収益改善に役立つ統制指標の切り口

収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2009/11/02 No.35

【目次】

1.感動の強化トリプルウォール
2.お断りしたロジ部門の在庫圧縮

まえがき

こんにちは 前田です!

 

早いものです。もう霜月です。残すところ、あと師走と合わせ2カ月のみになって
しまいました(汗)

とくに、来月は小生の誕生日も控えています。最近、誕生日を祝ってもらうのは嬉
しくないですね m(_ _)m

皆さんは、いかがですか(?_?)

 

前回第34号に引き続き、客先での指摘を含むご相談を受けやすい事例を中心に紹介
します。各企業が実際に抱える課題は、自社の実態認識にも役立つと思います。参

考にしていただければ幸いです

1.感動の強化トリプルウォール

前回に引き続き2つ目の包装問題を紹介します。この件は、相談を受けたものでは
なく、見てびっくりしたというのが実際の話です。もっとも、先方は問題と感じて

おりませんでしたが…(^∧^)

 

 

◆製品包装にトリプルウォール発見

 

調査のため訪問したメーカーでのできごとです。訪問した目的は、業務改善のヒア
リングのためであり、包装についてではありません。業務内容のヒアリングをおこ

なう前に、工場を見学させていただきました。出荷場で、足をしばし止めることに
なったのです

 

包装については、かれこれ20年以上も前からお手伝いしていますが、小生も初めて
「強化段ボールによるトリプルウォール(複々両面段ボール)」の製品包装を見せ

ていただきました。驚きましたの一言に尽きます(^∧^)

 

トリプルウォールとは、文字どおり、段ボールの波形部分(段、フルートという)
が3層になったものです。日常生活で見かける段ボール箱は、せいぜいフルートが2

層構造のダブルウォール(複両面段ボール)どまりでしょう
(メルマガWebサイト:http://merumaga.jimosen.com/ では、第34号の本文内に

 段ボール形状の図解をしていますので、参考にしてください)

 

製品は衝撃に弱く(=易損品、いそんひんと呼ぶ)、値段も高く(1包装につき20
万円強)、受注生産品で輸出向けだとのことです。1個ずつの個包装で、製品本体の

重量は10Kg強とお伺いしました

 

 

◆強化段ボール

 

強化段ボールは、主に圧縮強さを上げるために薬品処理を施した段ボールです。見
た目には、段ボールが水に濡れたような濃い色合いになっていますので、見ると分

かりやすいと思います。一般の段ボールに比べて、10倍程度の圧縮強度を持つと言
われます。通常の段ボールに比べ堅いので、慣れてくれば触ると分かるようになり

ます。ただ、価格の高いのが難点です。処分にも困ります(∩_∩)

 

包装の宿命は、お届けしたら捨てられる運命にあることです。最近では海外との通
い箱まであり随分工夫されていますが、これらを除く大半は非常に短い期間で役割

を終えることになります

 

その点、材料としての段ボールは優秀です。なぜかと言えば、段ボールはリサイク
ルシステムが整っていることもあり、国内でのリサイクルは95%を超えています。

資源の有効活用に貢献しているわけです。個別ユーザの使用では1回でも、全体とし
てみれば、エコな社会的要請に応えられる代表選手のようなものです(●^o^●)

 

また、万一捨てられても土中で分解され土に戻るため、環境にも優しいとされてい
ます。日本は、世界の中でもリサイクルの優等生です。いっぽう、ヨーロッパは60

%、アメリカに至っては10%以下と言われ、まだまだこれからのリサイクル発展段
階と言わねばなりません

 

 

◆強化トリプルウォールの現場見学

 

さて、話を現場見学の場に戻しましょう

 

小生:なぜ、この包装(強化トリプルウォール)になったのですか?

 

工場長:だいぶ前に製品が割れたことがあり、いろいろな包装を試してみました。
  確かに、過剰包装かもしれません。でも、何が適正なのか判断する目安がない

  んです。もし、割れてお客さまの納期に間に合わなくなると大変ですから、製
  函業者の提案もあり、この形で続けています

 

小生:工場出荷からお客さまに到着するまで、製品にどんな衝撃が加えられたか測
  定する衝撃加速度計をご存じでしょうか。製品出荷から、お客さまにお届けさ

  れるまでの、製品に加えられる衝撃を測定できます。衝撃が加えられた時刻
  と、どの方向からの衝撃かも解析できます

 

工場長:実は、それで海外のお客さままで計測したことがあります。計測記録を見
  ると、製品に一番大きな衝撃が加えられたのは、空港内の積み替えのときのよ

  うでした。しかし、どうすればいいのか分からず、結局その記録は活用されて
  いません

 

 

◆日本人形上回る重包装

 

対象となった段ボール箱の形式は、菓子箱でよく見かける蓋をかぶせる式の、テレ
スコープ形(以前のJIS-C形、現JISではコード0301)と呼ばれるものです。箱の下

に段ボールシートを1枚敷き、その上にビニール袋に入った製品を置きます。箱の四
隅には、製品が動かないよう段ボール製の詰め物をしたのち、さらに発泡スチロー

ルの平板(発泡倍率30強と推定)を上に重ね、最後に上蓋をかぶせ、伸びにくい重
包装用PETバンドで結束し、荷札ラベルを貼って完成です(^0^)

 

驚くほど高価な包装です。しかも重いですね(>_<)

 

工場訪問時のやり取りは、こんなものでした。先方に、改善する問題意識がないこ
と、調査と改善案作りには半年以上の時間が掛かると想定されることから、この件

については、その後も触れていません。包装仕様の改善には、輸送テストが必須な
ため時間が掛かります

 

 

◆過剰仕様と推定

 

前項で、衝撃加速度計について触れました。折角測定したのに、データの有効活用
がされなかったとのことです。お客さまはもちろん、共同でテストした製函業者の

ほうも、データの活用方法が分からなかったと推定します。残念です(>_<)

 

一般的に、強化段ボールの使用は、従来の木枠包装の代替えや、重量物が対象とな
ります。たとえば、実際の用途は次のとおりです

 

・従来の木枠包装(梱包)の代替え
・輸出向け重量物品(機械設備)

・トラックエンジンなどの重量物品(1トン以上あります)
・長尺品でたわみに弱い易損品(人造大理石など)

 

これら全部ではありませんが、一部を除き実際に包装改善で仕様変更してきたもの
です。人造大理石の長尺品は、トリプルウォール使用の製品より厳しい条件下にあ

るような気がします。機会がありましたら、改善に取り組んでみたいものです。結
果として、新たな事例を提供してくれるでしょう(=^^=)

2.お断りしたロジ部門の在庫圧縮

◆大手化学メーカーの新任ロジ部長

 

知り合いの物流事象者のかた経由で、以前お手伝いした化学メーカーの新任ロジス
ティクス部長が会いたいとの申し入れを受け、ご相談に乗りました

 

化学メーカーの連結売上高は、千数百億円。以前、構内物流改善でお手伝いしてい
ます。業種は化学ですが、化学品事業の売上は全体の半分程度です。お会いしたロ

ジスティクス部長は、日用品を扱う事業会社に所属しています。当日は、ご紹介し
ていただいた物流事業者の部長も同席されました

 

 

◆在庫圧縮が用件

 

用件は「在庫圧縮」です。ロジ部長いわく「着任して半年位だが、業務の中身はま
だよく分かっていない。上司の役員からは、在庫圧縮の指示が出ている。以前も取

り組んだが、うまくいかなかったと聞く。今回は、何としてでも成果を上げろと強
い意向だ」とのこと

 

同行の物流事業者にも相談したのですが、ロジ部長の考えかたと合わず、当方と意
見を同一にする事業者部長が紹介の労をとったと後で知りました

 

 

◆ロジ部長との在庫に関する質疑

 

小生:在庫とは何を指すのですか?

 

ロジ部長:製品在庫です。原材料、仕掛品、半製品は対象外です

 

小生:生産終了後の製品在庫は、どの部門が保有することになっているのですか?

 

ロジ部長:営業部です

 

小生:製品在庫の現品管理はどの部門でおこなっていますか?

 

ロジ部長:ロジスティクス部が現品を入出庫、保管、輸配送しています

 

小生:在庫を持つことによって発生する費用は、どの部門で計上するのですか?

 

ロジ部長:保管費、入出庫料、工場と営業倉庫の横持ち費用等、すべてロジスティ
  クス部で計上します

 

小生:受注部門はどこに所属していますか?

 

ロジ部長:ロジスティクス部です

 

小生:生産計画、生産日程計画はどの部門で担当していますか?

 

ロジ部長:製造部です

 

小生:特注や緊急受注が入り、在庫がない場合の指示はどうなっていますか?

 

ロジ部長:ロジスティクス部が客先から一旦受注し、製造部に依頼します。次に、
  対応可能な返事が製造部からありしだい客先にOKをだします

 

小生:ロジスティクス部が生産日程計画を変更することは可能ですか?

 

ロジ部長:計画変更の権限もありませんし、できる人もいません

 

小生:製品在庫圧縮の目標はあるのですか?

 

ロジ部長:現時点ではありませんが、どの位できるのかはっきりしてから目標設定
  するつもりです

 

小生:在庫圧縮に実質的に関わる部門でチーム編成し、取り組む必要があります。
  対象部門は、営業部、ロジスティクス部、製造部です。リーダーは製造部門、

  事務局はロジスティクス部門でいいと思います。チーム編成は可能でしょう
  か?

 

ロジ部長:ほかの部門とのチーム編成は無理です。役員の指示は、ロジスティクス
  部が受けたもので、自部門の課題をほかの部門に手伝ってもらうことはやりた

  くありません

 

小生:在庫を圧縮しようとするなら、在庫を実質的に決める権限と業務をおこなっ
  ているかたがいないと困難です。このことを分かっていただくよう、役員を説

  得していただくのが得策です

 

ロジ部長:現状のロジスティクス部門の権限でできることで、在庫を圧縮したいと
  思っています

 

小生:ロジスティクス部門だけで取り組んだ場合でも、販売のために必要な在庫を
  算出することは可能です。しかし、適正在庫を超える在庫の抑制策を講じない

  限り、在庫量そのものは少なくなりません。つまり、生産日程計画を変更しな
  い限り抑制策とはなりませんよ

 

ロジ部長:それでもできる方策を示すのがコンサルタントではありませんか
  ((小生コメント)何か勘違いされているようです(>_<))

 

小生:販売のために必要な販売用適正在庫を算出し、不要不急な在庫を顕在化させ
  るだけでは、ロジ部長の立場が問われることになるのは目に見えています。

  今後、状況が変化し、在庫を実質的に扱える部門の参画があるまで待つことに
  しましょう

 

ロジ部長:ロジスティクス部門内でできることをお手伝いしていただけると思って
  いましたが、商売っ気がないんですね

 

小生:私どもは、社内で起こりうるであろう場面が想定できるのに、有効な方策を
  持たずに望むことは避けたいのです。それが、ロジ部長の立場強化に役立つと

  思いますし、今後のロジスティクス部門の歩むべき方向性と捉えています

 

 

◆結末

 

このやりとりは、わずか30分程度です。皆さんは、どう感じられたでしょうか。結
果的に、ロジ部長の要望には応えていません。ご相談の場では、必ずしも要望に添

う結果とはならないこともあります m(_ _)m

 

*当ご相談内容は、第10号でご紹介したものをベースに若干言い替えています

編集後記

ロジ部長殿の件がきっかけで、当の化学メーカーではなく、紹介物流事業者の課題
で、私どもはお手伝いさせていただくことになりました。何が縁で、仕事となるの

か分からないものですね(=^^=)

 

私どもも、随分前はお客さまからの依頼だからと、無理を承知で引き受けることも
ありました。ただし、社会的な倫理感に抵触する依頼事項については、元々お引き

受けの対象としていません。たとえば、外注いじめにつながる課題などです
(^∧^)

 

上記の在庫圧縮で仮にお手伝いしても、結果的に、顧客・私どもの双方にとって不
幸なことになります。真にお客さまの役に立つことで、お手伝いしたいものです

(^−^)

 

製品在庫は、部門内の課題ではなく、複数部門にまたがる業際間課題の典型です。つまり、部門の部分最適が全社から見ても最適とは、なかなかなりません。在庫に関連する部門全体が参画して初めて全社最適の姿実現が可能となります

 

 

◆無料相談会の企画

 

従来から私どもは、依頼によりご相談を受けることが多かったのですが、もっと門
戸を広げる意味もあり、無料相談会として企画中です。その相談事例として、前回

第34号でも紹介しました

 

この無料相談会は、年明けの2010年1月からホームページ上で受け付け開始できるこ
とを目指しています m(_ _)m

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう(^.^/)))~~~bye!!