収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
 発行 2010/10/25 No.78

 

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【目次】

1.収益管理Pの見える化2

まえがき

こんにちは 前田です!

 

2階書斎の窓の下にあるキンモクセイは、花がほんの少し残っているものの、かおり
はもうありません。10月24日、日曜日の今朝5時過ぎ、TBSラジオを聞いていまし

たら、東京赤坂の気温が13℃とのこと。寒く感じるわけです。先日から、セーター
を引っ張り出して着るようになりました (∩_∩)

 

◆手帳購入

 

本屋さんの目立つところに、手帳が山と積まれていました。これを見ると、どうい
うわけか年末を感じるのです。こんな風に思うのは、小生だけでしょうか。早速、

来年用を買い求めました。手帳を使うかたは、結構こだわりを持っているかたが多
いと思います。小生もいろいろ試してきました。小生の手帳選びの基準は、おおむ

ね次のとおりです

 

・薄い
・スケジュール表だけある(余分な頁がないこと)

・毎日のスケジュール欄に適度に書き込める空白がある

 

買い求めたのは、次の手帳です (=^^=)

 

パイロット製(ここ5年間愛用。今度6年目です)
見開き2週間 1月始まり 15カ月ダイアリー

品番 PD-11-40
サイズ 160×95mm

 

手帳表紙のしぼ加工がなくなって、つるつるしています。マイナーチェンジの理由
は何なんでしょうか (?_?)

 

手帳サイズにはいろいろありますね。よく分かりませんが、手帳のサイズの基準と
いうのはあるのでしょうか。バイブルサイズというのは知っていますが…

1.収益管理Pの見える化2

表題が、やや分かりにくい言い方かもしれません。見える化は、文字通り、視覚的
に理解できるような意味で使っています。企業内の業務や管理、現場の実態を、誰

が見ても分かるようにすることです

 

たとえば、事業収益獲得の源泉、競合他社との比較、経営管理の内容、製造実態、
需給調整の現状、在庫の運用方法など、例を挙げればきりがありません。対象の現

状認識は、複数部門間あるいは管理者間で驚くほど異なることが多いのです。これ
では、今後どうするか議論しても、議論の出発点を揃えるのに多大な労力が必要と

なる可能性があります。見える化により、現状認識の共通化を促進したいというの
も、本テーマ考察の狙いの一つです

 

前号No.77のテーマは「収益管理Pの見える化1」でした。同様テーマの2回目にな
ります。引き続き、見える化の表し方紹介です。メルマガは、各号読み切りを基本

としています。今回テーマを理解しやすくするための配慮です (^−^)

 

次に、PDCAの対象モデル、収益管理とPDCAについて内容を確認します

 

 

◆収益管理とは

 

メーカーの収益管理とは、収益を直接生み出す販売・生産・物流・開発のライン部
門を、部門別業績把握が可能な事業別・地域別・工場別・製品別・工程別など極力

小さい単位に区分し、予実績把握と達成度引き上げを図るしくみをいいます

 

ここでいう業績は部門によって変わりますが、収益向上に寄与する売上高、売上数
量、平均売上単価、生産量、発生費用、部門目標、管理・統制指標等を指していま

す。同様に、しくみとはPDCAのマネジメントサイクルを回すことです

 

まず、マネジメントサイクルの意味を確認しておきましょう

 

 P(Plan) :計画、あるいは対策立案と目標設定
 D(Do)  :実践

 C(Check):予実績評価
 A(Act) :差異要因解析

 

これまで、見える化をおこなう意義について直接触れてきませんでした。内容を紹
介します

 

 

◆見える化の意義

 

・部外者にも容易な実態理解
 対象の実態が、部外者にも容易に理解できるようにします。ポンチ絵、図表、グ

 ラフ、フロー、写真、映像、文章など、表現方法は原則問題にしません。あえて
 言うなら、一覧性があって視覚に訴えるまとめ方が有用と思います

 

・実態認識の一致に貢献
 当事者を含む、関係者の状況認識一致に寄与することが重要です。そのための、

 まとめ方に工夫が求められます

 

・改善着眼点の抽出促進
 分かりやすく、関係者の状況認識が一致すれば、いろいろなものと比較可能にな

 り着眼点抽出が容易になります。たとえば、目標と現状、先進事例と実態、実態
 変更案とその後の推移などです。改善着眼点抽出の先には、改善・改革がありま

 す。見える化意義の、最終着地点と言えるかもしれません。飛躍がありすぎると
 思われますので、着眼点でとどめました

 

*用語「改善着眼点」
 着眼点とも言います。改善着眼点とは、問題、問題点、改善課題、方向性、検討

 項目、方法、発生現象、知りたい内容をまとめた概念を指しています

 

*用語「問題」
 目標やあるべき姿と現状の差異。差異の認識であって、その原因が指摘できず、

 差異を埋められる解答を持っていない状態をいいます

 

*用語「問題点」
 対策を取りうる原因が分かっている状態です

 

*用語「課題」
 本来は、改善課題と呼びます。目的を果たす具体的な改善の方法・手段が明示さ

 れ、かつ改善可能量あるいは機能の向上が明確になっている状態です

 

次に、事例に採りあげた企業の概要を述べます

 

 

◆事例企業の概要

 

収益計画は、企業の置かれた実態により大きく変わります。今回見える化の事例企
業概要は、次のとおりです。No.77で紹介した事例1の企業に当たります

 

 

◆事例1 新規参入で業績悪化

 

電子部品メーカーです。技術開発型で成長した企業の典型と言えるでしょう。売上
数量は伸びていますが、競合先出現により売上単価の低落が続いています。利益率

の悪化が止まりません。マーケットシェアも、ここ数年で10%落ちています。この
ままでは2〜3年後に赤字化必至の状態です。何とか、生き残り策を見出したいので

すが、今だこれという構想立案に至っていません

 

このような事情のため、計画作りの活動企画立案から始めざるを得ませんでした

 

 

◆事例2 需要減と普及品へのシフト(抜本策紹介のために企業概要紹介)

 

事例1を主体にお話しを進めますが、No.77では事例2も紹介済みです。そこで、企
業概要は事例2も再録します。収益管理の計画Pに相当する、目標達成の抜本策紹

介を後段でするためです (∩_∩)

 

公共事業の橋梁等向け製品を供給する、国内上位企業です。強みは、技術力に裏打
ちされた品質の高さにあります。この分野では、いまだ他社の追随を許していませ

ん。しかし、国や地方財政の悪化、人口減などにより年々、公共事業は縮小の一途
をたどってきました。技術力を生かし、民需シフトで売上減少を補っています。と

ころが、民間需要も最近の経済状況で冷え込みが激しく、一昨年は赤字に転落しま
した。昨年は黒字回復しています。ただ、海外からの普及品に代替されるケースが

増え、先行きの見通しが立ちません

 

2つの事例の業界は異なりますが、かなり厳しい環境です。2008年9月15日、米国・
リーマンブラザーズは連邦倒産法の適用を連邦裁判所に申請し、事実上倒産しまし

た。いわゆる、リーマンショックです。需要が一気に半減し、今だ回復していない
業界もあるようです。しかし、内需が元に戻ることは期待薄と小生は考えます。

見える化の展開のしかたは、次のとおりです

 

 

◆見える化展開のしかた

 

1.見える化の前提確認
 収益管理をPDCAの見える化対象に選定、PDCA(管理)のP(計画)部分

 の一部見える化から着手

 

2.「収益改善計画」の活動企画見える化
 (収益改善の計画ではありません。計画を作るための活動企画であり、一つ前の

  段階です)

 

3.同上活動企画の見える化を紹介
 ツリーに整理します → No.77ではここまで紹介しました (^−^)

 

4.活動企画の作業によってできた「収益改善計画の見える化」を紹介
 調査・分析の内容と検討のしかたではなく、成果物を中心に紹介します

  → 今回のテーマです (=^^=)

 

5.順次、DCAの例を紹介(次回以降に予定)

 

 

◆今回見える化の概要

 

前項、4の収益改善計画の見える化が今回のテーマですが、本文の流れと概要は次の
とおりです

 

・目標達成の抜本策を紹介(計画Pに相当します)
 見える化には、No.77で紹介の計画のツリーだけでは不十分です。計画をどのよう

 なスケジュールでおこなうのか明らかにすることが欠かせません。これを表わし
 たのが、行動計画表です。行動計画は、実行可能なレベルにブレークダウンされ

 た案ごとに、担当部門、実行担当者、期限を一覧にした基本スケジュール表を指
 しています。内容は難しくありません。通常のガントチャートでも十分です

 

 そのほか、業務構成図への課題マッピングが必要なことがあります。これは、計
 画を各部門別に分割、分解したものを図解した鳥瞰図です。目標達成に必要な各

 課題をスケジュール化したのが行動計画です。それに対し、業務権限を持つ部門
 別に役割分担後の課題を組織図を模した図上に配置したのが、このマッピングで

 す。視覚的に分かりやすいのが特徴と言えましょう

 

・抜本策に至った背景の紹介
 計画立案の活動企画から調査・分析の過程で明らかになった重要課題について紹

 介します

 

*用語「業務構成図」
 顧客ニーズ充足のため、企業を一つの業務システムととらえ、各部門は業務サブ

 システムと見ます。実需情報をインプット、 マーケットへのモノの供給による
 顧客満足をアウトプットとし、企業または企業グループ内・各組織の基本業務と組

 織間にある業際システムが果たす役割を、モノと情報の流れ、および機能が分か
 るよう一覧的に表した鳥瞰図を指しています

 

まず結論を提示します。事例の状況打開をめざす、抜本的な構想案の内容です。こ
れが収益管理の計画の基礎となります

 

 

◆構想案の結論

 

双方のメーカーは異なる業種です。事例2の方針・目標は省略しますが、両社の内
容は近似しています。いずれも、トップブランド維持、マーケットシェアと目標利

益の確保が重点施策です。方針・目標達成の、構想案骨子を箇条書きで次に例示し
ます。この内容が、収益管理の計画に相当する部分の骨子です

 

事例1 電子部品メーカー(今回の見える化対象企業)

 

☆収益改善の3年後の達成目標
 1.営業利益  20億円

 2.営業利益率 15%

 

☆構想案骨子
・抜本的なコスト削減(これまでも実施しているため、余地は大きくありません)

・海外需要地への生産委託(自社国内工場の大幅縮小)
・汎用品向け品質の製品提供(過剰品質是正。当該用途への要求品質は十分)

・新規用途マーケット開拓(既存技術の活用が比較的容易)
・ビジネスモデル変更による業務の是正

 (調達機能追加、海外物流追加、海外分の生産管理機能追加)

 

次に、事例2の構想案骨子です

 

事例2 橋梁等向け製品メーカーの構想案(骨子のみ紹介)

 

・海外向け販路の拡大(もっとも得意な高品質品中心)
・国内の汎用品市場向け製品の開発(海外から国内流入品への対抗策)

・同上の製造委託先を海外に確保(自社生産の一部縮小)
・他用途既存マーケットへの代替品投入(既存技術の転用)

・ビジネスモデル変更による業務の是正
 (調達機能追加、海外物流追加、海外分の生産管理機能追加)

 

業種は異なりますが、構想案は驚くほど似ています。これが、国内メーカーの置か
れている厳しい実態を表わしているのかもしれません

 

メルマガWebサイトでは、PDCAのP部分の進めかた概要フローと、今回「収益改
善計画」の見える化をツリーで図解しています

 

「収益改善計画」の見える化 進めかた概要

      「収益改善計画」の見える化 進めかた概要

 

「収益改善計画」の見える化

          「収益改善計画」の見える化

 

◆抜本策に至った背景にある課題

 

事例1の電子部品メーカーを例に、重要部分の概略を紹介します。ポイントは、次
のとおりです。今回、ツリーや表などに整理していませんが、見える化をおこなう

さいには、ぜひ同様の視覚化が欠かせません (●^o^●)

 

 

◆技術開発型メーカーの弱み

 

技術開発力を武器に新製品の発売、既存マーケットの代替需要取込み、新用途向け
への市場開拓が特徴と言えます。結果として、高いマーケットシェアが維持されま

した。マーケットからの創業者収益を獲得できる典型例と見ていいでしょう

 

しかし、この状況がいつまでも続くことはありません。次々に新製品を市場に送り
出している時期は、左うちわの状態となるでしょう。美味しい市場であれば、必ず

新規参入があります。小生の経験則では、経常利益率10%以上続く状態であれば、
新規参入ありと考えるべきです。つまり、競合関係への事前対応が不可欠なことを

意味します。ここでの結論は、新規参入への対応不足です (>.<)

 

相手の出方と体力を見極めた差別化、強みの強化策、棲み分けを図ることが欠かせ
ません。自身では問題にしなくとも、相手が虎視眈々と狙っています。技術開発型

の企業は、この分野におおらかな傾向があるようです (^∧^)

 

 

◆過剰品質が生み出す高コスト体質

 

表の縦軸に製品群を、横軸にマーケットの用途を取ります。交点には、該当する販
売製品があれば、丸印などでチェックを入れます。このように整理したものが製品

体系です。事例1・2とも、工業用資材として使われる製品が対象です

 

ここからが問題となります。同じ製品群が、複数の用途に提供されているケースが
あるとしましょう。一般に、マーケット用途別に、製品に求められる要求品質は異

なります。やや極端かもしれませんが、農業用と医療用では同様製品でも、要求品
質の差異は明白です。双方に同じ製品が供給されるのなら、農業向けは過剰品質に

違いありません

 

品質を作り出すには、見合うコストが必要です。過剰品質の製品供給を受ける用途
側では、問題が起こることはありません。そこで、高品質でなくとも済む場合には、

低価格品にシフトしていくのは当たり前です。輸入品に代替が進むケースが、これ
に相当することが多い気がします

 

逆に、従来は満足する品質であっても、顧客側の要求品質が高くなった場合です。
あるいは、顧客側が高機能品化のため、供給側に品質を上げるよう要請することも

あります。この場合は、長年のトップシェアに安泰してきた体質が問題です

 

事例1の企業では、過剰品質の傾向が強くでていました。製造ラインを分けるか、
原材料を用途別に要求品質を満たす代替品に置き換えることが、コスト競争力維持

のポイントと考えます

 

 

◆事業収益獲得への貢献度に応じた施策

 

前述の製品体系と同じ表形式の交点に、限界利益を入れます。次は、製品群・用途
別に対する投入資源の割合明確化です。やや極端な例を挙げます。医療用の製品で

限界利益合計の50%を獲得、製造稼働時間合計では20%消費しているとしましょう

 

つまり、当該事業収益を50%獲得するのに、消費した製造資源は20%で済んだこと
になります。どんな事情があれ、医療用製品が著しく儲け頭であることに変わりあ

りません。やるべきことは、さらに収益向上を図る手を打つことが最優先です

 

マーケットと企業の双方向に、それぞれ有効な方策立案が欠かせません。事例1の
企業では、既存技術の活用が比較的容易な新規用途マーケット開拓が現実的な対策

です。また、内部対応では、コスト削減案があります

 

次におこなうことは、事業収益に対し、投入製造資源が割高な製品群の扱いです。
当面の目標は、事業収益獲得と投入製造資源の割合を均衡させることがもっとも重

要となります。該当用途向けの生産委託が最有力案です

 

 

◆共通項の多さに改めて感慨

 

抜本策立案の背景を成す重要課題を3つだけ紹介しました。事例2の企業も業種は異
なりますが、背景レベルの事情には似たものがあります。日本のメーカーが直面す

る環境そのものです。最後に強みを発揮するのは、知恵の勝負に尽きることでしょ
う (^0^)

編集後記

これで、PDCAのPについては終わりました。次回以降は、DCAの見える化に
踏み出す予定です。毎回のことですが、メルマガ原稿は下書きなしで書き始めます

 

考えながら書くのではなく、書いてみてそれに気付いて、次の考えがまとまってい
くのを実感しています。セミナーや講演会の場でも同様です。自身の発言で、改め

て考えさせられ、次の言葉が出てくるようなことがあります。内容によりますが、
原稿は書いてみないと、なかなか結論が見えてきません (=^^=)

 

前回No.77はメルマガを書き始めて、一番長い原稿になってしまいました。今回は、
前の約半分程度になるだろうとの予測のもとに書き始めました。結果比較です

 

 前回、560行/校了時点の合計÷53行/頁≒11頁
 今回、366行/校了時点の合計÷53行/頁≒7頁

 

予測値をオーバーしました。メルマガWebサイトのメルマガ本文内掲載の図は、行数
に算入していません。今回の原稿は、まえがきと編集後記の一部を10月24日(日)

の朝に書きました。今日の日曜日も、プールに泳ぎに行く予定です。予測値を超え
た長さに、最後までお付き合いいただき誠にありがとうございます m(_ _)m

 

それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!