収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
 発行 2009/10/19 No.33

 

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【目次】

1.利益計画立案の流れ

まえがき

こんにちは 前田です!

 

先日、読者のかたから先週号が届かなかったとのご指摘を受けました。祝日月曜は
原則お休みにしているのですが、考えてみると今年3月7日に発行し始めてから、

初めて休筆したことに気がつきました

 

実は、余裕があったら書こうとは思っていたのです。ところが、急なコンサルティ
ング企画書作成が飛び込んできたこと、そのほかの原稿を2つ抱えていたことなどか

ら、結果的に手が回りませんでした(^∧^)

 

さて、本日は多くの企業で問題となることが多い、利益計画立案の流れについて述
べることにします

1.利益計画立案の流れ

後段で詳細に解説していますが、今回採りあげる利益計画は、経営目的達成の予想
損益計算書の立案を指しています。各企業における実態を見る限り、実に問題の多

い領域です

 

 

◆利益計画が今回テーマ

 

これまでに、管理会計の便利な分析ツールを幾つか紹介しています。全体最適判断
には、欠かせないツールだからです。利益感度分析、採算分析、採算感度分析が相

当します。分析するまでもなく予算を上回って儲かっている場合は、それだけで事
足りるはずです。さらに上を目指す場合には別ですが(=^^=)

 

*用語「利益感度分析」
 利益感度分析とは営業利益の算出式を構成する変数の変化による、営業利益増減

 への影響度を明らかにすること

 

*用語「採算分析」
 固定費の回収実態を知ること

 

*用語「採算感度分析」
 採算分析と利益感度分析を一緒におこなう分析方法であり、採算検討のシミュレ

 ーションに活用できます。採算感度分析の目的は、目標に対する実態、採算性の
 把握、営業利益算出の変数の変化が固定費回収と営業利益増減に与える影響度を

 知ることです(小生の造語)

 

 

◆全体では儲かっていても散在する赤字品

 

実際には、全体で利益が出ていても顧客別・アイテム別の細部を見ると個別の客先
あるいは客先アイテム別では、赤字がちらほら発見されることが多いものです。と

くに、競合の激しい製品やライフサイクルの短い製品では常に看視が欠かせません

 

◆採算改善策の3つのステップ

 

採算改善策の立案では、通常3つのステップを踏みます。採算とは費用を変動費と固
定費に分解し、付加価値あるいは限界利益対固定費の関係に直して見ることです。1

つ目の作業ですが、利益の実態を知るため、売上から営業利益算出に至る採算分析
をおこないます。マネジメントサイクルでは予実績評価(Check)の段階です。手順

は次のように1の売上高算出から、5の営業利益把握に至ります

 

 

◆1つ目の作業:採算分析

 

        計画 実績
1.売上高     100  65

2.変動費     40  30
3.限界利益    60  35(売上高−変動費)

4.固定費     40  40
5.営業利益    20  -5(限界利益−固定費)

 

採算分析の流れ

この算出した帳表そのものは、変動損益計算書(変動PL)に当たります。実際は、変動PLを基に採算分析をおこなうわけです。この手順を述べること自体、何を今さらと思われるかもしれません。確かに、ごく当たり前のようにおこなわれていることです。少しの間、ご辛抱お願いしますm(_ _)m

 

*用語「変動損益計算書」
変動損益計算書(変動PL、Profit and Loss Statement )とは、売上または製造数量に比例する変動費と、以外の固定費に区分して事業損益を算出するための計算書を指しています

 

 

2つ目の作業は、差異要因解析(Act)のステップに当たります。目標未達の場合に
は、どんな対策が必要なのか差異発生の原因を知ることです。この段階で、要因解

析がうまくされないと次の段階に進めないことがあります。現状業務のマネジメン
トサイクルでは、重要な部分になるかもしれません

 

 

◆2つ目の作業:差異要因解析

 

通常の採算感度分析では、差異発生の背景にある要因までは分かりません。そこで、
管理対象の調査・分析が必要となります。調査で原因が分かれば、それに越したこ

とはありません

 

製造現場においては、技術そのものが原因でなければ要因解析が比較的容易かもし
れません。しかし、販売の場合は、現状を基にした分析では答えが得られないこと

が多く発生します。分析できない場合は、デザイン的に進めることになります。こ
れが、なかなかうまくいかないんです(>_<)

 

何故なんでしょうか。対象によっても異なりますが、差異要因解析と次ステップの
計画に発展させるため、次の知恵が役立ちます。世間的にも、マネジメントサイク

ルでは、当段階を苦手と認識している企業が多いことも事実です。次の何かが不足
していることが大半でしょう

 

 

◆差異要因解析に有効な知恵

 

・実態理解に必要な知識・技術
・実態の正しい把握(定量化望ましいが完璧は求めず)

・実態の水準を判断できる物差し
・あるべき姿に対する自らの知見(物差しの一部)

・会社・部門方針
・差異解消に役立つ多様な手段

 

課題に対して「こうするべきだ」と言えるのは、上記の知恵が発揮されたときです。
個々の中身は省略しますが、現状と望ましい姿、実現の手段が分かって初めて、実

現性ある計画立案ができます

 

理由は後回しにして、利益計画立案時の基本的な手順を次に確認しておきましょう。
マネジメントサイクルの計画(Plan、対策立案と目標設定)段階に相当します。実

績と計画は、既述の採算分析と同じ数字です

 

 

◆3つ目の作業:利益計画立案

 

        新計画 実績 当初計画
1.目標営業利益   25  -5    20

2.予定固定費    50  40    40
3.目標限界利益   75  35    60

4.予定変動費    45  30    40
5.目標売上高   120  65   100

 

利益計画立案の流れ

 

新計画は、採算分析と逆の流れになっています。実は、この順番が重要なんです。利益計画だけでなく、事業の採算を大胆に改善する、赤字を黒字化させる計画立案時にも有効な流れです。前段の差異要因解析がうまくいかない場合だけでなく、差異要因解析できないケースもありますので、計画の立て方が本来は、もっとも重要な段階と言えます

 

 

 

 

 

◆利益計画とは

 

利益計画は、経営目的達成の予想損益計算書を立案することです。まず目標利益を
設定します。それに基づき予定固定費、予定変動費を見込み、最後に目標売上高を

算出し、信ぴょう性高い当初設定の目標利益達成が可能な計画を立案します。つま
り、経営目的達成の具体的な行動計画を作るわけです。翌年だけでなく中期的な時

点まで作成するのを推奨します。実際には、なかなか計画どおり行きませんが…
(^∧^)

 

利益計画立案の流れ(詳細)

 

世間では、経営トップの発言をコミットメント(必達目標)とするしないで、実質上、首になる経営者も見かけます。たとえば、2006年度に創業60周年を迎える時期のソニーでもありました。2006年度に営業利益率10%にしたいとの発言が、エレクトロニクス事業の不振から達成不可能と分かり、出井会長退任の引き金になったとのことです

 

 

 

 

◆分析と計画の違いは?

 

採算分析と利益計画の手順は、逆になっています。手順を逆にすることで、一体何
が違うと思いますか。実は、ここが最大のポイントなんです(^−^)

 

現状にとらわれず、利益を計画するか・しないかに意義があります。当たり前とい
えば、当たり前なんですが、企業の実態を見る限りでは実践されていないケースが

ほとんどです

 

ここで分析と言っているのは、採算分析と同じ手順で利益計画を立案することを指
しています。昨年の売上がこの位だから、根拠はないけれど今年は5%アップ、費用

予算は人員増もないので昨年並み、よって営業利益は昨年より1%増…のような手続
きによって利益計画を立案するものです

 

計画と言っているのは、上記3つ目の作業、利益計画立案にある目標営業利益から決
めて行き、最後に目標売上高設定に至る流れを指しています。計画すべてに、この

手順を適用しようというのではありません。必要に応じて、使い分けできるように
なって欲しいのです

 

 

◆分析と同じ利益計画手順

 

実際は、分析と同じ手順をなぞった利益計画立案が圧倒的です。日常業務の延長線
上にある発想と同じことから、なじみやすいことも一端にあります。予算編成時や、

赤字品の対策時に限って目標設定から考えるのが苦手か、そもそも計画立案方法の
違いを認識していないか、いずれかが多いと思います。以下は、小生のセミナーで

の質疑の一端です(^−^)

 

小生:稼働率に余裕があるときは、それを埋めるマイナーチェンジ製品などの販売
   も考えるべきです。これが、サプライチェーンの効率追求に寄与する開発の

   役割となります。このマーケットから見た生産能力の利用率が編成効率とい
   うわけです

 

受講者:当社は、すべて受注生産です。生産余力があっても、稼働率引き上げの対
   策はできません。したがって、編成効率という概念は、当社では無意味と考

   えます

 

皆さんは、どのように考えますか(?_?)

 

分析的手順では、現状にとらわれない案作成が一般的に困難です。どうしても、現
状分析と実態重視の案にかたよってしまうからです。結果的に、一部赤字品の解消

など、全体に大きく影響しないと思われる対象の改善は放置されがちとなります

 

 

◆利益計画立案のポイントは?

 

それでは、利益計画立案のポイントは何でしょうか(?_?)

 

なんといっても目標設定が重要です。しかし、各企業におけるやりとりでは、目標
を設定してくださいと言っても、なかなかできないことが多く見られます(苦笑)

真の原因はともかくとして、既述の見出し「◆差異要因解析に有効な知恵」の項目
について何かが不足している気がします(^∧^)

 

 

◆改善のアプローチ方法

 

採算分析の流れは「分析的」です。それに対し、利益計画立案の流れは「デザイン
的」な方法と言えます。私どもが改善・改革の場で試みるアプローチは、次の3つで

す。都合上、簡単に触れることにします

 

・分析技法
 改善対象について、対象を詳細に、区分し、定量化することで、問題点・課題の

 抽出をおこないます。つづいて、改善案作成から実施に至る方法です

 

・シミュレーション技法
 改善対象の要因を抽出しモデル化します。モデルのシミュレーションが可能なデ

 ータ収集により、試行錯誤的に改善案を作成、実施に至る方法です

 

・デザイン技法
 改善対象の必要機能を設定。次に、機能ごとに代替案を作成、改善案としてまと

 めていく方法。演繹的方法とも呼びます

 

 

◆目標が到達度を決める

 

見出しのとおり、目標の大きさが到達度を決めてしまいます。それも、心に誓うだ
けでなく、紙に落とし公表することが、より確実な到達度を保証します。利益計画

は、目標ありきからスタートすべきで、前述のデザイン技法的な進めかたを推奨し
ています

 

とは言うものの、現実に顧客企業では、その困難さにいつも直面させられているの
が実態です。夢は大きく、やることは着実にと言いますが、あまりにも現実を直視

した案の検討に走る嫌いがあります(^∧^)

 

現実から遊離しすぎては問題ですが、失敗はあるものとして、常に未知への挑戦を
忘れたくないものです(=^^=)

編集後記

今日もいい天気ですね。まさに、秋といったところです。スポーツの秋です。今日
は、これからプールに行ってきます(10月18日(日)14:00)。

天気が良く、早く泳ぎたいな…を抑えつつ原稿を書いています。インターネットラ
ジオでアメリカのWCPE局のクラシック音楽を聴きながら、ここまでたどり着きまし

た\(◎o◎)/!

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう(^.^/)))~~~bye!!