収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
 発行 2009/09/07 No.28

 

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【目次】

1.損益分岐指数

まえがき

こんにちは 前田です!

 

めっきり涼しくなりました。空の雲は秋の風情です。夕べ、窓を少し開けて寝たら、
寒かったせいか鼻風邪みたいな症状が出ています(>_<)

 

折しも、新型インフルエンザの流行が言われる中で、体調管理にはくれぐれもお互
い注意しましょうm(_ _)m

1.損益分岐指数

皆さん、損益分岐点はご存じでしょうか(^−^)
当メルマガ購読のかたは、知っているほうが多いかもしれません。中には、業務で

活用されているかたもいるでしょう。ただ、全体的に見れば、知っているけれど自
社データでは計算したことがないというかたが大半と思います。企業あるいは企業

グループで全体最適を追求し、収益最大化を図ろうとするケースでは、管理会計な
くしては統制しきれないのが実態です

 

*用語「全体最適」
 個別部門の部分最適にとどまらず、販売・生産・物流・開発の全ライン部門が経

 営資源を生かし切り収益能力の最大化追求をすること

 

*用語「会計」
 会計とは、意志決定に役立てるため、収入・支出を金額で記録・計算・報告する

 こと

 

*用語「管理会計」
 企業内部の経営管理者に、経営に役立つ各種の会計情報を必要に応じて作成し報

 告する会計を指す。管理会計には、設備投資の計画など、意思決定に役立つもの
 と、期間利益計画・予算統制・標準原価計算など業績の評価に役立つものが含まれ

 る

 

*用語「財務会計」
 財務会計は、財務諸表を中心とした会計情報を、企業外部の利害関係者(株主、

 債権者、徴税当局など)に提供することを目的とした会計である

 

*用語「統制」
 権限を持って管理すること

 

 

◆損益分岐点とは

 

損益分岐点は、売上高と費用が等しい損益トントンとなる変わり目です。この変わ
り目の売上高が増えると、利益が計上され黒字となります。まさに、黒字と赤字の

境目の分岐点なわけです

 

 

◆損益分岐点の計算式

 

それでは、損益分岐点の計算式を書けるでしょうか(汗)
残念ながら、小生もいまだに覚えきれません。損益分岐点を知るための分析を損益

分岐点分析と呼んでいますが、その計算式は次のとおりです。表し方はいくつかあ
りますが、それぞれ代表的な計算式を採りあげました。紹介するのは、計算式を覚

えていただくためではありません。念のため(^−^)

 

1.損益分岐点売上高=固定費÷{1−(変動費÷売上高)}
2.損益分岐点売上数量=固定費÷(平均売上単価−変動単価)

3.目標営業利益達成の売上高=(固定費+目標営業利益)÷
              {1−(変動費÷売上高)}

4.目標営業利益率達成の売上高=固定費÷{1−(変動費÷売上高)
               −目標営業利益率}

5.損益分岐点比率(%)=(損益分岐点売上高÷売上高)×100
6.経営安全率(%)=1−(損益分岐点売上高÷売上高)×100

 

すでに内容を理解されているかたは、復習と思ってお読みいただければ幸いです。
算出に必要な要素は多くありません。売上高、売上数量、固定費、変動費率が分か

れば算出できます

 

実際は、このように計算するしくみ構築が結構大変ではありますが…
損益分岐点に関して、実際の活用実態を紹介しましょう

 

 

◆算出のみ「産業資材メーカー」

 

当社は産業資材のメーカーですが、年度予算策定時など損益分岐点を年に数回算出
している程度です。使いかたですか?

公知資料の業種別経営分析にある損益分岐点と比較し、今後の目標値設定に役立て
ることくらいですね。新聞などに業界の損益分岐点比率が紹介されることもあり、

経営トップから質問されるので、都度算出はしています

 

管理会計は導入していません。損益分岐点算出に必要な固定費は、事業別・勘定科
目別に固定費割合を想定して使っています。お尋ねの客先別・アイテム別の損益分

岐点は、仮定が多くなりすぎ実用的でないため算出したことはありません。仮に算
出できたとしても、使い方に苦慮するだけでしょう

 

【注記】
私どもが、コンサルティングでお手伝いしてきた企業では、このレベルでの使い方

がもっとも多いようです。管理会計を導入していないか、導入していても製造部門
の範囲に限定されているなどの理由によります。損益分岐点を算出はしても、活用

のレベルに至っていない段階です(>_<)

 

 

◆算出せず「建材メーカー」

 

当社は品種、アイテムともに数が多く、外注先も多用する建材メーカーです。ほと
んどが見込生産ですが、製造はバッチ型で切削加工をともなうものから、装置型生

産ラインによる連続生産形式のものまであります。これらの性格により、全社まと
めた損益分岐点分析をおこなっても、結果確認にしかなりません。算出しても、具

体的な改善策まで展開できないのです。また、手間暇も相当大きく、わざわざ算出
する必要性が見いだせません

 

【注記】
当社では、管理会計を導入していません。前項の企業と同様、勘定科目別の固定費

割合は設定されています。しかし、意外に多く見られる事例です(>_<)

 

 

◆活用例「包材代理店」

 

当社は、包装資材を中心とした代理店です。お客さまへの納品先は、総菜工場、デ
パート地下・量販店の食品売り場のバックヤード、ファミリー・レストランチェー

ンの各店などが主力となっています。アイテム数が3万点以上あり、そのうち数割が
毎年入れ替わります

 

元々、包装資材を製造するメーカーだったのですが、お客さまから品揃えの拡充を
求められることが多く、購入販売とOEMを増やしてきました。従来からの経緯も

あり、調達先メーカーで使うポリエチレン樹脂などの主要原料は、当社が支給する
形を採っています。これら原料の調達価格は、当社と化学メーカーとの間で後値決

めされます(業界の悪い慣行です(>_<)。改善しようと双方で叫ばれて長いの
ですが、都度何らかの理由が持ち出されて今に至っているようです)

 

損益分岐点分析は、新規顧客との取引開始の計画時点でおこなうことを義務づけて
います。新人でない限り、担当営業が容易に算出できます。メーカーではありませ

んので、勘定科目の固変区分がはっきりしていること、顧客別販売費を把握できる
しくみがあることで、損益分岐点分析がやりやすいことも幸いしています。同様に、

顧客別の損益分岐点分析は、月次で任意に実施可能です

 

*用語「固変区分」
 経費を固定費と変動費に区分すること

 

使い方ですか?
既存顧客について、営業利益が赤字のケースでは、次のいずれか、あるいは複数組

み合わせの方策検討に役立てています

 

◇営業利益赤への対応

 

1.当社からの納品数量を増やしていいただく
 2〜3社購買をしているときは、当社納品量の拡大を働きかける

2.販売単価の引き上げ
3.顧客売上拡大による販売量の増加

 顧客の販売計画に関わる内容を営業が聞き取り調査と確認をおこなう
4.販売ルートの変更

 上記いずれによっても黒字化見込みがないときは、直販を中止します。取引中止
 だけでなく、販売価格等の条件変更をともないますが、別途販売ルートを紹介し

 ます

 

【注記】
損益分岐点分析は、算出するのみでは役に立ちません。分析により、採算改善の手

が打てる何かにつなげることに意味があるからです。当社は代理店なこともあり、
損益分岐点分析を活用しやすい環境ですが、メーカーでもこのレベルまで活用でき

るようにしたいものです(∩_∩)

 

 

◆損益分岐指数

 

固定費を限界利益で割ったものを、損益分岐指数と呼びます。この損益分岐指数と
いう言葉をお聞きになったことがありますか?

聞いたことがないかもしれません。これは小生の造語のせいもあります(=^^=)

 

当概念は、マトリックス会計やビジネスゲーム(MG)で知られる西順一郎氏が、
もともと提唱しているものの一つです。しかし、呼び方がはっきりしていませんで

した(だいぶ前のことですから、すでに命名されているかもしれませんが…)

 

この損益分岐指数は、従来の損益分岐点に代替するだけでなく、使い勝手も向上さ
せてくれる実に有益な概念です(∩_∩)

 

 

◆損益分岐指数の見方

 

損益分岐指数は、固定費を限界利益で割って算出します。損益の状況判断に役立つ
指数で、次のように判定します


F÷mPQ  <1 利益計上(目標0.7以下)

       =1 損益分岐点(=BEP)
       >1 必要売上倍率

 

F:fixed cost、固定費、mPQ:限界利益(限界利益=売上高−変動費)
m:marginal profit ratio、限界利益率=限界利益÷売上高、

P:price、平均売上単価、Q:quantity、売上数量
PQ:売上高、BEP:break-even point 損益分岐点

 

損益分岐指数1未満が、営業利益計上の状態です。従来の損益分岐点比率では70%
だと優良ですが、損益分岐指数では0.7と表され同様に解釈します

 

損益分岐指数1が損益分岐点であり、このときの売上高が損益分岐点売上高です。
従来の損益分岐点分析では、損益分岐点売上高を算出したことになります

 

営業利益が赤字のときは、損益分岐指数が1を超えます。このときの指数は、黒字
化まで売上高が、あと何倍必要なのかを表す意味です。たとえば、同指数が1.2のと

きは、現状売上高が1.2倍超になれば黒字化します。したがって、損益分岐指数が1
を超える場合の指数を必要売上倍率と呼んでいるわけです

 

 

◆損益分岐指数の算出例

 

ケース     1  2  3  4
売上単価    10(全ケース同じ)

売上数量    20  12  10  13
変動単価    5  5  5  5

変動費率(%)  50(全ケース同じ)

 

売上高    200 120 100 130
変動費    100  60  50  65

限界利益   100  60  50  65
固定費     60  60  60  60

営業利益    40  0 -10  5
損益分岐指数 0.6 1.0 1.2 0.9

 

ケース1は、損益分岐指数が0.6となっています。儲け過ぎと思われる水準に達して
いる例です。一般には、損益分岐指数0.7以下が優良とされる目安になっています

 

ケース2は、損益分岐指数が1.0で損益トントンの状態です

 

ケース3の損益分岐指数が売上倍率です。このときの売上高が100ですから、1.2倍
すると、100×1.2=120となって、ケース2の損益トントンの状態になります

 

仮に、ケース2の売上高が1.3倍になるとすると、100×1.3=130となり、ケース3
が黒字化しケース4へと変わります。損益分岐指数は0.92の1未満に改善されてい

ます

 

実際には、例に示したように行かないケースが多いのですが、基本的な見方・使い
方であることに変わりありません。簡単にいかないというのは、単に数量のみの変

動ではなく、単価や固定費の配賦方法によっても変わりうるからです

 

 

◆一覧性と使い勝手

 

実際の帳表では、月次・顧客別・アイテム別・損益分岐指数を一覧にすることも容
易にできます。過去からの推移も分かりやすくなります。くわえて、次の事項を顧

客別・アイテム別に一覧にし、採算改善の資料とすることも比較的容易です

 

・損益分岐点売上高
・損益分岐点売上数量

・目標営業利益達成の売上高
・目標営業利益率達成の売上高

・損益分岐点比率(%)…損益分岐指数そのもの
・経営安全率(%)…損益分岐指数そのもの

 

もちろん、一覧にするだけでなく、販売と生産対応を変えた場合のシナリオをもと
に、損益の変化がどうなるかシミュレーションすることもできます。ここでは、紹

介しておりませんが採算分析と呼ぶ方法です

編集後記

今回採りあげた損益分岐点と損益分岐指数については、図表など使ってお話ししな
いとなかなか伝わりにくいところがあります。内容への理解が十分かどうか、ご批

判を頂戴したいと思います

 

読者のかたから、顔文字をよく使っていますね…と言われました。マイクロソフト
のIMEに登録されている顔文字はかなり多いですよ。試しに変換してみれば、数

の多さを実感できるでしょう。

 

小生はMS-IMEを使っていません。ジャストシステム社のATOK2005バージョ
ンをもっぱら使っています。もっと新しいバージョンも持っているのですが、なぜ

か分かりませんが、小生の文章では、このバージョンの変換効率がいいんです(?_?)

 

顔文字を使うと文章が読みやすくなるような気がします。視覚に訴えるとというの
は重要なようです

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう(^.^/)))~~~bye!!