収益改善に役立つ統制指標の切り口

収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2010/06/07 No.61

【目次】

1.SCMの収益開発機能

まえがき

こんにちは 前田です!

 

◆久しぶりの五所川原

 

うちに2年間同居していた姪の結婚式のため、2年ぶりですが、五所川原に6月3日か
ら4日間帰ってきました。初日は天候に恵まれました。気温19度です。別名、津軽富

士とも言われる岩木山もきれいに見えました。「がんぽくさん」と間違えられるこ
とが多いんです。「いわきさん」と読みます。念のため φ(..)メモメモ

 

 

◆市街地が激変

 

駅西側が繁華街です。昔にぎやかだったのが嘘のように変貌しています。1992年11
月に、イオンモールが近郊に開業。1997年11月には、五所川原駅から2km弱のところ

にイトーヨーカドーをキーテナントとするエルムの街ショッピングセンターがオー
プンしています。もともと、市の中心部には、デパートが2つあったのですが、駐車

場はほとんどありませんでした。ドーナツ化現象の典型です。今、再開発の真っ最
中ですが、都市計画の問題点を提起してくれる典型かもしれません (>_<)

 

全国の中心市街地再生の見本とも言われる青森市ですが、いっぽうで、現状の青森
駅を中心とするのはどうかと異論もあるようです。というのは、今年2010年12月、

新幹線が新青森駅まで開通する予定と関連があります。中心街形成は、新青森駅を
中心にすべきというのです。詳細は、地元から離れて40年も経ちコメントできる立

場にありませんが、五所川原市街地のさびれようを見るにつけ、何ともいいがたい
思いに駆られます。市長選挙の看板が立っていました。6月6日告示、13日投開票と

のことです

 

 

◆母校に立ち寄り

 

久しぶりに母校を見てきました。感無量です。駅を背に右斜め方向に10分弱歩いた
ところに、五所川原高校があります。駅から歩いたのですが、途中で道が分からな

くなりました。町の変貌ぶりに驚かされます。校門の前でタバコを吸っていた先生
と少し雑談し、帰りに40年以上前からある駅近くの喫茶店「カルネドール」に立ち

寄りました。フランス語で「金の手帳」という意味だそうです

 

 

◆甘味「あげたい」

 

途中「あげたいの店みわや」に寄り、普通のあんこ入りたい焼きと、名物の油で揚
げたたい焼き(あげたい)を食べました。昔の記録10個位には到底およびません。

あげたいは、油で揚げたたい焼きにやや粗い白砂糖をまぶしているのですが、意外
に油っこくありませんでした。一度は、食べて見たほうがいいかもしれません

 (∩_∩)

 

*実家の弟が継いでいる店の写真をメルマガWebサイトに掲載しています

 

田舎の弟の店(裏に実家あり)

       五所川原の実家の店

1.SCMの収益開発機能

 

◆SCMの構成要素

 

SCMが日本に導入されてから10年以上経過しています。SCMを冠した部門も、
各企業では多くなってきました。しかし、成果獲得への道筋は必ずしも明確になっ

ていません。No.60では、次の事項を紹介しました

 

 ・SCMにおける収益構造の意味
 ・評価基準

 ・事業収益が得られている経営資源の使われかた
 ・定量化するためのしくみ

 

とくにお断りしませんでしたが、SCMに備えるべき要件の一つ、収益構造を紹介
しています。今回のテーマもSCM要件の一つ、収益開発機能についてです

 

これまでは、どちらかと言えば全体最適追求の個別要素に重点を置いて述べてきま
した。今後は、SCM推進の要件も加えて考察します m(_ _)m

 

話の進めかたは、次のとおりです

 

 a.SCMの収益開発機能とは
 b.収益力強化の課題例

 c.収益課題の抽出手順
 d.収益課題抽出の基盤

 

 

◆a.SCMの収益開発機能

 

SCMの収益開発機能とは、ライン部門を対象に収益源の発見と定量化、実現の方
向性を示すことです。方向性を示した後の進めかたは、詳細は今回触れませんが、

SCMの推進機能の役割となります

 

SCMを企業に適用し、収益力強化に役立つ課題とは何でしょうか。また、収益開
発機能に欠かせない事項とは何でしょうか (^v^)

これが、今回のテーマです。SCMは、社内SCMを対象とします

 

 

◆社内SCMとは

 

社内SCMとは、自社のサプライチェーンを構成する販売・生産・調達・物流に至る各
業務の連鎖が、もっとも効率よく運用され、収益能力最大となるしくみを指してい

ます。これが社内SCMです。ケースによっては、開発を含むこともあります。メ
ーカーでは、原材料・部品の調達から顧客への販売までの供給連鎖が対象です。言

い換えると、ライン部門が相当します

 

社内SCMの狙いは、マーケットに対し経営資源の効率的配分によって、収益能力
の最大化を図ろうとするものです。特定企業の社内SCMを定義する場合、前段の

社内を当社、あるいは、○○事業に置き換えることで対象をより明確化できます。
事業・利益計画立案時においては、事前に定義を文書化することが欠かせません

 

 

◆調達とは

 

前項で生産・調達と言いましたが、本来、調達には生産も含んでいます。したがっ
て「生産・調達」は、馬から落ちて落馬した重複表現です。意味が分かりにくいこ

ともあり、ダブりを承知で普段から使っています m(_ _)m

 

つまり、調達とは自社生産、外注、OEM、購入販売、ファブレスを含む生産形態
の概念です。本稿では触れていませんが、ビジネスモデルを考えるさい、領域の明

確化が欠かせません。生産形態の選択により、業務機能が変わるからです。また、
業務機能の変化は、原価計算モデル、原価管理、見積書の構成、基準売価設定にも

変化をもたらします

 

*用語「自社生産」
 原材料を外部から調達し、加工・醸造・重合反応等を経て製品化する工程をす

 べて社内でおこなうケース

 

*用語「外注」
 外注は、自社の生産工程の一部を外部に委託することを指しています。生産の

 中核部分は、あくまで自社で持とうとするのが普通です。
 購買は、主として調達先企業の仕様を受け入れることが多いのに対し、外注は

 発注側の仕様に基づいて生産することが多いのも特徴となっています。
 委託先にも外注、協力工場、下請、子会社、発注元とは独立の企業等いろいろ

 変化が見られます

 

*用語「OEM」
 OEM(original equipment manufacturing)とは、販売側ブランドによる生

 産を指しています。OEMでは、一方の企業が開発と生産を、もう一方の企業
 が販売やマーケティングをになうのが普通です。新製品を開発しても販路を

 持っていないとか、販売力が弱い場合、販売側ブランドで販売がおこなわれま
 す。

 また、シェアを高めるため人件費の安い国で生産し、自社ブランドで販売する
 戦略的な方策もパソコンや家電の業界ではよく見られる事例です。メーカー側

 は生産設備の操業度向上に、販売側は品揃えや顧客への浸透やリスクの分散が
 メリットとなります

 

*用語「購入販売」
 自社に製造設備、製造技術がないものの、販売上の品揃えが必要となる場合、

 外部から購入し相手方メーカーのブランドで販売するケースです

 

*用語「ファブレス」
 ファブレス企業(fables enterprise)。メーカーでありながら生産部門を持た

 ず、設計・開発に特化した企業のことです。通常のメーカーでは、製品の企画か
 ら設計・開発、生産、物流と一連の手順を踏んで販売に至ります。

 この過程で、自社はもっとも付加価値の高い分野に特化し、あとはアウトソー
 シングする戦略が特徴です。しかし、実際の生産活動が設計・開発のためには

 欠かせないでしょう。いずれ、開発能力が落ちていく懸念があります

 

業務機能の変化の事例です

 

自社生産で直販するメーカーが、他社と合弁で生産機能を本体から切り離すとしま
す。新たに調達価格の査定が必要となりますが、見積書の構成も変わり、自社によ

る原価計算も不要です。くわえて、事業管理のしかた、収益向上策も変化します。
業務機能増減は、収益力強化の方策変化と同次元のことです (^v^)

 

 

◆収益能力の最大化とは

 

全体最適追求の立場から経営資源を最大限活用し、製品ライフサイクル期間中にお
けるマーケットからの売上を最大化することです。製造現場を例に採りましょう。

複数ある工程の能力がそれぞれ異なると、一番能力の小さい工程が製造能力となり
ます。ラインバランスが取れていない例です

 

企業全体も同じで、販売・生産・調達・物流の能力にアンバランスがあると、一番小さ
な業務能力の部分で収益能力が決定されてしまいます。複数部門間のPDCAが実

質回る役割分担への変更、あるいは業務機能の追加によりボトルネック業務が解消
し、結果的に収益能力の最大化に役立つのです

 

 

◆SCMの一般的定義

 

サプライチェーンマネジメント(SCM,Supply Chain Management,供給連鎖管理)
は、サプライチェーン全体の最適化と最終の顧客満足を高めようとする経営管理思

想を指しています

 

このサプライチェーン・マネジメントは「価値提供活動の初めから終わりまで、つ
まり原材料の供給者から最終需要者に至る全過程の個々の業務プロセスを、1つの

ビジネスプロセスとしてとらえ直し、企業や組織の壁を越えてプロセスの全体最適
化を継続的におこない、製品・サービスの顧客付加価値を高め、企業に高収益をも

たらす戦略的な経営管理手法」です。従来からの物流、ロジスティクスの領域を包
含しています

 

 

◆b.社内SCMの収益力強化の課題とは

 

ここまで、やや遠回りになりましたが、社内SCMにおける収益力強化の課題とは
何でしょうか。いくつか、例を挙げましょう

 

・内外製の線引き区分
 自社生産、外注、購入販売、OEMなどの選択です。収益力が変化します

 

・工場別・生産配分
 複数工場で同一製品を生産できる場合、収益最大となる工場別の生産品目割り付

 けをいいます。もちろん企業規模にもよりますが、生産配分が適正にされていな
 い場合、過去の例では年間5億円程度の損失が見られました。是正により、利益が

 その分増加します

 

・マーケット対生産インフラの適正比率
 年間販売量に対する生産能力の持ちかたの課題です。年間販売量 対 年間生産

 量、月間販売量 対 月間生産量、日間販売量 対 日間生産量など、マーケッ
 トに対する生産インフラの持ち方はさまざまです(ex.1.2 対 1.0)。収益最大

 となる適正比率を知ることが欠かせません。経営戦略そのものが対象です。当領
 域の課題を経営基準と称し、通常、コンサルティング対象としていませんm(_ _)m

 

・アイテム数設定基準
 顧客のニーズ充足割合を設定基準に反映させます。アイテム(品目)同士でニー

 ズ充足を重複させないことが肝心です。実際には、なかなか理屈どおり行かない
 ことが多いのですが、消去法的な進めかたで対応することが多くなります

 

・業務改革
 複数部門にまたがる課題を全社最適を指向する立場から、権限を持って管理する

 統制機能の推進強化策が該当します。そのために、新たなしくみも必要です。た
 とえば、生産日程計画の変更による製造原価と営業利益の変化を即座に算出し、

 部分最適ではなく全体最適の統制を可能とする支援システムが挙げられます。同
 時に、業務機能の追加や基本業務の役割分担是正も重要です

 

 

◆c.収益課題の抽出手順

 

統制対象はライン部門とし、通常は次の手順で実施します。実際には、業種・企業
規模の違い反映が不可欠です。生産配分の典型例を、一緒に付記しました

 

 1.収益力強化の課題抽出・発見
  ex.国内3工場の生産品目割り付けを、全社収益が最大となるよう是正

 

 2.課題を収益力強化に貢献させる方向性確認
  ex.生産品目割り付けで増減する変動費の定量化

 

 3.収益力強化の判断基準設定(=管理・統制指標)
  ex.品目別・工場別生産時の変動費水準の相対指標化

 

 4.推進管理の組織設置と権限付与
  ex.常に収益最大化の方向に統制できる実務と権限を持った組織の設置

   or 統制可能な観点から部門間の役割分担を再配置

 

 5.推進体制に基づく実施
  ex.業務運用マニュアル作成、社内周知、運用可能とする原材料発注・在庫

   管理のしくみ整備、割り付け生産品目時の製造原価・営業利益の算出、
   管理・統制指標の適宜な算出、運用開始

 

もっとも重要なことは、課題抽出の視点です。部門最適ではなく、全体最適を追求
する立場からの課題発見が欠かせません。鶏と卵はどちらが早いかの話のようです

が、修得にはある程度の実践経験を必要とします (=^^=)

 

 

◆d.収益課題抽出に必要なインフラ

 

前項の手順どおり実行するため、インフラが必要です。代表的な事項として、管理
会計の導入を挙げられます。実務に沿ったデータも、必要に応じて得られることが

前提です。たとえば、次のとおりです

 

・直接原価計算による実際原価算出
・変動損益計算書の作成

・感度分析、採算分析実施可能化
・予想変動損益計算書の適宜な作成

・生産日程計画シミュレーションシステムの実現
・管理・統制指標の設定

 

誌面の都合上、インフラの内容説明は省略します。ハードルが高いかもしれません
が、確実に進めていきたいものです (=^^=)

編集後記

 

津軽金山焼 展示館

右の写真は、展示館「ギャラリー和土WANDO」です。多くの作品が展示されています

 

津軽金山焼の窯元に立ち寄ってきました。近くの溜池の底に良質の粘土があるそうで、数百年分以上はあるだろうとのことです。5年に1度位、溜池の浚渫(しゅんせつ)も兼ねて粘土を取り出すとのこと。結構大掛かりなのに驚きました。最近は、あちこちで即売会をおこなっているため、作品が不足しがちとのことです。作品を見ていると、お茶を勧められ、しかも、工房の中まで案内していただけました

 

大窯

右の写真は登り窯の大窯です。訪問した6月4日に火を入れたばかりとのことでした

 

金山焼は、見た目が備前焼に似ています。備前焼同様に、ビールのマグカップには向いているそうです。小生宅にも、引越祝いにいただいた相当高い金山焼があります (∩_∩)

 

穴窯

右の写真が、一番古い窯、穴窯です。今、火を落として自然冷却を待っており、明日の朝、炉だしだから見に来ないかと誘われました(翌日6月5日は、結婚式に出席のため無理)。そばに近づくとまだだいぶ熱いのが分かりました

 

窯を見て、焼き物に触れ、その器で食事すると幸せですね。昔から、機会があれば自分でろくろを回してみたいと思っていました。ここでは、陶芸教室もあります

 

メルマガWebサイトには、展示館と、窯の写真を掲載しています。ぜひ、覗いて見てください m(_ _)m

 

津軽金山焼 http://www.kanayamayaki.com/index.html

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!