収益改善に役立つ統制指標の切り口

収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2010/08/23 No.71

【目次】

1.インセンティブ契約

まえがき

こんにちは 前田です!
                        芝園ふるさと祭り・太極拳

芝園ふるさと祭り今日8月21日(土)と明日22日(日)は、自宅から駅方向に歩いてすぐのところにある川口芝園団地の盆踊り(芝園ふるさと祭り)があります。小生も、当団地に1993年の春まで住んでいました。この団地は、JR蕨駅西口から約7分のところにあります。およそ2400世帯、5000人くらいが住むことができます。現在では、約3分の1にあたる800世帯が中国人になっているようです。日本の中でも、この比率はかなり高い水準となっています (^−^)

 

芝園ふるさと祭り・太極拳

    芝園ふるさと祭り・太極拳

 

最近は、空き家も増えているようです。募集看板が通りに立っています。盆踊りは自治会主催ですが、聞くところによると、中国人のかたは自治会加入の割合が小さいようです。ただ、お祭りは好きなようで、参加者は多いと聞きます。近いのですが、ほかの町会や自治会の盆踊りまでは参加しません

 

(この段落のみあとから追加)とは言ってみたものの、折角紹介したので原稿を書き終えてから、15:30頃、芝園団地まで行って写真を撮ってきました。まだ、明るいので盆踊りそのものは始まっていませんが、催しものを中心のスナップです。その後、小生も焼トウモロコシと生ビールをいただき帰途。写真はメルマガWebサイトでご覧いただけますようお願いします m(_ _)m

 

芝園ふるさと祭り

    芝園ふるさと祭り

 

マンションは、大抵一つの自治体になっています(小生のマンション住まいのときも同じでした)。川口市はマンション族が多いので有名ですが、田舎に帰る住民が多い自治会では盆踊りやお祭りを、今月半ば以降に開催するところが多いのも特徴です。現在、小生は一戸建てですが、この周辺の盆踊りは8月初旬に終わっています

 

芝園団地とその隣のマンションの盆踊りが終わると、夏も終わり何だなあと思えて来るのが不思議です。皆さんの地域の盆踊りは終わっていますか (?_?)

1.インセンティブ契約

インセンティブとは動機付けのことです。インセンティブ契約は、インセンティブ
制度あるいはVE契約と呼ぶこともあります

 

 

◆インセンティブ契約とは

 

インセンティブ契約とは、調達先の努力によりコスト低減された場合、低減額の一
部を調達先に付与し、コスト低減への動機づけ(インセンティブ)を高め、調達価

格の低減を実現する制度です。この制度の狙いは、調達価格を低減し調達元を含む
グループ企業のコスト競争力を高め収益拡大を図ることにあります (^-^)

 

収益増大のため、発注先から見た調達単価の低減は、マーケットシェア拡大、コス
ト競争力強化と、ごく自然な要求です。したがって、調達先に対するコスト低減要

請は、インセンティブ契約に限らず日常よく見られます

 

 

◆インセンティブ契約の活用度低い?

 

現実には、インセンティブ契約を活用したコスト低減がなかなか思うように進まな
いことも多いようです。なぜでしょうか?

 

調達先におけるコスト低減は、調達数量が同じであれば、売上高および利益の減少
となって現われます。改善努力をした結果が、自社の業績悪化になってしまうわけ

です (>_<)

 

インセンティブ契約は双方の弊害を避け、調達側・調達先ともにメリットが得られ
るWin・Winの関係を築こうとの狙いが元々あります。しかし、インセンティ

ブ契約の狙いが運用方法にうまく反映されず、活用されていないことも多いようで
す (^∧^)

 

そこで、運用に当たっての留意事項を中心に紹介します (=^^=)

 

 

◆Win・Winの由来

 

話はややそれますが、Win・Winの関係という言葉です。このように言われる
ようになったのは、日本にSCMが紹介されたときからと記憶しています。SCM

(Supply Chain Management)が日本に紹介され10数年あまり経ちました

 

同一サプライチェーンを構成する企業の最終顧客は同じです。共通する最終顧客の
顧客満足度を向上させるため、サプライチェーンを構成する企業が協同で取り組も

うとするのが、SCMの元々の考えかたでした。要するに、競争することだけでな
く、顧客満足度向上のため協同で取り組み、その成果をともに分かち合う関係が

Win・Winの由来というわけです。決して、いっぽうの企業のみが得をすると
いうことではありません (∩_∩)

 

歴史的には、インセンティブ契約のほうがずうっと古い時代からの方法です。時代
の変遷とともに、受け入れられやすい言い方に変わった一つと言えます (^-^)

 

Win・Winの関係構築

 

 

◆インセンティブ契約が活用されない理由

 

小生も最近でこそ、収益管理の強化、管理会計の導入などでお手伝いすることが多
いのですが、元々は製造改善や現場での改善中心でした。その頃に味わった典型的

な例を紹介します

 

関西にある大手重機械メーカーでのお手伝いです。建設用の重機が対象で、タイヤ
の径が大きいもので2m位あります。この大きさですと、タイヤそのものの重さだけ

で1トン以上です。対象品はタイヤ、エンジンなど、重機を構成するすべての部品が
対象とされました

 

部品調達先の訪問もたびたびおこない、その中の中小企業1社での出来事です

 

 

小生:先日、親会社の購買のかたと一緒にお伺いしたときお願いした情報収集の件
 で、今日は訪問させていただきました。今日からは、自分だけで来社させていた

 だきますので、宜しくお願いいたします。今日の予定は、部品製造から納品まで
 の実態を見えるようにしたいので、現場と実際に使っている帳表類を見せていた

 だき、必要な部分のみコピーをお願いしたいと思っています

 

社長:それはご苦労様です。協力させていただきます。始める前に、お茶でも飲ん
 でゆっくりしてください

 

小生:ありがとうございます(お茶を勧められ、いただくことにしました)

 

社長:親会社からの要望は、前回来られた購買のかたの説明でよく分かりました。
 また、前と同じことをやるのでしょうか (?_?)

 

小生:どういうことでしょうか (?_?)

 

社長:今回のように単価を下げて欲しいと要請されるのは初めてではないんです。
 以前もこんなことが何度もあります

 

小生:そうですか。それは知りませんでした。前のことで恐縮ですが、社長のお考
 えをお聞かせいただけますか

 

社長:以前のことです。親会社の景気が悪くなり、値下げの理由はないが、何とか
 10%単価を下げて欲しいと頼まれたことがあります。そこで、要望されたとおり

 協力させていただきました。その後、親会社の景気も良くなり、随分利益も出る
 ようになったようです。しかし、単価はそのまま据え置かれたままで、私どもへ

 の還元はありませんでした。今回も同じなんでしょうか (?_?)

 

小生:(初耳です。事前にこんなことは聞いていませんでした。困りました)
 そんなことがあったのですか。以前のことは、あまり聞いていませんでした。た

 だ今回は、以前のやり方と違い、親会社からの要望を上回るコストを御社側で実
 際に下げていただき、そこから納入単価低減という形でご協力をお願いすること

 にしています。いわゆる、理による改善で、無理矢理下げていただく情による決
 断を迫るものではありません

 (とは言ったものの、小生自身、内心は穏やかではいられませんでした)

 

社長:今まで何度もやって来た従来の方法が、今回変わると言われてもなかなか難
 しい気がします。今までの分をどうしてくれるのか、親会社から説明を聞きたい

 のが本音です。これは決して、情報収集とかに協力しないと言っているわけでは
 ありません。本来の進めかたになって来たと自分も思っていますので、協力させ

 ていただくべきところは、前向きに取り組みたいと思っています

 

小生:ありがとうございます。御社側のコスト低減活動を支援する意味でも、私ど
 もから見た課題の指摘と具体的な提案にまとめたいと思っています。今回訪問の

 狙いは、そのための情報収集です
 (社長の言われる方法で、値下げ要請が進んできたものを、理の世界に戻すため

 には、およそ10〜15年掛かると言われています。世代交代がされないと、不信感
 解消にはならないということです)

 

購買のお手伝いでは、このように調達先訪問をおこなうことも稀ではありません。
最初、親会社のかたとの訪問時には、外交辞令のやり取りから始まり、上記のよう

な会話には滅多になりません(注文量減など、親会社の報復を恐れるからです)

 

しかし、2度目からの訪問は、私どものみでおこなうことがほとんどです。その初日
は、前述の社長とのやり取りのような内容で終始することになります。2回目で実際

の情報収集まで至ることは稀です (^∧^)

 

 

◆さらにひどい場合の発言

 

ひどい場合には、次のようなことをお聞きすることがあります

 

・これまで親会社から受けた仕打ちのひどさの数々
・いかに自分達が親会社のいうことを聞くしかないという実態

・親会社自身ができていないことを要求している
・不信感をあらわにする

・表面上は、親会社の要望にはすべて応えようとつくろう

 

 

◆調達元のすべき事項

 

親会社にすべての責任があるわけではありません。調達先の自助努力が不足してい
ることも多く見られます。しかし、取引上の関係を考慮し、とかく被害者意識が発

生しがちであることを忘れてはいけません

 

親会社側に要望したい主な事項は、次のとおりです

 

・調達先の利用目的の明確化
 ここでは詳細の説明を加えませんが、利用目的によって以下の内容が大きく変化

 します

 

 ex.生産調整型利用、危険分散型利用、技術依存型利用、分工場型利用、
  採算型利用

 

・調達方針の明確化
 コスト査定できることが前提です。そのためには技術力が欠かせません

 

 ex.調達先に望む姿を明確にする
  品質(Quality)、価格(Cost)、納期や入手性(Delivery)、対応やサポート

  (Service)の水準

 

・調達先の経営実態把握
 定期的な情報交換の場を設けることを推奨しています。また、100%に近い資本関

 係の子会社には、独り立ちできるまでの育成が不可欠です

 

 ex.経営方針、経営者の資質、財務状況(損益計算書、貸借対照表、製造原価明細
  書)、組織体制、従業員の意識・レベル

 

・成果配分方針
 本来は調達方針の中の一項目です。今回はインセンティブ契約について述べてい

 ますので取り出して明記しました

 

 ex.インセンティブ契約の締結

 

 実質的に、自主改善あるいは技術開発できる体力が調達先に備わっていることが
 前提です。そうでないときは、親会社の育成方針と何らかの対策が欠かせません

 

 

◆インセンティブ契約の実効性向上

 

前述、大手重機械メーカーの外注先との「親子・親戚関係」では、インセンティブ
契約をいくら形だけ整備してもうまく行きません。不信感ではなく、互いの信頼関

係があくまでも前提です。前項内容と一部重複しますが、自主改善あるいは技術開
発できる体力が備わっていることも求められます。そのうえで、インセンティブ契

約の実効性を上げる次の項目実施を推奨します

 

・調達コスト査定
 調達コストの査定ができるということは、技術力が調達先以上にあることが前提

 です。技術力が相手より下回る場合は、正しいコスト査定はできません。たとえ
 ば、製造方法が分からないのに、製造原価算出はできません (^0^)

 

・調達方針明示
 前項、調達元のすべき事項に項目を掲げました。とくに、目標コスト明示は欠か

 せません

 

・目標コストを超える部分の利益は相手方に認める
 本来は、調達方針の一部を形成する項目です。インセンティブ契約に関わる重要

 事項のため、項目を分けました (^-^)

 

・インセンティブ契約の運用方法を調達先と十分擦り合わせる
 基本は、あくまでも共存共栄(Win・Win関係の構築)、共通最終顧客への

 満足度向上です (●^o^●)
 別な言い方をするなら、SCMの推進強化に相当します

 

 

◆インセンティブ料還元のイメージ

 

原価低減にともなう利益額の減少に配慮し、原価改善インセンティブ料(原価改善
提案料)還元のしかたで、調達先との合意形成が欠かせません。次の合意事例を例

示します

 

☆現状
・調達単価 100円/個

・調達先原価 90円/個、利益10円/個、利益率11%

 

 改善開始前に「原価改善提案書」を親会社に提示し、還元方法は合意済みです

 

☆改善後の原価
・原価低減後の単価 80円/個(利益率同じで、そのまま単価に反映時)

・調達先原価 72円/個、利益8円/個、利益率11%

 

 このままだと、同じ利益率11%とすれば、1個に付き2円利益が減少します。
 つまり、同じ利益率では、調達先の原価低減努力の分だけ割が合わないという

 ことです。
 ここでは、原価低減分の20円/個を調達元と折半することにしました

 

☆新調達単価への改定
 新調達単価を 90+α=92円/個 としました。内訳は次のとおりです

・調達先原価 72円/個、利益8円/個(利益率11%)、原価低減による還元分10円、
 従来得られていた利益10円との差額2円

・ただし、この適用期間は3年間としました。3年経過後は、原価の11%を利益とし
 て認めるのみとなります。同時に、原価低減のために要した費用は、話し合いに

 より一部補填を認めています

 

このように運用することで、調達元・調達先ともにメリットが得られることになり
ます。まさに、Win・Winの関係構築に役立ったことになります  (^^)♂♂

 

インセンティブ料還元のイメージ

 

◆インセンティブ契約運用案例

 

インセンティブ契約の運用案の例を紹介します。実態に応じた修正が必要です。く
れぐれも、このまま適用することのないようお願いしますm(_ _)m

 

項目は次のとおりです。つづいて、内容を紹介します

 

・運用方法
・原価改善案の範囲

・原価改善案の提出時期
・原価改善案の提示書類

 

 

◆運用方法

 

1.製造原価改善の提案をすると、納入単価が低下するため、製造原価に乗じて算出
 される利益が減少してしまいます。そこで、原価低減に対するインセンティブと

 して、一定の範囲内で利益額が低減しないよう利益率を優遇します

 

2.量産段階の原価改善にとどまらず設計段階も含めます

 

3.原価改善の対象は経費等すべてを対象とします

 

4.単価改善額の50%を3〜5年間程度、原価改善提案料として還元します。ただし、
 この計上割合は、期間内での傾斜配分を容認します。算出は、還元年数の原価改

 善提案料総額の90%以内で各年設定します。還元総額は変わりません
 ex.1年目 70%、2年目 60%

 

5.調達先に対し、一定期間毎に原価監査を実施します。ただし、原価改善提案部分
 については、原価監査の対象外です

 

6.原価改善にともなう必要経費がある場合は、原価改善提案料を計上する初年度の
 契約においてのみ、低減額から必要経費を控除します。必要経費が低減額を上回

 る場合は、低減額と同額とみなします

 

 

◆原価改善案の範囲

 

1.調達先の経費削減による調達価格の低減が可能な提案
2.仕様書等に定める機能および性能を低下させることのない提案

3.使用材料、加工方法等の変更に係る提案で、調達先において原価改善提案活動等
 として計画された提案、または外注先において原価改善活動等として計画された

 提案
4.提案前と提案後の相違を明確にすることが可能な提案

5.原則として納期の変更を要しない提案

 

 

◆原価改善案の提出時期

 

1.新製品については、設計、製造段階で受け付けます
2.量産段階の製品は常時受け付けます

 

 

◆原価改善案の提示書類

 

1.原価改善提案書
 原価改善活動の方法、効果を記載したもの

2.提案書を補足するために必要な添付資料

 

小生は、弱いものいじめは好きでありません。企業の親子・親戚関係においても基
本は同じです。調達元から見た調達先は、グループ企業、あるいはサプライチェー

ンを構成する企業群の一部であり、最終顧客の満足度向上という目的では同じにな
ります。将来を見据えた方針を立案し、協同で事に当たるようにしたいものです

 (^o^)//””パチパチ

 

編集後記

予定より原稿が長くなってしまいました m(_ _)m

 

暑い暑いなあと思っていたら、やはり異常気象のようです。ロシアでは干ばつの被
害で、小麦の輸出を禁止すると報道されています。今後、食品の値上げに直結する

のではないでしょうか。日本の農業政策も、今後起こりうる世界的な食糧不足に備
えた方向性検討も必要なのではないでしょうか (^∧^)

 

◆円高の影響に懸念

 

円高の影響は、これから深刻になる様相を呈しています。為替レートを比較してみ
ましょう。年初2010年1月4日と昨日8月20日の順で表示します

 

米ドル  92.17円  85.64円 7.08%円高(年初は円安と予想)
ユーロ  133.44円 108.86円 18.4%円高(年初は円高と予想)

英ポンド 149.04円 133.00円 10.7%円高

 

括弧内のコメントは、年初1月23日、経済セミナー参加時の講師の予測です。そのと
きのコメント要約を再録します。括弧内は小生の注記です

 

◆米ドルの予測は現時点で逆の動き

 

米ドルは、2月下旬から3月末に一時下落する(=円高)ものの、その後、上昇する
(=円安)との予測。一般に言われている米国経済の危うさとは別に、意外にまだ

まだ基軸通貨としてしばらくは持つのではないかとのこと
(年半ばですが、現時点では予測と反対になっています (>_<))

 

◆ユーロの予測は的中

 

ユーロは、まもなく下がり(=円高)始め、3〜5月頃には一旦上昇(=円安)を見
せるものの、その後また下がっていく(=円高)だろうとしています。ユーロ圏の

中でギリシャ問題が背景にあるとのことでした
(3〜5月の中でユーロの最高値は、4月26日、1ユーロ145.26円、年初比8.85%の円

安です。このコメントは見事に当たっています (^o^)//""パチパチ)

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!