収益改善に役立つ統制指標の切り口

★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 収益改善に役立つ統制指標の切り口
  【現役 経営コンサルタントの裏情報! No.16】

                                         発行 2009/06/15
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

【目次】

1.ビジネスモデル その2

まえがき

こんにちは 前田です!

 

 

◆WHO警戒水準をフェーズ6に引き上げ

 

6月11日、WHO(世界保健機関)は、新型インフルエンザの警戒水準をフェーズ5
から、世界的大流行というフェーズ6に引き上げました。WHOの発表から興味深

い見解を抜粋します

 

 

◆WHOの発表骨子

 

・感染者のほとんどが25才以下の若者
・感染後の軽度の症状から、そのあと急速に回復している

・重病は全体の約2%で、糖尿病など慢性疾患を持つ30〜50才に集中
・症例は比較的富裕な国での調査に基づく

・急激な感染拡大は今後も続くと見ていない
・今回同様の流行は、前世紀では約6〜9カ月要した(今回1.5カ月)

・発展途上国での感染拡大に警戒が必要
・旅行制限、国境封鎖は必要なし

 

 

◆発症から現在までの経緯

 

これまでの大まかな経緯は次のとおりです

 

 4月27日インフルエンザ警戒水準 フェーズ4発表
  人から人への感染が地域単位に継続して発生。大流行に移行の可能性あり

 4月29日インフルエンザ警戒水準 フェーズ5への移行発表
  持続感染が世界6地域の内1地域内の2カ国以上で起き、大流行直前の兆候

  あり
 5月24日(日)から日曜日の発表中止

 5月29日(金)update41は世界地図の発表を中止
 5月30日(土)から土曜日の発表も中止

 6月1日(月)update42から地図が復活。世界地図への表示方法を変えるのが間に
  合わなかっただけのようでした

 6月11日インフルエンザ警戒水準を最高のフェーズ6への移行を発表
  世界的大流行(パンデミック)。5の要件に加えて、他の地域内の国でも持続

  感染が発生

 

 

◆症例数の増加内訳

 

WHOの発表から症例の増加数を算出しています。updateの後の( )内は、前1週間
の増加症例数を、症例の後の( )内は日本の症例内数です

 

 最初の発表 2009年04月24日(金)米国、メキシコで感染症発生、症例 7
 update 7(324) 09/05/01(金) 感染国 11、症例  331(0)、死亡 10

 update 21(2053) 09/05/08(金) 感染国 24、症例 2384(0)、死亡 50
 update 29(5136) 09/05/15(金) 感染国 34、症例 7520(4)、死亡 65

 update 36(3648) 09/05/22(金) 感染国 42、症例 11168(294)、死亡 86
 update 41(4342) 09/05/29(金) 感染国 53、症例 15510(364)、死亡 99

 update 44(6430) 09/06/05(金) 感染国 69、症例 21940(410)、死亡 125
 update 48(7729) 09/06/12(金) 感染国 74、症例 29669(549)、死亡 145

 

 

◆日本国内の対処策は変わらず

 

症例数は増えています。しかし、各国とも一部地域を除き感染は弱まっており、
WHOの警戒レベルが上がっても対策は変わらないとしているようです。日本国内

における対処方針も変更は、ないとしています

1.ビジネスモデル その2

メーカーのビジネスモデルのとらえ方の一部を前号で紹介しました。今回は、その
続きになります。収益改善を追求する場合、ビジネスモデルの考察は避けて通れま

せん。ぜひ、皆さんがたの企業の実態と合わせてお考えいただけましたら幸いです

 

 

◆ビジネスモデルは利益獲得のしくみ

 

ビジネスモデルの定義はいろいろありますが、本稿における定義は次のとおりです

 

「マーケットへの働きかけによって得られる事業収益が、どのような事業遂行の
 基本業務と流れから実現するのか表す事業構想」

 

簡略的には「収益獲得の事業構造」あるいは「利益が得られるしくみ」とも言えま
す。事業遂行の基本業務が変わると、原価計算モデルなど事業管理のしくみも変わ

ります。ほかには、原価管理、見積書の構成、売価設定方法などです。この部分は
前回ご紹介しました

 

ビジネスモデルの要件は、このほかマーケットへの働きかけかた、基本業務フロー、
事業遂行の統制方法があります。順次内容を見ていきましょう

 

 

◆事業遂行の基本業務(収益構造)

 

メーカーにおける収益構造は、基本的に次の6項目を挙げられます

 

1)生産
 メーカーである以上、生産は欠かせませんが、この生産にもいくつかの形態があ

 ります

 

・自社生産
 原材料を外部から調達し、加工・醸造・重合反応等を経て製品化する工程をす

 べて社内でおこなうケース。最近では、自社生産のすべてを社内の自社工場で
 おこなうことは少なくなっています

 

・外注
 外注は、自社の生産工程の一部を外部に委託することを指しています。生産の

 中核部分は、あくまで自社で持とうとするのが普通です。
 購買は、主として調達先企業の仕様を受け入れることが多いのに対し、外注は

 発注側の仕様に基づいて生産することが多いのも特徴となっています。
 委託先にも外注、協力工場、下請、子会社、発注元とは独立の企業等いろいろ

 変化が見られます

 

・OEM
 OEM(original equipment manufacturing)とは、販売側ブランドによる生

 産を指しています。OEMでは、一方の企業が開発と生産を、もう一方の企業
 が販売やマーケティングをになうのが普通です。新製品を開発しても販路を

 持っていないとか、販売力が弱い場合、販売側ブランドで販売がおこなわれま
 す。

 また、シェアを高めるため人件費の安い国で生産し、自社ブランドで販売する
 戦略的な方策もパソコンや家電の業界ではよく見られる事例です。メーカー側

 は生産設備の操業度向上に、販売側は品揃えや顧客への浸透やリスクの分散が
 メリットとなります

 

・購入販売
 自社に製造設備、製造技術がないものの、販売上の品揃えが必要となる場合、

 外部から購入し相手方メーカーのブランドで販売するケースです

 

・ファブレス
 ファブレス企業(fables enterprise)。メーカーでありながら生産部門を持た

 ず、設計・開発に特化した企業のことです。通常のメーカーでは、製品の企画か
 ら設計・開発、生産、物流と一連の手順を踏んで販売に至ります。

 この過程で、自社はもっとも付加価値の高い分野に特化し、あとはアウトソー
 シングする戦略が特徴です。しかし、実際の生産活動が設計・開発のためには

 欠かせないでしょう。いずれ、開発能力が落ちていく懸念があります

 

 

OEM、外注、購入販売、ファブレスの違いは、生産における企業の収益構造の保
有パターンを表しています

 

 

2)技術開発

 

 2つ目は技術開発があります。メーカーで製造する製品が未来永劫同じというこ
 とはあり得ません。この技術開発も、自社ですべておこなうか、委託するか、グ

 ループ企業等に依存するかなどの選択肢があります

 

 儲かるものであればあるほど、いずれ競合が出現してきます。
 たとえば、半導体記憶素子の一つであるDRAMは、1970年、米国のインテルに

 よって開発されました

 

 しかし、その後、東芝等の登場により、インテルは経営不振におちいり、1985年
 DRAMの分野から撤退したのです。微細化・高集積化技術より設計技術の方

 が重要との判断により、生産技術の開発から手を抜いた結果と言われています

 

 現在では、韓国のサムソン電子が世界シェア34%あまりで世界のトップに立って
 おり、かつての日本勢の勢いは見る影もありません。歴史は繰り返されるようで

 すね(^▽^)

 

 

3)販売

 

 販売なしに収益は得られません。メーカーにとって欠かすことのできない収益
 構造の一つです。しかし、この販売も自社が直接おこなう直販か、代理店経由の

 販売とするのか、代理店販売でも物流はメーカーがおこなうケースと物流ごと
 委託する場合があります。また、マーケットにより、これらの併用も可能です。

 たとえば、国内は直販、海外は代理店委託などです

 

 

4)マーケット開発
 販売開始当初は、限定したマーケット相手であっても販売量が伸びるにしたが

 い、新たなマーケットや販売チャネルの開拓が要請されてきます。たとえば、
 国内の産業用資材のマーケットから、川下分野まで供給するなどです。さらに、

 国内だけでなく海外マーケットの開拓も視野にのぼってくるでしょう。これが
 収益構造としてのマーケット開発です。

 マーケット開発も自社でおこなうのか、委託するのか、グループ企業等に依存す
 るのか選択肢があります

 

 

5)物流

 

 前回第15号メルマガでは、物流を紹介していませんでしたがメーカーにとっては
 欠かせない収益構造の一つです。

 メーカーである以上、製造物がなくなることはありません。メーカーといって
 も、製品は物であったり、サービスやソフトウェアの場合もあり得ます。物を生

 産するメーカーにとっては、物流は必須です。工場で生産し、工場内あるいは工
 場併設のレストラン等で提供することもありますが、物流がなくなるわけではあ

 りません。
 この物流という収益構造の持ちかたにも、自社でおこなうのか、委託するのか、

 グループ企業等に依存するのか選択肢があります。

 

 物流の定義にもよるのですが、ここでは完成品としての物品を生産ラインの終点
 から消費者あるいは売上の立つ納品先まで有効に移動させることを念頭に置いて

 います。いわゆる、販売物流です。もう少し、広い概念の物流では、原材料等の
 調達先から工場まで、あるいは工場構内の物流を含むこともあります

 

 

6)部門間統制

 

 メーカーにとって不可欠な収益構造は以上5つですが、コンサルティング現場に
 おける最近の事例研究では部門間統制が欠かせなくなっています。部門間統制と

 は、全体最適または収益能力を最大化する観点から業際間にある課題を権限を
 持ってコントロールすることです。業務連鎖統制とも呼んでいます

 

 例を挙げます。売上増となるのでアイテムを増やして欲しいと販売側が主張。
 生産側は、小ロット生産になり生産性も落ちる、在庫が増えるなどを理由に、

 アイテムを増やしたくない意向が示されました。
 複数部門に渡る、このような課題に対し、部門最適ではなく全社最適の視点から

 判断基準を提供しようとするわけです

 

 これまでも、統制の必要性については採りあげてきました。調整ではありませ
 ん。あくまでも、権限を持って管理する意味で統制と称しています。端的に言う

 なら、各企業のライン部門の業務を側面から見ると、統制されていないがために
 収益改善の機会を失っているケースが散見されるからです

 

 したがって、私どもは部門間統制をメーカーに不可欠な6つ目の収益構造にすべ
 きと考えています。この部門間統制の機能の持ちかたですが、生産から物流に至

 るケースとは異なり、外部委託ではなく企業内部で持つべきものです(^-^)

 

 

◆マーケットへの働きかけかた

 

売上を上げるためにおこなう顧客へのアプローチ方法を指しています。たとえば、
電話、ダイレクトメール、紹介、トップアプローチ、キーマンとの面談、セミナ

ー、試供品提供、広告などの媒体で品質の良さ、値段の安さ、安心感を訴えるなど
です。

最近では、インターネットを活用しての広告等も増える傾向にあります

 

 

◆基本業務フロー

 

業務の目的達成に向けて、当業務の流れを時間軸に沿って表した図や文章を指して
います。業務フローの表し方には、とくに固定的なパターンはありませんが、なる

べくフローが分岐しない基本的な業務のレベルで表すことがポイントです(^0^)

 

 

◆事業遂行の統制方法

 

既述の部門間統制とは異なり、事業運営の過程で生じる主にマーケットからの対応
策について、あらかじめ統制方法を立案します。いわば、事業としてのビジネスモ

デルがどのような対応を取るのか決めることになるでしょう

 

たとえば、顧客からの特注品を受けるかどうか、値引要請への対応、工場別の生産
アイテム決定方法、これらの判断基準を収益能力を最大化する観点から明確化が必

要です

 

ビジネスモデルが変わると、収益構造も変わります。同様の収益構造であっても企
業規模により、このビジネスモデルは変化するのです

 

企業は多かれ少なかれ、マーケット環境の変化に合わせて仕事のやり方(ビジネス
モデル)も変えています。当然、事業管理のしくみも変えざるを得ないことが多い

ものです

 

実態はどうでしょうか。ビジネスモデルが変化しても事業管理のしかたは従来どお
りという企業が意外に多いものです。そのような環境下では、PDCAのマネジメ

ントサイクルがうまく回らくなり、収益改善の機会を失うことがしばしば発生しが
ちです

編集後記

第15号と今回第16号でビジネスモデルに対する基本的な考えかたを述べました。
ビジネスモデルはマーケット環境の変化に合わせて、変わっていくものです。

また、ビジネスモデルが変わると収益能力を最大化する姿も変わります

 

企業は人を中心に組み立てられた一つの経営システムであり、収益構造などによ
り、その生産性は変化します。次回以降も、企業の実例などをもとに、ビジネス

モデルのあり方について考えていきましょう

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます(∩_∩)
それでは、次回またお会いしましょう