収益改善に役立つ統制指標の切り口

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 収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
 発行 2011/01/17 No.87

 

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【目次】

1.管理会計の導入形態

まえがき

こんにちは 前田です!

 

新しい年になり半月が過ぎました。きょう1月15日(土)は、いつもどおり5時起床、日の出6時51分、日の入り16時50分です。1月12日までは日の出が6時52分でしたので、ようやく朝明るくなるのが早くなり始めました。起きたとき暗いと、何となく嫌ですね (^0^)

 

暮れまでは東京で、オーバーコートを着たのが2回しかありませんでした。今朝の最低気温はマイナス2℃。年が明けてから、ようやく冬らしい気温になってきました。寒さとインフルエンザの流行に負けず、ウサギのように軽い足取りで飛躍の年にしたいですね。ただ昨日、花粉を感じました。また、嫌な花粉症の季節が始まります (>_<)

 

                      帝釈天参道 2011.1.4
帝釈天参道お正月は初詣に出かけましたか (^−^)

どこの神社仏閣も混んでいたようで、小生は参拝客がやや少なくなる1月4日、柴又帝釈天に参拝しました。自宅から約1時間ですが、初めて参拝するお寺です。都電荒川線経由で下町の風情を味わいながら、そぞろ歩きを兼ねることができました (●^o^●)

 

                      二天門 2011.1.4
二天門帝釈天参道お寺に一番近い駅は京成・柴又駅ですが、JRでは金町が最寄り駅です。金町駅から見れば柴又帝釈天とちょうど線路の反対側になりますが、この付近の事業所に以前仕事で通っていました。もちろんコンサルティングのためです。不明ながら、当時は参拝にあまり関心がありませんでした (^∧^)

 

                     帝釈堂(本堂) 2011.1.4
帝釈堂帝釈天は軍神であり、仏教の守護神です。この葛飾区柴又は、映画「男はつらいよ」の、車寅次郎、こと寅さんの故郷としても知られています。帝釈天参道には、映画に出てくる団子屋の撮影に使ったお店が今でも繁盛しており、当日は込んでいて入りそびれました

 

                      寅さん像 2011.1.4
寅さん像右の写真は、車寅次郎の銅像です。京成・柴又駅前の広場にあります。人が多く、しばらく待ってようやく撮ることができました (∩_∩)

 

 

 

 

 

                      都電 2011.1.4
都電

小生も誤解していましたが、映画ロケで主に使ったのは「高木屋」だとのこと。すぐ隣の「とらや」は、シリーズ1作から4作目までの撮影場所だったとお聞きしました。映画の団子屋もシリーズ39作目までは「とらや」でしたが、40作目からは「くるまや」に名称変更されています。理由は分かりませんが、映画と実際の店名が同じことに問題があったのかもしれません

 

1.管理会計の導入形態

管理会計による原価の活用方法を考えることにします。一般的なことについては書
籍なり、インターネットで検索すれば分かるはずです。今後、実際のコンサルティ

ング現場から見た問題点、課題および活用法を採りあげていきます。今回だけでは
ストーリは完結しません m(_ _)m

 

*用語「管理会計」
 企業内部の経営管理者に、経営に役立つ各種の会計情報を必要に応じて作成し報

 告する会計です。管理会計には、設備投資の計画など意思決定に役立つものと、
 期間利益計画・予算統制・標準原価計算など業績の評価に役立つものがあります。

 次に、一見紛らわしい管理会計の区分のしかた紹介です

 

 会計制度の種類:財務会計、管理会計
 原価計算方式 :全部原価計算(財務会計)、直接原価計算等(管理会計)

 原価計算の形態:財務・管理会計とも共通であり、生産形態で決定されます。
         単純総合原価計算、等級別総合原価計算、個別原価計算

 原価計算制度 :財務・管理会計とも共通であり、条件に応じて採用
         標準原価計算制度、実際原価計算制度

 

最初は、管理会計の導入形態について紹介します。やや無理があるかもしれません
が、ここでは財務会計以外の方法をすべて管理会計の範ちゅうに含めました

 

*用語「財務会計」
 財務諸表を中心とした会計情報を、企業外部の利害関係者(株主、債権者、徴税

 当局など)への提供を目的とした会計です。法律や規則等に準拠しており、会社
 である以上やらざるを得ません。制度として決められているため、制度会計とも

 呼ばれます

 

 

◆管理会計の導入形態

 

管理会計の導入は、内容も含め企業側の自由です。過去お手伝いした企業では、実
にいろいろな形態が見られます。分類すると、次の組み合わせとなるようです

 

☆適用事業の範囲

 

・一企業内の特定製品部門
・一企業内の複数あるいは全製品事業部門

・連結企業を対象に含む

 

☆経費算出の領域

 

・製造部門のみ(製造原価算出が主)
・事業領域の全部門(変動損益計算書の作成可能)

 

「連結企業を対象に含む」と「製造部門のみ」の組み合わせは、実際はあり得ませ
ん。連結で製造原価を算出する場合、連結される企業の販管費も原価項目に含まれ

るからです。したがって、「連結企業を対象に含む」との組み合わせは「事業領域
の全部門」のみとなります。この内容は、今回メルマガのみでは十分な説明はでき

ません。詳細はメルマガNo.79、80の理解が不可欠です m(_ _)m

 

*用語「連結」
 複数の企業を一つの組織体とみなして、財務諸表を作成する意味で使われます。

 たとえば、連結製造原価、連結変動損益計算書、連結決算などです

 

*用語「連結製造原価」
 連結製造原価とは、連結企業間で製造工程が分担された製品を、一工場で製造し

 たように算出する原価を指しています。算出方法は2とおりです。関係会社のデー
 タに内部取引を含めず、積み上げ計算する方法。関係会社のデータに内部取引を

 含め合算し、次に内部取引のみ集計・消去し合算する方法(単純合算消去法、推
 奨)。後者の方法は、個別企業の変動PLをそのまま利用でき、分かりやすいのが

 特徴です。しかも、アイテム別に集計可能なことから採算分析もできます。算出
 目的は、採算分析等の情報提供とグループ全体の最適追求です

 

*用語「変動損益計算書」
 変動損益計算書(略称、変動PL)は、売上または製造数量に比例する変動費と、

 以外の固定費に区分して事業損益を算出する計算書です。これができると採算分
 析しやすくなります

 

 

◆管理会計の実適用形態

 

前項の導入形態の組み合わせは、5とおりです。しかし、実際は数え切れない数にな
るのかもしれません。過去実際に見られた形態を、次に列挙します。自社の管理会

計導入レベル評価に役立つ可能性大です。いろいろ前提がありますので、内容が分
かりにくいかもしれません。本文最初のほうで、財務会計以外の方法をすべて管理

会計の範ちゅうに含めることにしましたので、何でこれが管理会計なんだと目くじ
らを立てられませんようお願いします m(_ _)m

 

・製造経費は固変区分済み
 外注費、社内外注費の固変区分がとくに重要です。外注だから変動費になるとは

 限りません。管理会計導入の第一歩となる課題です。財務会計を基本として、原
 価算出の企業によく見られる形態と言えます。装置型メーカーではよく見られる

 実態です。本来、このレベルでは管理会計採用とはとても言えないかもしれませ
 ん(実は、小生も内心そう思っています)

 

・製造変動費はほぼ実コスト
 製造変動費の配賦基準は、コスト発生の実態に近似、つまり直課に近いという意

 味です。この件については、前項の固変区分が明確になれば、あまり問題となる
 ことはありません。その意味では、前項と同じレベルといえます

 

 実企業においての問題は、むしろ変動費率の使い方を分かっていない企業が多い
 ことが問題です。ここでは例の紹介のみします。複数の設備で同一製品を製造で

 きる場合、変動費率の小さい設備から負荷山積みすることが原則です。決して、
 固定費が小さい設備を最優先して稼働させるべきではありません。仮にそのよう

 にすると、利益の悪化を招いてしまうからです。現実には、作業者の労務費が安
 い設備や減価償却費の低い設備から優先的に生産割り付けする例が後を絶ちませ

 ん (>_<)

 

・受注生産品は個別原価計算
 見込み生産品は固変区分済みの総合原価計算、受注生産品は固変区分済みの個

 別原価計算が原則です。実際の企業では、受注生産品でも総合原価計算されてい
 ることがあります。間違いとは言いませんが、管理上問題がないか確認が不可欠で

 す。実発生コストと、原価のかい離がなければ問題ありません

 

 これも前項同様、装置型メーカーではよく見かけるケースです。儲かっているう
 ちは、あまり問題視されることはありません。むしろ、特殊、特注、受注生産な

 どの名目により、実際の原価よりも大幅に高く販売される傾向があります

 

・受注生産品は総合原価計算でも実コスト算出
 総合原価計算による製品の受注生産品は、個別仕様部分を固変区分済みで実際原

 価を算出しているという意味です。前項の例、受注生産品の実コストを知るとい
 う課題を解決する方策になります。実コスト把握と言っても、実際のケースでは

 受注生産の幾つかのパターンにおける見積原価を算出しておけば、実務上問題と
 なることはありません。このような対応は、量産型のメーカーでよく見かける例

 です

 

・総合原価計算の製品群内の実コスト算出
 総合原価計算の製品グループ分けは、実発生コストが近似するまとまりになって

 おり予実績管理に活用できる意味です。製品群内の品種構成と数量の変化により
 原価も変化します

 

 そもそも製品群へのグループ分けは、販売用途や客先業種など販売管理の必要性
 と、製造方法が同様かによって決められることが多いものです。そこで、原価算

 出上の同一製品群が実コストに限りなく近いのか、一定期間ごとに確かめること
 を推奨します

 

 過去の経験則では、製品群内の特定品種の売上増により、損益が悪化することも
 確認できました。原価の配賦が実態と異なることを意味しています。販売努力が

 正当に評価されるように、実態を正しく反映した原価算出が欠かせません。問題
 は、今後この品種の伸びがほかの品種を上回る場合です。そのケースでは、基準

 売価の設定変更が不可欠となります。これも、たびたび目にする実態です

 

・製造原価はほぼ実コスト
 製造経費は、製造管理上から支障のない実発生コスト配賦、あるいは直課となっ

 ている意味です。当たり前のように聞こえるかもしれません。しかし、製造現場
 の工数・設備時間の収集と入力、原価算出の手間暇の問題などで、必ずしも実コ

 ストになっていないことが現実にあります。どうするべきかは、必要性と重要度
 から政治判断する問題です

 

 実例を紹介します。製造経費は固変区分され原価計算されていました。事例企業
 は、加工メーカーです。製造原価に占める労務費が約40%を占めています。この

 労務費が設備稼働時間に比例する形で、配賦されていたのです。設備償却費の原
 価に占める割合は、2%しかありません。加工設備には、ほぼ無人運転可能なもの

 も少なくありません。問題は、何が儲かっているのか不明、製造改善による原価
 低減額が分からない、何に重点を置いて販売すべきなのか不明確などです

 (+。+)アチャー

 

 なぜこうなっているのかお聞きしたところ、現場の人が忙しくて作業伝票を書く
 ことを嫌がるからだとのこと。本当のところは分かりませんが、実態を丁寧に説

 明し、作業情報収集に協力を仰ぐべきでしょう。正しい測定手段なしに、実のあ
 る管理はあり得ません (^0^)

 

・販管費が固変区分済み
 運賃などの販売変動費、変動費的な広告宣伝費などの区分が重要です。とくに、

 広告宣伝費と販売奨励金は、特定製品の売上数量増減に応じて変化する性格なの
 か見極めが欠かせません

 

 管理会計を導入していると言われる企業でも、製造経費にのみ適用している事例
 が結構多いのが実態です。とくに、装置型メーカーに多く見られます。製造原価

 だけに直接原価計算を適用しても、製品別の損益までは分かりません。重点的に
 コスト改善すべき対象品も、投入努力に対して得られる成果の視点からの評価が

 難しくなります

 

 直接原価計算の歴史を見ると、1936年、米国、Harris の論文「我々は先月いくら
 もうけたか」が、もともとの発端です。史上初の直接原価計算を論じた有名な言

 葉として知られています。原価だけ見るのでなく、利益から見るのが本筋なのを
 理解すべきです (^−^)

 

・販管変動費はほぼ実コスト
 販管変動費の配賦基準は、コスト発生の実態に近似、つまり直課に近いという意

 味です

 

 企業間取引主体のメーカーでは、この配賦基準が問題視されることは、まずあり
 ません。製品ライフサイクルが短い、販管費率が高い、かつ広告宣伝費や販売奨

 励金の比率が大きな割合を占める業種や企業では要注意です。消費者向け製品の
 メーカー、とくに食品やトイレタリー関係メーカーでは大きな意味を持ちます。

 内容説明には誌面がかなり必要です。結論だけ述べさせていただきます。広告宣
 伝費や販売奨励金の製品別配賦がうまく行かず、利益との関連把握が難しいから

 です。販売政策を見直し、管理しやすい体制づくりが必要でしょう (^0^)

 

・受注生産品の実際原価把握
 受注生産品は、見積もりコストに対する実際原価の差異が把握されているという

 意味です。こうなっていないと、予実績管理ができません

 

 実際には、見積書を作成済みなのに実際原価が把握されていないケースがありま
 す。実際原価を分からずに、見積基準をどのように作ったのかも疑問ですが…。

 とにかく、これが現実です (^v^)

 

・製品別の変動損益計算書作成
 この変動PLができると、製品別の損益と損益分岐点分析が可能です。企画部門

 で使える資料提供となります。工場別・生産品種の割り付けによる損益への影響
 度試算も可能とする資料です

 

 実際の企業では、損益分岐点分析の活用度が低いと言わざるを得ません。そのた
 め、損益分岐点分析と同様のことを、もっと容易に算出できる損益分岐指数の活

 用を提案しているゆえんです。詳細はNo.28を参照お願いします

 

・顧客別・製品別の変動損益計算書作成
 この変動PLができると、顧客別・製品別の損益と損益分岐点分析が可能となり

 ます。販売部門の担当者が予実績管理に使える資料です。売上単価の変動、数量
 増減による損益への影響度も分かるようになります

 

 この帳表作成済み企業の支援をしたことはありません。もっとも、コンサルティ
 ング自身必要ありませんが… (●^o^●)

 ただし、ここまでできていても、以降の子会社との連結製造原価まで算出してい
 る企業を小生自身把握していません。小生がお手伝いさせていただいて作成した

 企業は、もちろん除きます

 

・部門振替時の連結製造原価作成
 企業内部門間振替品を使った製品に、固変区分された単純合算消去式・部門間・

 連結製造原価を算出できる意味です。とくに、複数部門間で原材料の振替がある
 ケースでは、基準売価設定に必須となります。変動費を回収できる基準売価設定

 に欠かせません。簡便法には、部門振替時に標準原価の固変割合に応じて変動費
 と固定費を割り振る方法もあります。むしろ、これが一般的な方法かもしれませ

 ん。小生は、あまりお薦めしていませんが…

 

 実際の企業において、ここで述べた形で算出している企業は把握していません。
 上記の一般的な方法に相当する企業は数多いことは承知しています。単純合算消

 去式で算出するか、経費の固変割合を代用して算出かの違いは、損益分岐点分析
 の活用度に現われます。いずれにしろ、儲かっている場合には問題視する必要性

 は薄いでしょう

 

・連結子会社との連結製造原価算出
 連結製造原価の用語解説にも一部書いてありますが、実際の算出は単純合算消去

 法で算出することをお薦めしています。連結製造原価のアウトプットは、連結変
 動損益計算書の形式です

 

 この問題が出てきたのは、2000年4月期以降から開始の連結決算制度がスタートし
 てからです。その意味では比較的新しい課題と言えましょう。したがって、単純

 合算消去式・連結製造原価の採用企業は、まだほとんどないと考えています。小
 生がお手伝いして作成している企業は、もちろん除いてです。管理会計導入も、

 ここまでできれば申し分ないと考えます \(◎o◎)/!

 

・持分法会社との連結製造原価算出
 情報開示の面から難しいこともあります。しかし、合弁メーカー設立時に仕入製

 品の正確な変動費が分からず、顧客別に価格競争を意識した基準売価設定に困っ
 たことがありました。事業環境にもよりますが、必要時に算出できることが望ま

 しいことはいうまでもありません (∩_∩)

 

 実企業で、ここまで管理会計を活用している企業は把握していません。情報さえ
 入手可能であれば作成できますが、そのことが一番問題になる可能性大です

 

*用語「固変区分」
 費用あるいは原価を固定費と変動費に分けること。実際には、いろいろ難しい問

 題があります

 

*用語「変動費」
 固定費に相対するコスト概念。生産数量、販売数量の増減に応じて変化するコス

 トです。原材料費、電力費、水道光熱費等があります。実際には、固定費と変動
 費の境界は明確でなく、実質的にコストを決めている雇用契約などの制度、生産

 ・販売方法などで流動的です

 

*用語「個別原価計算」
 1つの製品ごとに原価を集計する原価計算手法。主に一品生産の船舶や特注の機

 械など、個別に製造する受注生産に採用されます

 

*用語「総合原価計算」
 見込生産により、大量の製品を連続的に生産する場合の原価計算方式。大量生産

 品の場合、個別製品ごとの原価算出は通常不可能です。そこで、製品群別に経費
 を把握し原価計算する方式を指しています

 

*用語「実際原価」
 実際の製造に要した材料費、労務費、製造経費を基に算出した原価です

 

*用語「予実績管理」
 容認できない予算と実績の差異ありと判断される場合、要因解析ののち差異解消

 策立案、実施、差異解消に至るマネジメントサイクルの実践を指しています。当
 管理の目的は、予算達成を確実にすることです

編集後記

本文執筆中に気がついたのですが、我ながら驚くほど管理会計の導入形態には種類
がありました。そのため、当初考えていた管理会計による原価の活用方法までは、

到達できませんでした。文章化してみないと、内容の多さに意外と気付かないもの
のようです。そんなわけで、次回以降も続編を書くことになりました。ただし、連

続か断片的かは気の向くままです m(_ _)m

 

 今回頁数は次のとおりです
  350行/校了時点の合計÷53行/頁≒6.6頁

 

最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
本年も宜しくお願いいたします

それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!