になると、
思い切って1000位まで減らします。しかし、3年も経つと、また3000位になってしま

うとのこと。再度、削減に取り組むという一種の繰り返しパターンが見られます。
以下は、アイテム増減についてのやりとりを再現したものです

 

 

◆アイテム増の背景

 

(小生)なぜ、そんなに増えるんでしょうか( _ )

 

(業務課長)レストランでは、特定の時間帯にお客さまが集中します。注文を聞い
 てから調理を始めると、それだけ時間が長くなってしまいます。たとえ混んでい

 ても、一定の時間内に食事を提供するには、あるところまで作り置きせざるを得
 ません。そうすると、冷えても味が落ちにくいとか、再度暖めても大丈夫なこと

 が必要なんです。結局、添加剤を入れざるを得なくなります。結果として、アイ
 テム増につながるわけです

 

(小生)家庭ではすぐ食べるから、余分な添加剤とか必要ないわけですね。それに
 しても、業務用で種類が増える理由は分かりましたが、3000も必要ないんじゃな

 いですか

 

(業務課長)そのとおりです。実際は、レストランだけではないですが、顧客ごと
 に差別化を図ろうとするのが、アイテム増の背景にあります。たとえば、隣のレ

 ストランと差別化を図るために、いろいろ要求してくるわけです

 

(小生)アイテムが増える理由は分かりました。そのほかに要因はないんですか?

 

(業務課長)当社営業が、他社との差別化を受注増の武器として売り込んでいるこ
 とも大きいのではないかと思います。もっとも、営業からはお客さまが要望して

 いるからと、ほとんどのケースで言ってきますが…

 

 

◆アイテム削減状態の維持策は?

 

(小生)3年に一度、アイテムの大幅削減が出来ているのですから、それを維持する
 方策が出来てもいいように思うのですが、いかがでしょうか

 

(業務課長)言われてみれば、そのとおりです。考えたことがなかったですね

 

 

◆アイテム削減の方策

 

(小生)ところで、3000から1000にいきなりアイテム削減するのもすごいですね。
 何か秘訣があるのですか

 

(業務課長)とくにありません。出荷されないアイテムを廃止するのが、ほとんど
 です。やめたとしても、営業はアイテム増の申請をすれば済むので、トラブルに

 なることも特にないですね

 

 

◆家庭用がお勧め

 

(小生)なるほど。この際ですから、何かアドバイスなどありませんでしょうか

 

(業務課長)そうですね。家庭では、業務用ではなく家庭用向けをお勧めします。
 家庭用は、作ってすぐ食べますので添加剤を入れていませんから

 

(小生)分かりました。作り置きしたり、冷えたら味が変わるのが、むしろ自然な
 んですね。どうも、ありがとうございました

 

 

◆アイテム削減の部門別反応

 

食品業界に限りませんが、アイテムを削減しようとすれば各部門の反応はどうなる
でしょうか。代表的な例を紹介します

 

・販売部門は、そのアイテムがあるので、ほかの注文も取れている。なくなると、
 削減したアイテム以外の売上も減る恐れがある。売上を上げようとしている、

 この時期にタイミングも悪い。何とか、アイテムを減らさないで、生産効率を
 上げる方向で努力してもらいたい m(_ _)m

 

・生産部門は、少量生産しているアイテムがなくなれば、段取り替えも少なくなり
 生産効率も上がる。また、在庫も減らせる。歓迎したい(^0^)

 

 

◆◆品揃え増やす例

 

反対に、次のような事例があります。豊富な品揃えを方針としているケースです。
そのような企業の共通項を見ることにしましょう。メルマガ第12号でご紹介した大

手住宅機器メーカーも、この中の一つに入ります

 

・顧客の選択肢を増やすための品揃え拡大
・品揃えの豊富さによる他社との差別化

・マイナーチェンジ、およびマーケット創造型技術開発による品揃え強化
 新製品による新たな売上を作り出すことになります。自動車や家電などの耐久

 消費財では、マイナーチェンジによる販促が期待できます。いわゆる、買い替え
 マーケティングです。しかし、住宅機器の場合は製品寿命が長いこともあり、

 従来顧客に対しての販促に、あまり期待できません。品揃えも、環境により目的
 が変わって来るということです

 

基礎技術と技術開発力の強化なくしては、いずれも対応困難です。これらの努力に
より、売上高とマーケットシェア拡大、価格決定権の確保、結果としての高収益体

質をめざすことが多いと考えられます

 

自社の売上とマーケット拡大が続いている場合は、比較的順調です。しかし、安定
成長やマーケットの縮小が始まると問題が多発してきます。それまでの開発投資の

負担が大きくなるからです。高コスト体質克服の困難な時代の幕開けとなります。
現在のトヨタ自動社が直面する問題は、まさにこれに相当しているのではないで

しょうか

 

 

◆経営シナリオの前提再考

 

昨2008年9月のリーマンショックが引き金となった金融危機により、先進諸国を始
め各国では軒並みマイナス成長となりました。実体経済に与えた影響は測りしれま

せん。とくに、これまで長年続いた成長路線を背景とした企業では、高コスト体質
からの転換が待ったなしに訪れています

 

前期赤字や売上急減の企業では、もう一度、経営シナリオの底流に流れる多くの前
提がどこにあるのか考え直す必要があります。大半のケースで、業務運用のルール

改定が必要です。今流に言えば、パラダイムシフトであり、物事の判断基準を新し
い流れに合わせて変えることが不可欠です

 

 

◆◆長大コンクリート品の例

 

同じメーカーでも品揃えについては、国内と海外で事情が異なる場合があります。
以前お手伝いした建設資材メーカーは、ビルが建つとき、整地の段階で使われる鉄

筋コンクリート製品が主流です。国内ではトップレベルのシェアを持っています。
製品が重量物の長大コンクリート品で、物流コストがかさむこともあり、国内工場

は国内のみの供給です。東南アジアにある工場も、立地国中心に供給体制を取って
います

 

アイテム数比較では、おおよそ国内300、海外30の10対1でした。同社役員のお話に
よると、国内では発注元のゼネコンから事細かな要望があり、都度対応してきた結

果とのことです。東南アジアでの施工実績から見ても、製品の性能面では、国内に
おけるアイテム数も、同様の30程度で済むはずと考えておられます

 

 

◆アイテム増は日本の文化か

 

製品の違いはありますが、国内外のアイテム数差異は、ほかの業種においても同様
の傾向が見られます。つまり、国内需要家の要求する品質や、アイテム増となりが

ちな製品規格の種類は、欧米に比べて膨大になることが大半です

 

この違いは何でしょうか。国内ユーザの要求に合う品質の製品を供給した場合と、
海外ユーザーへの供給製品とでは、それらを使った結果に違いが見られるので

しょうか

 

これまで、お手伝いしてきた企業で、同じ質問をしています。ほとんどのケースで
は「おそらく、海外向け製品を国内で使用しても結果として得られる製品の品質に

差異がないか、または問題にならないだろう」との返答です

 

善し悪しはともかくとして、ある種の独自性を追求することが日本の文化なんで
しょうね(∩_∩)

歴史上も、海外の文化を取り入れつつ、日本的に同化することが強みでした。
決まっていることをやるのは当たり前、もう一つ工夫を加えるのが仕事と受けとめ

られています。アイテム削減、適正アイテム数設定の基準は、このような文化に阻
まれる危険があります。したがって、これら企業内における文化を認識したうえで

の取り組みが避けられないということです

 

一つ言えることは、誰かがこれらのコストを負担しているということです。その意
味で、アイテム数や品質は、本来、企業の枠を超える業際間課題なのかもしれませ

ん。企業内という部分に着目しているだけでは、ケースによりけりですが、サプラ
イチェーンの全体最適とは何かの判断が困難となる可能性があります(_ _)

まあ、今後の課題ですね(^▽^)

 

 

◆アイテム増減の判断基準は収益

 

アイテム増減に関する、収益管理の実態はどうなっているのでしょうか。業務用
ハンバーグ、大手住宅機器メーカー含む品揃えを増やす例、長大コンクリート品な

ど、いずれにも共通しているのは次のとおりです

 

・アイテム増減を収益から判断する基準なし
・アイテム別損益の把握が不十分

 注)管理会計によるアイテム別変動損益計算書レベルを基準に判断

 

声の大きさ、成り行きに任せた判断が主流であるとは言いませんが、誰が見ても納
得しやすい物差しを準備するのが肝要と考えます。業際間課題としてのアイテム数

設定基準は、収益向上に寄与するのかが判断ポイントです

2.ISOと国際会計基準の背景

日本は、基準・ルールの設定、システム化は不得意なようです。また、決めたこと
を守ることが必ずしも好感されません。仲間うちでも、決めたことを守る人を

「融通が利かない」と称される傾向がありますね(^-^)
国際的な基準作りでは大きな問題です

 

スキーのジャンプ競技、自動車のF1などで話題になることがあります。突然、
ルールが変更され、日本が不利になることもしばしばです。最近では、水泳の水着

問題があります

 

ここでは、ISOと国際会計基準を取り上げたいと思います

 

 

◆基準作りのシステム化志向は欧米が勝る

 

全体最適とイコールではありませんが、判断基準の統一という点では、日本的な
思考ではまとまりにくいようです。とくに、一企業の枠を超えた基準作りやシステ

ム化志向は、欧米のほうが勝っている気がします

 

 

◆ISOの背景

 

たとえば、民間の非政府組織、国際標準化機構によるISO制定があります

 

工業分野の規格には、元々、アメリカにANSI、日本にはJISがありました
(今もありますが)。これに対し、ヨーロッパの規格としての性格が強かった「国

際標準」に軍配が挙がった気がします。国際を冠した標準化という文字の影響が大
きいですね。今や、アメリカと日本の規格も世界の一地方規格の様相を呈していま

 

ただし、電気分野は対象外です。なぜでしょうか。小生の見方ですが、ヨーロッパ
より日米のほうが進んでいるからに過ぎません

 

 

◆なぜ国際会計基準なのか

 

つぎに、独立民間非営利の基準設定機関としての国際会計基準審議会による国際会
計基準があります

 

会計基準でもアメリカ基準、日本基準がありました。すでに、国際会計基準に組み
込まれつつあるので、あえて過去形としています。話せば色々あるのですが、日本

での会計制度が国際会計基準に大きく組み込み始められたのは、2000年4月期以降か
ら開始の連結決算制度です

 

国際会計基準は、元々、ヨーロッパのアングロサクソン系の会計基準としての制度
会計(=財務会計)でした。しかし、今や国際の名の下に世界を席巻した感が見ら

れます。工業分野に続き、会計基準でもヨーロッパ標準が世界標準化され、最後の
仕上げ段階に入っていると言わざるを得ません

 

 

◆メリットの享受者は?

 

基準・ルール作り、システム化のメリットは誰に、また、どこにあるのでしょうか

 

議論するまでもなく、ビジネスの機会を拡大するのに必要であり、ルール制定もと
が有利になるからに相違ありません。すでに、このような世界が作り上げられつつ

あります。日本の企業にとって、今後の方向性をどのように考えるべきと思います
か?

 

 

◆日本企業の対応

 

小生は考えます。基準制定は悪いことばかりではありません。むしろ、能動的に新
しい制度を受け入れるべきです。そのうえで、世界が同じ土俵になるのですから、

もっと積極的に相手の懐に入り活用方法を学ぶべきでしょう。
立場を変えれば、国が変わっても同じルールで戦えるのですから… (^^)♂♂

同時に、財務会計では得られない経営管理の情報を、管理会計によって補うべきと
信じます

編集後記

業際間課題としての、アイテム数設定基準についてお話ししました。アイテム削減
は、いずれのメーカーでも関心事です。実際に、アイテム削減を実行している企業

も多いのは承知しています。しかし、削減あるいは増加の基準が収益となっている
例は、残念ながら把握しておりません(´。`)

 

また、アイテム増減は純粋に収益で判断すべきかというと、必ずしもそうとばかり
言えませんが、前提の一つに加えるべきと考えます

 

ここでいう収益による全体最適の判断基準が統制指標に相当します。部門あるいは
部分最適ではなく全体最適実現のため、業際間の課題について権限を持って管理す

る優位性判断の物差しを指しています

 

収益による判断を可能とするには、財務会計では足りません。管理会計、とくに直
接原価計算、変動損益計算書の導入が経営管理のツールとなります

 

 

ISOと国際会計基準については、ここで述べたような論調を最近聞かれなくなり
ました。しかし、物事が決まっていく過程では、今後も同様のことが発生するはず

です。ある対象を見るとき、どの視点に立って理解するかにより、結論が逆になる
こともあり得ます。その意味で、異なる意見をお持ちのかたも多いかもしれませ

ん。小生のような見方もあることを参考にしていただけると幸いです(^-^)

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!