収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
 発行 2009/10/05 No.32

 

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【目次】

1.採算感度分析
2.なぜ管理会計か?

まえがき

こんにちは 前田です!

 

水泳を始めてだいぶ経ちますが、2002年1〜12月までの1年間で、390km泳いだことが
あります。当初の目標は年間200kmでした。年の途中で、月30km、年間で365km泳ぐ

目標に改訂したのです。理由は簡単。吉永小百合さんができるんだったら、僕のほ
うが5つも若いんだからと一方的に張り合って同じにしたのです(^−^)

 

当時、テレビのCMで吉永小百合さんの泳ぐ姿が放映されており、かなりうまい泳
ぎだなあと感心していたものです。1日1km泳ぐことを心がけていると後日何かの

記事で知り、小生も挑戦することにしたのです。結果は次のとおり(∩_∩)

 

 

◆めでたく目標達成\(◎o◎)/!

 

目標は年間365kmの達成です

 

 2002年 1月  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12  合計 月平均
 距離 km 34 27 40 30 30 24 20 36 33 36 34 48 390.2  32.5

 回数  14 12 16 12 14 11  7 16 12 15 12 17 158   13

 

 年間累計 390,200m 月平均 32,517m
 年間1回平均 2,470m(大半が連続での泳ぎ)

 1回最大連続 4,000m(12月31日)

 

年間で、158日プールに通ったことになります。やや、無理をしました。秋口から、
身体があちこち痛くなったのを覚えています(>.<)

目標達成が最優先と、心に鞭を打って続けていました(苦笑)
やっぱり、オリンピック選手はすごいですね (_ _。)/~~<降参>

 

◆あとで知った1日1km

 

あとで知ったのですが、吉永小百合さんの1日1kmは目標であって、実際はそこま
で泳いでいないとのことでした。もう少し早く分かっていたら、途中で目標をトー

ンダウンさせたかもしれません。逆に、目標の大切さを教えられたできごとです

 

 

◆泳げませんでした

 

もともと、小生は泳げませんでした。水泳を始めたのが、1989年の秋の頃と記憶し
ています。住まいのすぐ近くにスポーツクラブ(ユアスポーツクラブ蕨)ができる

と知り、オープンと同時に入会、クラブの会員とスイミングスクールに入ったので
す。入会当時38才でした。以下は、涙ぐましい記録の跡です(^▽^)

 

 1990年 7月 8日 連続 1000m完泳
  (このころからダイビングも始め、伊豆の大瀬崎でしごかれてました)

 1990年 9月 9日 連続 2000m完泳
 1990年12月23日 連続 3000m完泳

 1991年11月 4日 第1回ユアースポーツクラブ記録会で25m自由形で1位
  (もちろん、年齢別です(^-^)。17.2秒でした)

 1992年11月23日 第2回ユアースポーツクラブ記録会で25m自由形で1位
  (2年連続の優勝です。記録15.7秒)

 

スイミングスクールには、4年くらい通っていました。なんたって、泳いだあとの
ビールがうまいんです。どっちが目的か分からなくなるときもあります(=^^=)

 

 

◆記録挑戦はやめました

 

390km泳いで以来、年間の泳ぐ距離は雪崩のごとく下降線をたどるいっぽうです。昨
2008年は、1年間で85.7km、合計34回、1回平均 2500mです。記録を取るようになっ

て、始めて年間100kmを下回りました。今年は、もっと下回るかもしれません。ただ
1回当たりの泳ぐ距離は2002年当時より、今は多少長くなっています。今後は身体

とも会話しながら、続けていきたいですね。大先輩、中井先生の「やりすぎるな」
の助言もあることですし…

 

 

◆汗をかくのがお薦め

 

冷や汗は禁物です。頭がいい、神経質、身体を動かす趣味を持っていないに該当す
るかたは要注意です。身体をこわすような生活習慣は、変えることを提案します。

仕事柄、集団でできるスポーツには縁がありません。いろいろ挑戦しましたが、続
いているのは唯一、水泳です。今後も末永く付き合えるようにしたいと思っていま

 

*編集後記に残りわずか、続きを書いています

1.採算感度分析

利益感度分析(第29号)、採算分析(第31号)を同時におこなう分析が採算・利益
感度分析(第31号)であると、言い方だけ紹介しました。この採算分析と利益感度

分析を同時におこなう方法を「採算感度分析」と呼びます。分かりやすさのため、
採算・利益感度分析としていましたが、採算感度分析が本来の呼び方です。同様の

方法が、世間一般的にはっきりしていないこともあり、小生は次のとおり定義して
います

 

 

◆採算感度分析の目的

 

採算感度分析の目的は、目標に対する実態、採算性の把握、営業利益算出の変数の
変化が固定費回収と営業利益増減に与える影響度を知ることです

 

この目的の内容を簡単に解説します

 

 

◆目標に対する実態とは

 

期首で設定された売上予算と、実績の差異が見られることを指しています。いろん
な方法がありますが、一般的には次の組み合わせになるでしょう

 

・客先:業種業態別、業種業態・規模別
・製品区分:製品グループ別、品種別、製品別

・金額:売上高、売上総利益(粗利)、限界利益、営業利益
・数量

・率:売上総利益率(粗利益率)、限界利益率、営業利益率
・部門あるいは担当者別:事業部別、部門全体、製品別部門、個人別など

 

目標設定は、企業によって様々です。前項すべてに設定するケース。売上高と営業
利益だけのケース。営業部長、営業課長などの企業内階層と、製品別営業部門別に

設定するケースなどなどです

 

問題は、なぜ目標設定が必要なのか理解することです。目標設定といっても、心の
中で思っているだけでなく、最低限、紙に落とす必要があります。できれば、関係

者に公開することです。設定した目標が、結果的に到達度を決めてしまうのを、こ
れまでも何度も目の当たりにしてきました。たとえば、30%コストを下げようと目

標を設定するのと、5%のコスト低減目標とでは、結果的に達成する成果に大きな違
いが出てきます。目標を低く設定した場合、それを上回ることは通常あり得ません

 

 

◆目標は名ばかりで差異分析に使わない例

 

まれですが、最近お手伝いした上場企業の例があります。年度の売上予算は設定す
るのですが、年度内は予算と実績差異を問題視しないケースです。全量、受注生産

の形態になっています。次のような主張です

 

・当社の販売している製品は、化学メーカーのプラント補修に使うものです。化学
 メーカーの定修時期は法律上の成約もあり、おおむね分かります。しかし、必要

 部品と数は、プラントの定修が始まり、交換必要な部分をチェックしないとメー
 カー自身も分からないというのです。したがって、必要部品は誰にも分からない

 から、販売計画を組めません

 

このような言い方をする企業には、受注生産の形態が多い気がします。計画が組め
ない、組みにくいから目標の設定もしない例は、ほかの企業でも見かけますが…

 

 

目標設定はもちろんのこと、より高い目標設定が、自身の行動を変えていく原動力
に間違いありません。ただ、現実を無視した実現性のない目標は、逆効果となるこ

とも忘れてはなりません(自分自身の反省も込めています(^-^))

 

 

◆採算性の把握 その1

 

一つは、損益分岐指数を指しています。第28、29、31号でも紹介しました。実に便
利なツールです。損益分岐指数は、固定費を限界利益で割って算出する損益の状況

判断に役立つ指数で、次のように判定します(以下、この項再録)

 

F÷mPQ  <1 利益計上(目標0.7以下)
       =1 損益分岐点(=BEP)

       >1 必要売上倍率

 

F:fixed cost、固定費、mPQ:限界利益(限界利益=売上高−変動費)
m:marginal profit ratio、限界利益率=限界利益÷売上高、

P:price、平均売上単価、Q:quantity、売上数量
PQ:売上高、BEP:break-even point 損益分岐点

 

損益分岐指数1未満が、営業利益計上の状態です。従来の損益分岐点比率では70%
以上が優良です。損益分岐指数では0.7と表され同様に解釈します。損益分岐指数1

が損益分岐点、当該売上高が損益分岐点売上高です。従来の損益分岐点分析では、
損益分岐点売上高を算出したことになります

 

営業利益が赤字のときは、損益分岐指数が1を超えます。このときの指数は、黒字
化まで売上高が、あと何倍必要なのかを表す意味です。たとえば、同指数が1.5のと

きは、現状売上高が1.5倍超になれば黒字化します。したがって、損益分岐指数が1
を超える場合の指数を必要売上倍率と呼びます

 

 

◆採算性の把握 その2

 

もう一つは、採算感度分析の項目で採算性となっている項です。次のとおり、3つ
あります。財務会計では、この辺の区分が明快になっていません。変動費と固定費

を区分して捉えることが必須です

 

・擬似出血
 擬似出血とは、対象品の採算が限界利益・黒、営業利益・赤の状態を指していま

 す。対象品より採算性上回る代替品がない場合は販売継続とすべきです

 

・真性出血
 真性出血とは、対象品の採算が限界利益および営業利益が赤の状態を指していま

 す。変動費を回収できない本当の赤字であり、政策的な配慮がなければ対象品の
 販売中止をすべきです

 

・無印
 本来、問題なく継続すべき対象であって、擬似・真性出血以外の対象です。対象

 品の採算が限界利益・黒、営業利益がゼロ、あるいは黒の状態を指しています。
 すべてのアイテムが、この無印となるのがベストです

 

 

◆営業利益算出の変数とは

 

変数とは、次の営業利益算出に至る流れの、右辺の要素すべてが変数です。第29号
の再録です

 

 営業利益=売上高−変動費−固定費
     =限界利益−固定費

     =平均売上単価×売上数量−変動単価×売上数量−固定費

 

 *売上高−変動費=限界利益
 *限界利益は貢献利益と呼ぶことが多い。ほかに、付加価値、変動利益と呼ぶ

  こともある

 

 

◆固定費回収とは

 

当たり前すぎるかもしれませんが、最初に売上高から変動費を引きます。引いた残
りが限界利益です。決して、売上高から固定費を最初に引くことはしません。順番

を守ってください。したがって、固定費が回収されているとは(売上高−変動費≧
固定費)の状態を指しています。つまり、限界利益が固定費とイコールか上回って

いる状態です。左辺と右辺が同じであれば損益分岐点と言い、左辺の限界利益が
右辺を上回っていれば、営業利益が計上された黒字というわけです

 

 

◆採算を分析するとは

 

採算とは、費用を変動費と固定費に分解し、付加価値あるいは限界利益対固定費の
関係に直して見ることです。算出の流れに沿って見ていきましょう

 

 1.費用を変動費と固定費に分解
  このことを固変分解あるいは固変区分といいます

 

 2.(売上高−変動費=限界利益)の算出
  固変区分の結果、限界利益の算出が可能となります

 

 3.(限界利益−固定費=営業利益)の算出
  この算出を、限界利益と固定費の関係に変換して見るといいます。限界利益で

  固定費をどの程度回収できているか、算出結果の営業利益の大きさで見ている
  ことになります

 

採算が取れているとは、売上があり、変動費、固定費の順で回収を確認でき、かつ
残りの営業利益が黒字の状態を指します。採算を分析するとは、上述の流れに沿っ

て計算しつつ、予算等で決められた基準との差異を明らかにすることです。営業利
益が予算を下回っている、営業利益が赤字、限界利益も赤字で固定費どころか変動

費も回収できていないなどのケースでは、なぜそうなっているのか差異要因の解析
ができなければなりません

 

また、実際の採算感度分析に当たっては、固定費の配賦が問題となることがしばし
ば生じます。固定費は、生産数量、販売数量の増減に関わりなく発生するコストで

す。どの製品が本来負担すべき費用なのかが不明瞭、新製品のテスト販売のように
現時点では負担させるべきではないなどあり、全体最適追求という経営管理の視点

が欠かせません φ(..)メモメモ

 

 

◆黒字、赤字

 

余談です。黒字とは、売上が費用を上回り利益が計上されることを言います。簿記
で収入超過額を黒字で記入することから言われるようになったとのこと。赤字は、

費用が売上を上回る状態を指しています。これも、簿記で不足や欠損額を赤字記入
するためのようです。それぞれ、黒あるいは赤とも呼びます

 

 

◆採算感度分析からわかること

 

採算感度分析は、利益感度分析と採算分析を一緒にしたわけですから、双方で分か
ることは、ほとんど重複します。しかし、2つ統合による利点は、採算改善シナリ

オのシミュレーションが可能になることでしょう

 

対象品が赤字のケースを例に説明します。採算改善シナリオとは、販売中止、値上
げ、売上数量増と値下げの抱き合わせ、売上数量の増、変動費または固定費の削減

をそれぞれ単独、あるいは組み合わせによる実行可能な赤字解消策を指しています

 

採算感度分析では、このシミュレーションが可能です。最初、当分析によって、実
態を確認後、採算改善のため、そのシナリオを作成します。つぎに、当該シナリオ

をもとに、採算改善シミュレーションをおこなうのです。当シナリオの立案にはい
ろいろな知恵が必要になります。それにも増して、より定量的な議論も期待でき、

ぜひ欲しい経営管理の道具立ての一つと言えるでしょう

 

 

◆採算感度分析の例

 

テキスト形式で書いている関係から、限りなく簡単にしました。この例は、No.1か
ら5までのアイテムの損益を計算したものです。項目を縦に並べています。固定費

は、合計1000を売上高に比例して各アイテムに配賦しました。現状の合計利益率は
10%です

 

これに対し、目標営業利益率を現状の10%増とした場合の売上高を求める部分だけ
取り出しました。現状の営業利益率合計が10%ですから、営業利益10%増加時の売

上も10%増える必要があるわけではありません

 

【営業利益10%増加させる売上高の試算例】 単位:個、円

 

  No.      1  2  3  4  5  合計  特記
 売上高     480 375 450 300  90 1695

 変動費      90 110 100 125 105  530
 限界利益    390 265 350 175 -15 1165

 固定費     283 221 265 177  53 1000
 営業利益    107  44  85  -2 -68  165

 営業利益率   22% 12% 19% -0.7% -76% 10%
 採算性             擬似 真性

 

 目標営業利益  117  48  93  -2 182     10%up時
 目標売上高   491 379 458 300    1712

 売上高up率   2.2% 1.2% 1.9% 0.1%    1.0%
 目標営業利益率 24% 13% 20% -0.6%   11%

 

 *擬似:擬似出血  真性:真性出血
 *なぜ、このような計算結果になるのかは、今回説明していません。計算その

  ものはやさしいものです。詳細は、いずれご紹介の予定です m(_ _)m

 

 (後段には、下記の採算分析を表形式で表したものと、別な例も掲載しています)

 

採算感度分析の使い方を、図表なしに説明するのは至難なワザですね(^∧^)
分かりづらいであろうことをお詫びいたします m(_ _)m

2.なぜ管理会計か?

ここ数回、管理会計の便利なツールを解説しています。なぜ管理会計なのかという
ことですが、理由を述べることにします

 

 

◆全体最適を求めるため

 

全体最適を考える場合、一部門の最適解が全社あるいは全体の最適解になるという
ことは通常ありません。極端に言うなら、製造原価が上がったとしても、営業利益

がそれ以上に増えるのであれば良しとします

 

つまり、複数部門にまたがる課題の処理は、全体最適の立場から判断することが不
可欠なわけです。しかし、世間一般には、この判断に資する考えかたはあっても、

具体的にどうするのかというと、どうしても経験と勘などに頼らざるを得ないのが
実態と言えましょう

 

 

◆全体最適判断の基準が統制指標

 

この解決の判断基準を提供しようとするのが統制指標なわけです。統制指標は、部
門最適ではなく全体最適実現のため、業際間の課題について権限を持って管理する

優位性判断の物差しをいいます。業務連鎖の評価指標とも呼びます。統制指標の目
的は、あくまでも、全社収益最大化の方向に権限を持って管理することです

 

統制指標の作成には管理会計を利用することが、もっとも近道と考えます。折に触
れ、今後もいろいろな事例・実例を持って紹介していきます

採算感度分析(本文紹介の表形式)

採算感度分析例(本文掲載分)

 

つぎの例は上の本文に掲載した分の詳細版です。
小さくて読めませんが、イメージだけでもつかんでいただければ幸いです m(_ _)m

 

採算感度分析例(本文掲載の詳細版)

 

採算感度分析の詳細例

実際の分析に耐えうる詳細版です。小さくて読めそうにありません。上記同様、イメージだけでもつかんでいただければ幸いです m(_ _)m

 

採算感度分析例(詳細版)

編集後記

本文では、目標設定がうまく運用されていない例を挙げました。高い目標、それも
紙で公言すれば、より実現性が濃厚になってきます。まえがきで、小生の水泳のこ

とを紹介しました。吉永小百合さんの1日1kmをヒントに、小生の目標を年間365km
に設定したわけです

 

結果は、390km到達となりました。恐らく、当初目標の年間200kmのままにしておく
と、前年と同じような結果だったと思います。小生の水泳における目標と到達度の

関係は次のとおりです。2002年の当初は200kmの目標です

 

 

 年   2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
 目標km  200  150  365  200  200  150  150  150  150

 達成km  212  152  390  130  155  130  110  140  86

 

 

見ていただいて分かるとおり、目標達成の翌年、2003年からは毎年のように目標を
下回っています。もう少し、生活の実態を見て計画を組み直す必要があると考える

この頃です(●^o^●)
ただ、ようやく、吉永小百合さんの1日1kmは、目標であって〜の意味を分かりか

けています

 

やや長くなってしまいました。
最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m

それでは、次回またお会いしましょう(^.^/)))~~~bye!!