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収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報! No.4】
発行 2009/3/30
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目次
1.ホームページ開設のご案内
2.統制とはどういうことか
1.ホームページ開設のご案内
こんにちは 前田です!
Webサイト(ホームページ)を立ち上げました。まだ工事中ですが、ぜひ一度遊びに
来て下さい。問い合わせ先等の新メールアドレスも変更しました。次のとおりです
問い合わせ等のE-mail : 285719@jimosen.com
WebサイトURL : http://jimosen.com/
サイト独自の狙いはありますが、読者にとってはメルマガの不足分を補う意味合い
があります。メルマガは、読者の受信環境も考えテキスト形式としました。しかし、
伝達内容によっては、文章だけでは限界があります。とくに、図がないと説明・理
解とも困難さも想定できます。そのケースでは、サイトもご覧いただけますよう都
度ご案内いたします
サイト独自の狙いは、収益改善に役立つ統制指標の切り口紹介です。ただ、統制指
標は経営全般に関わりますので、多面的な内容とならざるを得ません。メルマガと
サイトの両方をとおして、経営層および中堅どころのキャリア形成に役立てられる
ことを期待しております
2.統制とはどういうことか
【事例紹介 −食品メーカーへの原価計算制度導入− 】
だいぶ前になりますが、中堅食品メーカーで原価計算制度の導入お手伝いをしまし
た。上場していませんが、ヒット商品があり世間一般ではかなり名前の知られた企
業です。プロゴルフトーナメントの開催もおこなっていました。周囲からも意外と
受け取られた創業社長の急逝により、二代目ご長男にバトンタッチして間もない時
期でした(内容は差し障りのないように紹介しておりますので、ご了承お願いいた
します)
◆原価計算制度の導入理由
ご依頼を受ける前年、年度途中に新製品を発売。配合表どおり作ると製造しづらい
ので、現場判断でやや配合を変えたとのこと。製造はやりやすくなりました。しか
し、値段の高い材料を多く使用したため、製造原価が上がり、決算で当該製品は大
赤字であることが判明。これでは大変と、月次毎に製造原価把握が必要と経緯をお
聞きしました
◆従来の決算はたな卸法(たなおろしほう)
年度決算時の製造原価把握は、製造設備ごとのたな卸をもとにおこない、期中では
原価計算をしていません。前期末のたな卸で原材料、仕掛品、製品在庫を把握。こ
れを今期の期首在庫とします。年度内では、原材料の購入、製品の売り上げを別途
集計。年度末にたな卸をおこない在庫把握、当期の製造原価をほぼ生産ライン別に
算出していたのです。算出方法は次のとおり
年度売上総利益(粗利)=年度売上高−年度売上原価
*年度売上原価=期首在庫高+年度内購入高−期末たな卸高
一般企業でも、使用原材料の一部を月次たな卸法を適用するのは多いと思います。
しかし、たな卸法で原材料全部を年次単位で把握し、原価計算する企業はほとんど
ないと思うのですが…
でも、世の中広いですね(驚!)。原材料はおろか、減価償却費の配賦も製品別に
十分におこなっていない企業を、新たにお手伝いを始めるところです。年間売上高
40億円強のメーカーで、三代目の社長となっています。通常、かかる規模の企業へ
のお手伝いは少ないですね(今後のマーケット開拓領域です(反省))。いろいろ
な経緯があり、今回お手伝いすることになりました
どのように、今まで経営して来られたのか小生自身の興味も尽きません。これがコ
ンサルタント冥利とでもいうのでしょうか(笑)。しかも、当の企業の利益率は、
親会社を上回っているのです。親会社の2倍弱、自社と同レベルに比べ3倍程度の利
益率です。日本の製造業の利益率を参考までに掲げます。出所は、財務省 財務総合
政策研究所 法人企業統計年報(平成19(2007)年度)です。データは、財務総合政策
研究所の法人企業統計と検索すれば、どなたでもインターネット上から見られます
2007年度 製造業・資本金別・利益率(資本金は ○以上〜□未満の意)
資本金(千万円) 合計 1〜2 2〜5 5〜10 10〜100 100以上
営業利益率 4.5% 2.5% 3.7% 3.0% 4.3% 5.4%
経常利益率 5.1% 2.5% 4.0% 3.3% 4.5% 6.2%
今回お手伝いにより、本稿テーマの素材を提供していただけると密かに期待してお
ります(笑)
◆顧客からのご依頼内容
さて話題を食品メーカーに戻しましょう。コンサルティング依頼は、やや信じがた
い内容と受け止めました。ご依頼概要は、次のとおりです
・工場別・製品別・製造原価の月次算出
・同時に月次での損益計算書作成
・同上を自ら算出できるようになること
・製造の歩留まり改善
◆主要な問題点
実際に取り組み始め、いろいろな問題点が出てきました。主なものを紹介します
・社内全部の会議で議事録を採っていない(本当?驚!)
・製造設備の設備台帳がない(困りました。休日に管理職総動員で銘板調査を実施)
・歩留まりは年間で結果としての差異で把握
・製造現場の作業記録がない(日報作成はすんなりと受け入れられました Happy!
他企業では、これが一番難関)
◆結果
トップダウンのためか、企業文化なのか、管理職の協力も得られやすく短期間で当
初の主目的を達成しました。2工場対象で、開始後5カ月目辺りでの概要が次のとお
りです
・製造原価の算出実現(工場別・製品別・月次。チームリーダーがパソコンで算出)
・損益計算書の作成(月次)
・製造の歩留まり改善(モデルとした製造ラインのみ対象)
急速に歩留まり改善されたものの、元に戻る傾向が見られました(汗)
(5Sなくして仕事化(改善定着の意味)はありません(強調!))
・販売会議等の社内会議でも議事録を採るようになりました
実は、社長からこの部分が一番評価されました(苦笑い)
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です
【統制の背景と意味】
◆カリスマ創業社長
創業社長は、聡明でカンの鋭いかたと聞いております。毎日のように、製造現場を
歩き、改善箇所をその都度指摘していたそうです。そのため、数字による管理を必
要とせず、計数把握もされていませんでした
社内会議の議事録を取る習慣もないというより、必要としなかったのでしょう。創
業社長の急逝は、数字に明るいかたもいなく、現場を見てもよく分からない状況で
した。つまり、次世代への育成不足のツケが回ったといえるかもしれません
創業社長は、会社全般を見ながら収益改善の指揮を執っていたということです。見
方を変えていうなら、部門最適ではなく、大所高所から全体最適をシステムコント
ロールしていたと見られます。経営トップは、営業畑や技術畑出身であったりしま
す。しかし、帝王学を長年仕込まれる人材は稀でしょう(かかる創業社長もご長男
に対して同様でした)。同様の事例は、意外にまだまだあるかもしれません
◆有能な経営判断は個人の資質か?
有能な経営者、あるいは管理者は、個人の資質によると受け止められる傾向があり
ます。あの人だからできた、前任の部長では無理だったろうとかのケースが典型例
でしょう。決して、個人による資質の重要性を否定するものではありません。しか
し、企業経営で必要とされる指示・意志決定は、当然おこなわれるべきものが大半
です。例を見ましょう
◆全社最適の判断求められる課題例
・クレーム減少の方策
・営業利益が赤字の製品を販売中止・継続の判断
・工場別の生産品目配分の判断
・稼働率上昇、歩留まり改善、その他改善課題の取り組み優先順位判断
・内製化の判断
・製品アイテム削減の判断
・適正な製品アイテム数決定の判断
・品切れの防止策決定
・収益向上促す組織デザイン
部門最適ではなく、全社最適の観点から判断をできるかがもっとも重要です
◆効果的な意志決定のしくみ化
全社最適の判断には、効果的な意志決定にともなう基準・ルールを、しくみとして
運用できる権限付与が不可欠です。これら判断基準の提供をすることが、管理・統
制指標の役割なのです。統制は、調整ではなく権限を持って管理することを意味し
ます。創業社長の例は、統制機能を体現した例だったわけです。なぜ、先代社長が
できて、二代目には無理だったのでしょうか
◆二代目の不足点
・お客さまから営業、製造、物流等のライン部門全体を把握していない
・製造現場を知らない(二代目は営業畑)
・先代の番頭格ににらみが効かない
・食品事業への関心が必ずしも高くない(他事業に目が向きがち)
◆統制の背景と意味
今となっては無理ですが、創業社長の意志決定を知ることが重要です。なぜそのよ
うに判断したのか、また基準は何なのか、何が分かればいいのかが必要でしょう。
次はしくみ化の段階となります。管理・統制指標の設定が、ここで生きてくるわけ
です。さらに、権限を持ってシステムコントロールできるようにします。全体最適
の観点から統制が可能となる段階です。さて、御社における管理・統制指標の必要
性はいかがでしょうか
◆収益源を求めるのは内部優先
重要なことは、収益源を求める場合の優先順位を間違えないことです。私どもの経
験則では、収益源は外部にあるのではなく、自社内の鉱脈を知る必要ありと考えま
す。人員増強、組織改革、設備投資などに走る業務改革ではなく、自社内の収益源
探索を推奨しているわけです。経験則に照らし、自社の経営資源のおおよそ2割は、
これで改善されると確信します
◆経営の総合効率が課題
自社内の収益源活用度合いを「経営の総合効率」とも呼んでいます。経営の総合効
率とは、現状の販売力を前提とし、あるべき収益能力の姿に対する収益水準を表し
ます。販売・生産・物流各ライン部門は、実需に基づく個別最適から、全社の収益
能力が最大化する方向に、業務連鎖の統制により経営の総合効率は改善します。最
終的に、統制機能(システムコントロール機能)を持つ部門が不可欠です。まさに、
創業社長の持つ統制機能そのものといえます。
本項でいう業務連鎖とは、複数部門が協同でおこなう業務分野であり、部門間で発
生する業務のつながりを指しています
やや長くなってしまいましたが、今回はここまでです。
次回またお会いしましょう