収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
 発行 2011/05/09 No.102

 

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【目次】

1.変貌したSCM

 

まえがき

こんにちは 前田です!

 

今回も、引き続き別府温泉を紹介します。今年の別府八湯温泉まつり(べっぷはっとうおんせんまつり)は、残念ながら中止されました。東日本大震災にともなう自粛のようです。温泉まつりは、毎年4月1日から数日間おこなわれています。このお祭りは、温泉の恵みを感謝するものです。目玉の一つに、市内約100箇所の市営・区営温泉3日間無料開放があります。だいぶ前になりますが、2008年の期間中、無料開放の温泉中心に20箇所入湯したことがあります。綿密なスケジュールを立てないと、なかなか回りきれません。そのうえ、結構疲れます (^∧^)
                別府 永石(なげし)温泉 3月20日

永石温泉最初は永石(なげし)温泉です。半地下式のじもせんで、竹瓦温泉を小さくした風格ある造りで、小生の好きな温泉の一つになっています。その竹瓦温泉は、明治初期創設で別府温泉のシンボル的な市営温泉です。ここから、海側に直線で約500m強のところにあります

                   別府 永石(なげし)温泉
永石温泉永石温泉は、先客のため写真を撮る機会がありませんでした。入湯料は100円です。温度調節され、ゆったりと入浴できます。別府駅を海側(東口)に下車し、駅を背に右斜め方向、約800m先にあります。不動産屋さん並みに説明すると徒歩10分というところでしょうか (∩_∩)

                    別府 梅園温泉入口 3月20日
梅園温泉次の梅園温泉ですが、別府で一番飲み屋の密集する中心地にあるこぢんまりした温泉です。そのためか、営業時間が12:00〜23:45となっています。周りに多いスナックのママさん向けの時間帯を考慮しているようです (^0^)

 

ここの特徴は分かりづらいことと言えます。最初に訪れたときは、随分探してしまいました。一般の人は入湯料100円で、ドアを開けたところの料金箱に入れます。入湯スタンプは、近くのお店で押してもらいます

 

                    別府 梅園温泉 案内板
梅園温泉 案内板ただし、写真の看板にあるように歴史は古いようです。数人の先客がおり、写真を撮る機会がありませんでした。大層小振りな浴槽です。歓楽街の中にあるせいか、入れ墨のかたが多く入ってきます。当日も、40代前半のかたがいました。ただ、礼儀は正しく帰りも皆さんに「お先に」と声を掛けています。組合員制のため、顔なじみのようです。張り紙には、水道代がかさみ赤字経営のため節水の呼びかけがありました。別府では、温泉より水道のほうが高くつきます (=^^=)

 

                 JR九州の宿 べっぷ荘 3月20日
JR九州の宿  べっぷ荘最後は、JR九州の宿べっぷ荘です。JR九州が運営する、温泉と料理が自慢の家庭的で落ち着いた宿と銘打っています。建物、造りなどは高級ホテルそのものです。接客も丁重で、宿泊料金は普通並みといったところでしょうか (^−^)

                   JR九州の宿 べっぷ荘
JR九州の宿  べっぷ荘立地は、No.101で紹介したホテル白菊の別府駅寄りの隣です。午後の早い時間に伺ったため、ゆっくりと入湯できました。源泉は55℃くらいですが、浴槽の温泉はぬるめにしています。ゆっくりくつろぐには最高です。料金は500円ですが、温泉本の割引チケットで100円引きで入湯しました (∩_∩)

 

東日本大震災の被災者の皆さま、厳しい生活を強いられていますが、一日も早い復興を心から望んでおります m(_ _)m

1.変貌したSCM

収益改善に役立つ、全体最適判断の統制指標の切り口を中心に紹介するのが、本メ
ルマガの趣旨です。全体最適とは何を指すのかについては、これまでもいろいろな

角度から述べてきました。ところが、全体最適を採りあげた理由については、ほと
んど触れてきていません。今回は、発想の原点に相当する一端を短めに紹介したい

と思います (^−^)

 

採りあげた理由は、SCMが当初めざした姿を大きくトーンダウンさせた実態を考
えてみたかったからです。もともと、全体最適はブーム時のSCM定義にある用語

です。これに対し、私どもの「全体最適」は、社内SCMの領域を対象にしていま
す。SCMは複数企業対象ですが、社内SCMは単独の企業や特定企業グループを

指すことが一般的です。双方の定義も後段で紹介します

 

 

◆本文の流れ

 

次の展開でお話しします

 

・従来の物流改善テーマ極少化
・新プログラム開発の企画

・企業実態の認識
・SCMブームと当時の定義

・現在のSCM
・「全体最適」の発展方向性

・経済産業省の認識

 

 

◆従来の物流改善テーマ極少化

 

以下は、2004年当時の物流関連コンサルティングの実態をまとめたものです

 

従来の物流改善領域は、種々の理由により、コスト低減等のコンサルティングテー
マがほとんどなくなってきました。物流改善の従来コンサルティング企業は、メー

カーが大半です。テーマ減少の理由を次のとおりと推定します

 

・1990年のバブル経済崩壊後、需要減、デフレ傾向による価格低下、メーカーの海
 外進出、企業業績の悪化等によりメーカーのリストラが急進展し物流に対する優

 先度が低下。物流はメーカーのコアテクノロジーではありません

 

・物流業界、とくにトラック運送の業界における過当競争の状況は、依然として変
 わっていません(現在も同じです)。メーカーの運賃、保管費は、物流業界の体

 質も影響し競合見積もりにより、ほぼ下限に張り付いています(現在も同様)

 

・大手メーカーでは、従来努力により物流改善の余地が極小化
 この辺の事情については、No.3・5を始め、その後数回にわたり対応策を紹介して

 います。今後、必要な取り組みは「全体最適」です (^∧^)

 

・企業のリストラやコアテクノロジーへの資源集中等により、物流子会社の設立が
 進みました。メーカー本体の物流業務は、外部委託化が進み物流請負単価の低下

 が多く、コンサルティング課題とはみなされなくなりました(現在は、物流子会
 社のM&Aが多くなっています)

 

*用語「コアテクノロジー」
 コアテクノロジー(core technology)。事業成功の中核となる技術のことです。

 似たような概念でコアコンピタンス(core competence)も使用されます。コアテ
 クノロジーが技術をいうのに対し、コアコンピタンスは、それを開発するために

 必要な中核的能力と力量のことです。いずれも、瞬間的な資源投入では、継続的
 な成果を期待できません。開発能力はあるものの、現時点でその技術を持ってい

 ないことも多いからです

 

 たとえば、需給の管理水準を測る物差しの1つに在庫があります。品切れが多い企
 業ほど、在庫を多く抱えていることが多いものです。一見矛盾するように聞こえ

 るかもしれません。しかし、管理の仕方が悪いので品切れが発生し、かつ在庫も
 多いのが実態です。管理水準という物差しからの見方は、双方同じになります。

 品切れを起こさずに最小限の在庫を実現するための技術・手法(=コアテクノロ
 ジー)は複数あるでしょう。しかし、開発の投入努力を、経営上の資源配分から

 内部ではおこなわず、外部コンサルティング(=コアコンピタンス。このケース
 では、開発能力が外部にあることになります)を受けることによって代替えする

 方法もあります。一種のアウトソーシングです

 

上述した2004年当時の物流関連のコンサルティング環境は、2011年現在でも変わっ
ていません。むしろ、物流環境を作り出している販売政策などにメスを入れない限

り、コスト改善は困難となっています

 

 

◆新プログラム開発の企画

 

従来の物流改善テーマ極少化を率直に受け止め、新しい領域でのコンサルティング
プログラム開発を目指したのが、全体最適に取り組んだ直接的な目的です。開発に

あたっては、おおむね次の点を考慮しました

 

・従来のコンサルティング実績と技術を生かす

 

・調達から生産・物流・販売・最終需要家に至るモノの流れを、実需に合わせて収益最
 大・全体最適となる企業のしくみ再構築をめざす

 

・最終の顧客満足を高める視点から、企業の販売と生産の能力を生かす

 

以下の項目は、分かりにくい言い方になっています。しかし、今後残るであろうコ
ンサルティングテーマは、次の2つしかないと考えていました。括弧内に注釈を付け

ていますが、内容は省略します m(_ _)m

 

 ・マーケティングシステムの収益構造デザイン
  (販売に関する儲かるしくみの設計支援)

 

 ・プロダクションシステムのコスト構造デザイン
  (競争力ある生産のしくみ設計支援)

 

 

◆企業実態の認識

 

2004年から2005年にかけての、コンサルティング市場としての企業実態を、私ども
は次のように捉えていました

 

上場企業の経営課題として、上位3つが収益向上関連となっています。多くの企業に
おける収益改善の主要取り組みは、部門ごとのコスト低減活動が中心でした。一方

で、コスト低減が限界に達している部門も現に見られます。それにもかかわらず、
部門長の努力不足を問題とする経営層が多いのも事実でした。これら経営層の督促

も影響し、ますます部門最適追求の活動に傾斜していくのが見られます。結果は、
総合効率(全体最適)を逆に悪化させることも稀ではありません

 

上記、企業実態に対する、私どもの所見は次のとおりです

 

従来のコスト改善中心を考え直す時期と、私どもは考えます。それは、経営の総合
効率(全体最適)追求により、収益改善に反映させる取り組みです

 

コンサルティングプログラムの主機能は、この実態認識をもとにした収益改善の企
画提供と実践支援にありました

 

 

◆SCMブームと当時の定義

 

こんな中でSCMブームは続き、経営コンサルタントとしても当技術に関心持たざ
るを得ませんでした。日本にサプライチェーンマネジメントが紹介され、20年あま

り経ちます。もともと米国で、サプライチェーン全体の最適化と最終の顧客満足を
高めようとする経営管理思想として提唱され、日本でも1990年代半ばにはブームと

なりました。現在では、SCMに過度な期待が持たれた時期を脱し、経営実態に即
した姿が求められる段階に入っています

 

定義は幾つもありますが、代表的なものを紹介します

 

☆一般的なSCM定義(2005年当時)

 

SCM(SCM,Supply Chain Management,供給連鎖管理)、サプライチェーンマネジ
メントとは「価値提供活動の初めから終わりまで、つまり原材料の供給者から最終

需要者に至る全過程の個々の業務プロセスを、1つのビジネスプロセスとしてとら
え直し、企業や組織の壁を越えてプロセスの全体最適化を継続的におこない、製品

・サービスの顧客付加価値を高め、企業に高収益をもたらす戦略的な経営管理手法」
のことです

 

特徴は、複数企業のビジネスプロセスの全体最適化をめざしていることです。これ
に対し、私どものSCMはやや範囲の狭い社内SCMを主として捉えています。定

義は次のとおりです

 

☆私どもの社内SCM定義

 

サプライチェーンを構成する販売・生産・調達・物流に至る各業務の連鎖が、もっとも
効率よく運用され、収益能力最大となるしくみを指しています。SCMは統制機能

です。実需をベースとした業務連鎖で収益能力向上に寄与するしくみの対象となる
業務、基準、ルールに対する統制事項が該当します。SCM推進管理のために必要と

なる機能は、本領域に含みます

 

定義の最初の文が、全体最適に相当します。私どもによる全体最適の意味は、次の
とおりです

 

☆全体最適

 

個別部門の部分最適にとどまらず、販売・生産・物流・開発の全ライン部門が経営
資源を生かし切り収益能力の最大化追求をすることです

 

全体最適の対象は、特定企業グループや単独企業のことを指しています。このよう
に一般的なSCMの定義にある全体最適と、対象範囲を異にしているわけです。私

どもがこのように考えた理由は、社内のことを十分できていないのに、他企業に強
制できないの一言に尽きます。あくまでも、自企業のレベルアップを優先させてい

るからです (^-^)

 

 

◆現在のSCM

 

それぞれの対象範囲は異なりますが、ゴールとしての全体最適は同じと2005年当時
から、私どもは考えていました。いずれ、どこかで一般と社内SCMは融合される

はずであると…。しかし、一般のSCMは当初考えられていた姿と変わりつつある
のではないかと思っています。いや、もう変わってしまったのかもしれません。い

ろいろありますが、最近のSCMの定義は次のとおりです。この部分は、読者によ
り変わる可能性があります… (^∧^)

 

☆現在一般的なSCMの定義

 

次の定義は、2011年5月6日現在のウィキペディア「サプライチェーン・マネジメン
ト」にあるものをほとんどそのまま掲載しています。ウィキペディアは、インター

ネット上にあるオープンコンテントの百科事典です

 

サプライチェーン・マネジメント(SCM、Supply Chain Management)、供給連鎖管
理とは、物流システムをある一つの企業の内部に限定することなく、複数の企業間

で統合的な物流システムを構築し、経営の成果を高めるためのマネジメントのこと
である。なお、この場合の「複数の企業間」とは旧来の親会社・子会社のような企

業グループ内での関係に留まらず、全く対等な企業間で構築される物流システムも
サプライチェーンマネジメントと呼ばれる

 

見ていただいて分かるとおり、2005年当時の従来の一般的なSCMの定義との違い
は明らかです。従来の崇高な狙いが完全にトーンダウンしています。やはり、当初

の懸念どおり、自企業内部のことも出来ないのに、複数企業に網を広げたことに無
理があったと言わざるを得ません。もちろん、定義はこのほかにもありますが…

 

 

◆「全体最適」の発展方向性

 

一般のSCMと私どもの社内SCMは、全体最適という同じゴールをめざしつつ途
中まで歩んできたつもりでした。しかし、前項でも述べたとおり、一般のSCMは

大風呂敷を広げすぎた感があります。私どものめざしたゴールは、社内SCMと範
囲が狭かったのですが、現在も着実に階段を登りつつあります。また、私どものコ

ンサルティングの性格上、サプライチェーン全体を対象に採りあげることは事実上、
不可能と言わざるを得ません。ただし、2005年当初の一般SCMにもある、全体最

適の実現という夢は、範囲が狭いながらも実現可能段階になっています
  \(^^)/

 

 

◆経済産業省の認識

 

最後に、経済産業省の認識が分かる資料の一部を掲載しましょう。最近のSCMの
認識と同じレベルと分かります。経済産業省が、2011年4月26日付で発表した調査結

果の冒頭部分です

 

☆平成23年4月26日「東日本大震災後の産業実態緊急調査」
 「サプライチェーンへの影響調査」の結果の公表

 

3月11日に発生した東日本大震災後の産業実態(被災地における生産拠点の復旧状
況及び見通し、震災を原因とする製品・部材等の供給制約による生産の停滞や自粛

ムードの広がりによる消費への影響等)について把握すべく、「東日本大震災後の
産業実態緊急調査」を実施しました。

また、サプライチェーンに係る主要企業の足下の稼働状況や、復興に向けた産業界
の動きを確認するため、企業ヒアリング等を実施し、「サプライチェーンの復旧に

向けた産業界の取組」を作成しました。
結果をとりまとめましたので、ご報告いたします

 

以下、報告内容の詳細(省略)

 

ご覧のとおり、サプライチェーンの捉え方は、どちらかというと物流システムに近
いものです。SCMのMに相当する各社の対策は、省略した詳細部分で言及してい

ます (^∧^)

編集後記

植え込みのスズランが、花を付け始めました。香りがただよっています。有害物資
が含まれていますので、ネコが食べなければいいのですが…。毒性はスズラン全体

にありますが、とくに花と根には多く含まれているようです。北海道では、山菜の
ギョウジャニンニクと間違い、中毒になる例もあると聞きます (>_<)

 

朝、メルマガ用の写真を撮っていると、近所の方が話しかけてきました。スズラン
は、土が合わないと全然咲かないんですよ。うちでもやってみたのですが、根付き

ませんでしたとのこと… (+。+)アチャー

 

自宅のスズラン

            自宅のスズラン 5月4日

 

スズランは多年草で、北海道を代表する花です。実家近くの十和田や八甲田でも、
そこら中で見かけます。植えたのは数株ですが、写真のように増えてしまいました。

我が家の土には合っているようです。そう言えば、近所ではスズランを見かけませ

 

自宅のスズラン

 

今回は、前々から感じていた従来SCMの変遷をテーマに採りあげました。2005年
当時の定義も依然としてあることは事実です。しかし、日本の産業界におけるSCM

への取り組みは、本文紹介の現在の一般的なSCM定義に沿った内容になっている
と感じています。本当に必要な取り組みは、従来からある崇高な目標「全体最適」

と信じて疑いません (●^o^●)

 

SCMの思想が生まれて30年近くになります。日本に持ち込まれた経営の管理技術
としては、成功と思っていません。たしかに、SCMは一般用語として浸透はして

いますが、当初の狙いは縮小してしまったからです。誠に残念です。その分、私ど
もの「全体最適」追求の重要性を再認識しています

 

 今回頁数は次のとおりです
  342行/校了時点の合計÷53行/頁≒6.45頁

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!