収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口
  【現役 経営コンサルタントの裏情報! No.9】

                                         発行 2009/04/27
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【目次】

1.物流費が下がらない流動倍率とは その5
2.インターネットと流通段階の変革

1.物流費が下がらない流動倍率とは その5

こんにちは 前田です!

 

2009年3月23日 No.3にて、物流費が下がりにくい理由を紹介しました。その中でも
重要度の高い流動倍率の算出方法を紹介しましょう。分かりやすいように極力専門

用語を避けて少々言い替えています。以下の例をもとに、皆さんがたの企業に当て
はめて試算してみることも有効かもしれません

 

 

◆物流費が下がりにくい流動倍率の低さ

 

流動倍率が低いとは、おおむね1.5以下を指しています(流動倍率は小生の造語)

 

*流動倍率=貨物総流動÷貨物純流動

 

   貨物純流動: 販売した貨物の重量
   貨物総流動: 輸送区間ごとの貨物の総重量

 

 

1980年代半ばから後半頃、お手伝いしたメーカーでは、流動倍率がおおむね 2.0
程度でした

 

 

◆貨物純流動とは

 

メーカーでは販売した貨物の重量が相当します。貨物そのものの動きに着目し、貨
物の出発点から到着点までを、一区切りの流動として捉えたもので真の流動量が把

握できます

 

 

◆貨物総流動とは

 

メーカーでは、工場〜顧客、工場〜物流拠点〜顧客、または工場〜代理店〜顧客な
どの輸送経路を経て製品が納品されます。これら輸送区間ごとの貨物の重量を累計

したものを貨物総流動といいます。輸送機関に着目し、それぞれの輸送機関の貨物
輸送を一区切りの流動として捉えた総和になります

 

 

◆流動倍率の計算例1

 

 *販売量全部を物流拠点経由のとき

 

 輸送経路 : メーカー (経路1)→ 物流拠点 (経路2)→ 顧客
          メーカー (経路3)→ 顧客

           *経路1は工場出荷、経路2は顧客販売、経路3は直送
 貨物重量   : 経路1(100トン)、経路2(100トン)、経路3(0トン)

 貨物総流動  : 100+100=200トン…(全経路の合計)
 貨物純流動  : 経路2+3=100+0=100トン

 流動倍率   : 200÷100=2.0…(経路1+経路2+経路3)÷(経路2+経路3)
 直送率     : 0÷100=0% …経路3の貨物重量÷(経路2+経路3)の貨物重量

 

 注)直送(ちょくそう)
  メーカーにおける直送とは、生産拠点あるいは生産拠点に併設する物流拠点

  から、販売先顧客まで貨物が途中で停滞・一時保管なしに納品されること

 

 *直送率(%)=直送貨物重量÷顧客販売の貨物重量×100

 

 

◆流動倍率の計算例2

 

 *販売量の半分を直送にしたとき

 

 輸送経路  : メーカー (経路1)→ 物流拠点 (経路2)→ 顧客
           メーカー (経路3)→ 顧客

 貨物重量  : 経路1(50トン)、経路2(50トン)、経路3(50トン)
 貨物総流動 : 50+50+50=150トン

 貨物純流動 : 経路2+3=50+50=100トン
 流動倍率  : 150÷100=1.5

 直送率    : 50÷100=50%

 

 

◆流動倍率の計算例3

 

 *販売量の80%を直送にしたとき

 

 輸送経路  : メーカー (経路1)→ 物流拠点 (経路2)→ 顧客
           メーカー (経路3)→ 顧客

 貨物重量  : 経路1(20トン)、経路2(20トン)、経路3(80トン)
 貨物総流動 : 20+20+80=120トン

 貨物純流動 : 経路2+3=20+80=100トン
 流動倍率  : 120÷100=1.2

 直送率    : 80÷100=80%

 

 

◆流動倍率の計算例4

 

 *販売量全部を直送するとき

 

 輸送経路  : メーカー (経路1)→ 物流拠点 (経路2)→ 顧客
           メーカー (経路3)→ 顧客

 貨物重量  : 経路1(0トン)、経路2(0トン)、経路3(100トン)
 貨物総流動 : 0+0+100=100トン

 貨物純流動 : 経路2+3=0+100=100トン
 流動倍率  : 100÷100=1.0

 直送率    : 100÷100=100%

 

 

◆日本全体の貨物流動

 

参考ですが、国内の貨物純流動の調査は「数字でみる物流」があります。物流やロ
ジスティクスに興味のあるかたは、1冊手元にあってもいいでしょう。小生も1989

年から最近までほぼ毎年入手している推奨の参考資料です。ポケットサイズですが、
日本の物流動向を最新数値を使い、表・グラフ等で分かりやすく解説された優れも

のです

 

内容を説明できるようになれば、かなり物流関係に詳しいと一目置かれること絶対
です。アマゾンでは購入できないと思います。各地の政府刊行物サービスセンター、

八重洲ブックセンター等の大手書店、あるいは日本物流団体連合会から直接求める
ことになります

 

 

(社)日本物流団体連合会「数字でみる物流2008年版」
A6版 2008年9月発行(毎年同時期) 定価:900円(消費税込み)送料別

http://www.butsuryu.or.jp/suji/suji2008.html

 

もともと、旧運輸省の外郭団体である(財)運輸経済研究センター(現、(財)運輸政
策研究機構)から発行されていたのですが、発行母体が(財)物流技術センターを経

て、1999年から現在の(社)日本物流団体連合会に変わったものです。執筆担当に変
更はないと聞いたことがありますが(^0^)

 

 

◆流動倍率は企業の中期的な統制指標

 

中長期の経営計画、販売計画では、流動倍率を小さくする政策が、物流費低減に貢
献します。流動倍率を1.0に近づけようとするわけです。物流・ロジスティクス部門

だけの努力では、困難なことが多いもの事実ですが…

 

 

◆流通段階の整理とSCM

 

流動倍率を一企業に限定すれば、直送率とほぼ同じ意味になります。ただし、物流
拠点の在庫を増減させるときは、必ずしも一致しません

 

SCMが日本に紹介されて間もない頃、サプライチェーン最適化の一つとして、消
費物資を対象に流通段階の整理縮小が叫ばれたことがありました。サプライチェー

ンを構成するメーカー、代理店、量販店まで対象に入れて、検討が進められました
がうまくいかなかったのです。流通段階の利害関係の調整が困難だったためと聞い

ています

 

小生の試算でも流通段階の物流機能をメーカーがおこなうことにより、建材業界、
一般的には窯業・土石品製造業に分類されますが、最終需要家に対する販売価格100

に対し、数%程度はコスト低減に寄与できる見通しを持っています。しかし、流通
段階カットは利害関係の多さから、大半が成り行きに任せるしかない面も否定でき

ません。(歯切れが悪いですね)(笑)。成り行きとは、流通段階の物流機能は有
用な面もあります。しかし、それ以外の部分は経済の合理性から淘汰を待つことに

なるでしょう

2.インターネットと流通段階の変革

◆いっぽうで変革が進んでいる

 

既存の流通段階を変えようとすれば、強力な抵抗勢力が現れます。当然といえば、
当然ですが…。しかし、インターネットの影響には大きなものがあります。じわり

じわりと、実質的に流通段階の変革が進んでいると見られるのです

 

 

◆インターネット通販が生活に定着

 

日本における電子商取引(EC:Electric Commerce)のスタンダードともいえる、
楽天市場が誕生したのは1997年5月です。もう10年以上経つんですね。楽天のビジネ

スモデルは、B to C(Businesst to Consumer:企業対消費者)が基本で、すっか
り私どもの生活に入り込んだと思います。小生も、パソコンはネットショップで毎

回購入しています

 

 

◆家電製品のインターネット通販、前期比3割増

 

2009年4月20日の日本経済新聞の記事です

 

「家電製品のインターネット通信販売、有力8社の2008年度の売上高実績(一部見込
み)は前期比で平均3割増となっている」

 

記事は、続いて次のように述べています

 

「価格の安さと利便性が受け、100億円を超す企業も相次ぎ登場している。価格を比
較しながら少しでも安く買おうと、ネット通販を利用する消費者が急増している実

態が浮かび上がった。
 7兆円規模ともいわれる国内の家電小売市場は、景気悪化で伸び悩んでいる。この

なかでネット通販が伸びているのは、価格が安く利便性も高いからだ。パソコンや
テレビなどデジタル家電を主力とするアベルネット(東京・千代田)は「特に昨秋

の世界金融危機以降、利用が増えた」と説明する」

 

ビジネスモデルの変革が確実に進んでいます

 

 

◆ネットショップ

 

小生は家電小物やサプリメントを、アメリカの通販からインターネットで時には購
入しています。ちなみに、洋服のしわ取りスチーマーは、日本のものより機能的で

半値以下で買えるものがあります。2006年7月に購入した、Jiffyのスチーマは諸費
用込みで93米ドル(本体価格$64.95、運賃等$27.50、計$92.45、重さ2.1ポンド)

、日本では2万7千円位のようです。発注後、2週間で届きました。なかなか優れもの
ですよ(満足)

 

小生の甥っ子は、ヤフーショッピングの店長をやっています。田舎の食材中心の産
直です。一度、訪問して小生の田舎の田園風景と、遠くに見渡せる津軽富士をパソ

コンから眺めてみてください。リラックスできますよ(^-^)。じょっぱりストアの
会社概要ページで見られます。小生のふる里の夕焼けが目に浮かぶでしょうか(笑)

 

じょっぱりストア
http://store.shopping.yahoo.co.jp/joppari/index.html

 

*じょっぱりは純粋の津軽弁で強情なこと

 

いずれも、ネットショップが個々に商品を仕入れ、在庫を保管しつつネット販売を
おこなっているわけです。物流効率化の視点から見ると、顧客別あるいは狭い地域

内を車単位に配送できる物量がない限り、配送密度が薄くなればなるほど旧路線便
での配送が安くなります。つまり、物流的に見るなら、輸送費最小化となる輸送機

関選定と流動倍率1.0を達成していることになります

 

しかし、いっぽうではネットショップの広がりは、物流費を押し上げるだけとの忠
告があります。一個の家電小物をアメリカから取り寄せるのが多数出てきたとする

と、物流費や諸費用が比例的に増え、結果的に高くつくというのです。実際はどう
なのでしょうか

 

 

◆ドロップシッピング

 

ドロップシッピング(drop shipping)という言葉を、お聞きになったことがあるで
しょうか。流通段階を変えるビジネスモデルが登場し、日本でもようやく市民権を

獲得して来たようです。言葉の意味は直送と訳しますが、Webサイト無店舗販売
と呼んだほうが適切かもしれません。2006年、このビジネスが日本に本格的に上陸

しました

 

今までのネットショップでは、在庫を持っておこなうのが一般的です。中には、楽
天市場の多くの家具屋さんのように、従来から在庫を持たず、受注後に手配という

のも一部あります。しかし、いずれも注文を受けてから、顧客とのやりとりや代金
決済は自らおこなうことが普通です

 

ドロップシッピングでも、ビジネスモデルにいくつかのタイプがあります。その中
で、ネットショップのオーナーのやることが、次の内容で済むものがあります。成

果報酬型ドロップシッピングと呼ばれています

 

 

 ・インターネット上に店舗を開設する(Webサイト上への店舗オープン)

 

 ・販売価格の決定(決まっている仕入値を見て売値を決める)

 

 ・商品の仕入と陳列
  (販売商品は自分でカタログから選択。陳列商品の支払・在庫不要)

 

 ・集客(ネットショップ訪問客を増やす宣伝と工夫)

 

 ・受注(ネットショップ訪問客の注文=オーナーが受注)

 

 ・販売金額と卸値の差の粗利を受け取る(オーナーの収入)

 

 

顧客との商品に関するやりとり、在庫、包装、出荷手配、品切れ時の対応、代金決
済等をネットショップのオーナーがおこなう必要はありません。メーカーや商品供

給者とショップオーナーの間に立って仲介するDSP(Dropshipping Service
Provider)が代行するようになっているからです

 

徐々にですが、確実に日本の流通に変化が出てきています。今後も、インターネッ
トの活用と進歩によって新たなビジネスモデル出現があるかもしれません。注目す

べき分野です

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。
次回またお会いしましょう