収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口
  【現役 経営コンサルタントの裏情報! No.17】

                                         発行 2009/06/22
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【目次】

1.ビジネスモデル その3 化学業界

まえがき

こんにちは 前田です!

 

 

◆フェーズ6発表から感染速度が拡大

 

6月11日、新型インフルエンザの警戒水準をフェーズ6に引き上げました。それから
約1週間で、症例数が従来の倍と感染速度が速まっているようです。今後は、冬場の

感染拡大に向けた対策が中心になる模様です

 

WHOの発表は、先週から従来よりも頻度を落とし2日おき程度になっています。
6月17日の発表から国の数が消えました。

後段の感染国数は、小生の数えたものです

 

 

◆発症から現在までの経緯

 

 4月27日インフルエンザ警戒水準 フェーズ4発表
  人から人への感染が地域単位に継続して発生。大流行に移行の可能性あり

 4月29日インフルエンザ警戒水準 フェーズ5への移行発表
  持続感染が世界6地域の内1地域内の2カ国以上で起き、大流行直前の兆候

  あり
 5月24日(日)から日曜日の発表中止

 5月29日(金)update41は世界地図の発表を中止
 5月30日(土)から土曜日の発表も中止

 6月1日(月)update42から地図が復活。世界地図への表示方法を変えるのが間に
  合わなかっただけのようでした

 6月11日(木)インフルエンザ警戒水準を最高のフェーズ6への移行を発表
  世界的大流行(パンデミック)。5の要件に加えて、他の地域内の国でも持続

  感染が発生
 6月15日(月)update49から地図中止。当日の声明では地図ありとしているが

  添付なし

 

 

◆感染国94に増加

 

WHOの発表から症例の増加数を算出しています。updateの後の( )内は、
前1週間の増加症例数を、症例の後の( )内は日本の症例内数です

 

 最初の発表 2009年04月24日(金)米国、メキシコで感染症発生、症例 7
 update 7(324) 09/05/01(金) 感染国 11、症例  331(0)、死亡 10

 update 21(2053) 09/05/08(金) 感染国 24、症例 2384(0)、死亡 50
 update 29(5136) 09/05/15(金) 感染国 34、症例 7520(4)、死亡 65

 update 36(3648) 09/05/22(金) 感染国 42、症例 11168(294)、死亡 86
 update 41(4342) 09/05/29(金) 感染国 53、症例 15510(364)、死亡 99

 update 44(6430) 09/06/05(金) 感染国 69、症例 21940(410)、死亡 125
 update 48(7729) 09/06/12(金) 感染国 74、症例 29669(549)、死亡 145

 update 51(14618) 09/06/19(金) 感染国 94、症例 44287(690)、死亡 180

 

 

新型インフルエンザを採りあげたのは、5月4日の第10号からです。元々、この種の
報道に対する最上の情報源はどこにあるかを知ることが狙いでした。この点からす

ると、発信元としてはWHOに軍配が挙がったような気がします。次回当たりまで
の推移を見て、この項も締めくくりの時期のようです

ビジネスモデル その3 化学業界

今回は、お手伝いの機会が比較的多い、化学業界を例にビジネスモデルの変遷を見
ることにします。たまたま、今朝、6月20日(土)朝日新聞に、次のような記事があり

ました。以下、朝品新聞(朝刊)経済11面の要約です

 

 

◆素材に薄日 輸出で明暗

 

自動車や家電の販売不振を背景に、歴史的な減産に追い込まれていた素材業界に薄
日が差し込んできた。中国を中心にアジア向けの輸出が増え、在庫調整が一巡した

ためだ。ただ、生産回復が鮮明な石油化学に対し、内需依存型の鉄鋼や製紙などは
回復の足取りが鈍い

 

京葉コンビナート(千葉県)の三井化学と出光興産の合弁会社、プライムポリマー
の工場。レジ袋や食品包装に使われる高密度ポリエチレンの主力拠点。1〜3月の工

場稼働率は前年同期の6割弱まで落ちていたが、現在95%まで回復、ほぼフル稼働状
態。主力輸出先は中国である

 

中国の需要増で生産が回復したのは、建材向け塩ビ樹脂もある。結果として、石油
化学製品の基礎原料であるエチレンが底上げされ、住友化学、東ソーがフル稼働。

三井化学や昭和電工が95%まで回復した

 

ただ、輸出の先行きは不透明。実需がどの程度なのか様子見が必要としている

 

-------ここまで引用要約

 

 

◆抜本策の先送り懸念

 

この記事を読んで、また先延ばしされるのかな…と懸念を持っています。というの
は、業界再編成などの深刻な状況になると、どこからか救いの神風が吹くことが多

かったからです。その都度、根本的な対策は先延ばしされてきた感があります

 

直近の神風は中国の好況です。これにより、国内の過剰な生産能力や弱い国際競争
力という構造問題の解決を先送りしてきた感があります。内容に入る前に、原油か

ら石油化学製品ができるまでの全体的な流れを確認しておきましょう。意外に知ら
れていませんので、参考になりましたら幸いです(^^)

 

 

◆亀の甲に困惑

 

化学業界でお手伝いを始めた頃、右も左も分からず亀の甲(化学式)の説明を何度
となくしていただきました。こんなことになるんだったら、化学の授業をもっと真

面目に受けておくんだったと思ったこと数知れません(汗)

 

いまだによく分かりませんが、小生の感覚からして、目に見えない、形がない、さ
われないものは頭で理解しようとしても限界があるようです(^o^)。言い訳ばか

りいってもしょうがありませんので、それなりの解説を試みることにします(汗)

 

 

◆石油化学製品の流れ

 

正確さに欠けますが、代表品種による石油化学製品の流れを掲げます。説明不足分
は流れの下に追記しました

 

原油 →(石油製品)ナフサ→(化成品)エチレン→(合成樹脂)ポリエチレン

 

→(製品)ポリ袋

 

・石油製品には、ナフサ以外にガソリン、灯油、軽油、重油があり、原油を原料に
 石油精製工場で蒸留して生産されます。ガソリンと大体同じ沸点(液体が沸騰す

 る温度)です。
 日本のナフサは原油から作るのと輸入の割合が半々位になっています。年々、

 輸入比率が高くなる傾向です(2007年で輸入比率54%)。
 価格は、ほぼ原油に連動します

 

・化成品は、基礎製品とも呼ばれ、エチレン以外にプロピレン、ブタジエン、ベン
 ゼン、トルエン、キシレンがあります。エチレンは常温常圧で無色可燃性の気体

 で、いろいろな石油化学製品の基礎原料となります

 

・合成樹脂は、誘導品とも呼ばれ、ポリエチレンを含むプラスチック、合成樹脂原
 料、合成ゴム、塗料原料・溶剤、洗剤原料などです。日常生活の中で見られるも

 のに近くなってきました

 

・製品になって、ようやく手で触れることのできるペットボトル、バケツ、コップ
 などになります(^0^)

 

順を追って、石油化学業界を取り巻く環境を見ていきます。最初は国内需要です

 

 

◆減少続く国内需要

 

1.自動車や電機の減産
 昨2008年9月15日、米国第4位の証券会社「リーマンブラザーズ」が事実上破綻

 し、世界の景気は一気に悪化しました。とくに、自動車・電機業界の打撃は大
 きく、素材産業へも深刻な影響を与えています

 

2.需要の回復は限定的
 化学製品の輸出先は中国、韓国、台湾が上位です。今回は、とくに中国向けの

 増加によって国内工場の稼働率が向上しています。
 これを限定的と見るか、継続的需要と見るかは見解の分かれるところかもしれ

 ません。しかし、後述の実態から考えますと一時的と見るのが妥当でしょう

 

3.素材の石化製品需要が減少
 2005年から日本の人口は減少に転じ、住宅などに使う建材も長期的な減少傾向

 にあります

 

これらの要因どれをとっても楽観的なものはありません。右肩上がりの需要から、
減少前提に方向転換せざるを得ないのが実態です。国内需要の減少は理解しやすく

とも、中国を中心とした海外需要は増えると言われるかたが多いかもしれません。
そのとおりですが、競合の項の実態と合わせて需要動向を採りあげました

 

 

◆国内生産能力は1割過剰か

 

日本では、石油コンビナートが8箇所あります。鹿島、千葉(京葉臨海コンビナート)
、川崎、四日市、堺・泉北、水島(岡山県倉敷市)、周南(山口県周南市)、大分

です。その中で、石油化学製品の基礎原料であるエチレンは、15製造設備が稼働。
エチレンの国内の生産能力は1割強が設備過剰と言われています

 

過去の生産ピークは、2006年度、766万トン余りでした。ところが、2008年度のエチ
レン生産量は、前年度比13.8%減の651万トンあまりと、1994年度以来の低水準になっ

ています

 

国内のエチレン生産は、三菱化学が最大手です。しかし、2009年3月期の石油化学事
業そのものの営業損益は、赤字に転落しています(−_−)

 

 

◆激化する競合

 

住友化学とサウジアラビアの国営企業サウジ・アラムコとの合弁で建設された世界
最大級の石油化学コンビナートと言われる「ペトロラービグ」が、本年2009年3月末

から稼働を開始。住友化学は、このペトロラービグを拡張して規模のメリットを最
大限活用し、さらに第2石油化学コンビナートの建設に向けた企業化調査に乗り出

すと4月20日発表しました。製品は自動車向けなどの高付加価値品を対象に、2014年
9月までに操業開始予定とのことです

 

中東で生産するメリットは、安定調達できる安い天然ガス原料を利用できること、
産油地という立地条件を生かせることを挙げています

 

アジアではサウジ以外にも、韓国、台湾、中国、シンガポール、インドにおいて、
新たな大規模コンビナートが台頭しています。高い経済成長、大きな潜在市場、有

利な原料基盤を背景に生産量を拡大中です。これに対し、日本のコンビナートは小
規模で分散しており、精油所や企業単位での効率化に限界が見られます

 

*用語「コンビナート」
 石油コンビナートは、石油化学工業・石油精製工業に関する工業施設の集合体。

 コンビナートは、結合を意味するロシア語。1960年頃から稼働開始されてきた

 

 

◆コスト競争力

 

石油化学品のコスト競争力は、原料価格、プラントの立地・規模が大半を占めるの
が実態です。しかも、価格は企業の都合より、国内外のマーケットで決まってしま

います。規模で劣る日本企業の同一品のコスト競争力は、弱いと言わざるを得ませ

 

 

◆事業の再編成

 

化学メーカーの動向がしきりに報じられていますが、目についたものを挙げてみま
しょう。まさに、事業の選択と集中が進んでいます

 

・三菱化学、塩ビ製造 設備停止2011年3月末(2009年5月7日発表)
・三井化学、C9系石油樹脂事業から撤退(2009年5月7日発表)

・三菱化学、スチレンモノマー事業 設備停止2011年3月(2009年5月29日発表)
・三菱化学と旭化成、水島コンビナートでエチレン事業統合(2009年6月2日発表)

 

このほか、三菱化学はナイロン事業の譲渡、三井化学と住友化学もポリスチレン事
業から撤退を決めています

 

上記のエチレン事業統合の発表時に、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社
長は、エチレン以外の汎用品についても「もはや対等に戦うことは不可能」「世界

的な競争激化で、個々の企業だけでなく、日本全体の(設備の)最適化の議論を喚
起できる」と述べているのが印象的です(2009年6月2日)(−_−)

 

 

◆ビジネス環境のまとめ

 

石油コンビナートの代表的化学メーカーを取り巻くまとめです。( )内は環境に対
する実態に相当します

 

・国内需要は減少傾向(設備能力が過剰)
・分散・小規模設備(コスト低減に限界、単独企業による対策困難)

・安い原料で生産する中東勢(コスト競争力で劣勢)
・大型設備で量産のアジア勢(コスト競争力で劣勢)

・アジア勢の量産拡大は今後も続く(国内流入により競争激化必須)
・主な対策(不採算事業からの撤退、国内外勢との合弁・提携推進)

 

 

◆競争力の確保が今後の方向性

 

新興アジア勢との比較では、コンビナートのコスト競争力という点において決定的
に不利な立場に立たされています。プラントの大きさで劣勢に立たされている以上、

単独企業による生き残り策立案には困難さがあるかもしれません

 

方向性としては、選択と集中、スクラップ&ビルド、海外勢との合弁・提携となる
のでしょうか。これらにより、輸出競争力の強化が不可欠です。同時に、国内の需

要に合うコンビナート形成への取り組みも必要と考えます。実現可能性ははなはだ
不透明ですが、次項の検討も有効と考えます

 

1.競争力強化に向け、コンビナート全体としての取り組み
・電力、蒸気、水素、廃棄物のエネルギー活用(省エネルギー)

・個別企業の枠組みを超えるコンビナートとしての設備の最適化

 

2.世界に通用する技術開発
・重油分解能力向上等

 

3.原料の多様化

 

 

◆変貌するビジネスモデル

 

化学業界における環境変化について述べてきました。改めてまとめてみると、厳し
い環境に置かれている実態がよく分かります。メーカー・ビジネスモデルの収益構

造は、生産、技術開発、販売、マーケット開発、物流、部門間統制が基本的なもの
です。これからのマーケット環境の変化に対して、今後どのようにビジネスモデル

を変革していくことになるのか注視したいと思っています

 

ビジネスモデルが変わると事業遂行と部門間の統制方法も変わります。各企業によ
り、置かれている環境と実態が異なりますので、一律にあるべき姿は描けません。

しかし、変革されたビジネスモデルの収益能力が最大となる姿とは、どのような状
態を指すのか明らかにする必要があります。また、企業内における縦と横のマネジ

メントサイクルをうまく回すことで、変革されたビジネスモデルの検証が可能です

編集後記

まさに、梅雨らしい梅雨ですね(∩_∩)。こんな時、本当は温泉につかっているのが
好きなんですが(^-^)

 

最後までお読みいただきありがとうございます
それでは、次回またお会いしましょう