収益改善に役立つ統制指標の切り口

収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2010/04/05 No.53

【目次】

1.収益源マップ活用法

まえがき

昨4月2日の夜、熊本県八代市から帰ってきました。やはり暖かいですね(^0^)
ソメイヨシノが一部葉桜化しており、久留米ツツジもだいぶ咲いています。季節の

変わり目を迎え、日本列島の長さを改めて実感させられるこの頃です

 

東京では、靖国神社のソメイヨシノの標本木が3月22日に開花。自宅前の公園の桜は
同日、2輪のみ咲いていました。開花宣言は標本木が5輪以上咲いたのを確認した時

点で出されるようです。例年、東京と同時に咲き出すのですが、今年は1日遅れ、翌
3月23日に小生が個人的に開花宣言をさせてもらいました (=^^=)

 

開花後に寒かったせいもあり、今日4月3日、公園の桜は満開です。例年のとおり、
ぼんぼりが灯り、町会の屋台も出て大にぎわいです。幸い、お天気にも恵まれ花見

日和を満喫しています。ただ、気温が15度位しかなく、やや肌寒いのが難点です

 

玄関先の白木蓮は、3月13日に開花。すでに花が散ってしまい、これから青葉が出て
きます。前々からやろうと思っていた剪定を、朝から約1時間ほどで済ませました。

枝振りがやや長髪気味であったのが、さっぱりとしています。白木蓮は剪定しない
と、大木になってしまうんです。ただ、ちょっと切りすぎたかもしれませんが…

 (^0^)

 

前号まで2回、企業の収益源をどのように見える化するのか紹介してきました。
今回は、収益源マップ単体の使い方ではなく、収益改善全体を進める中での使い方

にスポットを当ててお話しします

1.収益源マップ活用法

メーカーの収益源とは何でしょうか。メーカーにとっての収益は、製品販売から得
られる売上高や利益を指すことが多いのですが、本当にそうでしょうか。もう一つ

先を考えてみます

 

顧客は、何かに使うためか、消費するために製品・商品を購入します。結果として、
顧客が望む効用と満足が得られるなら、継続的購入となることが多いでしょう。こ

の継続的購入が消極的な顧客満足度を表わしています。消極的というのは、仮に満
足したとしても継続的な購入とならないことも多く見られるためです

 

たとえば、小生のケースがあります。毎日のように買うペットボトルのお茶ですが、
旨いと思っても、翌日また別のものにトライするのが日課だからです。こんなやっ

かいな客もいますので、メーカーから見れば固定客化するのは容易でありません 
(=^^=)

 

 

◆収益を提供するマーケットとは

 

繰り返しになりますが、収益とは顧客が望む効用と満足提供によって得られる対価
を指しています。しかも、今年とかに限らず、製品ライフサイクル期間中にマーケッ

トから得られる総売上のことです。製品ライフサイクルは、製品がマーケットに登
場してから退場するまでの期間をいいます

 

小生の好きな菓子の一つがたい焼きです。長続きしている菓子の代表格にも挙げら
れるでしょう。いつ頃からあるのか分かりませんが、1900年初頭、明治時代の終わ

り頃にはすでにあったようです。都内の行列ができる有名店、何カ所かには出向い
たこともあります。田舎の高校時代には、たい焼き屋さんに結構通ったものです 

(^0^)

 

小生のふる里、青森県五所川原には油で揚げた、たい焼きがあると聞いています。お店は、高校時代立ち寄っていたたい焼き屋さんの近くのようです。今度帰ったとき数個位は、食べるのに挑戦したいと思っています。「あげたいの店みわや」というようです。関心のあるかたは、ぜひトライしてみて下さい m(_ _)m

 

さて、話を元に戻しましょう

 

 

◆製品のとらえ方

 

収益上から見る製品の位置づけは、マーケットから売上獲得する一方策とみなしま
す。類似用語が利益です。利益とは、ある一定期間に得られる期間利益であり、企

業会計上の年度利益を指す点で収益とは異なっています。製品提供から始まる順番
を示すと、次のように現わせるのではないでしょうか。上がマーケット収益、下が

企業会計上の利益です

 

 製品提供 → マーケット → ライフサイクル期間中の売上高(=収益)
 製品提供 → マーケット → 決算期間の利益(=期間利益)

 

 

◆事業収益発生の実態を知る

 

顧客の効用と満足が収益に反映されているわけです。このマーケットに対する事業
の実態を知ることが、事業収益向上のポイントと確信します。企業内のデータ分析

だけでは、収益向上の本来の姿は描けません。外部との比較で初めて自社の強み・
弱みが分かるからです。したがって、日常的に顧客と接する営業の役割が、本来は

期待されています

 

本来は、と言ったのは多くの企業を見る限り、このような役回りをおこなっていな
いことが明白だからです。もっとも、このような収益向上の観点から企画する部門

の問題意識そのものが稀薄なことがもっと問題かもしれません (>_<)

 

なかでも、顧客マーケットをQCDSの視点から定義し、それに対する自社の対応
度を明らかにすることが欠かせません。ここでいうマーケットは、用途と言え替え

ることが可能です。つまり、自社製品のマーケットにおける、販売先群・使い方・
消費のしかたで用途を区分し要求仕様を定義します。マーケットまたは用途とは、

製品提供による企業や消費者に共通する同質的特徴を見出し、区分した対象のこと
です

 

*用語「QCDS」
 QCDSは、品質(Quality)、価格(Cost)、納期や入手性(Delivery)、対応やサポート

 (Service)の水準を指しています。製品により、量の供給能力、安定供給力、機能
 保証もさらに必要です。機能保証とは、製品だけでなく、カタログ、取扱説明書

 があって初めて使い方が分かり、製品本来の能力が発揮されることを意味します

 

 

◆管理会計からの収益改善策は不十分

 

マーケットあるいは用途との関連から、管理会計による採算分析や採算感度分析だ
けでは、収益改善策立案には不十分だとご理解いただけるのではないでしょうか。

問題・課題発見には役だっても、内部資料を幾ら分析しても、対外的な有効策は見
つけられないことが大半です。また、数値化できないことが多いのも、企業人であ

れば肌で感じているのではないでしょうか。有効策は、企業内の人の持てる意志に
かかっています(小生コメント → 難しいテーマですが、資源の生かし方を肌で

感じる人は内在していることが多いものです。人の生かし方です  (^^)♂♂)

 

 

◆定義する

 

上述では定義すると言っていますが、分かりにくいかもしれません。普通は「○○
とは、△△である」式に文章で明記します。慣れないと意外に難しく感じるかもし

れません。また、定義の過程で自社の対応度の不十分さに気付くこともあります。
忘れずにメモしておきましょう φ(..)メモメモ

 

 

◆将来対応の収益改善策の立案手順

 

前号メルマガ2回で、収益源の内容、および収益源マップを紹介してきました。今回
は、将来の収益改善に役立てることを狙いとした、収益源マップの位置づけも含め

た手順を述べることにします

 

1.事業の定義
 現状の製造販売する事業の定義を文章化します。一般的に、事業定義では自らの

 事業とは何か、どうあるべきか」を明確にすることが必要です。事業定義を明ら
 かにすることにより、結果として、組織の目的と使命、上げるべき成果は何か、

 変化への対応、事業機会の創造を描くことが可能となります

 

2.用途の区分
 マーケットセグメンテーションと同じ意味ですが、ここでは呼び方を用途としま

 す。製品の用途とは、製品提供による企業や消費者に共通する使い方・消費のし
 かたから同質的特徴を見出して対象を区分することです

 

3.用途の定義
 通常は、「○○とは、△△である」式に文章で明記します

 

4.現状収益源の実態定量化
 実態の定量化には、管理会計による感度分析、採算分析が有効です。ここまでの

 手順で明らかになった用途別の収益と、そのために投入している製造資源を視覚
 化できます。過去の販売実績は、マーケットサイクルを包含する年数分あったほ

 うが実態把握に便利です。マーケットサイクルとは、マーケットにおける投資・
 回収が繰り返される期間を指しています。車は4年、家電1年、パソコンはもっと

 短い期間で製品群の交替が典型的な例です

 

 ・採算分析、採算感度分析の実施
  次の収益源マップ作成の前段に必要となる資料です。内容は本文前後の用語解

  説をご覧下さい

 

 ・収益源マップの作成
  変動損益計算書、採算分析のデータに製造データをくわえて、収益源マップを

  作成します。縦軸の製品群・品種と、横軸の用途の交点には限界利益を入れる
  ことが有効です。望ましくは、過去5年分程度準備することを推奨します。業種

  ・業態により作り方が変化するので、目的に沿う作成が重要です

 

  経験則では、本当に儲かっている製品が一体何なのか意外に分かっていない経
  営者が多いものです。たとえば、高規格品、汎用品、特殊用途向け品のどれが

  営業利益獲得に貢献しているのか不明という典型例もあります。財務会計のも
  とでは、必ずしも明確にできません

 

  収益源マップは、メルマガWebサイトのNo.51号後段に図解しています。一度覗
  いてみて下さい m(_ _)m

 

  メルマガWebサイト:http://merumaga.jimosen.com/

 

*用語「利益感度分析」
 利益感度分析とは営業利益の算出式を構成する変数の変化による、営業利益増減

 への影響度を明らかにすること。営業利益算出の変数は次のとおり、右辺式を構
 成する要素すべてが変数です

 

 営業利益=売上高−変動費−固定費
     =限界利益−固定費

     =平均売上単価×売上数量−変動単価×売上数量−固定費

 

 ※売上高−変動費=限界利益
 ※限界利益は貢献利益と呼ぶことが多い。ほかに、付加価値、変動利益と呼ぶこ

  ともあります

 

*用語「採算分析」
 採算分析とは、固定費の回収実態を知ることです。ここでは、もう一歩進め採算

 分析による帳表を指しています。縦軸にアイテム、横軸に変動損益計算書に相当
 する項目と損益分岐指数の配置が特徴です。アイテム別の損益と同時に、損益分

 岐点分析の結果が確認できます

 

*用語「採算感度分析」
 採算分析と利益感度分析を一緒におこなう分析方法であり、採算検討のシミュ

 レーションに活用できます。採算感度分析の目的は、目標に対する実態、採算性
 の把握、営業利益算出の変数の変化が固定費回収と営業利益増減に与える影響度

 を知ることです。同概念を表す名称が見当たらないため小生の定義した用語です

 

*用語「収益源マップ」
 収益源マップは、マーケットに対峙して事業収益獲得に活用される経営資源と当

 該構造を表します。一般に、販売地域・用途別、製品規格・品質グレード別のマ
 ーケット収益獲得実態と、製造資源の消費時間の明示が必要です。作成時には、

 一表にまとめることに固執せず、分かりやすさに重点を置きます。当マップの目
 的は、製品規格・用途別・営業利益と、主に製造時間当たり経営資源配分の実態

 を知り、事業収益の源泉を明らかにすることです

 

5.用途別の過去の販売実績・将来の需要推定量を知る
 用途別に過去、将来とも、原則はマーケットサイクルの期間を超える分が望まし

 いのですが、それぞれ5年分欲しいものです。需要推定量には、売上単価の見込み
 を含みます

 

6.用途別製品群別・安定供給への対応度
 製品群別の、将来の需要推定量に対する安定供給の対応度を明らかにします。対

 応度には、QCDSの要件が必須です。内容は、品質(Quality)、価格(Cost)、納
 期や入手性(Delivery)、対応やサポート(Service)の水準を明確にします

 

7.目標設定
 ここまでの作業により、現状認識が定量的にされ課題も見えるようになっている

 ことが多いものです。そこで、今後の取り組みかたをより明確にし、方針書の形
 で目標明確化と関係者のベクトル合わせをおこないます。方針書の内容は、現状

 の問題点・課題などの問題認識、目標とするありたい姿、実態把握の認識概略、
 今後の目標達成に至る行動計画です

 

8.基本構想の立案
 これ以降の内容は、ここまで得られた実態と目標により大きく変化します。一般

 的には、次のような内容になることが多いものです

 

 ・内外製の線引き区分の再検討
  自社生産、外注活用、購入販売、OEMなどの選択による

 

 ・工場別・生産配分の見極め
  国内・海外工場別の生産品種・品目の生産割付是正。これにより、収益は変化

  します。国内工場も、同様に生産割付の是正検討が必要です

 

 ・品種・アイテムの整理
  収益最大化視点からの基準設定等

 

 ・業務改革の実施
  複数部門間にまたがる課題を全社最適からの権限を持って管理する統制機能の

  推進強化策が該当します。たとえば、生産日程計画の変更と製造原価・営業利
  益変動を素早く算出でき、部分最適から全体最適の統制を可能とするしくみ導

  入などです。詳細は今回省略します m(_ _)m

 

 共通する事項は、社内SCMの是正に関する事項が圧倒的に多いことです。要す
 るに、収益改善の課題は外ではなく、内にあることを意味しています。マーケッ

 トに対する内側の対応を、全体最適の視点から変えて、しくみ化することが主な
 課題です。やや分かりにくい表現ですが、回を改めて説明させていただきます

編集後記

4月4日(日)、スポーツクラブから帰って清書しています。午後2時過ぎから泳ぎ始め
たのですが、6コースあるプールには小生以外に5人しか泳いでいません。お花見に

出かけている人が多いんですね、きっと… (^0^)

 

2000mを50分弱掛けて泳ぎを終了。もう少し泳ぐつもりでしたが、人が増えてきて邪
魔者扱いされるのを避けプールから揚がりました。それにしても、気温14度と随分

寒いのにもかかわらず、自宅前公園のお花見客の多いこと。感服です (●^o^●)
本当に満開です \(◎o◎)/!

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!