収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
 発行 2011/02/21 No.92

 

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【目次】

1.生産プロダクトミックス

まえがき

こんにちは 前田です!

 

No.91に引き続き、旧芝離宮庭園の様子を写真で紹介します。季節を旬で味わっていただくため、前回はジュウガツザクラと梅を優先して掲載しました。今回は、風景を中心に載せることにします (^−^)

 

旧芝離宮庭園

            旧芝離宮庭園 2011年2月7日

 

旧芝離宮庭園は、JR浜松町駅北口から海側に向かって徒歩1分の距離にあります。上の写真は、門の前にある案内板です。入園料、大人150円を払って入ります

 

旧芝離宮庭園

           旧芝離宮庭園 2011年2月7日

 

御休みどころの左先に池が見えます。その昔は、海水を引き込んでいたそうです。今は淡水になっており、写真には写っていませんが、鴨の群れが随分います

 

                         冬囲い
冬囲い寒さに弱い樹木なんでしょう。暖かそうな冬囲いで覆われていました。衣を脱いだ頃に再訪し、中を確認したいものです (^0^)

 

訪れた日は、庭師の方々が松の木を中心に手入れの最中でした。お天気が良く、2月初旬とは思えないほどの暖かさです。この日の気温は13℃でした。この写真を撮った後ろのほうに、ジュウガツザクラと梅があります

 

次の石柱ですが、ここが小田原藩の上屋敷だった頃のものらしいです。案内板には茶室の柱に使われていたと書かれています

 

石柱

           石柱(茶室の柱に使われていた)

 

旧芝離宮庭園は、池を中心に石組みや樹木が配置された回遊式泉水庭園です。池の周りをぐるっと一回りするだけで、1kmは歩くことになります。昼休みに、小生も一巡りしたのですが、40分ほどかかりました。写真の橋は、庭園の中心部の一つです

 

橋

                 橋
                            門

門春を味わう公園散策も悪くありません。写真の門を後にしていっときの至福を感じました。これからの時期は、3日と同じ空模様が続きません。案の定、翌2月8日は曇で、気温7℃と5度も下がってしまいました。春が逃げないうちに、早めにこの季節しか味わえない自然を満喫しようと思っています (●^o^●)

 

この原稿は、2月19日の土曜日に書いています。今回ご紹介の旧芝離宮庭園も、訪れてから約2週間経過しました。この間、東京では2月14日に雪が降ったり、寒い日が続いたりしています。庭園の様子も、だいぶ変わっているのではないでしょうか

 

季節の変化が早く感じられる時期です。花粉症の処方箋をいただくため、今期はすでに2回通院しました。1月15日、2月14日です。花粉症から解放されるまで、まだしばらくありますが、新規仲間入りのかたを歓迎します (^∧^)

1.生産プロダクトミックス

今回は、生産プロダクトミックスの算出のしかたをもう少し、例を挙げて紹介する
ことにします。No.91でご紹介の編成効率算出の前提となるものです

 

 

◆編成効率の考えかた

 

No.91では統制指標の一つ、編成効率算出についてご紹介しました。編成効率の算出
式は、次のとおりです

 

 編成効率(%)=生産した製品の収益÷生産プロダクトミックス時の収益×100

 

寄せられた声の中には、生産プロダクトミックスの算出方法が、今一つ分からない
というのがありました。そこで、もう少し具体的な例を挙げて説明したいと思いま

す (^−^)

 

メルマガは、各号読み切りご理解いただけることが狙いの一つです。その点、No.91
では基本部分の説明を省いたところがありました。今回の説明には、No.91との一部

重複があります。どうぞ、ご容赦お願いするものです m(_ _)m

 

編成効率とは、生産ラインが持つ生産能力の使用割合のことです。また、生産プロ
ダクトミックスとは、限界利益額あるいは限界利益率を最大化する現有インフラで

生産可能な品種・数量の生産組み合わせを指しています。編成効率は量ではなく、
特定生産ライン製品売上の最大収益に対する実績、あるいは計画収益の割合のこと

です

 

*用語「限界利益」
 限界利益=売上高−変動費

 限界利益は貢献利益と呼ばれることが多いでしょう。ほかに、付加価値、あるい
 は変動利益とも言います

 

生産ラインはフル稼働なのに儲からない場合は、編成効率が当然低い数値となりま
す。逆に、稼働率は低くとも編成効率が高くなることがあるでしょう

 

ここでいう生産ラインは、原材料投入から完成品に至る生産工程のことです。した
がって、原材料から完成品までできるのであれば単独の設備であっても構いません。

生産ラインや設備にこだわらず、製造部門別や工場別にも容易に算出可能です。編
成効率算出に使うデータが収益のため、ディメンション(単位)を揃えられる利点

がここにあります

 

 

◆収益から見た指標の必要性

 

なぜ、収益性から見た指標の必要性があるのでしょうか (=^^=)

 

工場には稼働率、歩留まり、不良率など、効率を測る指標も多くあります。ただ、
量管理がほとんど全部と言っても過言ではない状況が見られるのです。指標算出の

データには、トン、本数、個数などの量が圧倒的に使われています。そのほか、時
間や人員もありますが、基本は量です。量を中心とした管理を、私どもは量管理と

呼んでいます

 

*用語「量管理」
 メーカーにおける量管理とは、品質と生産性を維持し生産量確保に重点を置く生

 産のしくみを指しています

 

量管理に相対する概念が収益管理です。販売・生産など部門内の効率性を測る指標
を管理指標と、複数部門にまたがる最適解判断には統制指標があります。管理指標

では原価やコスト、統制指標では営業利益への変化が分かるように設定するのを基
本としているわけです

 

*用語「収益管理」
 メーカーにおける収益管理とは、収益を直接生み出す販売・生産・物流・開発の

 ライン部門を、部門別業績把握が可能な事業別・地域別・工場別・製品別・工程
 別など極力小さい単位に区分し、予実績把握と達成度引き上げをはかるしくみを

 いいます。業績は部門によって変わりますが、収益向上に寄与する売上高、売上
 数量、平均売上単価、生産量、発生費用、部門目標、管理・統制指標等を指して

 います。同様に、しくみとはPDCAのマネジメントサイクルを回すことです

 

*用語「管理指標」
 管理指標とは、対象業務・作業全体の運用が適切かどうか判断する物差しあるい

 は業務効率の測定基準を指しています。または、部門あるいは部門内の運用が適
 切かどうか判断する物差しのことです。言い換えると、部門運用効率の測定基準

 になります。この点において、売上高経常利益率など経営効率を見るための経営
 指標、また全社最適を実現する視点からの統制指標とは異なります

 

*用語「統制指標」
 部門最適ではなく全体最適実現のため、業際間の課題について権限を持って管理

 する優位性判断の物差しをいいます。業務連鎖の評価指標とも呼びます。統制指
 標の目的は、全社収益最大化の方向に統制することです

 

前置きがやや長くなってしまいました。今回の本題、生産プロダクトミックスの算
出例を述べることにしましょう (∩_∩)

 

比較的単純な例から始めます。同様の例は、No.91でも紹介しました。しかし、見や
すさのため売上単価などの項目を省略しています。逆にこれが分かりにくくなった

原因のようです。これから紹介する表形式の項目は、極力必要なものを残していま
す。ただし、見やすさを考慮し品種数は少なくしました

 

◆事例1「単一生産ライン」

 

最初の例は、量産品を見込生産している単一生産ラインです。某メーカーの販売製
品には、A、B、Cの3品種があります。販売可能な数量は、A100個、B70個、C

50個です。販売単価から変動単価を引いた限界利益は、A20円、B30円、C40円と
なっています。1個当たりでは、Cが一番儲かるわけです。1個造るのに必要な生産

時間は、A1分、B2分、C5分となっています。したがって、生産1分当たりに得ら
れる限界利益は、A20円、B15円、C8円です。Cは1個の限界利益は最大ですが、

分当たり製造時間では最小となっています。ただし、生産時間合計の制限は400分で

 

ここで問題です (^0^)

 

生産時間合計の制限400分以内で、限界利益を最大化する販売可能な品種と数量の
生産組み合わせはどのようになるでしょうか。これが生産プロダクトミックスです

 

 

◆試算例1-1 1個当たり限界利益重視のとき

 

まず、時間当たり限界利益の大きい品種の生産を優先させてみます。1個当たりの限
界利益は、C→B→Aの順です。そこで、Cを販売可能量50個まで生産します。C

の生産時間は250分です。Bの販売可能量70個の生産時間は、140分となります。生
産時間にまだ余裕がありますので、生産への組み込みは全量70個です。残りの生産

可能時間は、10分あります。Aの単位生産時間は1分です。そこで、Aを10個生産に
組み込むことにします。これで、生産制限時間の400分となりました。最後に、限界

利益を算出します。結果は、4,300円です。この内容を、次の例で確認お願いします
 (^0^)

 

☆1個の限界利益が大きい順に生産・販売したとき

 

品 種       A   B   C  合計
売上単価(円)    30   50   70

変動単価(円)    10   20   30
1個の限界利益(円) 20   30   40

1個の生産時間(分)  1   2   5
1分の限界利益(円) 20   15   8

販売可能量(個)  100   70   50  220
生産量(個)     10   70   50  130

生産時間(分)    10  140  250  400
限界利益(円)   200 2,100 2,000 4,300

 

 

◆試算例1-2 時間当たり限界利益重視のとき

 

次は、1分当たりの限界利益が大きい順に生産します。1分当たり限界利益は、A20
円、B15円、C8円です。そこで、AとBを販売可能量まで優先的に生産枠を確保し

ます。幸い、両方生産しても生産時間は240分です。そこで、残り160分でCを生産
します。Cは1個5分かかりますので、32個生産可能です。これで、生産時間の制約

400分となりました。限界利益の合計は5,380円です。この内容を、次の例で確認お
願いします (^-^)

 

☆1分の限界利益が大きい順に生産・販売したとき

 

品 種       A   B   C  合計
売上単価(円)    30   50   70

変動単価(円)    10   20   30
1個の限界利益(円) 20   30   40

1個の生産時間(分)  1   2   5
1分の限界利益(円) 20   15   8

販売可能量(個)  100   70   50  220
生産量(個)    100   70   32  202

生産時間(分)   100  140  160  400
限界利益(円)  2,000 2,100 1,280 5,380

 

 

◆事例1「単一生産ライン」の結論

 

試算内容を見ていただければ一目瞭然です。時間当たり限界利益が大きい順番で、
生産・販売した場合の収益が、この例では25%も大きくなります。ここでは試算の

ため、極めて単純な例を用いていますが、生産設備や品種が多くても結論は変わり
ません。このケースの生産プロダクトミックスは、後者の1分の限界利益が大きい順

に生産・販売したときが相当します (●^o^●)

 

つづいて、複数生産ラインのときの事例を見ることにしましょう (^−^)

 

 

◆事例2「複数生産ライン」

 

この例は、量産品を見込生産する2つの生産ラインです。某メーカーの製品は、A、
D、E、F、Gの5品種あります。販売可能な数量は、A80個、D50個、E30個、F

50個、G30個です。販売単価から変動単価を引いた限界利益は、D30円、E40円、
F28円、G30円となっています

 

ただし、Aのみ双方の生産ラインで生産可能です。双方の生産ラインによる変動費
は異なっています。生産ライン1によるAの限界利益は26円、生産ライン2による限

界利益は24円です

 

1個当たりは、Eが40円で一番儲かります。1個造るのに必要な生産時間は、A2分、
D3分、E5分、F4分、G6分です。生産1分当たりに得られる限界利益は、D10円、

E8円、F7円、G5円となっています。生産ライン1によるAの1分当たり限界利益は
13円、同様に生産ライン2では12円です。1分当たり限界利益では、生産ライン1のA

が13円で最大となります。生産制約時間は、生産ライン1・2とも300分です

 

ここで問題です (^0^)

 

生産ライン1・2、それぞれの生産時間制限300分以内で、限界利益を最大化する販売
可能な品種と数量の生産組み合わせはどのようになるでしょうか (?_?)

 

 

◆試算例2-1 1個当たり限界利益重視のとき

 

まず、生産ライン1で時間当たり限界利益の大きい品種の生産を優先させてみます。
1個当たりの限界利益は、E→D→Aの順です。そこで、Eを販売可能量30個まで生

産します。Eの生産時間は150分です。Dの販売可能量50個の生産時間は、150分と
なります。これで、生産制限時間の300分となりました。最後に、限界利益を算出し

ます。結果は、2,700円です。この内容を、次の例で確認お願いします (^0^)

 

☆1個の限界利益が大きい順に生産・販売したとき
 【生産ライン1 生産制約時間300分】

 

生産可能品種    A   D   E  合計
売上単価(円)    30   50   70

変動単価(円)    4   20   30
1個の限界利益(円) 26   30   40

1個の生産時間(分)  2   3   5
1分の限界利益(円) 13   10   8

合計販売可能量(個) 80   50   30  160
生産量(個)     0   50   30   80

生産時間(分)    0  150  150  300
限界利益(円)    0 1,500 1,200 2,700

 

同様に、生産ライン2で時間当たり限界利益の大きい順に負荷山積みを実施します。
1個当たりの限界利益は、G→F→Aの順です。そこで、Gを販売可能量30個まで生

産します。Gの生産時間は180分です。Fの生産量を30個にすると、生産時間は120
分となります。これで、生産制限時間の300分となりました。最後に、限界利益を算

出します。結果は、4,440円です。この内容を、次の例で確認お願いします

 

☆1個の限界利益が大きい順に生産・販売したとき
 【生産ライン2 生産制約時間300分】

 

生産可能品種    A   F   G  合計
売上単価(円)    30   40   60

変動単価(円)    6   12   30
1個の限界利益(円) 24   28   30

1個の生産時間(分)  2   4   6
1分の限界利益(円) 12   7   5

合計販売可能量(個) 80   50   30  160
生産量(個)     0   30   30   60

生産時間(分)    0  120  180  300
限界利益(円)    0  840  900 1,740

合計限界利益(円)  0 2,340 2,100 4,440
Aの合計生産量(個) 0

 

*用語「負荷山積み」
 単に山積みともいいます。生産ラインあるいは生産プラントに対して、時間帯別

 に生産品目を各工程に割り付けることです。実務上では、生産日程計画立案に相
 当します

 

 

◆試算例2-2 時間当たり限界利益重視のとき

 

次は、1分当たりの限界利益が大きい順に生産します。1分当たり限界利益は、生産
ライン1のA13円、生産ライン2のA12円、D10円、E8円、F7円、G5円の順です。

Aは両方の生産ラインで生産できます。実際に負荷山積みをやっていただければ分
かりますが、一つの生産ラインに販売可能なAをすべて山積みすると限界利益が最

大とはなりません

 

この内容を、次の例で確認お願いします (^-^)

 

☆1分当たりの限界利益が大きい順に生産・販売したとき

 

【生産ライン1 生産制約時間300分】

 

生産可能品種    A   D   E  合計
売上単価(円)    30   50   70

変動単価(円)    4   20   30
1個の限界利益(円) 26   30   40

1個の生産時間(分)  2   3   5
1分の限界利益(円) 13   10   8

合計販売可能量(個) 80   50   30  160
生産量(個)     30   50   18   98

生産時間(分)    60  150   90  300
限界利益(円)   780 1,500  720 3,000

 

【生産ライン2 生産制約時間300分】

 

生産可能品種    A   F   G  合計
売上単価(円)    30   40   60

変動単価(円)    6   12   30
1個の限界利益(円) 24   28   30

1個の生産時間(分)  2   4   6
1分の限界利益(円) 12   7   5

合計販売可能量(個) 80   50   30  160
生産量(個)     50   50   0   96

生産時間(分)   100  200   0  300
限界利益(円)  1,200 1,400   0 2,600

合計限界利益(円)1,980 2,900  720 5,600
Aの合計生産量(個) 80

 

 

◆事例2「複数生産ライン」の結論
試算内容を見ていただければ、次のとおり一目瞭然です (●^o^●)

 

・限界利益の大きい順に負荷山積み時:合計限界利益  4,440円
・時間当たり限界利益の大きい順のとき:合計限界利益 5,600円

 

時間当たり限界利益順に負荷山積み時が、26%も大きくなります。ここでは試算の
ため、極めて単純な例を用いていますが、生産設備や品種が多くても結論は変わり

ません。生産プロダクトミックスは、1分当たりの限界利益が大きい順に生産・販売
したときとなります

編集後記

受注生産時の例も紹介するつもりでしたが、誌面の都合上、今回は見送りとさせて
いただきました m(_ _)m

 

事例1「単一生産ライン」の内容は少々違いますが、ほぼ同様の内容はNo.91で紹介
しています。読み切りで紹介している都合上、本文に集録しました

 

本文では、収益力の大きさを時間当たり限界利益で表わしています。なぜ、そう見
るのかについては言及していません。この部分についての詳細は、No.54「営業から

見る収益管理」で紹介しています

 

事例2で求めた合計限界利益が最大となる解法は、時間の都合もあり試行錯誤的に求
めました。そのため、限界利益合計の解は別にある可能性もあります。MS Excelの

ソルバー機能を使えるはずです。どなたか、試行してみていただけらと思っていま

 

実は、この解はソルバー実行の結果です。しかし、Excel2002、2003の整数条件・バ
イナリ条件を制約に加える場合にエラーが発生することがありますとのこと。小生

はExcel2000で実行したのですが、どうも変な数値になります。小生のやり方が悪い
のかもしれません。ただ、近似値では合っているようです。近いうちに再トライし

てみます (>_<)

 

 今回頁数は次のとおりです
  390行/校了時点の合計÷53行/頁≒7.3頁

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!