収益改善に役立つ統制指標の切り口

収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2009/12/14 No.40

【目次】

1.課題から見る今年の企業実態

まえがき

こんにちは 前田です!

 

イヤー、実に反省点が多いですね(=^^=)

 

自分のセミナーをビデオで見るのは初めてです。実は先日12月3日(木)、午後半日の
セミナーを東京港区のメルパルク東京で開催しました。タイトルは「企業収益最大

を実現させる統制指標」です。受講対象は経営層や各部門責任者クラスで、27名参
加していただけました。2007年10月に最初開催し、今回で7回目となります

 

自分のありのままの姿を、自分自身で確認できたことはめったにありません。次回
に生かしたいと思います (^^)♂♂

 

ところで、このビデオですが、現在編集中で来年2010年1月半ば頃には出来上がるの
ではないかと思います。編集者の意向でとても外に出せる代物ではないと評価され

る可能性もありますが…(汗)

 

今回は、企業実態から見た本年のまとめに相当します。長めになってしまい、やや
省略した部分があります。私どもが普段、訪問させていただいている企業の実態を

多少なりとも取り込んだものです。ぜひ、参考にして欲しいと願いつつまとめまし
た m(_ _)m

1.課題から見る今年の企業実態

企業の経営管理上から見た実態を、今年2009年に寄せられた実例からまとめてみる
ことにします。相当数の企業から得られた問題点、今後進もうとされている方向性

を、仮に一つの企業像として描いてみると、次のようになるでしょう

 

 

◆想定される典型的な企業像

 

下記のすべてに当てはまる企業はありませんが、典型的に想定される企業像の特徴
を箇条書きにします

 

・予実績管理が不十分
・営業力の強化に課題

・オーダー実現率が不十分(特定業種では当項目該当せず)
・生産は量管理中心

・改善・改革の対象は部門内中心
・改善・改革は資源効率・処理能力向上が中心

・複数部門にまたがる課題の判断基準にあいまいさ

 

もちろん、私どものコンサルティング領域に制約がありますので、必ずしも企業全
体を表すものではありません。営業・生産・販売・開発のライン部門を主としてい

るため、次の分野はコンサルティング対象としていません

 

・経営戦略立案、人事・組織改革などの経営マター
 (経営層の本来職務の一部。ご相談要請あれば従来から一部対応)

・研究開発・技術開発・設計そのもの
 (管理は対象。たとえば、金型の設計そのものなどは対象外。これらは、通常、

  技術コンサルティングの分野)

 

上記に掲げた企業像の特徴について、もう少し詳しく見ていきます

 

 

◆予実績管理が不十分(特徴1)

 

 PDCAのマネジメントサイクルが、十分に機能していない例が散見されます。
たとえば、方針の不徹底、不得手な部門間連携、マーケット環境の変化に即応でき

ていないなどです。マネジメントサイクルは縦と横に区分して捉えるのが有効です
ね(=^^=)

 

もう少し、かみ砕いて内容を検討しましょう!

 

「マーケット環境の変化に即応できる」とは、売上数量が落ち込んだとき、在庫も
少なくコントロールできることが例の一つに挙げられます。また、顧客要求品質の

向上、納期短縮などについてもマーケット要求の変化に対応できることが必要です

 

 縦のマネジメントサイクルは、経営層から実務層に対する指示・命令の伝達とし
ておこなわれるPDCAの実践を指しています。経営戦略やトップ指示事項の検証

と、軌道修正のツールとしても必須です

 

 横のマネジメントサイクルは、営業・生産・物流など複数部門にまたがる業務の
流れにPDCAを回す実践を指しています。複数部門にまたがる業際間課題の処理

が、全体最適の視点からおこなわれているのか検証するツールとして必須です
(∩_∩)

 

予実績管理の不十分な企業では、売上の順調な伸び、高いマーケットシェア、世間
より一歩先んじた技術保有などの特性を持つことも、どういうわけか多い気がしま

す。つまり、目先の予実績管理より、売上や利益増が優先されているのかもしれま
せん

 

売上が順調に伸びているときは、管理に神経をとがらすより、生産量の確保に集中
したほうが得策でしょう。しかし、右肩上がりの時期が長く続くと、あとでツケが

回ってきます。ぬるま湯的な、一種の企業文化が形成されることが多いからです。
売上の伸びが見込めなくなり、内部の管理精度を上げて収益確保をしようとする段

階で、かなりの忍耐力と期間が要求されることになります(>.<)

 

 

◆営業力の強化に課題(特徴2)

 

典型的な例を次に掲げます

 

・営業見積基準のあいまいさ
 企業によって内容が異なりますので、代表例を一つだけ紹介します

 

 経営権を握る子会社で製造しており、当社は仕入販売の形を採用。基準売価は、
 仕入単価に客先までの物流費と社内管理費、および利益を上乗せし設定していま

 す。ところが、近年、競合他社に競り負けるようになっているとお聞きしました

 

 競合他社との生産設備には差がない、客先への工場の立地は当社が近い、原料は
 輸入品のため原価の大半を占める原料費に差がない、結果は当社の売上原価が安

 いはずとのことです。しかも、ブランドは当社が上と見られているので、余計に
 失注の理由が分からないと言われます(限界利益確保が分かる見積基準必要)

 

・受注量と基準売価の関連
 装置型メーカーでは多い例です

 

 受注数量による基準売価の設定は、従来からほとんどしていません。また、現行
 の製造原価の算出方法では、生産数量にかかわらず標準原価は一定となっていま

 す。見込み型の生産形態となっていますが、これで合っているのでしょうか

 

・製造原価が高いので見積もり不参加
 製造原価の加工費算出は「チャージ×加工時間」となっています。競合他社に比

 べ、材料は自社生産なため安いはず。考えられるのは加工費で、これが原価上昇
 の主因とされています。ベテランの営業マンほど、売上総利益(粗利)が赤にな

 る営業はしません。ちなみに、設定したチャージレートは、10年ほど前ですべて
 社員とのことです。その後、改定されていないとお聞きしました。現在、パート

 社員が大半で労務費は下がっていると見られます

 

*用語「チャージレート」
 チャージともいう。単位製品製造に必要な時間 or 分 or 秒当たり加工費単価

 ex.単位製品当たり加工費 = 加工費単価/時間 × 単位製品の加工時間

 

・顧客の実態把握に難
 特定顧客で、年間で営業利益が赤字となっています。少なくとも、営業利益を損

 益ゼロまで持って行くのが部門目標です。担当営業は、上司の意向を受けて値上
 げ案を作成。内容検討では、担当営業が顧客損益への影響を把握していないこと

 が分かりました。そこで、営業報告書入手と顧客の財務実態を把握し試算。当値
 上げ案では、顧客が赤字に転落することが分かったのです。結果的に、値上げの

 申し入れは見送らざるを得ませんでした

 

 

◆オーダー実現率が不十分(特徴3)

 

オーダー実現率とは、顧客の確定受注を修正・調整することなく依頼内容どおりに
実現した割合のことです。まれに、何を持って確定受注とするか不明確な企業もあ

りますので、その場合は「確定受注」を「当社が受注と判断した時点を確定受注内
容」と読み替えます

 

業種により、受注どおり納品できないことが信じられないと言われることもありま
す。たとえば、大半の食品メーカー、建材メーカーなどが当てはまる例です。競争

が激しく、代替品を入手できるケースでは、オーダー実現率100%が当たり前だから
です。このような企業では、オーダー実現率という指標はあり得ません(統制指標

として不向き)。そこで、箇条書きした「想定される企業像」の項では、競合厳し
い業種では当項目該当せずと注書きしたわけです

 

*用語「統制指標」
 部門最適ではなく全体最適実現のため、業際間の課題について権限を持って管理

 する優位性判断の物差しをいう。統制指標の目的は、全社収益最大化の方向に統
 制することです。

 オーダー実現率は営業・生産と複数部門での対応が求められます。ここでは、
 元々当該実現率が満たされているため、必要がないということです

 

逆に、オーダー実現率向上を目指す企業には、前項「予実績管理が不十分」と同様
の指摘ができます。つまり、売上の順調な伸び、高いマーケットシェア、世間より

一歩先んじた技術保有などの特性が見られるものです。収益力の高い企業の特性と
して、緩やかな管理状態にあると言えるのかもしれません(^−^)

 

 

◆生産は量管理中心(特徴4)

 

生産日程計画の立案・変更時には、量の確保、品質維持、生産性の確保に腐心して
います。しかし、何を持って変更した生産日程計画を良しとするか、その判断基準

に製造原価や収益変動は、ほとんどのケースで採用されていません

 

このような企業においても、生産計画の実担当者にお伺いすると、製造原価が安く
なるように全体として考えているとお聞きすることが多いものです。実際はどうで

しょうか。具体的な数値で答えていただけることはほぼありません(>.<)

 

 

◆ 改善・改革の対象は部門内中心(特徴5)

 

業務効率向上、収益改善などの目標達成のため、経営トップから各部門長に計画立
案が指示されます。必然的に、部門長は自部門でできることは何かを考え、部下に

指示します。現状では、ある意味やむを得ません。日本の企業は、大半が機能別組
織となっているからです

 

機能別組織とは、基本業務ごとに部門が設けられ、各部門が同列に扱われる組織を
指しています。たとえば、営業するから営業部、製造するから製造部、物流をおこ

なうから物流部など、企業の基本業務(=機能)ごとに組織される形態です。会社
組織の基本形であり、事業部制、カンパニー制を問わず同様の考えかたが背景に見

られます

 

実は、これがやっかいなんですね(^∧^)

 

計画づくりを求められた部門長が、自部門の業績を優先させるか、会社全体の将来
を考えるかにより、両極端の案が作成されることになります。よほどのことがない

限り、自部門優先の傾向が変わることはありません

 

なぜでしょうか(?_?)

 

「部門長のやるべきことは何か」の訓練を受けていないからです。一般的に一兵卒
としての社員から徐々に出世し、ある時期に部門長に昇格となります。プロ野球の

世界でも同じことが言われています。名選手、必ずしも名監督ではないと…

 

要求される能力が異なるためです。現場作業者は担当業務の知識や仕事そのものをこなす能力が求められ、班長などになれば職場の人をまとめる技能が必要とされます。さらに、部門長、経営者となれば、物事の本質を見抜く課題形成力がもっとも重要です。本来は、この課題形成力を持つと思われる候補者を将来の経営者として、育成することが欠かせません。原則です(^^)♂♂

 

小生は人事関係にはうといのですが、論功報償、ところてん方式、年功序列型、成
果重視型などなど、出世にはいろいろありますね(^0^)

何のために、あなたはこの役職にいるの(?_?)と疑問に思うことが何度もあり
ました。本メルマガでも、数度紹介したつもりです。こういうかたとは、まともな

会話になりませんが、都度、仕事と割り切って対応してきました。やや、話がそれ
ました m(_ _)m

 

 

◆ 改善・改革は資源効率・処理能力向上が中心(特徴6)

 

資源効率は、投入資源に対する出来高の比率を向上させることです。主にコスト低
減を狙いとして、業務改善・改革で採用される評価方法の一つになります。たとえ

ば、1時間10個の生産だったのを20個造る(生産性向上)、10人の業務を5人ででき
る(少人化(しょうにんか))、10日間の処理を同じ人員で5日でできるようにする

(処理能力向上)などが相当します

 

少し違う角度から見ると、資源効率の向上は現状損益計算書の中に含まれる、いずれかの費目改善に貢献することが主眼です。今回は言及しませんが、これとは別に、現状損益計算書の外枠で改善しようとする方策があります

 

 

◆ 複数部門にまたがる課題の判断基準にあいまいさ(特徴7)

 

部門間にまたがる業際間課題の判断基準がはっきりしません。あるいは、収益との
関連が不明瞭です。業際間課題は、部門の最適解ではなく、複数部門にまたがる全

社最適の解決策が必要な事項です。典型例として、アイテム増減、在庫圧縮、納品
リードタイム短縮があり、営業あるいは生産部門の利害が相反しやすく、単独部門

では判断がしにくいのが特徴といえます(>.<)

 

業際間課題を声の大きさなどで判断すると、短期的な効果が見られても中期的には
決して収益に貢献することはありません。小生の把握している事例だけでも、かな

りな数に上ります

 

たとえば、韓国での事例です。2万数千パレット保管できる立体自動倉庫の診断をし
たことがあります。見に行って驚きました(>.<)

生産ラインとほぼ直結し、工場内に建てられた立体自動倉庫です。重量品の段ボー
ル荷姿製品がパレット積みされ、高層ラックまで自動搬送し保管されます。倉庫に

は、小口出荷用の仕分け場がわずかしかありません。トラックへの積み込みスペー
スも出荷時間帯の車両数には到底足りていないのです。結果は、大変の一言に尽き

ます

 

高層ラックからのパレット出庫が、1回平均3分掛かります。小口出荷がかなり多い
のに、出荷方面別に仕分けした現品を置く場所が狭すぎるのです。多数の作業者が

忙しそうに仕分けしていました。問題は明白です。立体自動倉庫は、小口出荷用の
機能をほとんど持っていません

 

担当者にお伺いしたら、当初は小口出荷をおこなう前提ではなかったそうです。数
年も経たないのに、予想に反して小口出荷が増えたとのこと。言い訳を長々と聞か

されました(>.<)

 

安く見積もっても数十億円の投資と推定します。一体、何が問題だったのでしょう
か(?_?)

生産側の判断で建設したのですが、中期的な販売計画の織り込みを軽視した結果と
しか言いようがありません。営業部門を巻き込んで、図面を引くべきだったのです。

もしそうしていたら、この投資は実行されずに低層階の平置き型保管を取り入れた、
投資金額も10分の1とは言いませんが、近い額で済んだと考えます

 

投資は、工場側で考えた効率を追求しておこなった結果です。改造案には、小口出
荷の仕分け場、およびトラック積み込みスペース確保を取り込むことで、ほぼやる

べきことは明確になりました

 

 

◆企業が抱える課題の典型例

 

課題の改善方向性は、企業の実態によって同じ課題でも異なってきます。そこで、
課題の意味について簡単に紹介します

 

・販売変動に連動できる在庫コントロール
 販売量が少なくなれば在庫量も少なく管理できることを目指す。生産部門にとど

 まらず、営業側の販売計画、需給調整部門のマネジメントサイクルが回るように
 することが狙いです

 

・営業見積基準の是正
 自身がメーカーの場合は、売上原価の変動費算出で対応可能。しかし、受注数量

 による見積基準設定、子会社から仕入後に販売などのケースでは、管理会計の導
 入が不可欠。競り負けないコスト競争力を生かすためにも、採算確保と販売政策

 の融合が必要。営業力強化の課題の一つ

 

・オーダー実現率向上
 オーダー実現率向上は、より競争力を増すことに貢献します。マーケットシェア

 が高いか、技術力の高い企業で多い課題です。逆に、当実現率100%のときは設備
 能力過剰の恐れがあり、その検証をおこなうことをお薦めします。設備余力が発

 見されれば、より収益向上に寄与する視点から販売計画に数量増、あるいは新製
 品の上市提言を推奨(=編成効率の向上)

 

・生産能力の定量的把握
 在庫コントロールに必須。また、生産計画を量管理中心から、製造原価や収益と

 の関連把握にも解決すべき基礎的課題です

 

・原価変動分かる管理指標設定
 従来の製造管理は稼働率、歩留まりなど、量を基にした指標算出と製造管理にと

 どまっているケースが圧倒的です。指標1%の変化が製造原価におよぼす影響を知
 り、課題解決への取り組み優先度の把握、部門内の業績評価にも活用可能となり

 ます

 

・生産計画の収益試算評価
 飛び込み受注分をほかの受注済み生産を変更してまで造るべきか、生産の順番に

 よる影響度、工場別の生産配分など、製造原価と収益への影響度を知ることに貢
 献します。もう一歩進展させると、生産日程計画立案と同時に当該計画による販

 売を前提として予想変動損益計算書の作成が可能となります

 

・業際間課題の収益判断基準設定(=統制指標)
 複数部門にまたがる業際間課題を収益最大化の観点から判断基準を提供し、収益

 改善に寄与することが狙いです。なかでも、現状の販売力是認し、今ある営業能
 力(=営業ポテンシャル)の引き出しに貢献できます

 

ここに挙げた課題は、企業によって該当する場合とそうでないことが、もちろんあ
ります。ご容赦のほど、お願い申し上げます

編集後記

まだ年賀状を書き終わっていませんが、今年になってから見込み顧客企業も含む実
態認識と、企業の持つ典型的な課題を紹介しました。このようにまとめてみると、

企業の抱える課題の難易度が、6〜7年前に比べ上がっているのが実感できます
(=^^=)

 

企業の要求する課題解決策に、より対応度を高めるため、私どももレベルアップを
一層図る必要性がはっきりしてきたように思います。年末まで残すところわずかで

すが、新型インフルエンザにとりつかれないように、疲れを溜めないよう節制しま
しょう(^0^)

 

とくに、飲み過ぎには要注意です(これは自身への自戒です(^−^))
12月15日(火)は、研究会のご苦労さん会が控えておりますので…

 

この清書は、12月13日(日)の夕方、プールから帰り夕飯後にやっています。2,500m
泳いできました。1,950m泳いで、右足の親指がつりそうになり、一端プールから上

がって、ジャグジーで暖まって再度続きを泳ぎました。明日12月14日からスポーツ
クラブが、全面改装のため来年1月4日まで休館となり利用できません。近くにある

浦和、北戸田、赤羽の3箇所が、この間利用できますので、それも楽しみです
(^^)♂♂

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう(^.^/)))~~~bye!!