収益改善に役立つ統制指標の切り口

収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2009/09/28 No.31

【目次】

1.採算分析

まえがき

こんにちは 前田です!

 

先日、熊本県八代市にある日奈久温泉(ひなぐ)に仕事のついでに泊まってきまし
た。開湯600年の歴史を誇るひなびた国道3号線沿いの温泉街です。今年は600年祭

のいろいろな行事が毎月のように続いています。とくに、三頭火が「ずっとここに
いたい」と記したそうで、泊まった木賃宿「織屋」の建屋も残っており、今月は公

開されていると聞きました。温泉街は、端から端まで10分強あれば直線コースで歩
けそうな狭い地域です。海も目の前に開けています。ただ、9月も下旬というのに

連日30度と、日中はかなりな蒸し暑さを感じます

 

*放浪の俳人、種田山頭火(たねださんとうか)は、昭和5年9月10日から織屋(お
 りや)に3泊したとのこと。この旧織屋旅館は山頭火が宿泊した全国の旅館の中

 で現存する唯一の建物だとか。木賃宿(きちんやど)は、炊事に使う薪などの代
 金を払えば泊れる最下層の旅籠のこと

 

何でも、古くは細川藩藩営の湯であったそうで、古い白壁や木造三階建ての旅館が
残っています。ここは初めてですが、温泉街を歩いていると子供から大人まで、こ

んにちわとか、お早うございますと声を掛けてくれます。町中には共同風呂も4箇所
ほどあり、150円から入れるとのこと。泊まった旅館の向かいにも、松の湯という共

同湯に150円で入湯できます

 

泊まった宿は、浜膳旅館というところです。アルカリ性でやや硫黄の臭いがする透
明なお湯です。源泉の温度は分かりませんが、ぬるめで肌がぬるぬるしてきます。

いわゆる、美人の湯に入る部類でしょう。全部屋に温泉があり、岩風呂風にアレン
ジし4畳半ほどの広さでした。もちろん、24時間いつでも入浴できます

 

旅館ができたのは、2006年とのことで、2階がフロントで小生の部屋は3階でした。
岩風呂の窓から海が見え、眺めがいいですね(^−^)

近くの別館には、大浴場もあり無料で入れるそうです。連休明けの平日ということ
で、きのうまでは満室で忙しかったと仲居さんが夕食のとき話してくれました。何

と、この階の客は小生一人だそうです。そのためか、食事中ずーっと隣に座り、何
かと話しかけてくれるのです。(>_<)

 

東京にいる息子さんのことなどなど…。また、東京は住むところじゃない、住むな
らのんびりした、この辺が最高と…。いや、閉口しました。だけと、機会があった

らまた行きたいと思います。夕食は会席料理でした。熊本特産の馬肉、海の幸など
量が多いこと。ご飯、デザートまでは食べられませんでした。地元特産の竹輪が歯

ごたえもあり、美味しかったです(∩_∩)

1.採算分析

管理会計の要因解析に役立つ手段の一つ、採算分析を採りあげます。採算が取れて
いるとか、採算が合う・合わないなど、採算は良く使われる用語です。それでは、

採算とは何ですか???と聞かれて答えられますか(?_?)

 

 

◆広辞苑の定義「採算」

 

 1.計算上、収支の引き合うこと
 2.原価・諸費・利潤を加えて販売代価を算定すること

 

やはり、管理会計上で使う意味と若干違っているような気がします。管理会計でい
う採算とは次のことを指しています

 

 

◆採算の定義

 

採算とは、費用を変動費と固定費に分解して、付加価値、あるいは限界利益対固定
費の関係に直して見ることをいいます(^-^)

 

*用語解説
 変動費:固定費に相対するコスト概念。生産数量、販売数量の増減に応じて変化

  するコスト。直接原材料費、外注費、パートタイマーの人件費など指す
 固定費:変動費に相対するコスト概念。生産数量、販売数量の増減に関わりなく

  発生するコスト。金利、減価償却費、保険料などある。実際には、固定費と変
  動費の境界は明確でなく、制度、生産・販売方法などで変化する

 限界利益:ほかの呼び方として、付加価値、貢献利益、変動利益ともいう。
  売上高から変動費を引いた利益を指す。算出式は次のとおり

  売上高−変動費=限界利益

 

 

◆採算分析とは

 

採算分析とは、固定費の回収実態を知ることです。企業の中で、実際に採算分析を
おこなう場合には、生産形態によっても異なります。メーカーでの代表的な例を紹

介します

 

 

◆採算分析で分かること

 

採算分析の作り方で読み取り可能な内容は変わりますが、おおむね次のことが分か
ります

 

・販売予算と実績の差異分析(詳細は別途資料の必要なこと多し)
・営業利益(財務会計の営業利益から在庫の固定費を除いた利益)

・損益分岐指数(次項に内容説明あり)
・単位製造時間、製造時間(本号では解説していません)

・採算性(擬似出血、真性出血)
・量産効果(少し加工が必要、次に用語解説あり)

・アイテム増減時の営業利益の変化
・真性出血アイテム・中止時の営業利益

・営業利益赤字品の販売中止可否
・新製品上市時の想定営業利益

・製造余力の既存製品・新製品による活用策(別途資料必要)
・営業部門・個人の業績貢献度(評価基準により変化)

・品種別・営業利益貢献度(評価制度により変化)
・在庫増減による財務会計・営業利益との差異

 

*用語「量産効果」
 売上数量が増加することによって売上原価が一定割合で下がること。または、生

 産数量が増えることによって製造原価が一定割合で下がることです。損益分岐点
 売上(あるいは生産)数量分析で算出します

 

採算分析は、通常、毎月作成する必要はありません。利益が一定以上計上されてい
る場合は、とくに問題とならないからです。ただし、顧客別あるいはアイテム別で

赤字がある場合はチェックする必要があります

 

 

◆損益分岐指数(第28・29号とほぼ同じ内容の再録)

 

損益分岐指数は、固定費を限界利益で割って算出する損益の状況判断に役立つ指数
で、次のように判定します

 

F÷mPQ  <1 利益計上(目標0.7以下)
       =1 損益分岐点(=BEP)

       >1 必要売上倍率

 

F:fixed cost、固定費、mPQ:限界利益(限界利益=売上高−変動費)
m:marginal profit ratio、限界利益率=限界利益÷売上高、

P:price、平均売上単価、Q:quantity、売上数量
PQ:売上高、BEP:break-even point 損益分岐点

 

損益分岐指数1未満が、営業利益計上の状態です。従来の損益分岐点比率では70%
以上が優良です。損益分岐指数では0.7と表され同様に解釈します。損益分岐指数1

が損益分岐点、当該売上高が損益分岐点売上高です。従来の損益分岐点分析では、
損益分岐点売上高を算出したことになります

 

営業利益が赤字のときは、損益分岐指数が1を超えます。このときの指数は、黒字
化まで売上高が、あと何倍必要なのかを表す意味です。たとえば、同指数が1.5のと

きは、現状売上高が1.5倍超になれば黒字化します。したがって、損益分岐指数が1
を超える場合の指数を必要売上倍率と呼びます

 

 

◆採算・利益感度分析

 

採算・利益感度分析とは、2009年9月14日メルマガ29号でご紹介の利益感度分析と、
今回の採算分析を合体させたものです。双方の分析で得られる内容が、一緒に分か

ります。説明の都合上、それぞれ別個にご紹介しました。実際には、双方一緒にし
たフォーマットで作ったほうが手っ取り早いでしょう。ただし、慣れないと見づら

いかもしれません(^∧^)

 

利益感度分析では、おおむね次のことが分かります

 

・新規客先への販売価格設定
・採算改善シナリオ作成(本格的には別資料必要)

・客先からの値下げ要請に対する損益への影響把握と対応策検討
・原材料の値上げ受け入れの幅検討

・変動費の低減目標検討
・製造原価の低減目標設定に役立てる

・設備投資などの固定費増の影響把握

 

結果として、採算・利益感度分析では採算分析と利益感度分析の両方を同時に見ら
れます

 

 

◆採算分析例と見方

 

横型の表形式で表すのが普通なのですが、表示する都合上、縦に並べます。ここで
は幾分簡略化していますが、作成頻度は任意の時期、あるいは月次ベースです。

月別・顧客別・アイテム別採算分析、あるいはもう少し大きなくくりの品種別、生
産ライン別等でも作成できます。数量単位は個、金額は円です。分かりやすくする

ため、単純な数値にしています
(後段には、下記の採算分析を表形式で表したものと、別な例も掲載しています)

 

【採算分析、基準(簡略版)】
アイテム     1  2  3  4  5  6  7  8  9 合計

売上高     2000 1500 1000 750 750 600 430 350 300 7680
変動費      400 400 400 400 460 400 440 400 350 3650

限界利益    1600 1100 600 350 290 200 -10 -50 -50 4030
固定費      781 586 391 293 293 234 168 137 117 3000

営業利益     819 514 209  57  -3 -34 -178 -187 -167 1030
営業利益率(%) 40.9 34.3 20.9 7.6 -0.4 -5.7 -41 -53 -56 13.4%

損益分岐指数  0.49 0.53 0.65 0.84 1.01 1.17  -  -  -  0.74
採算性               擬似 擬似 真性 真性 真性

 

*採算性の項にある擬似は、擬似出血の略、真性は真性出血の略
*擬似出血とは、限界利益は黒であるが、営業利益が赤のケース。対象品より採

 算性上回る代替品がない場合は販売継続とすべき
*真性出血とは、変動費 あるいは 仕入単価を下回る平均売上単価のケース。

 本当の赤字であり、販売中止すべき対象

 

 

【真性出血 中止時】
アイテム     1  2  3  4  5  6  7  8  9 合計

売上高     2000 1500 1000 750 750 600         6600
変動費      400 400 400 400 460 400         2460

限界利益    1600 1100 600 350 290 200         4140
固定費      909 682 455 341 341 273         3000

営業利益     691 418 145  9 -51 -73         1140
営業利益率(%) 34.5 27.9 14.5 1.2 -6.8-12.1        17.3%

損益分岐指数  0.57 0.62 0.76 0.97 1.18 1.36         0.72
採算性               擬似 擬似

 

*真性出血の中止時(対策)
 真性出血品を中止すると営業利益、営業利益率ともに上昇する。政策的な配慮

 が必要なければ、原則実施すべき案

 

 

【真性出血・擬似出血 中止時】
アイテム     1  2  3  4  5  6  7  8  9 合計

売上高     2000 1500 1000 750              5250
変動費      400 400 400 400              1600

限界利益    1600 1100 600 350              3650
固定費     1143 857 571 429              3000

営業利益     457 243  29 -79              650
営業利益率(%) 22.9 16.2 2.9-10.5             12.4%

損益分岐指数  0.71 0.78 0.95 1.22              0.82
採算性            新擬似  

 

*真性出血・擬似出血の中止時(対策)
 基準に対して営業利益、営業利益率ともに悪化する。推奨できない対応。

 固定費の配賦の関係で、4のアイテムで新たに擬似出血が発生

 

 

【真性出血 中止、新製品上市】
アイテム     1  2  3  4  5  6  7  8  9 合計

売上高     2000 1500 1000 750 750 600 500      7100
変動費      400 400 400 400 460 400 270      2730

限界利益    1600 1100 600 350 290 200 230      4370
固定費      845 634 423 317 317 254 211      3000

営業利益     755 466 177  33 -27 -54  19      1370
営業利益率(%) 37.7 31.1 17.7 4.4 -3.6 -8.9 3.7      19.3%

損益分岐指数  0.53 0.58 0.70 0.91 1.09 1.27 0.92      0.69
採算性               擬似 擬似

 

*真性出血の中止と新製品の上市をおこなったとき。推奨される案

 

 

◆部門横断の対策立案に便利

 

ここでの事例は、真性出血の中止と新製品上市の例を採りあげました。実際は、こ
の応用が色々あります。これまで述べていませんが、利益感度分析、採算分析がで

きるということは、変動損益計算書が作成されていることが前提となります。機会
を見て紹介したいと思います

 

一部門の対応ばかりではなく、複数部門のアイディアを取り入れたシミュレーショ
ンも可能です。複数部門にまたがる業際間の課題を、全社的な立場から判断を下す

基礎となります

採算分析(本文紹介の表形式)

本文の採算分析例を表にしたものです(^-^)

 

採算分析 本文掲載の表形式例

採算分析 実際例

小さくて読みにくいと思いますが、イメージを掴んでいただければ幸いです(=^^=)
本文では項目を縦に並べていますが、実際は、このように横に並べます

 

◆見方
各採算分析の営業利益と営業利益率を比較してください。真性出血の代替投入時が営業利益・率とも最大であり、真性出血分を中止したのが続いています。ほかの対応はお薦めできません。もちろん、代替投入の新製品が真性出血では意味ありません。できれば、営業利益も黒となることが望ましい姿です。つまり、これが営業企画と開発部門に科せられた役割の大きな部分を占めています

 

採算分析まとめ

 

採算分析(基準)

 

採算分析 真性出血のアイテム中止時

 

採算分析 当初の真性・擬似出血アイテム中止時

 

採算分析 真性出血の代替品投入、計197.5時間製造分

 

採算分析 擬似出血アイテム中止時

編集後記

日本列島は長いなあとつくづく感じました。まえがきでご紹介した日奈久温泉です
が、朝、羽田から飛行機で熊本まで行ったわけです。日中は仕事をし、夕方から温

泉にお邪魔しました。しかし、何と暑いことか。冒頭でも書きましたが、東京との
温度差がかなりあります。地元の人は、これでも朝夕は寒いくらいで、日中との温

度差が大きいとお聞きしました。夕方から、温泉に行ったわけですが、やはり気温
が高いですね(=^^=)

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう(^.^/)))~~~bye!!