収益改善に役立つ統制指標の切り口

収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2009/09/21 No.30

【目次】

1.目標設定は難しいか

まえがき

こんにちは 前田です!

 

8月末頃から、鼻風邪かな?と思っていたら、どうやら花粉のせいみたいです。花粉
症の薬を取り出して服用したら、何と鼻水が止まってしまいました(^-^)

杉花粉だけのアレルギーと思っていたのですが(>_<)
アレルゲンって変わるんですかね(?_?)

 

この時期の花粉で問題となるのはブタクサだと思います。毎年1月から杉花粉用の薬
を服用しているほうは、以前から比べると緩和しています。年齢を重ねるたびに感

度が鈍くなるので、花粉症の症状も緩和するとも聞いたことがあります

 

5連休のシルバーウィークを楽しんでいるかたも多いと思います。休日の月曜は、メ
ルマガも、基本的には休筆にするつもりです。たまたま、前回の筆の勢いで書いて

しまいましたので、いつもより短めに心がけて配信します

1.目標設定は難しいか

先日、中堅食品メーカーの常務殿とお話しの機会がありました。常務殿の所管は、
物流・情報システム・一部業務管理とのことです。話題の中心は、物流と情報を対

象としています

 

工場にも自社倉庫を持っていないこともあり、物流は外部に全面委託しています。
お客さまから受注後の出荷指図データ送信後から、大手物流事業者への委託です。

物流貨物の温度帯は、常温、冷蔵、冷凍ですが冷蔵が大半となっています

 

販売エリアは全国ですが、関東が主体です。元請の物流事業者は、サービスはいい
のですが、コスト面ではやや割高との業界内の声が聞かれます

 

昨年夏、社内の製品在庫管理を情報システム化したとのこと。移行の混乱も収まり、
次は来年度からの物流情報システム化に着手予定とお聞きしました。以下、そのや

りとりの一部です

 

 

◆常務殿との意見交換

 

常務:当社の文化は、物を造る工場を重視しています。工場には金をかけますが、
 ほかの部門は、最小限の投資にとどめる傾向が強いのです。たとえば、本社建屋

 の賃貸、管理部門の人数などもぎりぎりに絞ってきた経緯があります。情報シス
 テムでも、生産以外では最低限のことをやって来たというのが実態です

 

小生:メーカーにはよく見られるケースですね。とくに、物流部門は昔から「人事
 の吹きだまり」と称して、有能な人材の配置をしてこなかった企業も多いのが事

 実です。ところで、在庫管理のシステム化で変わった点は、どんなところですか

 

常務:在庫差異が極端に少なくなったこと、それから、在庫も少なくなりました。
 従来は税務署から、在庫をどこかに隠しているんじゃないですか…とまで言われ

 たことがあります

 

小生:なるほど。それは大きな効果ですね。ほかには、どうですか

 

常務:以前、私は営業に長年いたこともあり、物流費はなかなか下がらないだろう
 と、お客さまとの関係から考えていました。しかし、在庫が少なくなってみると

 物流費も低減したんです。これは意外な効果でした。
 社内では「売上高も落ちているから、物流費も下がって当たり前だ」との声があ

 ることも承知しています。確かに、売上減と物流費の関係を、うまく説明できま
 せん。しかし、在庫減の影響は無視できないと考えています

 

小生:一般的な例ですが、年間平均在庫金額の約17%が在庫維持費(在庫管理費)
 です。たとえば、年間平均で10億円の在庫があったとします。そうすると、年間

 で約1.7億円の費用発生です。在庫があることによる、営業倉庫の保管料・入出庫
 料、保険料、陳腐化費などあります。したがって、在庫減により物流費にも反映

 されます。在庫減による物流費の低減があったと見るのが妥当でしょう。今後の
 課題はどんなことでしょうか

 

常務:先ほどもお話ししましたように、来年度から物流情報システム化のヒアリン
 グが始まります。正直言って、社内には物流の専門家はいません。悩みと言える

 かはともかく、抱えている内容は次のとおりです

 

・配送サービスエリアの拡大を図って欲しいとの営業から要望があります。何らか
 の答えが必要です。物流費増になるのか、まだ調べていませんが…

 

・年間365日配送を導入したい
 当社では現状は土日の配送はやっていませんが、業界大手メーカーでは年間無休

 を実現しているところもあります。上記の配送サービスエリア拡大と同様、サー
 ビス向上が売上高増加になるかどうかの見極めが必要です。検証の方法は分かり

 ませんが…

 

・社内では、売上が落ちたら物流費も下がるはずとの声があり、これについてはよ
 く分かりません(=極力変動費化を図る)

 

・数年前、物流コスト見積もりを数社にお願いし比較したときは、大差ないとの結
 論でした。結果的には、世間と比べても遜色ないと思います。これでいいのかど

 うかは不明ですが…

 

・現状の物流事業者は高いと、同業他社から言われています。前項のとおり、私ど
 もはそうは受けとめていません。どのように考えるべきなんでしょうか。問題が

 あれば、現事業者との交渉で是正していきたいと考えます。ただ、現状では当社
 からの申し入れに対する先方対応が不十分と感じています。もっと、話を聞いて

 もらえるようにしたいのですが…
 (物流サービスのコスト評価、物流提案・企画力の向上が必要)

 

・世間と比較した当社の物流管理水準は分かりません

 

・在庫をさらに少なくしたいと考えています。在庫関連の検討チームをいくつか設
 置しました。具体的な計画立案は、これからの状態です

 

・来年度から始まる物流情報システム化のヒアリングで、後で追加しなくとも済む
 ように、あるべき姿を提示したいと考えています

 

・当社の目指すべき物流の姿は、現時点で描けていません。これからの検討に委ね
 ることと考えます

 

以上の通りですが、自分達だけではなかなか答えが出せません。情報システム化の
ヒアリングに備えるためにも、何らかの手を打つ必要ありと考えていますが、どう

すればいいのか現在のところ結論は出ていません

 

 

◆やるべきことが見えていない

 

常務殿からは、最後までどうするべきかということは聞けませんでした。悩み、社
内で言われていること、他部門からの要望、過去やって来たことなどは、いろいろ

話していただいています。しかし、目標はどうするべき…となると話が止まってし
まうんです

 

とりあえず、上記の進めかたを考えるうえで欠かせない所見を先に述べ、次になぜ
目標設定が出来ないのか考えることにしましょう。目標設定とその実現に至る計画

立案ができないケースは、意外に多いのです

 

 

◆メーカーに対する小生の所見

 

皆さんは、一連のやりとりを、どのようにお感じでしょうか。自社にとっての物流
を、常務殿が、どうあるべきか悩んでおられるのはよく分かります。現時点で、そ

の解答を自ら持っていないことも明白です。納得いく回答に至るため、次のように
進めるべきでしょう

 

・物流と物流に関わる関連課題を調査抽出
 現状物流ネットワーク、物流量、在庫量・在庫金額、物流契約、物流管理、物流

 サービス、物流費の把握方法、機能別物流コストの実態等から課題抽出

 

・物流に関する専門知識の習得
 現状の物流知識、物流管理水準では物流事業者と対等に渡り合うのは、力不足が

 明らかです。そこで、最低でも次のような事項について、自ら習得することが欠
 かせません。

 運賃・倉庫料の計算方法、アウトソーシングの特質把握、物流管理とは、機能別
 物流コストとは、物流契約のしかた、在庫基準の設定等

 

・今後のあるべき姿検討
 抽出課題を部門内・部門間にマッピング。全社的視点からの不足課題の発見、各

 課題の重要度把握、今後進むべき方向性検討

 

・物流方針の設定
 今後の進むべき方向性を明確にし、中期的視点を取り入れた当面の方針を明示

 

・行動計画立案
 具体的に取り組む課題ごとに目標・推進体制・活動スケジュールの明示

 

・具体的な活動推進と成果を味わう

 

物流そのものへの所見はこの位にして、本題に移ります

 

 

◆目標設定ができないとは

 

例は物流を採りあげましたが、対象は物流に限らず、ほかの領域でも同じです。目
標設定と解決に至る行動計画を作ることができない理由は、次の全部あるいは一部

に該当するためと考えられます

 

・実態が正しく捉えられていない
 (多くのケースでは測定できることが必要)

 

・実態理解の知識・知恵が不足

 

・実態と比較できる物差しが不足

 

・本来どうあるべきかの知見が不足
 (物差しの一部です)

 

・対象を包含する、全社の進むべき方向性が不透明
 (部分は、全体の進むべき方向と整合性あることが最低条件。これを適合性の検

  討と呼びます)

 

・到達すべきゴールが分かっても具体化の手段が分からない

 

課題に対して「こうするべきだ」と言えるのは、上記のことがほぼ満足されたとき
です。個々の中身は省略しますが、現状と望ましい姿、実現の手段が分かって初め

て、実現性ある計画立案ができます(=^^=)

 

 

◆それではどうするか

 

このように何か納得いかないけれど、どうしたらいいか分からないケースは驚くこ
とではなく、かなり多いですね(^-^)

後述のように「実態の正しい理解」と「望ましい姿の構築」の差異が課題形成の良
薬です。差異を解決する目標なしに、発展的な未来はありません。そのため、今回

の例のようなケースでは、次のことを心がけています

 

【実態の正しい理解】

 

改善対象とする実態把握のしかたと行動計画が必要です。極力、定量化を図るべき
です。内容理解に必要な知識も欠かせません。そこで、実際のコンサルティングで

は次の項目が該当します

 

・実態調査・分析方法の提供・提案・実務支援
・実態把握を理解する知識・事例による経験の提供

 

【望ましい姿構築】

 

実態の善し悪し判断と、目指すべき姿の構築が不可欠です。大きな夢があれば、そ
れに越したことはありません。過去の経験上、目標が高ければ、それなりに目標到

達度も高くなります。逆に、目標が低ければ、それを上回る成果はほとんど得られ
ません。目標の高さが、到達度を引き上げている現実が見られます。したがって、

高い目標設定が出来るように、事例説明、考えかた等を提供し下記の育成を図って
います

 

・世の中の高度な事例把握
・理念、ビジョン、想い、基準の引き上げ

 

 

部分の最適解が分かっても、それが全社的にも最適解なのかは保証の限りでありま
せん。例に採りあげた、食品メーカーの場合も同様です。物流だけみて課題抽出し

ても、全社的観点からは最適と言えないケースのほうが多いかもしれません。むし
ろ、物流の立場では判断できないというのが実態でしょう。物流は、販売と生産の

条件が決まって初めて成立するという他律的な性格を持っているから、とくに要注
意です

編集後記

シルバーウィークはまだ続きます。ゆっくりと過ごして、新型インフルエンザにと
りつかれないようにしたいものです。小生は、これから(9月20日(日)15:00)、泳

ぎに行きます

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう(^.^/)))~~~bye!!