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収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2009/11/16 No.37
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【目次】
1.稟議制度は全体最適に不向きか
2.電子部品メーカーの失敗PJ
まえがき
こんにちは 前田です!
◆インフルエンザが猛威
新型インフルエンザが猛威を振るっています。以前、本メルマガにインフルエンザ
の状況を連載していた頃と比べると桁がいくつか違うようです。2009年11月8日現
在、世界206以上の国と地域で、6,250例以上の死亡を含む、パンデミックインフル
エンザH1N1 2009の確定例が報告されています
(WHO 2009年11月13日発表、一部省略)
WHOのWebサイト
http://www.who.int/csr/disease/swineflu/en/index.html
幸いにして、私どもの事務所では感染者がでておりません。WHOによると、多くの
国々では全数報告を中止しており、患者数、特に軽症例の数は実際よりも少なく報
告されていると伝えられています。皆さんも気をつけて欲しいですね m(_ _)m
◆YouTubeの動画サイトがお薦め
気をつけるといっても、どうすればいいんだ(?_?)と言われそうです。
そこで、推奨するのがYouTubeの動画サイトで「CM 新型・季節性インフルエン
ザ」を31秒間見ること。咳エチケットと称するマスクの着用と、こまめな手洗いを
推奨しています。政府公報としてはいい出来だと思います
厚労省のサイト
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html
◆インフルエンザ感染予防用のマスクを推奨
マスク自体を感染源としないため、注意して選びたいものです。ついこの間、5年近
くお手伝いさせていただいている企業から、高性能マスクが発売されました。後段
に紹介していますが、NBCメッシュテックです。同等の性能を持つ他社類似品に
比べ割安とも聞いております。特徴を次のようにうたっています(^^)
・マスクに付着したウイルスを固着し離さない
(これは重要です。捨てたマスクが感染源となる恐れありと、以前から指摘され
ています)
・ウイルスを99.9999%不活性化し感染リスクを低減
(ようするに、ウイルスが検出限界以下になる意味のようです)
・不活性化効果が5日間持続し、繰り返し使える
(平日の1週間使える意味とお聞きしました)
◆マスクの名前はキュフィテック
掛かってからあわてるより、予防措置としてもポケットに一つは欲しいものです。
各企業で社員配付用に備えることをお薦めします
普段はあまり同社の製品を目にすることはないと思いますが、意外に身の回りで活
躍しているものが多いのに驚かされます。携帯電話、自動車、家電などにも使われ
ています。メッシュテクノロジーという分野では、世界的に知られた企業であり、
国内の当該分野では、もちろん圧倒的なシェアを持つ優良企業です
連絡先とURLです
(株)NBCメッシュテック
電話 042-582-2496(東京都日野市豊田2-50-3)
http://www.nbc-jp.com/index.html
サイトの右端真ん中にマスクのPDFがあります
(Cufitec キュフィテック)イラストをクリック→PDFカタログが見られます。
元々消費者向けの製品を作っていないせいか、ホームページ上の問い合わせ対応に
は改良の余地ありですね。ただ、ものは確かだと思います(=^^=)
企業で社員の配付用にお求めいただくのが得策です。ちなみに、当社も購入し、
今週中に社員に配付予定です。値段は確かめていただきたいのですが、マスク1枚
200円程度のようです m(_ _)m
担当営業は、ついこの間まで小生が担当するプロジェクトメンバーの優秀な一人
でした。
ちなみに、広告料はいただいておりません(=^^=)
1.稟議制度は全体最適に不向きか
私どもがご提案するコンサルティング案件は、企業内において稟議事項として扱わ
れることが一般的です。コンサルティングが、すでに年度予算に組み込まれている
場合や、経営トップが承認済みでも関係者の決裁を求める稟議書を回しています。
年度予算組み込み時と、予算計上なしの稟議では、やや意味合いが異なる扱いをす
ることも多いようですが…(∩_∩)
さて、この稟議制度ですが米国企業のトップダウン式意志決定と比較されることが
あります。日常的な稟議ですが、案検討から実施までのスピードを比べてみましょ
う(^-^)
◆実施に至る期間は変わらない(結論)
結論を先に述べました。トップダウンとボトムアップによる案実施までの期間は、
ほぼ同じということです。理由は後回しにして、稟議制度の内容を検証します
◆稟議制度とは
定義:下位組織の案を関係部門と上位組織に回付し、組織の意志決定とする
決裁のしくみ
問題点(一般的に言われる)
・複数部署経由で調整するため意思決定に時間が掛かる
・下位者が上位者に決定を委ねるため、責任の所在が不明確になりやすい
・上申待ちが、上位者のリーダーシップ発揮の障害となりやすい
利点:
・意志決定に関係組織が参加可能
・稟議事項への周知が可能
◆広辞苑による「稟議」
りん‐ぎ【稟議】(ヒンギの慣用読み)広辞苑第5版 1998年11月発行
1.官庁・会社などで、会議を開くほど重要でない事項について、主管者が決定案を
作って関係者間に回付し承認を求めること
2.会社などで、所定の重要事項について、決裁権を持っている重役などに主管者が
文書で決裁承認を求めること
手元の広辞苑は第5版ですが、最新版は2007年12月発行の第6版です(^−^)
広辞苑の解説には、さらに説明が必要なくらいです
要するに、起案者が稟議書を作成し、決裁権を持つ関係者に根回しを図りつつ、最
終意志決定を図るしくみと言ったほうが分かりやすいかもしれません (^^)♂♂
◆2つの実施までの手順
トップダウンによる実行までの進めかた
意志決定 → 実施手順の文書化 → 担当者への教育 → 実施
ボトムアップ式のケース
起案 → 回付 → 決裁(意志決定)→ 実施
稟議書を関係者に回す回付の段階では、案の説明などをとおして根回しと合意形成
がおこなわれることが一般的です。また、稟議書の起案前の段階でも、会議、打ち
合わせ、検討会、説明会などをとおし、合意形成が試みられることも多い気がしま
す。いわゆる根回しです
◆実施までのスピード
冒頭に、案実施までの期間は、ほぼ同じとの結論を述べました。古い話で恐縮です
が、もう26年前、1983年のことになります。米国で、このことを教えていただきま
した。教授のお名前は、残念ながら覚えておりません m(_ _)m
この分野における、米国でも高名な教授だったと記憶しています。当時のカリキュ
ラムやテキストはとっくに処分しており、インターネットで調べたもののついに分
からず仕舞いです
米国ではトップダウン式の意志決定が一般的で、逆に日本ではボトムアップ式が多
くを占めています。これら研究分野の権威のかたです。研究テーマの一つが、トッ
プダウンとボトムアップでは、どちらが実際の行動に移るのが早いかです
教授は、日米の企業で実態調査をおこない、トップダウン式とボトムアップ式も
実施に至るまでの期間には差異が見いだせないとの結論に達したと講義されたので
す。当時は、それがどんな意味を持つのかよく分かりませんでした。今になって思
えば、経営スピードの重要性は痛いほど分かります(>.<)
◆コンサルティングテーマと「稟議制度の難点」
実施までのスピードに的を絞って稟議制度を採りあげました。前述までの内容とは
別に、稟議制度の難点に加えたい事項があります(>_<)
稟議制度では特定部門からの起案が普通であり、他部門との関わりを避け、当たり
前のことですが、自部門の案件が対象となりがちです。または、比較的容易に全社
合意可能な事案に主体が置かれます。たとえば、複数部門にまたがる課題ですが、
合意されやすいものの一つが、情報システム開発でしょう
稟議制度の下では、他部門のことに口をはさむことは、自部門の要求を通すことに
プラスにならないことが多いものです。相手部門のことを認めるから、自部門のこ
とも同様に決裁して欲しいなど、決裁者同士に暗黙の牽制が生じる可能性がありま
す(^0^)
結果的に、稟議で採りあげられる事案は部門内のことにかたよりがちで、部門間の
あつれきが生じやすい業際間課題は起案しずらい傾向がでてきます(∩_∩)
*用語「業際間課題」
複数部門が協同でおこなうべき課題であり、部門横断の最適解が必要な事項を指
す。全社の収益改善に寄与する観点から判断が求められることが多いのも特徴で
す
それにもかかわらず、マーケット環境の変化は、全社最適の視点から取り組む課題
の重要度を高めています。部門の壁を超えた利害関係の調整が必要な業際間課題
は、ボトムアップ式では起案者不在となることも稀ではありません。本メルマガで
も、同様の事例は何度も紹介済みです。直近では、No.35号「2.お断りしたロジ部門
の在庫圧縮」もその一つと言えます(>.<)
数少ない例ですが、自部門のことにこだわらず、全社最適かつ会社の将来を見据え
た観点から、あるべき姿を論ずるかたがいます。けっして、経営企画部門のかたと
は限りません。むしろ、生産部門に近いかたのほうに多い気がします(^−^)
しかし、起案段階では、事案が包含する社内関連部門の多さなどから単純には進み
ません。コンサルティングテーマの例としては、全体最適による収益改善、管理会
計の採用、収益管理の推進強化、全社的視点からの営業力強化による収益改善など
が相当します。やはり、全社的立場で考えるかたは希少価値ですφ(..)メモメモ
◆経営トップの全体最適観が勘所
「現状の生産では、これ以上できそうもないが、販売を巻き込んだ視点から取り組
むと改善余地ありと思う」
以前お会いした、京葉コンビナートにある大手化学メーカー生産側の部長発言です
自部門だけでは実施困難、かといって他部門に指示することもできない、全社の収
益改善にはもう各部門を指示する権限を持っておこなうしかしかないなどなど…悩
みは尽きません
それでは、どうするべきでしょうか。企業によって様々ですが、経営トップの方針
次第と言ったところでしょうか
たとえ、一部のコストが上がったとしても全社の収益力向上に結びつくのであれば、
やるべしということです。私どもは、これを全体最適による収益改善と呼んでいま
す。経営には、スピードと全体最適の視点が欠かせません
2.電子部品メーカーの失敗PJ
10月半ば、ある大手電子部品メーカーの社長にお会いしました。面談は予定の1時間
半ちょうどで、社長の質問に答え切れていません。売上高は約2,000億円、国内外・
関連会社の工場が約20拠点です。ご多分に漏れず、昨2008年9月のリーマンショック
によって、販売が激減し今だ元に戻っていません。今後の見通しは決して予断を許
さないようですが、技術力や提案力の強化で、明るい展望を持っておられます
面談の目的は、社内プロジェクトの今後の進めかたについての意見交換と相談半分
と言うところでしょうか。約半年間、社内プロジェクトに取り組んだものの、思う
ように進まず中止しています。掲げたプロジェクトの目的と概要は次のとおりです
(都合上、一部言い換え)m(_ _)m
◆プロジェクトの目的
電子部品業界における競争優位性の確立と収益力強化の推進
具体的な内容の一部を紹介します(都合上、一部省略)
・補充生産方式の確立
・受注生産との棲み分け
・VMIの確立(Vendor Managed Inventory、納入先に在庫管理を任せる方法。
この場合の納入先とは自社のことを指す)
・競争力の強化
・たな卸資産回転率の向上
・納期遵守率の向上
◆進めかたの概要
外部コンサルティングファームを起用し、プロジェクトチームを結成。進めかたの
概略は次のとおり
・進めかたの基本はデザインアプローチ
・コンサルタントの提案を具体化していく典型的な演習実践形式
・現場の実態調査は基本的に実施せず
(あるべき姿への転換を強制する典型例)
*用語「デザインアプローチ」
現状がない場合、ある場合でも現状を見ずしてあるべき姿を演繹的に捉えつつ
対象の持つ必要機能を明確にしていく。次に、各機能の果たす代替案によって
部分構想を描き、整合性を取りつつ全体構想にまとめていく技法。
描かれる案の内容と到達すべき姿が分かっているケースでは、現状分析を基に
おこなう分析的アプローチより、期間短縮、調査項目の最小化が可能。
改善の管理技術の一つVEは、デザインアプローチの代表的なものです
◆プロジェクトチームの編成概要
・チームは生産を中心に編成
販売部門は編成対象外
・チームリーダー 生産部門管掌の専務取締役
・サブリーダー 生産関連の部長クラスで分科会を個別に担当
・チームメンバー 生産・情報システム部門中心に選出
◆問題点「しくみの強行採用」
プロジェクトが始まって以来、しくみが導入される予定の製造現場、生産管理など
の反発も強かったようで、まとめるとおおむね次のとおりと判断します
・コンサルタントの言う、あるべき姿や理論はよく分かる
・実態と合わないところはどうするのか提案がない
・実態把握をおこなっていない(計画にもない)
・しくみ先行導入の工場では、お客さまへの納期遅れが発生している
・社内ユーザの立場にある営業はメンバーに入っていない
◆所感「目的と手段の取り違い」
適切な言い方ではないかもしれませんが、コンサルタントの頭の中にある、あるべ
き姿を現場の実態把握もほとんどせずにしくみ導入を強行採用しているとしか思え
ません(>_<)
小生にとって、このようなお話を聞くのは信じがたい光景です。米国では、成功事
例が報告されているようですが、欧米の経営管理技術をそのまま導入しても、過去
の例が示すように、うまくいかないことのほうが多く見られます
たとえば、1960年代後半のMIS(エムアイエス、Management Information
System、経営情報システム)がその一つ。MISさえ導入すれば、高収益企業に変
貌できるとばかりに吹聴されたものの、いつの間にか消えていった米国由来の情報
システムです
横文字3文字の経営管理技術が、もてはやされて随分経っています。MISの場合は、導入したのがそもそものミスであったと落ちまでつけられました。問題は、経営者自身が高収益企業に変貌するための青写真を持っていなかったことです。目の前のうたい文句に惚れ込み、導入しさえすれば…と考えたことが間違いの元でした。いわゆる、目的と手段の取り違いの典型例です。残念なことですが、いまだに繰り返しています(^∧^)
日本にERPが導入されて10年以上経ちますが、次の新聞記事を紹介しましょう
ちょうど10年前、輸送経済1999年11月9日の記事です。ERPが下火となってきた
理由(当時の米国)を、ラトリッフ教授は次のように述べています。「ERPのシ
ステムの柔軟性に疑問符がついたためだ。一社で確固たるシステムを築いても、取
引先や顧客と情報を交換するときに、うまく機能しないことが分かってきたから
だ」と
現状の日本では、どうなんでしょうか。この指摘は、SCMについても当てはめる
ことができます。サプライチェーンを構成する一企業にERPを導入しても、当該
チェーン全体が同様の情報管理のレベルに達しなければ、結局、チェーンの一番弱
いところで競争力が決まるのです
◆所見と今後進めかた案
やや話が、別なところに飛びました m(_ _)m
元に戻しましょう
電子部品メーカーにおける小生の所見と今後の進めかたの概要は次のとおりです
・当初想定の目的達成を到達点とすべきであり、「あるべき姿」のそのまま導入
は避ける
・しくみ導入の領域に関わる全部門参画のプロジェクト体制を整える
・実態認識を関係者で同一にすることと、あるべき姿を自社に合う形にするため、
とくに顧客への納入条件と営業対応、生産管理の定量的な実態把握をおこなう
・そのうえで「あるべき姿」のいいところ取りをおこなう
・目標達成に至る段階的な進めかたと構想案を描く
・リスクも考え、効果確認をしつつ段階的に実現を図る
・できるなら、当初は特定工場などモデル対象に進める。リスク最小化、
早期実現の姿確認の視点でも重要
結果として、随分高い授業料を払っていますが、所期の目標達成に向けて取り組ん
で欲しいと願っております
今回は誌面の都合上、なぜプロジェクトが失敗したのか、その背景についてはあま
り触れていません。悪者をはっきりさせるためではなく、再発させないため、いず
れ総括が欠かせません
編集後記
今日、11月15日(日)ですが、暖かいですね。まさに、小春日和です
プールから帰って夕食を済ませ、校正もこれで終わりです。
今日は、2,200m泳いで来ました。50分掛かっています。目標は2,000mだったのです
が、プールがすいていたこともあり、もうちょっと泳ごうとしましたが、右のふく
らはぎがつりそうになり止めました。水温がいつもより低かったみたいです(>_<)
インフルエンザには感染しないよう、マスク(キュフィテック)も人混みでは着用
するようにし、体調管理に気をつけて下さい m(_ _)m
最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう(^.^/)))~~~bye!!