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収益改善に役立つ統制指標の切り口 【現役 経営コンサルタントの裏情報!】
発行 2011/04/11 No.98
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【目次】
1.全体最適と販売の役割
まえがき
こんにちは 前田です!
きょう4月9日(土)、自宅前の公園の桜が満開です。天候は曇。気温20℃と暖かいのですが、無情にも風がだいぶ強く花びらを散らそうとしています。今朝の天気予報によれば、都心の桜も満開だそうで、来週の火曜日頃までは満開を持続してくれると言っていました
上野公園 看板 4月7日
4月7日の午前中、上野公園に桜の様子見に少し立ち寄りました。結構人手があります。上野駅から上野公園に向かっていくと、あちこちにパンダのポスターが貼ってあります。上野動物園の前がにぎわっていました。どうやら、目当てはパンダだったようです
上野公園の桜がある付近には、写真の立看板がありました。東日本大震災により、第62回うえの桜まつりを中止する旨が告げられています。それじゃ例年の席取りもやっていないのだろうな…と思いつつ桜並木の方向に足を進めました
桜のほうは、満開まであと1日というところでしょうか。桜の下には激減していますが、場所取りが見られます。季候も良く、花見には絶好のお天気というところです
上野公園の桜 4月7日 午前10時頃
上野公園 つつじ 4月7日
上野公園の桜並木を通り過ぎた辺り、広小路口近くには、ツツジがきれいに咲いています。まさか、もう咲いているとは思いませんでした。花心に乏しく種類は分かりませんが、今年初めての感動した出会いです (∩_∩)
No.97で紹介の増上寺の桜のピントが少々合っていませんでした。この前のは4月1日に撮ったものですが、今回あらためて4月4日に撮影したものです。増上寺、鐘楼堂前の桜観賞宜しくお願いいたします (=^^=)
増上寺の桜 4月4日
東日本大震災の被災者の皆さま、東北にももうすぐ桜の季節がやってきます。厳しい生活を強いられていると思いますが、一日も早い復興を心から望んでおります m(_ _)m
1.全体最適と販売の役割
販売から全体最適を考える場合、ポイントは何でしょうか (?_?)
これが、今回のテーマです。タイトルを短くするため「全体最適と販売の役割」と
しました。言い換えると、「販売の立場から見た全体最適」のほうが分かりやすい
かもしれません (^v^)
詳細は、後段に譲りますが、販売の役割とは何でしょうか?
小生の見方は、次のとおりです (^−^)
販売の基本的役割は、生産資源を中心として収益能力が最大となる経営資源の活用
方法を企画することです
No.96では、全体最適と生産の役割を紹介しました。誌面の都合上、事例と適用のし
かたは省略しています。その分、No.97で生産配分の試算例を紹介をしました。今回
は、立ち位置を反対側にし販売の立場から見た内容を紹介します
同内容を採りあげた都合上、No.96「全体最適と生産の役割」と共通する事項も述べ
ざるを得ません。たとえば、収益から見た全体最適の項が相当します。メルマガは
各号読み切りが基本です。前号をお読みいただいていなくとも、支障ないように配
慮しています。定期購読のかたは、確認のつもりでお願いします
*用語「全体最適」
個別部門の部分最適にとどまらず、販売・生産・物流・開発の全ライン部門が経
営資源を生かし切り収益能力の最大化追求をすることです
◆本文の話の流れ
次の展開でお話しします
・収益から見た全体最適の意味
・メーカーの実態
・販売の立場から見た全体最適のポイント
それでは、収益から見た全体最適の意味から始めることにします (∩_∩)
◆収益から見た全体最適の意味
経営においては、部分最適より全体最適を優先することが求められます。たとえ製
造原価が上がっても、従来より営業利益が増えれば良しとする見方です。全体最適
の判断は、収益の大小を基準とします。収益は、売上高と営業利益を指すことが一
般的です。ただし、売上高が増加しても、営業利益が増えるとは限りません。赤字
販売もあり得るからです。収益の大小判断には、営業利益のほうが分かりやすいこ
とを意味します
それでは、営業利益に一層貢献する製品とは何を指すのでしょうか (=^^=)
結論は、限界利益が大きい製品です。もう少し厳密に言えば、生産の時間当たり限
界利益が大きい製品ほど、全社の収益向上に貢献します。理由等は、例を用いてNo.
54「営業から見る収益管理」で説明しました。興味のあるかたは、ご覧いただけま
したら幸いです (^−^)
*用語「限界利益」
算出式は次のとおりです。限界利益=売上高−変動費
限界利益は貢献利益と呼ぶことが多いと思います。ほかに、付加価値、変動利益
と呼ぶこともあります。
若干分かりにくい言い方かもしれませんが、限界利益は企業の固定費を回収する
能力のことです
結論です (●^o^●)
収益から見た全体最適とは、月次・年次など特定期間の限界利益額(=期間限界利
益)を最大化することです。これにもっとも貢献するのは、生産の時間当たり限界
利益額を最大化できる製品となります。この見方は、販売の立場だけでなく、生産
の立場から見ても同じです
次の項目が、収益から見た全体最適の物差しとなることはありません
・売上高の大きさ
・粗利率の高さ
・粗利額の大きさ
・営業利益額の大きさ
・営業利益率の高さ
・投資回収率の高さ、あるいは投資回収期間の短さ
・製造1時間当たりの営業利益額
・投入単位原料当たりの営業利益額
・投入単位原料当たりの限界利益額
・一人当たりの営業利益額
・一人当たりの限界利益額
◆メーカーの実態
正しい理解のうえで、経営されている企業も多いはずです。しかし、これまでの経
験則から考えますと、多くのメーカーでは真に儲かる基準を理解しているとは言え
ません。それにもかかわらず、経営が成り立ち、成長企業もあることは事実です
なぜでしょうか (^o^)
推測ですが、真に儲かる基準を知らなくとも、そこそこに黒字経営を続けてこられ
た環境だったからと考えます。たとえば、マーケットの継続的な需要拡大、売上数
量の自然増、売上高の自然増、結果としての営業利益の拡大を背景として挙げられ
るでしょう。競合による販売単価の低落は、売上数量の増加で補うことができまし
た。新製品の開発と発売も、マーケット創造あるいは代替需要になり、販売拡大に
貢献できたと思います。全体が右肩上がりの経済環境下では、真に儲かる基準を知
らなくとも経営できたということです
しかし、正しい認識を持って経営するのと、知らなくて経営するのでは雲泥の差が
生じてきます。正しい認識を持つことは、経営者に不可欠なことではないでしょう
か (^∧^)
経営管理上、真に儲かる基準の活用は欠かせません。しかし、経営管理者に比較的
多い、儲かる基準の認識は次のとおりです
・粗利額の大きさ
・粗利率の高さ
・売上高の大きさ
・営業利益額の大きさ
この中で一番多いのは、製品の粗利率を儲かる基準とするケースです。現実には、
この基準を根底に経営していることになります。それでは、どうするべきでしょう
か (>_<)
知らなくとも経営できる環境下では、とくに問題視しません。ところが、マーケッ
ト状況から判断し、真に儲かる基準を前提とした経営が不可欠なケースでは大問題
です。経営の質が問われる環境を迎えているのではないでしょうか (^−^)
◆販売の立場から見た全体最適のポイント
今回の主題、販売の立場から見た全体最適のポイントとしては、どんな項目が考え
られるのでしょうか。視点はあくまでも、全体最適からの立場です。したがって、
販売部門が主導権を持って取り組み可能な事項は除きます
たとえば、基準売価設定と値引対応、受注選別、最小受注ロットの設定、品種・ア
イテム数の増減など挙げられます。企業によっては、これらの事項が必ずしも当て
はまると限りませんが…
これに対し、販売の何かは変えるのですが、全体的取り組みが不可欠な項目があり
ます。これが、表題のポイント事項です。例を次に列挙しました
・収益最大の姿明確化
・販売プロダクトミックスの明確化(=収益最大化する販売対応の明確化)
・収益最大化する生産状態の明確化(=生産プロダクトミックス)
・儲かるしくみづくり
それぞれの内容を、順を追って紹介します
◆収益最大の姿明確化
儲かるとは、どういう状態をいうのでしょうか。単に、限界利益額が大きくなれば
済むのでしょうか。たとえば、販売単価を下げれば、販売量を増やせるとします。
そこで、数量増による限界利益が増える範囲内に限定して販売単価を下げることに
しましょう。結果は、確かに限界利益額は増えますが、限界利益率は確実に低下し
ます。いろいろな条件が絡むため注意を要しますが、薄利多売路線を地でいく考え
かたです
ここでは限界利益を例にしましたが、営業利益で考えても同じ結果になります。注
意すべき点は、一度下げた単価は元に戻らないということです (>_<)
収益から見た全体最適とは、月次・年次など特定期間の限界利益額(=期間限界利
益)を最大化することに変わりありません。しかし、一定の歯止めが必要です。一
度下げた単価が元に戻らないリスクを承知で、限界利益を増やそうとすることは推
奨できません
収益に対する方針が必要となるゆえんです。たとえば、製品別に限界利益率60%を
販売単価の下限とするなど考えられます。この数値は、企業により大きく変化しま
す
大枠の指針は、中期経営計画、年度の経営方針、販売方針などによることが多いで
しょう。たとえば、ROA 15%、営業利益率 20%達成などです。顧客別・製品別の設
定は、営業見積基準によることが大半となります。内容については、No.49「粗利係
数表と基準売価」、およびNo.55「営業見積もり」で紹介しました。興味のあるかた
は、参照いただけましたら幸いです (=^^=)
◆販売プロダクトミックスの明確化
販売プロダクトミックスとは、現状扱い品種の範囲内で限界利益額あるいは限界利
益率を最大化する現状生産可能なアイテム・数量の組み合わせを指しています。分か
りやすく言うなら、どの品種を幾ら販売したとき一番儲かるのか知ることです。実
際には、販売努力を織り込んだ品種・数量の組み合わせになります
正確には、短期的な販売プロダクトミックスを言っているのですが、本文では販売
プロダクトミックスと省略して呼んでいます。プロダクトミックスは、もともと4つ
に区分していますが、ここではその1つのみの紹介です
生産プロダクトミックスと微妙に概念が異なります。やや、分かりにくいかもしれ
ません。生産プロダクトミックスは、現在生産している品種と数量の組み合わせで
収益最大化する姿です。したがって、現状生産していても、むしろ造らないほうが
いい製品がでてくる可能性があります (^^)
そこで、販売プロダクトミックスと生産プロダクトミックスが同じ姿になれば、販
売と生産の収益最大化の波長が一致するわけです
◆収益最大化する生産状態の明確化
収益最大化する生産状態の明確化とは、生産プロダクトミックスを知ることを意味
します。これなくして、前項の販売プロダクトミックスはありません。生産プロダ
クトミックスとは、限界利益額あるいは限界利益率を最大化する現有インフラで生
産可能な品種・数量の生産組み合わせを指しています。内容は、次のとおりです
どんな生産状態のときに、収益が最大化するのか知る必要があります。原則は、時
間当たり限界利益が大きい製品を販売可能な量まで生産することです。実際の項目
としては、工場の稼働時間と生産量、最小生産ロット、納品リードタイム、生産品
種と生産量、品種数・アイテム数、内外製の組み合わせ、調達原材料の単価と量、
その他の生産制約があります。これらの項目を考慮のうえ、生産プロダクトミック
スが設定可能です
どの品種を幾ら販売したとき一番儲かるのか知り(販売プロダクトミックス)、生
産制約を考慮して、そのとおり造ることが可能(生産プロダクトミックス)であれ
ば、もっとも儲かることになります。販売・生産プロダクトミックスが一致するわ
けです。生産プロダクトミックスの簡単な試算例は、No.92、93で紹介しました
(●^o^●)
◆儲かるしくみづくり
製品が幾ら優れていても、売れる保証にはなりません。世の中には、多くの事例が
あります。たとえば、ビデオテープレコーダの方式は、標準規格の座が争われた典
型かもしれません。現在、民生用においては日本ビクターが開発したVHS方式が主流
であり、ソニーのベータマックス方式は性能が優れていたと言われているものの姿
を消しました。つまり、先に標準化されたものがマーケットリーダーの座に着くわ
けです。標準化ビジネスの代表例と言われています
米インテル社はCPUの世界で不動の地位を築いています。部品がパソコン完成品の先
導的な役割を持つ典型例です。2010年通期では、粗利益率66%、営業利益率36%、
純利益率26.8%に達しています。マーケットにおける部品主導型の模範例を見てい
るようです。パソコン完成品メーカーである、ヒューレット・パッカード社の営業
利益率は10%です(HP社の数値は2008年度第2四半期)。部品主導型で、マーケット
リーダーの座を維持するビジネスモデルの典型例です
部品主導型以外に、自動車のような完成品主導型、ほかに素材主導型もあります。
いずれにしろ、マーケットリーダーの座を射止めることが最大の課題です
同様の事例は多く見られます。繰り返しになりますが、優れた技術や製品だけでは
儲かりません。儲かるしくみづくりが必須です。このことを販売企画というべきな
のか、それとも経営企画や事業企画と呼んだほうが合っているのか定かではありま
せん。いずれにしろ、この部分の企画力、および企画の結果から導きだされる技術
開発の方向性明示が不可欠です
今回は概要のみの紹介ですが、儲かるしくみづくりには需要拡大策も必須です
◆重要な業績評価
最後に、ひと言付け加えます。販売から見た全体最適のポイントは、前項までのと
おりです。しかし、全体最適の方向にベクトルを向けることが意外に難しいと思っ
ています。理由の一つに、業績評価があいまいな例が多いからです
生産に比べ、販売は個人の能力がよりはっきりと成果に現われます。その意味で、
個人のやる気を引き出す工夫が重要です。もちろん、組織的な取り組みが不要とは
申しません。小生が強調したいのは、報われる評価基準を持つことです。販売の業
績評価については、No.46で紹介しました。興味のあるかたは、ぜひ参照お願いしま
す m(_ _)m
編集後記
今回採りあげた「販売の立場から見た全体最適」は、研究の余地が残っています。
とくに、重要なのは「儲かるしくみづくり」です。今回内容は、その意味でまだ習
作と言える段階にとどまっていると考えています。小生も、以前まではいいものを
造るのがもっとも重要なことであり、売れないのはニーズを先取りしすぎたか、最
終需要家とのニーズのずれか、販売方法による問題と考えていた時期もありました
しかし、最近のコンサルティングから考えてみますと、必ずしもそのようになって
いない事実関係を肌で感じています。売れるには、それなりの理由としくみがある
のではないかということです。近いうちに、もう少し分かりやすく事例を入れて披
露したい所存です (=^^=)
技術開発のテーマ選定やマーケットリーダーの座確保の方策も、この延長線上で明
かりが見えてくる気がしております。はなはだ抽象的な言い方で申しわけありませ
ん。今少し猶予をいただきたいと思っております (^。^;) 冷や汗
今回頁数は次のとおりです
335行/校了時点の合計÷53行/頁≒6.3頁
最後までお読みいただきありがとうございます m(_ _)m
それでは、次回またお会いしましょう (^.^/)))~~~bye!!