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収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報! No.2】
発行 2009/03/16
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【目次】
1.経営コンサルタントに向いている人とは
2.収益改善とは
1.経営コンサルタントに向いている人とは
こんにちは 前田です!
創刊準備号で、経営コンサルタント志望者が増加傾向にある旨述べました。反面、
去って行かれるかたも多いのが実態です。それでは、コンサルタントに向いている
人はどんなタイプなのでしょうか。小生もこの世界に飛び込んで25年になりますが、
なかなか難しい質問です(汗)。あえて言うなら、次のようになるかもしれません
◆経営コンサルタント向きなタイプ
1.真面目である
2.向上心に富む
3.人の話を聴ける
◆経営コンサルタントとして長続きするタイプ
1.お客さまが価値を認める
2.仕事をいただける
3.異なる切り口を提供できる
4.コンサルタントの仕事が好きである
経営コンサルタントはプロの集団です。定年を設けているコンサルティングファー
ムもありますが、原則として引退に年齢制限はありません。本人と周囲が辞める時
期を理解したときです。現に、小生の大先輩で現在68才、現役ばりばりで一緒に時
々やらせていただいているかたもおります。また、今は引退していますが、昨年は
海外旅行に3回も行っている現在83才のかたがおります。小生に物流を教えていただ
いた恩師でもあります。80才まで現役でした。共通項は、個性が強烈なことでしょ
うか(笑)。この世界のいいところは、いいところさえ持っているなら、それを伸
ばすことで生きていけるところかもしれません。ちなみに、小生はごく普通並です
…
2.収益改善とは
一般に収益とは、営業活動などで得た収入のことをいいます。ただ、ここでいう収
益改善とは、売上高と利益の増加あるいはコスト低減に寄与する意味で使います。
収益改善のとらえ方を業務改革と混同している例が多いですね
収益改善と業務改革では、どんな切り口、あるいは視点から見るのか。また、それ
ぞれの改善・改革対象は主に何なのか。業務改革は、社内各部門自身の能力引き上
げ、あるいは部門内の処理能力向上のためにどうするかという視点に立つことが多
く見られます。次に事例を紹介します(仕事柄から秘密保持の義務があり、数字等
は変えています)
◆業務改革取り組みの事例
その1)10人で稼働する生産設備があります。5人で稼働可能なように設備を改造で
きるめどが立ちました。投資計算の結果もOKです。実施後、生産性は倍以上
になりました
その2)営業事務部門には、20人います。業務分析の結果、情報システム化により10
人で処理ができ、処理期間も3分の1で済むと判明、投資採算はトントンです。
しかし、処理期間の大幅短縮による効果が大と判断され、情報システム投資に
踏み切りました
その3)某メーカーの製品は、お客さまの現場に据付られて引き渡し完了となる耐久
消費財です。製品の品質クレームがなかなか減りません。ここ数年、毎年3億円
程度、クレーム処理費用が発生しています。現場に搬入される前の工場出荷時
点で、製品はもちろん検査済みです。クレームは、主に現場搬入直後と据付工
事中に発見されます。営業・製造・物流ライン部門の見解が異なり、効果的な
手が打たれていません。そこで、ライン部門全体に指示できる社長直轄の品質
保証部を設置しました(期待にそぐわず、組織は1年後に解体)
その4)大半がメーカーのグループ企業があります。グループ成長の要因は、野武士
的な個性の武将を要所に配置し、それぞれを競合させるように経営してきたと
のことです。各武将も引退していった現在、任せてきた企業の中身がさっぱり
見えないと述懐されています。そこで、グループ同一の視点から方針・政策立
案の基となるERP導入に踏み切ったわけです。数十億規模の投資により、主
要グループ企業の中身をガラス張り化したわけです
その5)某メーカーでは品切れが十数年に渡ってなくなりません。国内マーケット
シェアは70%で、右肩上がりに販売量が増えてきました。この分野では、市場
で一般的な規格とみなされるディファクトスタンダードとなっています。品切
れ発生は、生産能力以上に受注する、販売の季節変動に短期的な生産能力に不
足発生、長い生産リードタイムに受注変動が対応しにくい、生産能力を定量的
に把握できていない、品切れを発生させない基準在庫が不明などなどあります。
ここでの対策は、販売計画の精度向上より、生産側で品切れを発生させない在
庫保有化の方向で解決に取り組むことにしました(現在、品切れが解消してい
ます)
これらの例は、いずれも生産・設備・人の経営資源の効率あるいは処理能力を向上
させる試みです。投資をともないがちで、経営計画是正の立場からの取り組み多い
と思います。まとめると次のとおりです
■業務改革
1.切り口
資源効率、処理能力向上と捉える
ex.少ない資源(人・設 備)で処理量を増やす、時間当たり業務処理量を引き上
げる
2.改善対象
経営戦略立案、経営計画是正に目が行きがち
ex.中長期の経営計画、販売戦略・生産投資、人事・組織改革をおこなうのが有
効とする
次に、収益改善の立場から見ていきましょう
◆収益改善取り組みの事例
某メーカーの工場診断にお伺いしました。産業用資材の供給が主であり、原料投入
後から製品化に至る生産リードタイムが数カ月と長いのが特徴です。製造は、装置
型ですが、連続プラントではなくバッチ式に工程が構成されています。工程間には
仕掛在庫が存在し、24時間の連続操業が基本です。現状は、仕掛・製品計で生産リ
ードタイムの約2倍の在庫があります。お客さまの要請は、生産リードタイム+
アルファ並の在庫に抑えたいこと、マーケットの販売変動に生産が即応できるしく
み構築にあります。言葉を替えていうなら、マーケットの変化に柔軟に即応できる
体質改善の実現です
製造現場の見学、現状の管理状況ヒアリングをとおして感じたポイントは、次のと
おりです
◇ヒアリング結果のポイント
1.在庫基準が不明
在庫が多いのか少ないのかの判断基準が、ベテラン生産計画者の頭の中に存在。
いろいろなケースがあり一概に言えないと話されています(のちに、在庫基準を
設定)
2.生産能力の定量化がされていない
大まかに月間この位製造可能とは言えますが、やはりベテランの頭の中にしま
い込まれた状態でした(のちに、生産能力の定量化完了)
3.生産計画と実績の予実績把握困難
生産日程計画が都度変更されるとのこと。計画が月中で幾つもあり、予実績の対
象が不明確。仮に、予実績差異がわかったとしても、どのように使うのかイメー
ジできないとのお話しでした(のちに、情報システムツール化)
4.技能の引き継ぎが急務
各所におられるベテランの定年退職時期が迫っており、技能の伝承が重視されて
いました(技能から技術に転化させマニュアル化完了。マニュアルだけでは伝承
不可能です)
◇私どもの所見
1.収益最大とする工場稼働の姿を知ること必須
マーケットに対し、どのように工場を稼働すれば収益最大となるのか知ることが
重要です。原料調達の制約、受注あるいは見込み生産、納品リードタイム、品質
等が影響してきます。言葉を替えていうなら、事業収益を産み出すビジネスモデ
ルの明確化が課題です(説明が長くなりすぎると思いますので、ここでは省略し
ますが、ヒアリング当日に口答で提案させていただきました。のちに、この基本
的な考えかたによって生産能力の定量化、在庫基準の設定等おこなっています)
2.マネジメントサイクルを回すことが不可欠
在庫基準をはじめ、定量的に説明できない部分が多過ぎベテラン方には分かって
いるのですが、PDCAのマネジメントサイクルも回せない状態でした
3.ルール、基準の設定
在庫基準、生産計画立案のルール、製造管理の運用ルール等の整備が必須です。
また、在庫基準設定の前提には、生産能力の定量化が不可欠となります
4.ライン部門の業務運用改善
単に、製造部門の改善にとどまらず、販売、受注、生産計画、および製造から顧
客納品に至る業務の運用がスムーズにされることが必要です
説明の都合上、事例は1つだけにしました。業務改革との違いがお分かりいただけた
でしょうか。収益改善は、あくまでも部門間の調整ではなく、権限を持って調整す
る統制機能の強化が主となります。まとめると次のようになります
■収益改善
1.切り口
収益改善を、現状販売力是認、販売・生産・物流各部門間コントロール強化に
より、全社収益能力の最大化図る
2.改善対象
経営戦略・計画、組織・人事に触れずにおこなう
ex.・顧客ニーズ充足率向上、各部門の役割分担是正、統制のしくみ構築
また、次回お会いしましょう