収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
 発行 2011/07/04 No.110

 

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【目次】

1.生産中止の判断

まえがき

こんにちは 前田です!

 

松林 浜離宮

            松林 浜離宮 6月20日

 

最初の写真は、浜離宮の松林です。梅雨の真っ最中ですが、緑が実にきれいだったのでスナップしました。正式名称は、浜離宮恩賜庭園(はまりきゅうおんしていえん)です。大手門口までは最寄りのJR新橋駅から約800m弱、歩いて約10分の距離にあります。小生は、中の御門口から入りました。最寄り駅・都営地下鉄大江戸線・汐留駅から、徒歩5分の距離にあります。入園料は大人300円です

 

浜離宮の広さは約25万平方メートル。全体の形はややいびつな四角形で、一辺の長さが海側が520m、陸地側が550m、海に向かって右が370m、同左が570mです。以前ご紹介した旧芝離宮庭園より、約5.8倍の広さがあります。写真の場所は、海に向かって右下の馬場跡近くです (^0^)

 

                  三毛猫 浜離宮 6月20日
三毛猫三毛ネコに遭遇しました。園内には梅の木が結構あります。その梅林のはずれ、稲生神社(いなぶじんじゃ)の近くにいました。右首筋にリボン代わりに枯れ葉を付けています。カメラを向けても逃げません。飼い猫ではないようですが、随分人慣れしている様子がうかがえます。もっといるのではと思って見渡してみたのですが、どうやら一匹だけのようです (^−^)

 

                  三毛猫 浜離宮 6月20日
三毛猫今回は、30分強しか園内にいませんでした。ゆっくりと散策するには、2時間程度見込んで訪問した方が良さそうです。梅雨明けしてから、再訪問したいと思っています。今回の訪問では駆け足だったこともあり、茶室、前述した稲生神社などの写真を撮っていません。これだけ広いと、やはりもう少し時間を掛ける必要があります (∩_∩)

 

浜離宮内には、芳梅亭という集会場があります。この施設が東日本大震災のため被害を受けており、当分の間、利用が中止されているとのことです。次回も、浜離宮の写真を掲載予定です

1.生産中止の判断

全体最適の追求過程では、種々の問題点や課題の解決が欠かせません。メーカーの
日常業務で実際に起こりうる問題を採りあげ、どうするべきか考えて行くことにし

ましょう (=^^=)

 

*用語「全体最適」
 個別部門の部分最適にとどまらず、販売・生産・物流・開発の全ライン部門が経

 営資源を生かし切り収益能力の最大化追求をすること

 

比較的身近にあるテーマから始めることにします。読みやすさを考慮し、メルマガ1
回につき一つの課題のみを紹介するつもりです。複数回にわたる紹介を考えていま

す。これらのテーマは、もっと早い時期に紹介すべきものでした。原因は、メルマ
ガがテキスト形式の配送のため、書きづらかったことが背景にあります。おかげさ

まで、最近では数字の紹介のしかたにもだいぶ慣れてきました。図解との併用があ
り得ますが、複数回お付き合いお願いします (●^o^●)

 

 

◆経済的な基準把握が目的

 

生産・販売中止の経済的側面からの判断基準を知ることが、今回紹介の目的です。
メーカー製品群の中では、特定の製品が赤字になっていることが多々見られます。

この場合、どんな方策が有効なのでしょうか。あくまでも、製品全体として赤字化
している場合を想定しています。黒字化の一般的な対策は次のとおりです

 

 

◆黒字化の方策

 

・黒字化を前提に、同機能の他製品に切り替えていただく
・値上げする

・販売量を増やして原価低減し黒字化する(=量産効果の活用)
・赤字幅の大きい顧客への販売を中止する

・製造原価を低減する

 

経済的側面と申し上げましたが、それ以外の事情でやめられないことも往々に見ら
れます。該当する主な項目は次のとおりです。この部分の内容検討は、今回の検討

対象としません m(_ _)m

 

 

◆生産中止しにくい政治的な側面

 

・長年、購入していただいているため供給責任がある
・大口販売顧客の特注品となっている

・現製品の代替製品がない
・社会的な影響が大きくやめられない

・創業者のこだわりがある製品

 

繰り返しになりますが、全体として儲かっている製品でも、特定顧客向けの販売で
は赤字になっていることもあります。この場合の対策は、内容が異なってくるため

今回の検討対象外としました m(_ _)m

 

前述、黒字化の方策を試みたものの、一向に採算が改善しない場合は、生産中止と
いう荒療治に踏み切らざるを得ない可能性大です。簡単な例を基に、経済的側面に

絞った検証のしかたを紹介します (^v^)

 

 

◆事例メーカーの概要と見方

 

製品A、製品Bを製造するメーカーがあります。現在、製品Bは赤字です。赤字の
実態は、後段のケースにより若干の違いがあります。各ケースとも、損益計算書の

簡易フォーマットで数値を配置しました。その中で、変動費計は次の意味です

 

 変動費計=製造変動費+販売変動費(ここでは 0 とした)

 

内容を見やすくするため、販売変動費をゼロとしています。通常の販売変動費には、
運賃、包装費等を含むのが普通です。売上高から変動費計を引くと、限界利益が求

められます。例では、簡略化のため在庫もゼロとしました。したがって、変動費計
と製造固定費を足すと売上原価です。売上高から売上原価を引くと、売上総利益

(=粗利)となります。販売変動費をゼロとしましたので、経費科目の販管固定費
は販管費と同じです。次に、売上総利益から販管費を引くと営業利益が算出できま

 

後段、各ケースの損益算出の数値一番下にある損益分岐指数の意味は、少し長いの
ですが次に用語解説しました

 

*用語「損益分岐指数」
 損益分岐指数は、固定費を限界利益で割って算出する損益の状況判断に役立つ指

 数で、次のように判定します

 

 F÷MQ  <1 利益計上(目標0.7以下)
       =1 損益分岐点(=BEP)

       >1 必要売上倍率

 

 F:fixed cost、固定費、MQ:Marginal Income、限界利益(限界利益=売上
 高−変動費)、M:Marginal profit、単位限界利益、Q:quantity、売上数量、

 BEP:break-even point 損益分岐点

 

 損益分岐指数1未満が、営業利益計上の状態です。従来の損益分岐点比率では70
 %以上が優良です。損益分岐指数では0.7と表され同様に解釈します。損益分岐指

 数1が損益分岐点、当該売上高が損益分岐点売上高です。従来の損益分岐点分析
 では、損益分岐点売上高を算出したことになります

 

 営業利益が赤字のときは、損益分岐指数が1を超えます。このときの指数は、黒
 字化まで売上高が、あと何倍必要なのかを表す意味です。たとえば、同指数が1.5

 のときは、現状売上高がおおむね1.5倍超になれば黒字化します。したがって、損
 益分岐指数が1を超える場合の指数を必要売上倍率と呼びます

 

事例の紹介に移ります。前段で黒字化の方策を紹介しました。次の例による試算は、
これら黒字化の方策がうまく行かず、万策尽きた結果おこなっているものとします

 (^^)

 

 

◆ケース1 製品Bの営業利益が赤

 

製品A、製品Bを製造するメーカーの損益を計算しています。現在、製品Bは1000
円の赤字です。ただし、メーカー全体を表わす合計では、2000円の黒字となってい

ます。この状況を見て製品Bを生産中止すべきでしょうか (?_?)

 

製 品    製品A 製品B 合 計
販売数量     100   50

販売単価     200  100
変動単価     80   50

 

売上高    20,000  5,000 25,000
変動費計    8,000  2,500 10,500

限界利益   12,000  2,500 14,500
製造固定費   4,000  2,000  6,000

売上原価   12,000  4,500 16,500
売上総利益   8,000   500  8,500

販管固定費   5,000  1,500  6,500
営業利益    3,000 -1,000  2,000

損益分岐指数  0.75  1.40  0.86

 

製品Aは3000円の黒字、製品Bは1000円の赤字です。次に損益分岐指数を見ると、
製品Aは0.75ですから優良とまでは行きませんが、それなりの採算が確保されてい

ると見て差しつかえありません (^0_0^)ナルホド

 

生産中止すべきかどうかの判断は、あくまでも経済的側面に限定します。ここでは、
営業利益が赤字なので製品Bを生産中止したときの試算をしてみましょう

 

 

◆ケース1-2 製品B中止時
比較しやすいように、ケース1の計算結果も一緒に掲載しています。まず、試算し

た営業利益を見てください。製品Bの生産中止時の試算結果は右側にありますが、
中止する前の営業利益が合計2000円から-500円へと赤字に転落してしまいました

 (>.<)

 

結論は、このケースでは生産中止すべきでないということになります。一般的には、
限界利益が黒字で、営業利益が赤字のことを擬似出血(ぎじしゅっけつ)と呼び、

生産中止すべきではありません(後段に用語解説あり)。生産中止すると、この試
算例のように全社の営業利益は減少してしまいます

 

製 品    製品A 製品B 合 計 製品B中止時
販売数量     100   50

販売単価     200  100
変動単価     80   50

 

売上高    20,000  5,000 25,000 20,000
変動費計    8,000  2,500 10,500  8,000

限界利益   12,000  2,500 14,500 12,000
製造固定費   4,000  2,000  6,000  6,000

売上原価   12,000  4,500 16,500 14,000
売上総利益   8,000   500  8,500  6,000

販管固定費   5,000  1,500  6,500  6,500
営業利益    3,000 -1,000  2,000  -500

損益分岐指数  0.75  1.40  0.86  1.04

 

*用語「擬似出血」
 擬似出血とは、対象品の採算が限界利益黒、営業利益赤の状態を指しています。

 対象品より採算性が上回る代替品がない場合は、販売継続とすべきです

 

試算により、製品Bの損益分岐指数は1.40となりました。既述、損益分岐指数の用
語解説にあるとおり、この値が1を超える場合は必要売上倍率の意味です。詳細は今

回触れていませんが、固定費配賦との関係でこの値は概算値となります。損益分岐
指数の有効性確認のため、一応検算してみましょう。製品Bの販売単価を同じとし

て、数量のみ1.4倍すると損益の状況がどう変わるかです。次に試算しました

 

 

◆ケース1-3 損益分岐指数にしたがって製品Bの販売数量1.4倍時

 

製品Bの販売数量は 50×1.4=70 です。製品Bの営業利益は、1000円の赤字からゼ
ロ円に改善されました。損益分岐指数も1.00になっています。損益分岐点・売上高

あるいは損益分岐点・販売数量になったという意味です。この例における損益分岐
指数の有効性が確認されました  \(^^)/

 

製 品    製品A 製品B 合 計
販売数量     100   70

販売単価     200  100
変動単価     80   50

 

売上高    20,000  7,000 25,000
変動費計    8,000  3,500 10,500

限界利益   12,000  3,500 14,500
製造固定費   4,000  2,000  6,000

売上原価   12,000  5,500 16,500
売上総利益   8,000  1,500  8,500

販管固定費   5,000  1,500  6,500
営業利益    3,000    0  2,000

損益分岐指数  0.75  1.00  0.86

 

試算では販売数量を1.4倍としましたが、これを超えた販売数量になれば、製品B単
独で黒字を計上できます。この種の内容は、実際に計算してみないと身に付きませ

ん。ぜひ、試算に挑戦してみて下さい (=^^=)

 

 

◆ケース2 製品Dの限界利益、営業利益ともに赤

 

次の例を採りあげます。製品Dの利益を確認してください。限界利益-500円、営業
利益-4000円と双方ともに赤です。残念ながら、損益分岐指数がマイナスのときは算

出不能となります。この例でも、全社合計では営業利益1000円となって黒字維持の
状態です。限界利益、営業利益とも赤字の製品Dを生産中止した場合、全社の営業

利益はどうなるのでしょうか

 

製 品    製品C 製品D 合 計
販売数量     100   50

販売単価     220   40
変動単価     80   50

 

売上高    22,000  2,000 24,000
変動費計    8,000  2,500 10,500

限界利益   14,000  -500 13,500
製造固定費   4,000  2,000  6,000

売上原価   12,000  4,500 16,500
売上総利益  10,000 -2,500  7,500

販管固定費   5,000  1,500  6,500
営業利益    5,000 -4,000  1,000

損益分岐指数  0.64   −  0.93

 

 

◆ケース2-1 製品D中止時

 

製品Dの、生産中止時における損益を計算してみます。製品D生産中止時の全社合
計の営業利益は1500円です。製品D中止前の同営業利益1000円より、損益が改善さ

れています。ここから言えることは、限界利益、営業利益とも赤字の場合は、当該
製品の生産を中止したほうが損益改善に有効だということです。製品Dのように、

限界利益・営業利益とも赤字の状態を真性出血(しんせいしゅっけつ)と呼んでい
ます(後段に用語解説あり)

 

製 品    製品C 製品D 合 計 製品D中止時
販売数量     100   50

販売単価     220   40
変動単価     80   50

 

売上高    22,000  2,000 24,000 22,000
変動費計    8,000  2,500 10,500  8,000

限界利益   14,000  -500 13,500 14,000
製造固定費   4,000  2,000  6,000  6,000

売上原価   12,000  4,500 16,500 14,000
売上総利益  10,000 -2,500  7,500  8,000

販管固定費   5,000  1,500  6,500  6,500
営業利益    5,000 -4,000  1,000  1,500

損益分岐指数  0.64   −  0.93  0.89

 

*用語「真性出血」
 真性出血とは、対象品の採算が限界利益および営業利益が赤の状態を指していま

 す。変動費を回収できない本当の赤字であり、政策的な配慮がなければ対象品の
 販売中止をすべきです

 

 

◆結論まとめ
メーカー赤字製品の、経済性から見た判断基準は以下のとおりです (^▽^)

 

・限界利益・黒、営業利益・赤のときは、販売・生産を継続すべき
 もし、営業利益が赤字の製品の販売・生産を中止すると、企業全体の損益が悪化

 してしまいます。限界利益が黒という意味は、変動費はもちろん、固定費の回収
 までできているということです。ただし、営業利益率が低いので、引き上げる方

 策を採ることが欠かせません。営業利益率引き上げの方策には、より採算性の良
 い代替製品に代えることも含みます

 

・限界利益・赤、営業利益・赤のときは、販売・生産を中止すべき
 販売すればするほど、赤字が大きくなる状態を指しています。まず打つべき方策

 は、限界利益の黒字化、次に限界利益・営業利益の黒字化です。それでも、損益
 改善の見込みが立たなければ、販売・生産を中止するのが妥当となります。ただ、

 冒頭の「◆生産中止しにくい政治的な側面」で紹介したように、即中止に踏み切
 れないことも現に見られます

 

とくに述べていませんが、限界利益・黒、営業利益・黒の場合が正常が姿です。利
益率の高い低いはあるでしょうが、経済的側面から生産中止の必要性はありません。

念のため  (^^)♂♂

編集後記

7月1日、例年どおり川口市立医療センターで人間ドックを受診しました。従来と比
べ、受診のしかたがだいぶ改善されたようです。今までは、午後までかかっていた

こともあったのですが、受診科目を増やしたのに11時過ぎに終了しました。増やし
たのは、音のうるさい脳のMRI検査と、バリウムを飲むX線検査に替えた胃カメ

ラ検査です。昨年、一昨年と2年続けて便潜血反応検査で陽性と診断され、その後、
大腸カメラ検査を受けました。結果は、2回とも無罪放免です。今回は、最初から無

事に終わりました  \(^^)/

 

検査終了時に、中間所見を教えていただきました。例年のごとく、担当はやせ形美
人の星野先生です。血液一般検査に、異常が見られると話されていました。今まで

の経緯から見ても、原因が分からないというのです。赤血球が減少し貧血気味になっ
ているとのお話しでした。正式な結果報告は、2〜3週間後になります。もしかした

ら、再検査が必要になるのかもしれません (>.<)

 

 今回頁数は次のとおりです
  353行/校了時点の合計÷53行/頁≒6.6頁

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!