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収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2010/02/15 No.47
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【目次】
1.製造の業績評価
まえがき
こんにちは 前田です!
昨2009年、関東の春一番は2月13日でした。春一番は、2月4日の立春以降に初めて吹
く南寄りの強い風で、気温も上昇することが多いものです。今年も時期になって来
ました。ただ、今日2月13日の空模様は、朝6時頃、雪でした。お隣の屋根を見ると
白くなっています。その後、雨に変わりましたが、お昼前の気温は3度位しかありま
せん。このところ、連日寒い日が続いています。先日の午後、のどが痛く風邪かな
と思い、常備薬を飲んだところ調子良くなりました。きっと、その日の夕方飲みに
行ったのが幸いしたのかもしれません (^o^)
家の植え込みにある木蓮の芽もだいぶ膨らんでいます。椿の花は落ちてしまい、近
所の紅梅は見頃を過ぎた感じです。白梅は真っ盛りのものも見られます。本格的な
春は、もうそこまで来ていますね (∩_∩)
前号に引き続き、業績評価について述べます。前回は、販売の業績評価でしたが、
今回は製造領域についてです。各号読み切りでご理解いただけますよう、一部説明
が重複しています。ご了承のほどを m(_ _)m
1.製造の業績評価
業績評価の意味を確認しておきます
◆業績評価とは
業績評価とは、業績の達成要件を明確にし、達成度を測る判断基準設定により到達
度を明らかにすることです。業績とは、達成すべき対象の到達度のことであり、売
上や利益を指す場合と、業務効率や自社の強み確立など、重点課題ではあっても定
量把握に向かないものがあります。したがって、目標とされた売上高・営業利益・
製造原価低減や達成すべき課題に対する満足度などが、業績の達成要件に相当しま
す (^0^)
◆業績評価対象をコスト低減とした例
例を挙げます
・対象部門:A社埼玉工場および各職場単位
・対象品:自社工場の主力製品F
・業績評価の対象期間:2008年4月〜2009年3月の1年間
・目標:基準製品の製造原価 20%低減
ただし、次の項目は基準とする2008年3月末と同じとする。
生産数量、原材料単価、為替レート、労務費、公共料金
・各職場の目標:工場に割り当てられた上位の原価低減目標を、各職場に下位展開
し自身の目標として設定
・実績:製品Fの製造原価 21%低減達成
・賞罰:目標到達度に応じた表彰あり
つづいて、この例を前提にお話しを進めます
◆工場の業績達成要件
製造原価低減が目標ですから、業績の達成要件は、製造変動費と製造固定費の低減
です。製造変動費は製造数量に比例する経費であり、原材料、電気・水道・燃料費
が相当します。製造固定費は人件費、減価償却費等、製造変動費以外の経費です。
ここでいう業績の達成要件は、工場部門に適用されます
◆職場単位の業績達成要件
各職場に対する達成要件は、どのように考えるべきでしょうか。方策として、目標
達成を任務としたタスクフォースの責務とすることも可能です。ここでは、業績評
価の例としているため、職場単位の取り組みを前提にお話しします
職場単位でも業績達成要件は同様であり、工場全体の対象時と変わりません。業績
の達成要件は、製造変動費と製造固定費の低減です。問題は、むしろ次の達成度の
判断基準でしょう
◆工場の達成度を測る判断基準
2008年3月末の実際原価に対し、2009年3月末の実際原価20%低減が達成度の判断
基準となります。言い換えれば、毎月算出の実際原価が達成度の判断基準となるわ
けです。しかし、この実際原価を明快にすることが意外に難しいかもしれません
*用語「実際原価」
実際原価とは、財貨の実際消費量をもって計算した原価をいう(原価計算基準に
よる定義)。もう少しわかりやすく言うと「実際原価は、実際の製造に要した材
料費、労務費、製造経費を基に算出した原価」です
*用語「原価」
経営における一定の給付にかかわらせて、把握された財貨または用役(以下これ
を「財貨」という)の消費を貨幣価値的に表わしたものをいう(1962年11月8日
企業会計審議会)
理由は、活動スタート時に比べ、生産数量、原材料単価、為替レート、労務費、公
共料金も変わることがあるからです。くわえて、社員の入退社による人件費の変動
もあります。例示の前提は、2008年3月末の単価が基準です。活動成果の計測には欠
かせないのですが、実際原価算出の作業が必要となります
仮にVEで設計変更のコスト低減案を作っても、実際の現場では実コスト減となっ
て現れるとは限りません。たとえば、材質と形状変更により、材料費と加工時間の
減になるとします。現場の作業時間が短縮しても、作業待ちの発生に終わり、実コ
スト低減に反映されないこともあるからです
*用語解説「VE」
Value Engineerinn、価値工学。VEとは、最低の総コストで必要な機能を確実に
達成するために、製品またはサービスの機能分析に注ぐ組織的な努力をいう
(米国国防省の定義)
このような事例には、小生も随分遭遇してきました。現場のやる気醸成のため、機
会損失時間の削減は有効であり、よくやったと評価するわけです。しかし、実コス
トとしては顕在化してきません。活動を否定するわけではありませんが、達成度を
測る判断基準の難しいところです
したがって、活動開始から毎月の実際原価算出は、原価低減の達成度を測る意味で
も必要になります。ただ、実コスト低減への反映のみ達成度の判断基準とするのも
方策の一つですが… (^∧^)
達成度を測る判断基準の選択肢は、次のとおりです
案1 実コスト低減のみを達成度とする
この場合でも、生産数量等の前提が往々にして変わっているため、たとえ実際原
価を算出したとしても万全とは言えません。過去、このような評価基準でお手伝
いしたこともありますが、お薦めできません。改善に取り組むチームの努力とは
関係ない出来事に左右されるからです
案2 実作業に反映された機会損失の削減も達成度に含む
現場のやる気醸成と、積もり積もれば必ず実コスト減に反映されると考え、達成
度に含む案です。実際の改善活動では、こちらのほうが向いていると思います
◆職場単位の達成度を測る判断基準
それでは、各職場における判断基準はどうなるのでしょうか。実は、この部分が重
要です (=^^=)
製造の各職場は、おおむね工程と同じことが多いため、ここでは職場=工程としま
す。工場全体に求められていることは、製品のコスト低減目標達成です。全体とし
ての目標達成に、各職場の果たす役割はどのように考えるべきでしょうか
*用語「工程」
工程とは、少なくとも付加価値作業を1つは含む作業単位を原則としていいます。
付加価値作業は、お客さまから見てお金を支払っていただける作業のことです。
代表的には、モノを加工する作業があります。モノを運搬する作業は、付加価値
作業とは認められません
仮に職場が10あったとして、各職場のコスト低減は10分の1ずつとすべきでしょう
か。明らかに理不尽ですね (>_<)
それではどうしますか?
そうです。各職場自身でコントロールできるコストと、改善対象の難易度に応じて
コスト低減の目標金額あるいは改善率を割り振るべきです。この目標配分が完璧と
いうことはないでしょうが、ベテランのかたであれば、さほど難しい作業とはなら
ないでしょう
◆単一職場では取り組めない課題
職場独自にコントロールできるコスト低減目標が設定できたとしても、単一職場で
は取り組めない課題もあります。たとえば、歩留まり改善です。上流工程から不良
品が流れてくれば、これに対する下流工程の良品加工も結果的に不良品となってし
まいます。このケースで不良品の発見が下流工程とすれば、上流工程が改善されな
い限り、下流工程の良品化率(=歩留まり)も向上しません
加工・製造技術が確立されていない、あるいは技術的に工程内で観測できない製品
では、工程内の不良発見が困難なこともあります。このような対象では、課題解決
型のチーム編成によって取り組むか、あるいは関連職場の協同課題とすることが妥
当です
◆製造の業績評価は実際原価算出が基本
ここまでは、コスト低減を例に業績評価を見てきました。業績評価は、それをおこ
なう対象ごとに業績を把握することが不可欠です。コスト低減の例では、それに寄
与した職場、部門、チームごとの低減コスト算出が相当します。コスト算出は実際
原価そのものです
製造部門でコストを主体に業績評価をおこなう場合は、原価把握のメッシュをどの
位細かくできるかにかかってくることになります。部門別に業績評価をおこなう管
理を、一般に部門別業績管理と呼びますが、精度向上は原価算出の細分化がポイン
トとなるわけです (=^^=)
しかし、実際には原価算出の細分化追求は余り得策ではありません。現場における
作業や歩留まりなどのデータ収集・入力から原価算出までの作業量が膨大になるこ
とです。それではどうするべきでしょうか (^−^)
◆改めて考える業績評価の目的
業績評価の目的は、目標達成に至る過程をとおして企業の重要な経営資源「ヒト」のモチベーション(動機付け)向上と維持、組織効率向上を図ることと言えます。組織効率向上とは、事業部・部門等の組織が持つ目標到達度を引き上げることです。簡単には、やる気を促して目標達成を確実にする仕掛けとでも言えばいいのでしょうか (=^^=)
業績評価の目的を重視しつつ、実際原価も把握し、かつ算出の手間暇も掛けないう
まい手があるのでしょうか。実は、管理・統制指標の活用が相当しているのです
*用語「管理指標」
管理指標とは、対象業務・作業全体の運用が適切かどうか判断する物差しや業務
効率の測定基準をいいます。または、部門あるいは部門内の運用が適切かどうか
判断する物差しです。言い換えると、部門運用効率の測定基準になります
*用語「統制指標」
部門最適ではなく全体最適実現のため、業際間の課題について権限を持って管理
する優位性判断の物差しをいいます。統制指標の目的は、全社収益最大化の方向
に統制することです
◆管理指標の活用
管理指標設定の考えかたは、指標設定の職場・部門の長がコントロールできる対象
におこなうことが基本です。前述の目標を下位展開図る考えかた「職場自身でコン
トロールできるコスト」に対して指標を設定します。管理指標は、細かい区分によ
る実際原価算出によらなくとも、部門別・職場別の業績把握に活用可能です
◆製造がコストセンター時の業績評価
ここまでは、製造をコストセンターとした場合の業績評価を述べてきました。特定
企業を除き、多くは製造をコストセンターとしていますので、後段で述べる原価を
基にした業績評価が適用可能と思います
*用語「コストセンター」
コストの管理単位。費用予算のみある部門を指し、物流部門、製造部門が該当す
ることが多い
◆製造がプロフィットセンター時の業績評価
製造部門をプロフィットセンターとするケースもあります
*用語「プロフィットセンター」
利益責任単位。企業の各部署の経営業績を明確にするため、独立採算として収益
・費用を集計する管理単位。これが成り立つためには、責任・権限の委譲と責任部
門の確立が必要となります
たとえば、実際に製造をプロフィットセンターとしている事例を基に紹介します
製造利益=製造原価×0.04
つまり、製造利益を4%としている例です。大手水産品メーカーが採用しているもの
です。製造利益を設定した理由は、製造原価で営業部門に渡すと値引原資に想定営
業利益を回しがちで、結果としての営業利益圧縮になってしまうからとのことでし
た。同様の悩みを持つメーカーも多いようです
この場合の業績評価は、製造利益の大きさによります。ただし、製造利益の極大化
が、必ずしも企業全体の営業利益最大化と一致しない問題があります。製造のプロ
フィットセンター管理は、従来からメリット・デメリットが言われて来ました。い
まだに、決着は着いていません (>_<)
つぎに、一般的な製造の業績評価基準の例を紹介します
◆原価差異基準
最初は、原価差異による製造の業績評価基準です
算出式: 原価差異=標準原価−実際原価
*用語「標準原価」
標準原価とは、良好な管理状態を前提とした実現可能な原価を指しています。た
だし、通常生じる仕損、損失時間を容認し、かつ1年間程度は実際に達成可能な稼
働率、予定価格を前提として決定されます。毎期洗い替えが原則です。原価管理
に適しており、たな卸資産の評価および予算編成にも使用されます
わりに多いのが、この方法です。原価差異は、各企業によりいろんな呼び方がされ
ています。たとえば、製造利益、製造益などです。念のため申し上げますが、プロ
フィットセンター時の製造利益とは意味が違います。製造部門内も同様に算出して
いる企業が見られます
問題があります。原価差異の大きさ追求が、必ずしも全社利益の最大化に一致しな
いことです。製造のプロフィットセンター管理時と、問題点は似ています。原価差
異の大きい製品が、必ずしも営業利益・率への貢献と一致しないことです (>_<)
製造部門内も同様に算出している企業では、当該部門の原価差異を自身でコントロ
ールできないことが大半であり、事実上、業績評価の意味をなさないことが多いと
見られます (苦笑)
◆標準原価のみのケース
期中は標準原価を用い、期末に原価差異を計上するケースです。したがって、原価
による業績評価は年度末しかできません。月次の業績評価は、毎月の経費予算に対
する実績でおこなうことになります。もちろん、業績評価しない企業も多いのです
が… (^∧^)
◆実際原価のみのケース
このケースも、業績評価は毎月の経費予算に対する実績です。この例に多く見られ
ますが、前年までの実際原価を当年度の標準原価扱いしていることがあります。真
の原価差異ではありませんが、生産量や品種構成に大きな変化がなければ、標準原
価と同じ効果を期待できるかもしれません。標準原価のみによるケース同様、業績
評価しない企業も多く見られます (^∧^)
◆基本はマネジメントサイクル
業績評価は、今を存続させる利益確保と、将来の成長を促すマネジメントのしくみ
の一部です。業績を評価することは、目標を掲げることであり、実績との差異を直
視し次に向かって進むことを意味します
今回紹介していませんが、業績評価は経営資源の活用度をより追求すること、およ
び全体最適の視点取り入れが不可欠です。顕在化のツールには、プロダクトミック
ス、管理指標、統制指標等あります。部門別の業績評価制度を取り入れている企業
では、これらのツール活用もぜひ検討いただきたいものです m(_ _)m
編集後記
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それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!