収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口
  【現役 経営コンサルタントの裏情報! No.14】

                                         発行 2009/06/01
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【目次】

1.全体最適と組織の壁

まえがき

こんにちは 前田です!

 

メルマガがホームページでも読めるようになりました。最初の配信後、訂正や内容
追加したあとのメルマガを掲載しています。わりと大きめの文字にしていますの

で、ぜひ覗いてみてください

 

 http://merumaga.jimosen.com/ メルマガWebサイト あるいは
 http://jimosen.com/ → メルマガ要旨 → 同上サイト

 

 

新型インフルエンザに関する続報です。メディアの一面からは、すでにインフルエ
ンザの報道が姿を消しています。WHOの発表のしかたにも、さらに変化が見られ

ます

 

 5月24日(日)から日曜日の発表中止
 5月29日(金)(update 41)から地図の発表を中止

 5月30日(土)から土曜日の発表も中止

 

したがって、5月31日(日)12:00現在の最新版は、5月29日(金)14:00発表分となって
います。これで、日本国内ばかりでなく、WHOも重大事態のような発表から、従

来のインフルエンザ並みの扱いに切り替えたことになります

 

WHOサイトの発表を追記します。時間は日本時間です

 

 最初の発表(2009年04月24日(金))米国とメキシコで感染症例ありの報告
 update 11(2009年05月03日(日)14:00)感染 17カ国、症例  787、死亡20

 update 24(2009年05月10日(日)15:30)感染 29カ国、症例 4379、死亡49
 update 31(2009年05月17日(日)14:00)感染 39カ国、症例 8480、死亡72

 update 37(2009年05月23日(土)14:00)感染 43カ国、症例 12022、死亡86
 update 41(2009年05月29日(金)14:00)感染 53カ国、症例 15510、死亡99

 

 update 41のWebサイトは次のとおりで、日本の症例364を含みます
 http://www.who.int/csr/don/2009_05_29/en/index.html

 

5月26日update39から、5月27日update40では症例444増ですが、つぎの5月29日
update41では症例2112増となって、拡大の傾向が見られます

 

ただ、全般的には沈静化の兆しが見られるとされています。日本の外務省はメキシ
コへの渡航延期勧告を解除したため、一時中止されていたツアー再開の動きも

広がっています

 

また、メキシコでは、3月に世界最初の発症例となった5才の子供エドガー君の銅像
が近くお目見えすることになったと報じられています。発症にともない、国内外メ

ディアの殺到などにより、村が一躍主要な観光地となった功績をたたえるためとい
うことです。現在、本人は元気そのもので取材に応じているとのこと。何が幸いと

なるのか、難しいところですね(^-^)

1.全体最適と組織の壁

会社組織には、機能別組織、マトリックス組織、事業部別組織などあります。日本
では機能別組織の採用が多く見られます。本稿では、まず組織の意味合いを述べ、

つぎに本題となる組織にとらわれない実際の業務運用パターンから見た課題を、全
体最適の立場で考えることにします

 

 ☆典型的な機能別組織図

典型的な機能別組織

 

◆機能別組織とは

 

機能別組織とは、会社の基本機能(基本業務)ごとに部門が設けられ、各部門が同
列に扱われる組織を指しています。たとえば、製造をするから製造部、開発が役割

だから開発部、営業によって販売するから営業部など、業務機能を一つの組織体と
するところが機能別組織の特徴です

 

 

◆組織が必要となる所以

 

組織とは、一定の目的達成に集合したヒトとヒトとの有機的結合体です。この中で
は、ヒトとヒトの横への結合とともに、縦にも結合が必要となってきます。これが

指揮命令系統が生まれるゆえんです(^^)

 

 

◆一人が直接管理できる限界は10人か

 

一人が一人を管理するのは効率が悪く、複数人を管理下に置くのが通常でしょう。
一人が管理できる限界は、10人とも25人とも言われています。それ以上、人数が増

えると管理効率が低下していきます。また、一地域なら見届けが可能なこともあり
ますが、日本全国、世界へと地域が拡大すれば、顔と顔を突き合わせた直接的

コミュニケーションは不可能となってしまいます

 

 

◆組織肥大化は指示不徹底招く

 

会社規模の拡大により組織肥大化が進み、上から下、あるいは下から上への情報伝
達が遅くなり、決めたことが理解されない、指示が徹底しないようになってきます。

つまり、トップが裸の王様のように、周囲の反対がなく自分の思いがすべてかなう
ため自己を見失いがちな弊害です(−_−)

 

 

◆規模拡大は組織の質的変化

 

この問題解決のため、トップに集中していた責任・権限を下位の者に委譲し、組織
内階層をつくります。これは、末端への間接的コントロールによる規模拡大への対

処策です。さらに、トップの政策立案機能、権限委譲した結果のチェック機能など
も、規模拡大にともない一人で実行することは不可能となってしまいます

 

したがって、組織を新設し適任者を任命せざるを得なくなります。これが組織の質
的変化の源です。会社の成長は、ダイナミックな組織の変更をともなう所以でもあ

ります

 

 

◆一般的な会社組織

 

会社組織には、メーカーに向くと言われる機能別組織、機能別組織の変形であるラ
イン・スタッフ組織、会社内の会社組織といわれる事業部別組織、事業部別組織の

弊害解決のため採用されたマトリックス組織などあります

 

カンパニー制は、社内分社制の一種で、事業部制よりも組織ごとの独立性、自律性
を高めた組織形態といわれます。組織形態変更の狙いは、事業の責任単位を明確に

し、権限委譲を進め意思決定と経営スピードを早めることと言われています。日本
で、もっとも多く典型的なものが機能別組織です

 

 

◆部門最適の弊害

 

改善・改革活動に取り組んだとき、部門最適におちいりがちの原因の多くは機能別
組織にあることを知る必要があります。やや極端ですが、組織を作るということは

部門最適化の集団を作ることと半ば等しいのです。結果として、部門間にある課題
(=業際間課題)をうまく処理するための機能が軽視されがちとなります。2009年

5月4日第10号でご紹介の「部門最適にこだわったロジ部長」も、まさに典型的な例
でした

 

 

◆組織の運用パターン

 

さて、主要テーマの典型的な組織運用を見てみましょう。ここでいう組織は、日常
の運用のしかたを言っており、前述カンパニー制などの組織形態とは見ようとする

側面が異なります

 

 

◆ストレート型組織運用

 

ストレート型組織運用は、簡単な日常業務の流れに見られ、一方通行の業務となっ
ているものを指しています。たとえば、次のとおりです

 

  営業部   製造部    製造部   物流部
  受注  → 生産計画 → 製造  → 出荷  → 顧客納品

 

ストレート型組織運用

 

前工程から次工程への業務の流れに沿う、オペレーション中心の業務です。最終的
な結果を自ら味わうことなく、自己完結(=自己組織化)しないことが特徴となっ

ています。組織とは本来言えないものであり、問題・課題がフィードバックされず
山積しがちです。しかし、意外に多い形態です

 

 

◆部門間ストレート型組織運用

 

部門間ストレート型組織運用は、部門内ではマネジメントサイクルが回っています
が、部門間ではストレート型となっている形態です。部門内の評価基準が必要とな

ります。部門間の業際統制は働かず、業務として望ましい方向に改善されていく自
己完結型となっていません

 

  部門A    部門B    部門C
  A→P     A→P     A→P

  ↑ ↓ →  ↑ ↓ →  ↑ ↓
  C←D     C←D    C←D

 

部門間ストレート型組織運用

 

 

注)マネジメントサイクル
 本稿では、PDCAサイクルを回すことをマネジメント、あるいは

 マネジメントサイクルと称しています。このマネジメントとは
 「マネジメント業務(=管理)」を指し、ある個人に漠然とゆだねる

 ものではありません。マネジメント業務の中身を日常業務化できる
 までのブレークダウンが不可欠となります。マネジメント業務は、

 職階の場合には指示・伝達となるのに対し、SCMではしくみ化する
 ところがポイントとなります

 

 

◆マネジメント型組織運用

 

マネジメント型組織運用は、部門内・部門間でも業務遂行の目的達成に向けたマネ
ジメントサイクルが回っている形態です。それぞれチェックのあるところ、すべて

に評価基準が設定されています。部門A・B・C全体でもマネジメントサイクルが
回っています。評価基準そのものの改定も含め、部門間にも業際統制が働く自己完

結型です。部門間統制にあたっては、部門最適ではなく部門全体としての最適解と
なる評価基準が欠かせません。しかし、実際にはやや運用の困難さがつきまとう形

態です

 

  部門A    部門B    部門C
  A→P →  A→P →  A→P

  ↑ ↓    ↑ ↓    ↑ ↓
  C←D ←  C←D ←  C←D

 

マネジメント型組織運用

 

 

◆オペレーションマネジメント集中型組織運用

 

一般的に、コントロール(統制)をおこなう組織は、分散させるよりも集中させた
ほうが効率的となります。とくに、トレードオフが存在する部門間では、一方の利

害当事者に統制権限を付与しても全体最適化は期待できません

 

マネジメント型組織運用では、この点で問題があります。そこで、当事者以外の部
署にトレードオフ調整をゆだねるのが、より全体最適化できると考えるのが自然で

しょう。部門間統制の機能の持ちかたは、オペレーションマネジメント集中型を推
奨しています。マネジメント型組織運用の部門A・B・C以外に、統制部門をおい

て部門間の統制をおこなうことになります

 

 ☆オペレーションマネジメント集中型組織運用

オペレーションマネジメント集中型組織運用

 

意外にストレート型の組織運用が多いと既述しました。
なぜなんでしょうか?(ー`´ー)うーん

 

 

◆ストレート型となる背景

 

・売上が伸びる成長前提の歴史的背景
 売上が右肩上がりのときは、過去にこだわらなくとも、比較的スムーズに業務遂

 行ができます。しかし、経済が安定成長を見せるにしたがい、マネジメントの弱
 さが顕在化してきた結果と考えられます(−_−)

 

・マネジメントは個人の能力次第と考える傾向
 人が変わると、業務遂行のマネジメントも多面的に変わるのは確かでしょう。し

 かし、マネジメントも業務そのものと理解すべきであって、打つ手が分からない
 ところにマネジメントは存在しません。このようなケースでは、マネジメント業

 務を具体的手順に置き換えることが不可欠となります

 

・部門間の垣根の高さ
 この点については、該当する企業が意外に多いですね(∩_∩)。とくに、技術を

 売りにするとか、販売あるいは製造が強い企業に見られがちです。特定部門の最
 適解がとおりがちで、収益最大化の観点が落ちやすい傾向が見られます。これら

 の状況に共通するのは、複数部門にまたがる課題に対する経営トップのイニシア
 チブが働きにくいということでしょうか

 

 

◆改革の方向性

 

ストレート型オペレーション中心の運用は、マネジメント型に変えることが、今後
求められています。つまり、マネジメント重視型の運用に変えることを意味してお

り、マネジメントサイクルを回すための評価基準も要求されます。とくに、販売・
生産・物流の各業際間の課題が収益に大きく影響している場合は、早急に是正措置

を執るべきです(^o^)

編集後記

今回採りあげました組織運用は、私どもにとって扱いにくい課題の一つです。経営
基準と呼んでいますが、実需をベースとした部門間連鎖の統制対象としてなじまな

い経営管理事項であり、通常のケースではコンサルティング対象としておりません。
たとえば、次のようなテーマが該当します

 

 ex. 経営戦略、組織構造、販売政策・戦略 、販売価格、各部門長の役割、
   生産拠点の設置・統廃合、生産投資、人事

 

いずれも、経営専権事項そのものとなることが多いのも特徴です。これら課題をまと
もに採りあげるということは、経営能力そのものを問題にするということになりま

す。もちろん、要請があった場合は別ですが…(^^)

 

最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは、次回またお会いしましょう