収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口
  【現役 経営コンサルタントの裏情報! No.18】

                                         発行 2009/06/29
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【目次】

1.体質改善とマネジメントサイクル

まえがき

こんにちは 前田です!

 

 

◆新型インフルエンザの感染速度が急増

 

4月下旬から1カ月間の感染数とほぼ同じ症例数が、ここ1週間で増えています。感染
速度が速くなっていますね(_ _)。世界の国の数194カ国のうち、感染国数は112カ

国になってしまいました。(外務省によると193カ国。日本が未承認の北朝鮮を加え
て世界で国の数は194カ国。2009年3月現在)

 

この項を採りあげたのは、5月4日の第10号からで、報道に対する最上の情報源はど
こにあるか知ることが狙いでした。この点では、発信元としてのWHOに軍配が挙

がったような気がします。やはり、情報収集のポイントは発信元、あるいは原典に
当たることが、ここでも明らかになったようです

 

そろそろ、この項も締めくくりとしたいのですが、増加速度の急激な上昇があり、
もう少し推移を見ることにします

 

 

◆発症から現在までの経緯

 

 4月27日インフルエンザ警戒水準 フェーズ4発表
 4月29日インフルエンザ警戒水準 フェーズ5への移行発表

 5月24日(日)から日曜日の発表中止
 5月30日(土)から土曜日の発表中止

 6月11日(木)インフルエンザ警戒水準 最高のフェーズ6移行発表
  世界的大流行(パンデミック)のフェーズです

 6月24日(水)update53から新しいパターンの世界地図に変更

 

*WHOも分かりやすさに工夫を凝らしながら発表しています。事務方の労に
 注目しています(^-^)

 

 

◆感染国112に増加

 

WHOの発表から症例の増加数を算出。updateの後の( )内は、前1週間の増加症例
数を、症例の後の( )内は日本の症例内数です。6月19日以降の感染国数は、小生が

数えています

 

 最初の発表 2009年04月24日(金)米国、メキシコで感染症発生、症例 7
 update 7(324) 09/05/01(金) 感染国 11、症例  331(0)、死亡 10

 update 36(3648) 09/05/22(金) 感染国 42、症例 11168(294)、死亡 86
 update 41(4342) 09/05/29(金) 感染国 53、症例 15510(364)、死亡 99

 update 51(14618) 09/06/19(金) 感染国 94、症例 44287(690)、死亡 180
 update 54(15527) 09/06/26(金) 感染国112、症例 59814(1049)、死亡 263

 

日本の感染者数も最初の発生から1カ月と直近1週間がほぼ同数になっています。
重症化は少ないとはいうものの、体調管理に気をつけたいものです(_ _)

1.体質改善とマネジメントサイクル

企業を取り巻く経済環境が大きく変わっています。諸説ありますが遠くは1990年2月
の株価下落に始まるバブル崩壊までと、その後の状況であり、近くは昨年のリーマ

ンショック以来のできごとが挙げられます

 

収益改善では、必ずといっても問題となる課題があります。そのうち、今回は「体
質改善」と「マネジメントサイクルの一部」を採りあげることにします

 

 

◆体質改善は収益力強化の後ろ盾

 

企業にとっては、単なる環境変化ではなく、経営システムの前提条件が変わってい
ると認識することが不可欠です。いろんな意味で、元に戻ることはあり得ません。

右肩上がりの成長路線は、とっくに終わったと言うべきでしょうか

 

今後は、本当の意味で将来環境に備えた収益力強化の経営シナリオを描けるリー
ダーが要求されています。収益力強化のシナリオには、後ろ盾となる企業の体質改

善が欠かせません

 

 

◆体質改善とは

 

体質改善とは、マーケット環境の変化に即応できる企業のしくみに変えることを指
しています。体質強化とも呼びます。例を挙げることにしましょう

 

昨2008年9月15日、米国第4位の証券会社「リーマンブラザーズ」が破綻し、世界の
景気は一気に悪化しました。経済回復の先行きにやや明るさが見えてきたと言われ

ますが、一部業種を除き、厳しい経営環境に変わりありません。まさに、マーケッ
ト環境が激変したわけです。体質改善の目的は、変化への即応力強化にあります

 

次のような事態発生のある企業では要注意です

 

 

◆例1 プロジェクトの自然消滅

 

課題解決のためにプロジェクトを発足。最初のうちは、メンバーの出席率も良く議
論も活発におこなわれています。しかし、繁忙期になり歯の欠けた櫛のようにメン

バーの出席率が悪くなって行きました。いつの間にか会合自体も開かれなくなり、
プロジェクトは解散状態ですm(_ _)m

 

 

◆例2 販売予実績の差異不明

 

月例の営業会議があります。当初予算と当月実績の未達となった差異は報告されま
すが、理由が分かるように発表されません。質問しても、あいまいな答えに終始し

ています。同様のことが繰り返され、質問自体もされない傾向ですm(_ _)m

 

 

◆例3 都合の悪い報告回避

 

製造原価低減がトップダウン式に決められ、部門内で取り組みが始まりました。
毎月の製造会議では、成果が報告されます。設定の期間満了前の成果発表会では、

目標達成が確認され大いに盛り上がりました(^0^)

 

つづいて、歩留まり改善の目標も示されました。毎月の製造会議では、進捗状況が
報告されますが、目標にはほど遠い状況です。次第に、報告の内容が簡単になり、

活動開始から半年後には報告自体もされなくなってしまいました。改善目標は、
部門内で分担しているため、製造会議のほとんどのメンバーが関与しています

m(_ _)m

 

 

◆例4 方策不明なれど目標達成

 

F社は装置型メーカーで、ほぼ全量、見込み生産です。従来から、売上は順調に伸
びてきました。営業利益は売上増に比例はしていないものの、近い伸びを見せてい

ます。競合他社の一歩先を狙い、経営トップの指示で従来を上回る製造原価低減の
年度目標が設定されました(^0^)

 

期中での進捗は順調な進展を見せています。年度末の部門進捗会議では、目標達成
が報告されました。管理部門からの質問です。「従来と変わった方策を取ったよう

に見えませんが、原価低減の主な方策をお聞かせいただけませんか」「………」質
問には、とうとう答えられませんでしたm(_ _)m

 

(後日談ですが、量産効果が認識されていませんでした。装置型メーカーでは意外
に多く見られます。もちろん、量産効果を定量化するしくみも持っていません)

 

 

◆企業内の階層別役割

 

マネジメントサイクルを回すさいに階層別の役割が重要になってきます。ここで、
その役割について確認しておきましょう

 

会社組織の階層別役割は、3つに区分して捉えます。小規模な企業では、このよう
な階層に分かれていない場合もありますが、機能的に見ると役割を兼ねることが多

いものです

 

・経営層の役割
 利益創出機能であり、現状の経営資源を生かし切る全社最適追求が役割です。

 一般的には常務クラス以上の役員、SCM部門および経営企画部門の上層管理者
 を指しています

 

・事業管理層の役割
 売上改善・改革機能であり、所管事業の経営資源を活用した売上高・利益率向上

 を図る管掌事業部門・最適追求が役割です。一般的には、執行役員、事業部門
 長、取締役部長、取締役、SCM部門および経営企画部門の管理層が該当します

 

・部門管理層以下の役割
 コスト効率向上機能であり、品切れ防止、少ない資源で処理量増やす、時間当た

 り業務処理量を増やすなどの部門最適追究が役割です。一般的には、部課長等の
 部門長以下のすべての階層が対象となります

 

企業内には階層別の役割があるから、その階層に位置するかたも同様の役割をおこ
なうと期待するのは大きな間違いです。稀ですが、係長クラスのかたでも経営層の

役割に近い発想と発言をされるかたもおります(^0^)

 

逆に、取締役なのに部門長以下の発言と実質的な役割しか演じていない場合も現
に見られます。意外に多いのですが、企業にとっては不幸としか言いようがありま

せん(_ _)

 

 

◆マネジメントサイクル

 

よく使われる言葉ですが、使い方確認の意味で説明を加えました。マネジメントサ
イクルとは、PDCAを回す「管理する」と同じ意味で使っています。それぞれの

内容は次のとおりです

 

 P(Plan) :計画、あるいは対策立案と目標設定
 D(Do)  :実践

 C(Check):予実績評価
 A(Act) :差異要因解析

 

マネジメントサイクルの狙いは、管理水準の効率的な維持と向上にあります。実運
用開始、あるいは実践段階になってからは、語句の順番と同じ、P→D→C→Aよ

りも、C→A→P→Dの順番にしたほうが実用的ですね(●^o^●) 。というのは、
Doとしての日常業務は継続的におこなわれていますので、Checkで使う実績がすでに

あるためです。もちろん、新しい業務などに適用する場合は、文字通り、P→D→
C→Aの順番となります

 

 

◆縦と横のマネジメントサイクル

 

マネジメントサイクルの内容は、前述のとおり一般的なものです。しかし、実践に
当たっては、縦のマネジメントサイクルと横のマネジメントサイクルに区分して捉

えることをお薦めします(^−^)

 

縦のマネジメントサイクルは、経営戦略やトップ指示事項の実施と検証のツールと
しての役割が主体です。戦略がすべて計画どおり実施されることはありません。試

行錯誤をともなうことが当然といえば当然でしょう。その意味で、縦のマネジメン
トサイクルは、戦略や指示事項の検証と軌道修正のツールとも言えます

 

横のマネジメントサイクルは、実質的に事業収益を生み出すライン部門内、および
当該部門間の基本業務の実施と検証のツールです。つまり、部門間にある業際間課

題の処理がスムーズにおこなわれているか検証することになります

 

 

◆縦のマネジメントサイクル

 

縦のマネジメントサイクルとは、経営トップ層からの指示命令にもとづき、PDC
Aのマネジメントサイクルが上位・下位階層の縦の流れで実践されることを指して

います。通常、C→A→P→Dの1サイクル相当の期間設定が必要です。手順書
(役割分担マップ)で運用ルール化するのが有効ですね。逃れられません(^-^)

 

*役割分担マップ
 基本業務フローの作業・業務処理の主担当部署および副担当を表したマネジメン

 トサイクルの運用ルールを定めた表。作成対象とする業務によって変わります
 が、文章のみでは説明しずらい内容です(_ _)

 

留意すべき事項は、課題遂行上のマネジメントサイクルと、月次損益計算などの
企業会計から要求される周期、それぞれに満足する運用ルールが必要となること

です。典型的な縦のマネジメントサイクルの進めかたを次に例示しました

 

1.方針・目標提示
 経営トップ、あるいはトップ層から方針、あるいは目標が提示される

 

 ex.今年度中に営業利益を10億円増加させる

 

2.計画(Plan)
 年次・半期・四半期・月次単位等での構想立案をおこなう

 

 ex.売価維持・数量増、売価値引・数量増、売価値上げ・数量維持、
  新製品上市、コスト低減・数量維持

 ex.構想案別に損益計算書を作成し、実現性と目標達成の可能性から行動シナリ
  オを作成

 

 構想立案作業の一部になりますが、次に行動計画立案をおこないます

 

 ex.2社購買の大口客先を対象に、一部値引を持ちかけて自社のインストアシェア
  を高める方向で拡販をめざす。対象客先の選定、営業担当者の確認、提案内容

  の作成、申し入れ方法・時期、実現時期の想定、客先の反応予測等の詰め

 

*インストアシェア
 特定客先の売上高や販売数量に占める自社の割合をいう。金額と数量は、目的に

 応じて捉える必要があります

 

3.実践と進捗管理(Do)
 実践に移したあとは、月次・週次・日次別等の周期でPDCAのマネジメントサ

 イクルを回します

 

 ex.特定客先へのアプローチ方法にしたがい、実践に着手。日次等で進捗を検討
  し、軌道修正が必要であれば実施に移す

 

4.予実績評価(Check)
 日次・週次、あるいは月次等で行動計画に沿った進捗の到達度を明らかにし、当

 初計画との差異明確化、差異解消の行動が必要か判断します

 

 ex.インストアシェア不明な有望客先の実態を客先訪問によって調査する。
  インストアシェアが明確になっている客先には、提案打診を実施。

  客先からの回答による損益試算を実施。提案の改訂を部内で検討する

 

5.差異要因解析と課題抽出(Act)

 

・1案(技術関連の課題等で答えが決まっている場合)

 

 差異解消が必要と判断された対象について、差異発生の要因を解析し真因を明ら
 かにします。つづいて、差異解消の課題抽出を実施。真因把握が困難な対象につ

 いては、差異発生を解消する仮説立案を心がけることが無難でしょう。注意すべ
 き点は、従来からあまりにも分析的な差異要因解析に慣れてしまい、当たり前の

 風潮があります。次の2案でも触れていますが、この進めかたにこだわりすぎな
 いことがいい場合も多いことを知っておくべきでしょう

 

・2案(方策が複数ある場合)

 

 多くのケースでは、1案の方法が推奨され実践もされています。しかし、差異要
 因の解消策がケースバイケースとなる対象には向いていないことが意外に多いか

 もしれません。ここでの例は「今年度中に営業利益を10億円増加させる」目標で
 す。うまくいかない実態を幾ら明らかにできたとしても、うまくいくことは通常

 ありません。むしろ、類似課題での成功例に学ぶ進めかたのほうが得策です。
 あるいは、仮説検証型が効果的な場合もあります

 

 ex.営業利益が増加に貢献した客先への販売方法を見出し、そのプロセスの詳細を
  明らかにする。これからの営業に役立つことを抽出、仮説立案、実践へとコマ

  を進める。案によっては、仮説シミュレーションが必要となります

 

6.計画(Plan)
 前項では、真因と差異発生を解消するアイディアとしての課題が明らかになりま

 した。これに基づいて、対策立案と目標設定をおこなうことになります。一部、
 当初計画の修正も出てくることが多いかもしれません。これが、当初計画の検証

 であり、ケースによっては経営シナリオの軌道修正ともなります。
 いずれにしろ、日常業務の流れとしては、前項3実践と進捗管理(Do)にコマ

 を進め、期中はこの繰り返しになります

【編集後記】

ここまでの説明でだいぶ長くなってしまいました。まだ、横のマネジメントサイク
ルについて説明しておりません。次回以降にいたします。

 

最後までお読みいただきありがとうございます
それでは、次回またお会いしましょう