★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2010/02/22 No.48
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
【目次】
1.部門別業績評価の課題
まえがき
こんにちは 前田です!
29年間使い続けてきた携帯ラジオがとうとう音がうまく出なくなり、処分すること
にしました。5台あるラジオの一つです。誠にご苦労様と心から感謝しています
m(_ _)m
実は、前から調子が悪かったのですが、愛着もあるため無理して使っていました。
ナショナル(松下電器)製、単一乾電池式(3本用)、AM・FMのダイヤル式、大
きさは弁当箱並といえばいいのでしょうか。一度も修理に出さずに、良く持ってく
れたものです。多分、コンデンサと一部の抵抗器を取り替えれば大丈夫かもしれま
せんが、修理費が割高になることを考えやめることにしました (>_<)
このラジオは、1983年米国持参のため買ったものです。電池式ですが、滞米中は部
屋のコンセントを電源に約1年弱使っていました。ハワイは電圧が110Vですが、電源
プラグは同じで問題ありません。多少の電圧の違いは大丈夫なようです。もしかし
たら、寿命を縮めたかもしれませんが (^0^)
一昨年、ソニーの日本製携帯ラジオが突然音が出なくなり、修理に出しています。
1991年8月に購入し、17年経ったものです。このラジオはモルディブにスキューバダ
イビングに行くさい、NHKの国際放送を聞くために買ったものです。修理内容は
コンデンサの全取っ替えでした。今は調子よく音を出してくれています(^−^)
さて、今回は前回メルマガに対するご質問にお答えします
1.部門別業績評価の課題
製造の業績評価についてご質問をいただきました。次のとおりです。小生も説明不
足かなと思っていたところでした m(_ _)m
最初にご質問の要点のみ紹介し、引き続き内容を述べることにします。メルマガは、
各号読み切りでご理解いただけることを狙っていますので、ご質問だけでなく、そ
の意味も分かるように説明を付け加えます
◆ご質問
・原価差異拡大と営業利益増は一致しない?
・部門内では原価差異拡大をコントロールできない?
・製造利益と営業利益の最大化が一致しない?
◆部門別業績評価にありがちな課題
ご質問は3つですが、部門別業績評価には問題が生じることもあります。本号では、
この内容について元々述べるつもりでした。そこで、ご質問に対する説明に加え、
部門別業績評価にありがちな課題についても触れます
改めて考えてみます。業績評価とは一体何でしょうか。また、何のために業績評価
をおこなうのでしょうか。問題点はないのでしょうか (?_?)
順を追って見ていきます (∩_∩)
◆なぜ業績評価が必要か
分かり切ったことですが、企業は利益を確保しない限り存続できません。言い換え
ると、拡大再生産が使命なのです。実際は、売上高も利益も毎期同じということが
あり得るかもしれません。これを安定経営というのでしょうか?
否です。拡大のないところに、安定経営も組織の活性化も困難です。組織の活性化
は、企業の成長があって初めて可能となります。やる気に満ちあふれ、収益が拡大
し、従業員の年収大幅増も保証される、こんな企業になって欲しいと思いませんか
(^^)♂♂
それでは、何をやれば企業の成長が得られるのでしょうか。全体としては、収益の
拡大なのですが、そのためいろいろな役割が必要となります。販売、製造、物流、
開発などです。全体として収益拡大に貢献できるように、役割を専門的に分担して
いるのです。この部門別役割に応じた達成度を明らかするのが業績評価に相当しま
す。まとめると次のとおりです
◆業績評価とは
業績評価とは、業績の達成要件を明確にし、達成度を測る判断基準設定により到達
度を明らかにすることです。業績とは、達成すべき対象の到達度のことであり、売
上や利益を指す場合と、業務効率や自社の強み確立など、重点課題ではあっても定
量把握に向かないものがあります。したがって、目標とされた売上高・営業利益・
製造原価低減や達成すべき課題に対する満足度などが、業績の達成要件に相当しま
す (^0^)
◆やる気が成長の根源
何事もやる気を持って事に当たるのと、できればやりたくないなあというような状
態で仕事するのでは、成果に大きな差が出てくるのは当然です。まさに、先に目標
ありきと小生はいつも考えます。このやる気を出させることを意図しているのが、
業績評価の大きな狙いの一つです。やる気が組織活性化の源であり、企業成長の根
源と考えます。しかも、一時的ではなく大いなる持続が欠かせません。企業はゴー
イングコンサーンです (^o^)
*用語「ゴーイングコンサーン」
企業は、事業活動をとおして社会に永続的に貢献し続けることを前提とする考え
かた
業績評価の目的をまとめると次のようになります
◆業績評価の目的
業績評価の目的は、目標達成に至る過程をとおして企業の重要な経営資源「ヒト」のモチベーション(動機付け)向上と維持、組織効率向上を図ることと言えます。組織効率向上とは、事業部・部門等の組織が持つ目標到達度を引き上げることです。簡単には、やる気を促して目標達成を確実にする仕掛けとでも言えばいいのでしょうか (=^^=)
さて、ご質問にお答えします
◆質問1 原価差異拡大と営業利益増は一致しない?
「原価差異=標準原価−実際原価」とすれば、原価差異を大きくすることが必ずし
も営業利益・率への貢献と一致しないとはどういうことですか (?_?)
自社工場などの製造部門をコストセンターとする業績評価についてのご質問です。
製造部門がコストセンターの企業数は圧倒的ですから、原価差異の拡大が全社収益
改善に貢献しているはずと考えるのが意外に多いのかもしれません
*用語「コストセンター」
コストの管理単位。費用予算のみある部門を指し、物流部門、製造部門が該当す
ることが多い
*用語「標準原価」
標準原価とは、良好な管理状態を前提とした実現可能な原価を指しています。た
だし、通常生じる仕損、損失時間を容認し、かつ1年間程度は実際に達成可能な稼
働率、予定価格を前提として決定されます。毎期洗い替えが原則です。原価管理
に適しており、たな卸資産の評価および予算編成にも使用されます
*用語「実際原価」
実際原価とは、財貨の実際消費量をもって計算した原価をいう(原価計算基準に
よる定義)。もう少しわかりやすく言うと「実際原価は、実際の製造に要した材
料費、労務費、製造経費を基に算出した原価」です
まず、簡単な例を挙げます
品種 A B C
標準原価 100 110 105
実際原価 90 95 93
原価差異 10 15 12(標準原価−実際原価)
時間出来高 10 10 8(製造1時間当たりの出来高数量)
原価差異計 100 150 96(原価差異×時間出来高)
売上単価 150 130 135
営業利益 60 35 42(売上単価−実際原価−経費0)
営業利益計 600 350 336(時間出来高×営業利益)
この例では、原価差異、原価差異計も品種Bが最大です。しかし、原価差異、原価
差異計とも品種Aのほうが小さいにもかかわらず、営業利益計は上回っています。
原価差異と利益の大きさは一致しないわけです (^−^)
同様の事例は実際多いのですが、要点を次に挙げます
・標準原価、実際原価と売上単価は連動しない
売上単価はマーケットで決まるもので、製造原価との関連性は薄い
・標準原価の設定根拠
標準原価の大きさは、上述した用語解説にもあるとおり、あくまでも実現可能な
原価であり、マーケットで決まる販売価格とは連動していません
・製造管理による実際原価
原価低減など、日常の製造管理の努力によって得られる原価です。品種による製
造原価低減の難易度などにより、原価差異には違いが出てきます
結論は、営業利益増にもっとも貢献する原価差異の拡大のみ「原価差異拡大と営業利益増は一致する」と言えますこのケースで軍配が挙がるのは、原価差異の大きい品種Bではなく、営業利益計の大きい品種Aです
例を基に別な方法で計算してみましょう。次が、標準原価を基に原価差異拡大取り
組みの優先順位設定の計算事例です。年度当初の計画立案時に有効となります。数
字は、前述の例と同じです。前述と結論は変わりませんが、時間利益がもっとも大
きくなる品種Aの原価差異拡大への取り組みを最優先すべきです。つづいて、品種
C、品種Bの順に取り組むのが全社の収益拡大に貢献します
もっとも、品種Aより時間利益が大きくなるまで原価差異拡大が可能であれば、そ
ちらを優先すべきです。たとえば、品種Bの標準原価を半減できる場合が相当しま
す。実際は困難ですが、そうすると時間利益で品種Aを上回るからです
(●^o^●)
品種 A B C
売上単価 150 130 135
標準原価 100 110 105
営業利益 50 20 30(売上単価−標準原価−経費0)
時間出来高 10 10 8(製造1時間当たりの出来高数量)
時間利益 500 200 240(製造1時間当たりの営業利益)
優先順位 1 3 2(時間利益の大きさが実際原価低減の優先順位)
紹介した内容は、数字が多いため一読しただけではなかなか理解しずらいかもしれません。しかし、製造管理上では極めて重要なことです。念のため (=^^=)
◆質問2 部門内で原価差異拡大をコントロールできないとは?
製造部門内も同様の業績評価しているばあい、当該部門の原価差異を自身でコント
ロールできないことが大半であり、事実上、業績評価の意味をなさないことが多い
とのことですが、意味がよく分かりません (?_?)
ここで部門内と言っているのは、工場の各職場を業績評価単位にすることです。例
を挙げます。工程1から工程3に向かって流れ、工程1が押出加工、工程2が粗加
工、工程3が仕上加工です。それぞれの工程別標準原価と実際原価を、次のとおり
とします
工程 1→2→3
標準原価 20 15 13
変動費 10 2 3(標準原価の内訳)
固定費 10 13 10(同上)
実際原価 18 14 12
変動費 8 1 2(実際原価の内訳)
固定費 10 13 10(同上)
原価差異 2 1 1
*用語「工程」
工程とは、少なくとも付加価値作業を1つは含む作業単位を原則としていいます。
付加価値作業は、お客さまから見てお金を支払っていただける作業のことです。
代表的には、モノを加工する作業があります。モノを運搬する作業は、付加価値
作業とは認められません
工程1は最初の工程のため、原料変動費の割合が高くなっています。しかし、工程
2・3では工程1から流れてくるものに加工を施すための電気料の変動費が主で、
これを小さくすることは並大抵ではありません。工程を流れる量は、工場の生産管
理部門からの指示で決まり、各工程自身で変えることは不可能です。このような流
れの工程では、下流工程に行けば行くほど、自身の工程でコントロールできる実際
原価の余地が小さくなってきます。発生する原価差異は自身の工程以外の要因がほ
とんどです (^∧^)
また、工程1で発生の不良品が工程1内で発見できず、工程2に流れたとしましょ
う。工程2ではそのまま加工され、さらに工程3でも仕上加工し、最終検査で不良
が発見されたとします。工程2・3からは、工程1の良品率が上がらない限り、自
身の不良率にも参入されるであろう原価ロスを低減できないわけです
職場と工程は一致するケースが多いと思います。その意味で、職場の業績評価を原
価差異にすると問題がでてくるわけです。原価差異を拡大して業績評価を良くしよ
うにも、自身の職場では大半がコントロールできません
標準原価は、月次毎の経費予算として計上されることが普通です。そのため、生産
計画量の減少は予算未達にもなりかねません。したがって、業務の流れで上流にあ
たる生産計画部門、もっと上流の受注量を決める販売部門が良くならないと自身の
評価が良くならないことになります
それでは、職場の業績評価はどうすればいいのでしょうか (^∧^)
自身の職場でコントロール可能な業績の対象選定と評価基準設定がポイントです。前段の例のように、原価差異の拡大を業績評価の基準とすることには無理があります。言い方は良くありませんが、現場からすれば、いわれのないことで自身の業績が評価されることになってしまうからです
ご質問の内容からやや逸脱しますが、管理指標を職場の業績評価基準とし、自身の職場でコントロールできない部分には、統制指標を採用することで解決できます
\(◎o◎)/!
◆質問3 製造利益と営業利益の最大化一致せずとは?
「製造利益=製造原価×0.04」とすれば、製造利益が4%になりますが、この極大化
が、必ずしも企業全体の営業利益最大化と一致しないとはどういうことですか
(?_?)
ご質問は、製造がプロフィットセンター時の業績評価についてです
*用語「プロフィットセンター」
利益責任単位。企業の各部署の経営業績を明確にするため、独立採算として収益
・費用を集計する管理単位。これが成り立つためには、責任・権限の委譲と責任部
門の確立が必要となります
用語解説が十分でなかったかもしれません。プロフィットセンターの代表例には、
営業部門が相当します。同部門では、販売計画で売上および経費を想定した利益計
画立案が責務です。言い換えると、利益と経費の計画が必須な部門がプロフィット
センターに相当します。これに対し、経費のみの年度計画あるいは予算立案を要求
されるのは、製造・物流部門が代表格でしょう。経費予算のみで、利益予算を求め
られない部門がコストセンターです
さて、ご質問の内容ですが、製造利益を極大化するとはどういうことでしょうか。
言い換えると、売れるという条件の範囲内で、製造がもっとも儲かるものを造ると
いうことです。当然ですが、売れなければしょうがありません。財務会計では、在
庫が増えれば売れなくとも利益は増えます。しかし、管理会計では、造ったとして
も売れなければ利益は出現しないとされることが一般的です。現有の生産設備、販
売力は一定とします。それぞれの利益最大となる条件は次のとおりです
◆製造利益最大化(プロフィットセンター時)
時間当たり製造利益の極大化の前提条件
・時間当たり製造原価がもっとも高いものを造ることで実現
(製造原価の一定率を製造利益とするためです (=^^=))
◆営業利益の最大化(財務会計における算出方法)
時間当たり営業利益の最大化とは
(時間当たり製造数量×単位営業利益=営業利益計)が最大となる売上で実現
注)売上と書いていますが、売れなくとも造れば営業利益は計上されます。
念のため φ(..)メモメモ
組織のさが(性)とでも言うのでしょうか、それよりも、努力すべきベクトルや方
向性と言ったほうが適切かもしれませんが…。製造利益の極大化という条件がある
限り、それを満たそうと行動することになります。全社最適からの行動規範を定め
ない限り、製造部門には、次のような問題点が見られがちです (^∧^)
・アイテム増、小ロット生産など生産効率が悪くなりがちな受注に消極的
・飛び込み受注、納品リードタイム短縮、追加生産、納期変更に抵抗しがち
・製造原価低減には一定の距離を置く傾向(自らの利益縮小となる)
販売上ではどうでしょうか。質問1で挙げた例の一部を抜粋して算出します。次の計算例によれば、製造利益は品種Bが38で最大です。しかし、営業利益は品種Aが600で最大となっています。実際の製造・販売とも多くの品種・アイテムの組み合わせですが、製造利益の極大化は営業利益の最大化とはなりません
品種 A B C
実際原価 90 95 93
時間出来高 10 10 8(製造1時間当たりの出来高数量)
原価合計 900 950 744(実際原価×時間出来高)
製造利益 36 38 30(原価合計×0.04)
売上単価 150 130 135
営業利益 60 35 42(売上単価−実際原価−経費0)
営業利益計 600 350 336(時間出来高×営業利益)
◆部門別業績評価の泣き所
従来からの部門別業績評価の問題は、業際間課題が手薄になりがちなことです。部門別業績評価では、その対象と目標設定、達成度測る基準設定、実績把握、評価と続きます。目標設定段階では、複数部門にまたがる対象選定がされにくいことが問題です
*用語「業際間課題」
業際間課題とは、複数部門が協同でおこなうべき課題であり、部門横断の最適解
が必要な事項を指しています。全社の収益改善に寄与する観点から判断が求めら
れることが多いのも特徴です。業際間課題の典型例として、アイテム増減、在庫
圧縮、納品リードタイム短縮があり、営業あるいは生産部門の利害が相反しやす
く、単独部門では判断しにくいのが特徴となっています
さらに付け加えますが、仮に複数部門にまたがる対象が選定されたとしても、その評価基準をうまく設定できないことがあります。管理会計を導入しただけでは、うまく行きません。複数部門の達成度を測る基準設定には、もう一工夫の知恵が要求されます (^−^)
◆基本はマネジメントサイクル
業績評価は、今を存続させる利益確保と、将来の成長を促すマネジメントのしくみ
の一部です。業績を評価することは、目標を掲げることであり、実績との差異を直
視し次に向かって進むことを意味します
◆業績評価には管理・統制指標が有効
今回ご紹介していませんが、業績評価に活用できる管理指標、統制指標を推奨して
います。製造部門などの部門内の指標が管理指標に、製造・営業部門等にまたがる
のが統制指標です。業績評価は、経営資源の活用度をより追求しやすくすることが
欠かせません。言葉を変えて言うなら、経営資源の活用度合いが定量的に分かるも
の差しを持って業績評価すべきです (^^)♂♂
*用語「管理指標」
管理指標とは、対象業務・作業全体の運用が適切かどうか判断する物差しや業務
効率の測定基準をいいます。または、部門あるいは部門内の運用が適切かどうか
判断する物差しです。言い換えると、部門運用効率の測定基準になります
*用語「統制指標」
部門最適ではなく全体最適実現のため、業際間の課題について権限を持って管理
する優位性判断の物差しをいいます。統制指標の目的は、全社収益最大化の方向
に統制することです
編集後記
今日は、2月21日の日曜日。プールから帰って清書しています。2000m泳いできまし
た。今日は日中、本当に真っ青な空で気分が良かったですね。ただ、明日からは本
格的に花粉が飛び出すとニュースで言っています。薬の量を増やすしかないようで
す (>_<)
最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!