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収益改善に役立つ統制指標の切り口
【現役 経営コンサルタントの裏情報! No.3】
発行 2009/3/23
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【目次】
1.物流費の低減余地ある企業急減 その1
2.SCMは日本に定着するか
1.物流費の低減余地ある企業急減 その1
こんにちは 前田です!
先日、福岡に本社のある中堅メーカーの役員のかたと、物流費低減の進め方につい
て協議しました。原料は全量輸入、工場は福岡近郊に1箇所、大半が当日受注の翌日
お届け、重量勝ち貨物で、ここから西日本全域を対象にSP経由あるいは工場直送
でお客様に配送しています
昨年暮れまで約3カ月間かけ、社内SCM領域を対象に物流診断をすでに実施。結果
として、調達・工場内・販売物流領域においてコスト低減余地が見出されました。
主要な改善課題には、在庫圧縮 40%、物流拠点の統廃合、工場直送率の向上、工場
と周辺倉庫とのピストン輸送効率化等あり、物流費そのものも 10%程度低減余地が
ありと見ています
物流を除くSCM領域でも大きな課題が見られます。紙面の都合から省略しますが、
具体的な活動開始に向け前向きに進めることになっています。最近の事例では、物
流領域のみを対象としたコスト低減余地のある数少ない例ではないかと思っていま
す
世間一般的には、2007年頃からの急激な軽油高騰により燃料サーチャージ制導入も
進み、運賃に反映されて来ました。このため、物流費低減にも一服感が見られたよ
うな気がします
しかし、物流先進企業においては、すでに2004年辺りから物流費の低減余地が、ほ
とんどなくなったと思っています。JILS(日本ロジスティクスシステム協会)の調
査によれば、2004年度、製造業で 売上高物流コスト比率は6.6%です。まだまだ、
高い物流コストと感じている経営者も多いのですが、これ以上コストが下がらない
企業も多くなっているのも事実です。なぜ、下がらないのか知る必要があります。
今回は、下がらない理由のみご紹介します
◆物流費が下がりにくい理由
1.物流ネットワークがシンプル(直送比率が高い)
2.流動倍率が低い(流動倍率は小生の造語、低い倍率とは1.5以下)
*流動倍率=貨物総流動÷貨物純流動(特定の期間で算出。ex.1カ月、年間等)
貨物純流動: 販売した貨物の重量
貨物総流動: 輸送区間ごとの貨物の総重量
3.輸送・保管単価が低い(低水準な市況価格に到達している)
4.積載率・保管効率などの運用効率が高い
5.在庫が少ない(見込み生産品の販売用で0.5〜0.7カ月以下)
6.部門間の垣根が低い(顧客、販売、生産の協力が得られやすい)
2.SCMは日本に定着するか
本原稿は、(財)九州生産性本部からご依頼を受け寄稿させていただいた同本部発行、
2007年7月31日付「九州生産性ニュース 創造のひろば No.128」巻頭言に「SCM
推進への取り組み」として掲載されたものに加筆修正したものです
◆経営管理手法の目的
SCM(Supply Chain Management)が日本に紹介され10年あまりです。戦後、経営
管理手法が欧米から多数紹介され、SCMのようにブームを引き起こしたものも沢
山あります。昭和30年代、一世を風びした経営情報システム(MIS)もその一つ。
MISを導入しさえすれば高収益企業になるかのごとく言われたものの、いつの間
にか消えていきました。問題は、経営者自身が高収益化への処方箋を持っていなかっ
たことが主因です。目的と手段取りちがいの典型例と考えられます
◆数少ない定着管理手法
日本企業に定着した管理技術の代表格としてはVEがあります。1960年頃アメリカ
から紹介され、先輩諸氏の努力で企業実態に合う改良が重ねられました。これが、
企業に定着した最大の理由と考えられます。しかし、定着にはおおよそ20年を要し
ています
◆SCMは定着化問われる段階
SCMは、アメリカ製造業の日本型経営研究から生まれた手法の一つです。現在で
は、SCMに過度な期待が持たれた時期を脱し、経営実態に即した姿が求められる
段階に入っていると見られます
◆SCMとは
SCMの定義は種々ありますが、小生は次のように考えます。「SCMとは、サプ
ライチェーンを構成する販売・生産・調達・物流に至る各業務の連鎖が、もっとも
効率よく運用され収益能力最大となるしくみ」です。どちらかと言えば、企業ある
いは企業グループを対象とします。別名、社内SCMとも呼ばれることもあります。
企業内の管理がうまくいかないのに、サプライチェーン全体に適用しようとしても
無理があるということです
◆メーカーのSCM課題
収益向上のSCM課題例を挙げましょう。収益向上の鉱脈は、大半が企業内にあり
ます。企業により対策は異なりますが、収益最大化の方向に次の課題を統制するこ
と不可欠です。統制とは、調整ではなく、権限を持って管理することを指します
生産設備への割付順位、工場別の生産品目を決める生産配分、工場の生産余力の生
かしかた、納品リードタイム短縮、赤字品の生産中止判断、品切れ防止、適正アイ
テム数設定、収益最大化の在庫基準、製品別収益力の評価、販売先別の収益貢献度、
クレーム発生防止等挙げられます。これらの課題は、いずれも企業収益に影響を与
える課題です(ここで挙げた課題は、いずれ詳細に説明させていただくつもりです)
◆SCMの課題解決が求められる背景
いずれも、単独部門で処理しきれない部門横断の業際間課題ばかりです。業際間の
課題は、一部門内の最適化が必ずしも全体最適とはならない、全社横断の立場から
判断が必要となるものです
経済低成長下での利益確保策、業際間課題解決による収益改善要請がその背景にあ
ります。くわえて、管理が複雑化する事情も見られます。グローバル化進展、複数
のマーケット・生産拠点、複数の国への供給、多様化する顧客ニーズ・就業形態、製
品ライフサイクル短命化などあります
◆課題解決の阻害要因
しかし、個別企業における取り組み速度は、遅いと見られるのが大半です。理由の
一つとして、全社業務の精通者がいないことを挙げられます。次に、従来の業務改
革は、個別部門の資源効率化、処理能力引き上げに重点が置かれ、SCM課題への
不慣れがあったことも原因です
また、機能別組織にも問題があります。製造するので製造部、販売のため営業する
ので営業部など、業務機能を組織としたのが機能別組織です。右肩上がりの中堅
メーカーには向く組織といわれますが、業際間の課題解決には問題多い形態です。
共通しているのは、部門の壁を超えた最適解追求のコントロールのしくみが弱いと
言えます
◆SCM課題解決のポイント
SCMのM、マネジメントのあり方が問われています。最初は、SCM課題の顕在
化と損失定量化が最優先です。次は解決策立案、最後にマネジメントをしくみ化し、
SCM推進の業務機能統制の母体発足が欠かせません。マネジメントのしくみ化と
は、マネジメント力を単なる個人技能として見るのではなく、誰でも一定の成果に
結びつく技術の手順化を指しています。今後、SCMが日本社会に定着できるかど
うかは、収益改善にどれだけ貢献できるかに掛かっていると確信します
【編集後記】
花粉の飛散量が多いですね。小生は、バブル経済がはじけた1990年2月に発症しても
う19年になります。一昨日、昨日、今日(3月20日)と、いやになるほど花粉が多く
飛んでます。我が家の玄関の白木蓮が満開です。これが散った頃には桜が開花しま
す。楽しみですね
それでは、次回またお会いしましょう