収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
 発行 2009/08/24 No.26

 

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【目次】

1.コスト意識が高いとは

まえがき

こんにちは 前田です!

 

お盆が明けたら天気が良くなりましたね(=^^=)
東京では湿気が少なくなり、風も秋を感じさせるような感じです

 

新型インフルエンザが、また流行りだしました。厚労省では、ワクチンが限られて
いるので、優先接種の順番をこれから決めるようです。適度な運動をおこない、夏

の疲れを残さなければ、新型インフルエンザにも冒されないのではと考えています

 

あれだけ騒がれた新型インフルエンザも今年4月末から7月3日時点で、世界での症例
数が約3万人でした。しかし、WHO発表の2009年8月13日現在までの累積症例数で

は約18万人強と報告されています。メディアの関心が遠ざかったにもかかわらず、
急激な症例増です

 

本日、22日(土)もスポーツクラブで泳いできました。土曜日は、いつものことなが
ら混んでいますね。プールで邪魔者扱いされない程度でやめています。明日、また

泳ぐ予定です(^−^)

 

絵を描くなどの趣味は持ち合わせていませんが、汗をかくスポーツをやらないと、
ストレス解消はできません

1.コスト意識が高いとは

コスト意識が話題になることがあります。このコスト意識が高いとは、対象となる
もののコストが算出され、判断基準として使われていることです。単なる意識の高

揚ではありません。
しかし、意外にやっかいなテーマですね(^v^)

 

小生のセミナー出席者からも、コスト意識の質問をいただきます。たとえば、うち
の営業はコスト意識が低い、製造のコスト意識を高くしたい、在庫をコストと思っ

ていないなどなどです。お尋ねしてみると、次のようなケースがあります

 

 

◆実例1:製紙メーカー・経営企画部長

 

部長:うちの会社はコスト意識が低いんです。とくに、会社の中堅どころが問題
 だと思っています。実際に営業活動などへの影響が大きいですからね。そこで、

 2カ月ほど前、営業、工場の課長・係長クラスを対象に、社内の経理担当者を講
 師に、損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)の見方を中心とした講習会を

 開きました。しかし、効果があったように思えないんです。受講した営業のA君
 は次のように言っています

 

A君:講習で教えてもらった、損益計算書や貸借対照表の見方は大変参考になりま
 した。だけど、毎日おこなっている業務と、どんな関係があるのか今一つ分かり

 ません。結局、知識としてはいいんですが、あとどうすればいいんでしょうか?

 

部長:どうにも返答しようがなかったですね。私自身もどうすればいいのか分から
 ないんです

 

小生:低いコスト意識を変えようとするのは、何のためですか?

 

部長:お客さまからの値下げ要請が強いことと、反面あまり儲かっていないことが
 背景にあります。営業は、お客さまから相見積もりされると、どうしても値引き

 してしまうんです。もう少し、採算を考えた営業をしてもらいたいのが背景にあ
 ります

 

 【採算とは何でしょうか? 採算を考えた営業とはどういうことですか?】

 

小生:なるほど。工場のかたも講習に出席したそうですが、その後何かお話を聞い
 ていませんか?

 

部長:生産計画担当の係長B君が、つい先日、次のように言っていました

 

B君:この前の講習のことですか。確かに勉強になりました。今まで、あのような
 話を聴いたことがなかったですから。それに、当社の業績がどうなっているのか

 分かって良かったです。ただ、日常業務との関係ですが、ほとんどありません。
 コスト意識を高くするためと聞いていましたが、どうすればいいんでしょうか

 

小生:B君の言うことはもっともですね。ところで、講習を受けてから、製造側の
 B君には何をして欲しかったんですか?

 

部長:もちろん、コスト意識が高くなって、製造として採算が良くなるようにして
 欲しいことです

 

 【採算を良くするために製造にできることは何でしょうか?】

 

 

◆実例2:アルミシャッターメーカー・副社長

 

某社の副社長は、もともと取引銀行から移籍されたかたです。管掌は生産ではあり
ませんが、社内のコスト管理に問題ありと従来から主張されているようです。たま

たま、DMで小生のセミナーを知り出席されました。やはり、コスト意識をもっと
高くして欲しいとのことですが、内容は次のとおりです

 

副社長:最近、同業の工場を買い取ったのですが、製品別のコストがはっきりしま
 せん。私から見ると、自社工場より安くできているような気がしています。

 もともと、自社工場のコストも詳細に計算したことがないんです。社内では、製
 品が大きくなると材料費もかさみ、製造原価も上がるはずと言っています。

 ただ、私は必ずしもそうではないと思っています。一度、実際に製造原価が工場
 別にどうなっているのか算出してみたいんです

 

 とくに、大きなシャッターになると工場で造ってから現場の建屋に取り付けるの
 ではありません。どちらかと言えば、現場で造り込む式の工事になってしまいま

 す。したがって、一概にシャッターといっても、工場生産できるもの、同じ工場
 生産でも完全な受注生産、受注生産だが現場造り込みタイプなど色々あります

 

小生:製品別の製造原価をはっきりさせたいということですが、現状の原価計算は
 どんなやり方を採用しているのですか

 

副社長:会社全体のしくみは財務会計です。私の管掌下ではありませんので、原価
 計算そのものをどんなやり方でやっているのか把握していません。しかし、社内

 で計算した製品別の結果を比べると、計算方法がおかしいと思えてしょうがあり
 ません

 

小生:実際に計算しているかたに直接お話しを伺いさせていただくのが、近道なよ
 うな気がします。というのは、上場企業でも原価計算の算出マニュアルが揃って

 いるのは、これまで見たことがありません。マニュアルがあっても、大抵のケー
 スでは実態と異なっていること多いんです

 

副社長:製造担当者には、原価計算を見直してくれと言っているのですが、なかな
 か前に進んでいません。外部から見てもらった方がいいと考えていますので、検

 討したいと思います

 

小生:競合の激しいマーケットでは、原価計算のしかたが製品の競争力を左右する
 場合が多々見られます。計算のしかたによって、高くも安くもなるからです。ま

 た、販売価格の設定にも大きく影響します。実際の姿を一度確認されることをお
 勧めします

 

 【シャッターは意外に受注生産が多いようです。いっぽうで、量産型もあるもの
  の、原価計算の方法は同じと推定します。性格の異なる製品を同一のやり方で

  原価計算、販売価格設定には無理があるかもしれません】

 

 

◆ケチケチ運動

 

コスト意識というと、よく紹介されるのがケチケチ運動ですね(最近は、もったい
ない運動と呼ぶらしい)。もっとも、何のためにやるのか目的を事前にはっきりさ

せることが必須です(^−^)

 

ケチケチ運動を小生は好みません。職場が暗くなってしまう嫌いがあります。照明
を消すことが多いので、本当に暗くなっていることも多いのですが…(苦笑)

 

人によって違いますが、居心地の良さは適度な無駄と余裕によって生まれるのでは
ないかと思っています。几帳面なかた、ずぼらなかた、おおようなかた、繊細な神

経のかたなど、人それぞれですが、居心地の良さも企業には必要なのではないで
しょうか(∩_∩)

 

ケチケチ運動の事例は多いですね。たとえば、ほんの一例ですが次のとおりです

 

・来客でお茶が出なくなった
 来客を受けたかたが自分で入れる

 

・鉛筆などの事務用品の一部支給廃止
 家庭内に転がっているものを持参

 

・カラーコピー機の廃止
 最近はカラーを前提とした書類が多く困ることがあります

 

・コピー機使用の許可制
 順番待ちなどで書類作成の滞留が生じることあり。

 そもそも、稼働率を問題にするものなのでしょうか

 

・チラシの裏をメモ用紙に使う
 メモ用紙を作る作業のコストは比較対象外?

 意外に高くつきます

 

 

◆お茶が出なくなった例

 

実は、小生が在籍していたコンサルティングファームのプログラムに業務の効率化
があります。このプログラムでお手伝いした企業では、よく見られるようになった

例の一つが、来客にお茶を出すことの廃止でした(苦笑)

 

その後、別なコンサルティングテーマで、同社のお手伝いさせていただいたとき、
よく言われたものです。お茶が出なくなりました…と(>.<)

 

 

◆業務量削減30%は普通

 

確かに、業務の目的を考え、目的に合う代替案を摸索すると、業務量は多くのケー
スで30%位削減可能です。当時、この結果を見て思いました。人の集団、あるいは

人が中心の業務では、時の経過で目的と合わない業務がアカのようにたまってくる
ものなんだなあと気付かされたものです

 

 

◆ケチケチ運動はコスト削減が目的か

 

さて、実際にケチケチ運動がコスト削減にどの程度寄与するのか、疑問なケースも
よくあります。ケチケチ運動とコスト削減とは、本来別なことのような気がしてな

りません。小生も、コストのことはよく言いますが、これらのコスト評価はやった
ことがありません。職場の志気低下や、手間暇をかけて見えにくい別なコストに振

り向けて満足するようなことはしたくないものです

 

【本来は、目的の明確化と、目的に合う行動に変えることではないでしょうか】

 

 

◆無駄の認識

 

ただ、無駄が分かっていない、無駄なのに無駄と認識されていない場合は問題外で
す。無駄を無駄として認識している場合は、余裕と呼びます。無駄と余裕を使い分

けて、環境にやさしいエコで、しかも省エネに貢献できるのであれば申し分ないで
すね(^−^)

 

言い忘れました。私どもの言う無駄とは、目的と一致しない、あるいは目的のない
ものを言います。念のため…(=^^=)

 

 

◆コスト意識が高いとは

 

ところで、コスト意識が高いとはどういうことでしょうか。冒頭に申し上げました
ように、コスト意識が高いとは、対象となるもののコストが算出され、判断基準と

して使われていることを指しています。製造と営業のケースで例を挙げると、次の
ようになります

 

 

◆コスト意識の高い製造現場

 

基本は、工場で日常発生する業務の製造原価や営業利益におよぼす影響が分かって
いることです。ここに掲げた原価や営業利益への影響度をもとに、現場での判断基

準や運用ルールが決められればベストです(●^o^●)

 

・歩留まりが1%上がれば製造原価が○○円下がる
・稼働率1%は製造原価△△円に相当する

・仕掛在庫1日分は□□円に相当する
・直行率1%は製造原価◇◇円になる

・生産割り込みと製造原価の変動が分かっている
・製造原価が1%下がれば、営業利益が○%上がる

 

 

◆コスト意識の高い営業

 

工場と同様に、次に挙げた項目例のコスト、製造原価、営業利益が捉えられるように
なればベストです。結果として、営業活動における判断基準を形成することになりま

す(=^^=)

 

・客先ごとのアイテム別損益が把握されている
・客先への納品ロットによる損益への影響が分かっている

・実態に基づく損益改善の営業行動が採られている
・販売量を増やすのと、利益額・利益率を増やす違いが分かっている

・一客先の損益が全社の営業利益に寄与できるか判断できる
・収益に貢献するアイテム増減の提案を客先にできる

・客先自体の損益改善提案ができる
・客先ニーズに対応する新製品提案を社内にフィードバックしている

・製品別の収益力の違いを知っている
・製造余力を知った製品販売を提案できる

・自社の強みを生かした中期的な販売計画を立案できる

 

製造および営業は、業種・業態・企業規模等によって変わりますので、必ずしも同
じとは言えませんが、皆さんの企業ではどうなっていますか。ここに挙げたような

ことが、分かっていますか。これらが下地となって、日常作業の進捗がチェックさ
れていればベストですね(^−^)

 

 

◆コスト意識の高さの判断基準

 

コスト意識を高くするために、財務諸表の見方、原価計算のしかた、損益とは何か
などの勉強が不要とは言いません。しかし、もっと大事なことは、個々人がおこな

う業務の目的を知ることです。次に、目的に見合う時間配分(資源消費)になって
いるのか判断します。この判断基準にコストや収益が必要となるわけです

 

 

◆判断基準と留意点

 

この判断をおこなうときに、注意すべきことがあります。やめる、半分にする、代
替案を探すなどのときが、このタイミングです。一業務の最適解が全体的、あるい

は全社の最適解と合わなくなることもあります。また、留意したいのが人間性に反
する案の排除です(事例で紹介)

 

私どもは、一部門内での判断基準となる代替指標を管理指標と呼び、部門間にまた
がる全社最適判断の同指標を統制指標として役割分担を図っています

 

 

◆両手同時動作の例

 

改善をおこなうときに、動作経済の原則というのがあります。その中で、合理的な
作業方法の設定や、生産性向上の面から両手同時動作が望ましいとされているもの

です

 

・両手同時動作の原則適用
 ベッドが両サイドに並ぶ病院の大部屋で、入院患者の検温を想定します。看護師

 のかたは、体温計を一杯入れた箱を首からぶら下げ、通路を進みながら両手で体
 温計を箱から取り出し、両サイドの患者さんに配る案です。作業能率が倍になり

 ます。しかし、人間性に反する、この手のことをやってはいけませんね(^∧^) 

 

・同上 その2
 経理部門における案です。数百枚単位の単票の合計を計算する業務があります。

 左手で単票をめくりながら、右手で電卓を叩き、計は右手で書きとめつつ、両手
 同時動作をおこなう。入力ミスを引いた正味の電卓タッチ数は秒5回以上、当業

 務従事後3カ月以内に達成を合格ラインとする標準作業を設定

 

 【皆さんはどう思われますか。実は、経理の案は以前お手伝いした企業で実際に
  作った改善案なんです】

 

 

コスト意識について語られることは多いのですが、笛吹けど踊らずにならないよう
にして欲しいものです。そのため、何のためにコスト意識…と考えているのか、自

分自身が言いたい何かをはっきりと認識することが欠かせません。くれぐれも、愚
痴の言い合いにならないようにしましょう

 

本項の最後になりますが、コスト意識の具体化には収益判断が不可欠です。小生の
セミナーに関連する内容がありますので、主要項目のみご紹介します

 

 

◆収益判断はできますか

 

これまで6回開催済み「統制指標」セミナーの収益部分の抜粋です。一部、セミナー
でご質問される内容も追加しました。次の疑問に答えられるようであれば、このセ

ミナーの収益に関する部分にわざわざ出席する必要はありません。むしろ、事例発
表の講師にお招きしたいところです

 

・営業利益を1億円増やすための売上高はいくら?
・売上高が10%増えたときの営業利益はいくら?

・販促は、1個当たり粗利や限界利益が大きい製品を優先すべき?
・営業利益が赤字の製品を販売中止すべき?

・売上数量増による製造原価減をどうやって算出する?
・競合が厳しいときの販売単価の決め方は?

・生産可能設備と工場が複数あるときの生産割り付けは?
・同上割り付けかたによる営業利益変動の算出方法は?

・客先納品ロットなど納入条件別の採算把握方法は?
・在庫増減と営業利益の変動を算出する方法は?

・部門間で利害の異なるアイテム増減を営業利益で捉える方法は?
・工場の稼働率が1%増になると営業利益は増える?

・生産リードタイムを短縮すると製造原価は下がる?
・複数工場、外注を行き来して生産されるアイテムの採算把握は?

・数が多い新製品の一つ一つの採算を把握する方法は?

編集後記

コスト意識と同じように使われるたとえ話があります

 

火災予防週間につき、消防署から製品火災の発生防止に向けた取組みの推進申し入
れを社長が受けました。社長は総務部長に、その旨を伝え社内での徹底を指示

 

総務部長は、製品火災だからと工場に同様の趣旨を伝えました。指示を受けた工場
長は、製造部長に伝達。製造部長は、製造課長に同じ指示内容をさらに伝達

 

製造課長は、朝礼で各職場の責任者に製品火災の発生防止に向けた取組みの推進依
頼を消防署から受けたことを説明。職場の責任者は、同様の内容を作業者に伝えま

した

 

作業者は、指示する人がいないので、工場の外に向かって声を上げたのです

 

この例は、指示・伝達がいつまでも具体化されずに伝わる悪い見本です。コスト意
識についても同じようなことが見受けられます。また、縦のマネジメントサイクル

がうまく実践されていないケースでも同様です。職階に応じた役割の具体化が欠か
せません。他山の石を持って、自らのおこないを正したいものです

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう(^.^/)))~~~bye!!