収益改善に役立つ統制指標の切り口

収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2009/10/26 No.34

【目次】

1.ライン部門から出される課題例
2.製品割れ発生のクレーム処理

【編集後記】◆無料相談会の企画案

まえがき

こんにちは 前田です!
今回は、お客さまからの相談事例を中心とした内容です(^-^)

 

 

◆私どもの日常業務は「顧客の課題発掘と解決」

 

私どもは、仕事柄、各企業のいろいろな声を聴ける環境に恵まれています。コンサ
ルティングが進行中の企業では、さらに実際の課題解決に取り組んでいるわけです

 

広く言えば、企業の抱えている各種の経営課題を毎日のようにお聴きし、肌で感じ
つつ、一緒に考えながら解決の方向にお客さまとともに努力しています。コンサル

ティングファームといえば、中堅・中小の企業にとって、費用が高く敷居も高い、
効果があるのか疑問、第三者に分かるはずがない、当社は特殊だから無理などと感

じている向きが多いかもしれません

 

確かに、企業が支払うコンサルティングフィーは投資であり、効果と見合うものな
のか、常にチェックが必要と思います。一企業のかたから見ると、ほかの企業では

どんな課題があるのか知る機会が少ないかもしれません

 

 

◆他社の課題知ることも自社のため

 

そこで、各企業の抱える実際の課題は、自社の実態認識にも役立つのではないかと
思い、紹介することにしました。以下、部門の課題、複数部門にまたがる課題の例

を順に述べていくことにします。複数部門の例では、包装を採りあげました

 

今回は、頁数の都合からも事例の一部しかご紹介できません。次回も、引き続き
ご紹介の予定です

1.ライン部門から出される課題例

◆フィールドの課題

 

ライン部門とは、営業・生産・物流・開発部門のことを指しています。いわゆる、
収益を生み出す直接部門のことです。当部門内の課題をフィールドの課題と呼んで

います。後段には、事業部と経営管理の課題も掲載しました

 

フィールドの課題は、部門権限でできる自部門内の能力開発・改善・改革事項のこと
です。実際の課題は、各部門から出てきますが、それが全部、フィールドの課題と

は限りません。たとえば、販売部門の「赤字品の損益改善」は、実際には販売だけ
で問題解決にならないことが多いからです。販売部門で取り組める範囲内のみを、

自部門の課題とするしかありません。同様に自部門だけでは必ずしも解決できない
課題には(★)を付記しました

 

 

◆業際間の課題

 

フィールドの課題に対し、業際間課題があります。業際間課題は、複数部門横断の
最適解が必要な事項です。全社の収益改善に寄与する観点から、判断を求められる

ことが特徴となっています。「赤字品の損益改善」は、販売部門の行動が必要な課
題であると同時に、生産・物流の協力も必要とし、ケースによっては開発部門の参

画も欠かせません

 

次に、ここ数カ月間で、複数企業の各部門から出された課題の一部を紹介します。
企業の業種、規模に大きな違いがありますが、すべて現実に悩んでいる課題です

 

 

◆販売部門の課題

 

・販売計画の予実績明確化と精度向上
・売上数量の回復(★)

・赤字品の損益改善(★)
・販売力の強化(★)

・国内マーケット縮小への対応(★)
・客先要求品質の把握(★)

・顧客へのタイムリーな供給(★)
・営業見積基準の再設定(★)

・需給調整の効率化(★)
・顧客別・アイテム別・採算把握(★)

・適正アイテム数の設定(★)
・納期遵守率の向上(★)

・品切れ防止(★)
・クレーム発生防止(★)

・納品リードタイム短縮(★)
・海外マーケット開拓

 

 

◆生産・調達部門の課題

 

・在庫圧縮(★)
・生産能力の定量化(★)

・生産計画立案のしくみ構築(★)
・在庫基準の再設定(原材料、仕掛品)(★)

・歩留まり改善(★)
・製造原価低減

・生産リードタイム短縮
・5Sの徹底

・工程別計画のパターン化
・品質バラツキの解消

・品質の向上(QCDSへの対応力強化)(★)
・調達価格の査定力向上

・調達単価の低減(★)
・輸入品の在庫基準設定

・製造原価の精度向上
・収益最大となる工場別の生産配分(★)

 

 

◆物流部門の課題

 

・収益改善課題に対する社内への提案力強化(★)
・物流情報システム化前の過不足検証

・製品基準在庫の設定
・翌日配送圏の拡大(★)

・物流事業者への提案力強化
・物流委託業務の査定力強化

・物流コスト低減の余地把握
・物流コスト管理の水準向上

・物流管理指標の設定と運用
・たな卸在庫差異の解消

・運賃振替等の物流業務効率化
・適正な倉庫の建設または設置(★)

 

 

◆事業部としての課題

 

・市場技術動向の把握(★)
・需給動向のタイムリーな把握(★)

・競合先の動向把握(★)
・販売計画の策定方針の基準明確化(★)

・顧客ニーズに対する満足度向上(★)
・最適プロダクトミックスの明確化(★)

・事業部の中期的優先課題の明確化(★)

 

 

◆経営管理上の課題

 

・業界における競争優位性確立(★)
・収益力の強化(★)

・マーケット環境に即応できる体質強化策実施(★)
・自社の強みを生かす(★)

・実態を踏まえた収益力強化方針の構想化(★)
・収益力強化の社内推進体制の再構築(★)

・グループ調達方針の策定(★)
・高コスト体質からの脱却(★)

 

 

◆企業環境の変化が求める業際課題

 

上記の事業部と経営管理上の部分は、部門というよりは経営そのものの分野です。
このようにフィールドと業際間、および経営管理上の課題(=経営基準)に区分し

てみると、新たなことに気付きます。5〜6年前に比べ、顧客の私どもに求める支援
内容が、業際間の課題にシフトしてきているのが分かります

 

私どもが業際間の課題の重要性を主張してきたことと、企業環境の変化が新たな取
り組みを必要としているためかもしれません

2.製品割れ発生のクレーム処理

包装は、業際間の課題となることが多い気がします。以下は、包装クレームの実態
と対応について紹介しました。中堅・中小企業における改善分野では、取り組みが

遅れがちが分野の一つに挙げられます

 

 

◆事例:製品に割れ発生クレーム

 

先日、お客さまに出荷した製品に割れと変形が発生し、急ぐこともあり段ボール箱
を変えたのですが、本当はどうすれば良かったのでしょうか…と相談を持ちかけら

れました

 

 

◆出荷担当者との質疑

 

その後、出荷担当者を紹介され、お話しを直接伺っています。製品はプラスチック
加工品で、家電製品の一部として組み込まれる部品です。以下はそのやりとりです

 

小生:段ボール包装で、製品の割れと変形が発生したそうですが、状況を教えてい
  ただけませんか

 

出荷担当者:いつも出荷しているお客さま向けで、出荷荷姿は段ボール箱です。箱
  の概観は、ちょっとへこんでいましたが、とくに問題はありません。製品は小

  さいものから、わりと大きなものまで、いろいろ種類があります。問題発生の
  製品は、直径が10cm位の部品でビニール袋に10個ずつ入れ、それを段ボール箱

  に入れ、隙間を空けないようにしています。この箱の上のほうのビニール袋に
  入ったものに問題が発生しました。製品を入れた段ボール箱の重さは約15kg、

  大きさはおおむね縦30cm×横40cm×高さ30cmです

 

小生:返品された製品と段ボール箱を見せていただけませんか

 

出荷担当者:製品はこれですが(一部割れと変形)、段ボール箱は捨ててしまいま
  した(>.<)

 

小生:なるほど、変形していますね。段ボール箱を捨てたのは、しかたありませ
  んが、次回は残しておくことと、返品時の段ボール箱の写真を撮っておいて

  ください。ところで、今までも出荷しているとのことですが、同じ製品ですか
  (?_?)

 

出荷担当者:そうです。今までは問題がなかったのですが、製品の差し替えで納期
  が間に合わなくなると、お客さまに大変なご迷惑をお掛けすることもあり、段

  ボール箱の強度を上げて対応しました。次回からは段ボール箱の写真を撮り、
  捨てずに残しておきます

 

 

◆段ボールとは(解説)

 

日常よく見られるものですが、専門外のかたのために少々解説します。段ボールの
構造は、波形に成形されたフルート(段、中しん)と、それを保持するためにフル

ートの上下両面をライナと呼ばれる原紙で貼り合わせてできていますφ(..)メモメモ
JIS Z 1516(外装用段ボール)に規定あり。段ボールの構造をご存じないかたは、

身近のもので確認することをお薦めします。断面を横から見てください

 

段ボールの構造

 

◆包装の実態
今回の原因は分かりませんでしたが、このような事例は実は多く見られます。メー

カーでは、製品を段ボール箱に包装して出荷することが圧倒的に多いのですが、包
装自体に対する理解度は高くないことが当たり前なような気がします。ここで挙げ

た企業の包装に関する実態は、次のとおりです

 

・包装設計の担当者はいない
 (包装設計という概念自体、認知されていない)

・包装仕様書がない
 段ボール箱の材質、図面、作業手順書等をまとめた明細書

・発注は、段ボール業者に製品を見てもらってから作ってもらう
 (段ボール業者とは、製函業者を指す。流通上、段ボールメーカーではなく、

  段ボール原紙を購入して箱に仕上げるメーカーから購入することが多い)
・段ボール箱別の見積書(これだけが唯一の資料)

 見積書は段ボール箱の寸法のみ記載され、一式幾らとなっているだけのもの
・クレーム発生時は業者に依頼し、箱の強度を上げる等の対策を打つ

・包装材料の製品単価に占める割合が、おおむね2%(多い企業では5%程度)
・包装はコスト面からも重要視されていない

 

*用語「包装と梱包」
 包装は、内容物の品質を維持し物流効率を高めることが狙いです。定義はJISにあ

 りますので、ここでは省略します。
 似た用語に梱包があります。企業内では、包装と梱包を混在して使われることが

 多いのですが、もともと概念が異なるものです。
 梱包は、包装の一部に含まれる概念を指しています。梱包の意味は、綿花、羊毛

 などを圧縮してサイコロ状にスチールバンドなどをかけた包装をいい、一般にベ
 ール物(Bale)と呼ばれています。倉庫業界で、一般的に使われる用語です。

 大手企業で包装改善のお手伝い後、それまで社内で梱包と呼んでいたのを、包装
 に変えた企業が、これまでにも数社あります

 

 

◆包装実態に関する所感

 

メーカーの包装に関する実態は、前述の例が大半を占めるでしょう。金額的にも重
要度が低く、包装に対する知識も持ち合わせていないのが実態です。ただし、包装

費が大きい企業では、専門家としての包装管理士を置いている企業が多いのではな
いでしょうか。包装管理士は、(社)日本包装技術協会が認定する資格で、段ボー

ル包装については日本で唯一のものです。当協会は、1963(S38)年、旧通産省(経
済産業省)の外郭団体として元々設立されています

 

過去、包装改善でお手伝いした企業では、段ボールだけで年間20億円強というとこ
ろもあります。当企業では、包装管理士がすでに10人以上いました。小生が包装改

善でお手伝いしたあとも、プロジェクトメンバーが包装管理士の講座を受講し、資
格取得されています。お手伝いしたときの改善事例発表で表彰されたのも、嬉しい

ニュースでした\(◎o◎)/!

 

効率化の進み具合から見ると、包装の分野は、一般的な企業と改善先進企業との格
差が大きい典型的分野の一つかもしれません

 

包装は、業際間課題の典型的な一つです。単独部門の最適解が、全社の最適解とは
通常なりません。それだけに、包装が起因する課題の解決は、なかなかやっかいな

場合があります。たとえば、クレーム発生の一部が該当します。冒頭の例は、まさ
にこの例だったわけです。また、本メルマガ第8号で紹介のクレーム削減は、業際間

の問題に焦点を合わせて紹介しています

 

包装費の絶対額が小さい企業では、問題が発生しても投資対効果から、外部のコン
サルティング依頼に踏み切れないケースが多いでしょう。それだけに、改善対象と

して顕在化しにくいテーマかもしれません

 

 

◆相談のみで自主的な包装改善実施

 

今年2009年3月中旬のことですが、包装材料の変更について相談に乗って欲しいと依
頼を受け、私どもの事務所においでいただきました。大手メーカーのかたです。こ

の件では予算が取れないので、何とか話を聞いてもらえないかとお願いされ引き受
けたわけです。資料もなく、実態も見ていないのでなかなか難しかったのですが、

つい先日、こんなメールが届きました

 

『おかげさまで、以前ご相談とご教授頂きました梱包材の変更もコスト・性能面で、
 私の範囲で現場の作業調整と事業部の承認で方向性を確立してきました』

編集後記

ご相談事例ですが、とても書ききれませんので、次回も引き続き紹介の予定です。

 

今回採りあげた実際の相談事例は、業種業態、企業規模を問わず、いろいろな企業
で実際に見られる課題も多くあります。しかし、悩みはあるものの、外部に依頼す

るまでもないと考えられるものも多いでしょう。従来は、私どもは、依頼により企
業を訪問して相談を受けることが多かったのですが、もっと門戸を広げる意味もあ

り、次の無料相談会を企画しています

 

 

◆無料相談会の企画案

 

そこで、一定の制約を設けさせていただきますが、無料相談会をおこなう予定で準
備を進めています。内容的には従来と実質的にほとんど変わりませんが、制約とい

いますのは、おおむね次のとおりです。無料相談会の内容、申込等は、これから設
置予定のWebサイト上からおこなうことにしています

 

1.ご相談内容
 私どもの対応できる課題であれば、とくに制限はありません。本メルマガの

 「1.ライン部門から出される課題例」に該当するものがあればすべてOKです。
 また、見当たらなくとも、事前の相談申込書を確認させていただき、なるべく前

 向きに対応させていただきます。私どもが範囲外と判断するケースでは、その理
 由を添えて、お断りの返信をさせていただくことになります

 ex.開催したセミナーの実務への具体的な適用方法、在庫基準の算出方法等の教育

 

2.ご相談の深度
 ご相談結果に対する責任を、私どもが負うことはありません。あくまでも助言、

 提案の領域にとどまります

 

3.ご相談内容の事前連絡
 準備のため事前に相談内容をお知らせいただく。Webサイト上に申込書をアップの

 予定。目的は、当方の準備と、お客さまの用意する資料をあらかじめ揃えるため
 です。お客さまの資料が必要な場合は、事前にご連絡します

 

4.対象者
 経営者、経営幹部、各部門責任者、課題を抱える中堅社員のかた(とくに制限は

 ありませんが、全体最適による収益改善を考えているかたにはお薦めです)

 

5.ご相談場所
 事務所においでいただく

 

6.ご相談の日時
 事前に調整させていただきます。適任コンサルタントとご相談日時の調整をさせ

 ていただきます。忙しいコンサルタントの相談内容となった場合は、日程に若干
 の余裕を持っていただくことがあります。日程調整は、やり取りの都合上、日中

 のお電話を想定しています

 

7.ご相談の時間
 おおむね1時間程度。今までの経験から、1つの課題であれば、1時間あればおおむ

 ね十分と判断しています。一つの目安です

 

8.ご相談の回数
 ご相談回数は制限予定(未定)。従来の経験では1回でほぼ十分と考えます。ただ

 し、ご相談内容により、資料作成が必要な場合もまれに生じることがあります。
 その場合は、ご相談の場で打ち合わせさせていただきます

 

9.運用ルール
・相談内容の秘密厳守

・お知らせを除きコンサルティングの勧誘案内は私どもから一切おこなわない
・希望されないお知らせは送付しない

・無料相談会の充実のため、アンケートへのご協力をお願いします

 

 

◆Web研究会立ち上げ

 

今年2009年8月、社内にWebサイト研究会を設置しました。従来ホームページの更新
時期を迎えていること、ホームページの活用度を上げたいことが趣旨です。無料相

談会は、この検討過程の中で企画されました。現在の予定では、年明けの2010年1月
から稼働できることを目指していますm(_ _)m

 

年明けを待つまでもなく、実質上、これまでもご相談には応じていますので、ご依
頼があれば対応させていただきます

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう(^.^/)))~~~bye!!